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神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第2章 貴族院編

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084話 親友にサプライズ

分割すると区切りが良くないので、分割せずに長文になっております。

お時間のある時にお読み下さい。


(いまわ)(きは)は「は」でルビを表記していますが、「きわ」と読みます。

「こんにちは」と書いて「こんにちわ」と読むのと同じ感じです。

 今日は第2商業区のドワーフの貴金属四兄弟の店舗と、モフモフ街の彼らの屋敷が完成したので、貴金属四兄弟に会いに帝都の山脈近くにある精霊族の集落に来ていた。精霊族の集落は世界樹金の姉妹、ソロルとユニオレのお膝元で、なんと世界樹の森の中にある。世界樹の金銀銅に若木が鬱蒼(うっそう)と生い茂っているので、世界樹に認められた一部の神殿関係者と精霊族しか入れない結界の中にあった。

 当然、アルティウスの俺は入れるので、蒼汰と分身ルキウスと弟ソラリス、母とマレ婆、隠居伯とラクスと執事のヴァサルスにスマラと言うメンバーでピクニック代わりにやって来た感じだ。父と剣聖はマギウスジェム領で世界樹の結界内に入ったことがあるので、今回は別行動だ。

 意外だったのは皇帝陛下が行きたがってダダを捏ねたので出て来るのに苦労した。皇帝陛下は近く帝国議会が開催されるので外せない執務が多くて、剣聖とその息子達に取り押さえられている隙に強引に出かけて来たのだ。

 隠居伯とスマラとヴァサルスの犬人達が犬顔の鼻で、周囲の森の香りを嗅ぎながら嬉しそうにした。


「何と(かぐわ)しく清浄な雰囲気じゃ。世界樹の森とは美しい場所であるな」

「良い匂いだよね。こんな匂い初めて」

「香りに品があって澄んでいます」


 帝国の事情を知らない俺に母が説明してくれた。


「この世界樹の森で若木が栽培されて宇宙船に搭載されるのよ。普通は販売を独占している神殿の偉い人しか入れないのだけれどね……。あっさりと結界を抜けられてビックリよ」

「精霊族も入れるじゃん。精霊族が売れば良いのにね」


 神殿嫌いの俺としては、神殿に販売して欲しくなかった。母に窘められた。


「精霊族は世界樹の実から産まれるので、父であり母である世界樹を身売りはしないでしょうね。そう言えば、この集落に私の船のエルフ姉妹の弟達が住んでいるみたいよ」

「へぇ。姉のフロースと妹のセーメンの弟達か。会ってみたいね」


 しばらく森を進むと世界樹銅から銀に変わって、金がチラホラと現れて植生が変わって来た。この前に枝を分けてもらった世界樹金に近づいたので挨拶をする。


『そこの世界樹金。この前は枝をありがとうね』

『いえいえ』

『俺の母さんの杖に加工させてもらったよ!』

『アルティウスの方のお役に立てて何よりです! お母様に使って頂いて嬉しく思います』

「この子が母さんの杖の枝を分けてもらった世界樹金だよ」

「まあっ! 何て言っていたのかな?」

「使って頂いて嬉しいって」

「こちらこそ、ありがとう!」


 そう言って母が世界樹金の幹に触ると、枝葉から金色の光が舞い降りて来た。


「奇麗ね……」

「「「「「「「うわぁ!」」」」」」」


 前回来た時は枝を貰ってトンボ返りだったので、ここまでしか俺は来ていなかった。幻想的な光を堪能してから更に奥に進むと、巨大な世界樹金が2本、山脈を背にして(そび)えている。帝星の魔素を供給している世界樹で、左側が妹のユニオレで右側が姉のソロルと言っていたはずだ。


『『まあっ! ソータ様!』』

『直接に会うのは初めてだね。ユニオレとソロル』

『名前を憶えて頂いて光栄ですわ』

『本日は如何様(いかよう)なご来臨(らいりん)でしょうか?』

『大層な用事じゃないんだよ。貴金属四兄弟に用事があるんだ』

『……あの子達は()せっていますわ』

『弱っていますのよ……』

「えっ?!」


 俺はビックリして念話を口に出してしまった。近くに居た跪くドワーフを立たせて、急がせて貴金属四兄弟がお世話になっている建屋に向かった。部屋の中に入ると酒瓶や酒樽が床に転がっていて、その一角に長男のプラティウムが俯せで倒れていたので仰向けにした。プラティウムはか細い声で呻きながら酒を要求してくる。


「そ、ソータ様の幻覚が見えるだべ……。最後にソータ様の酒を飲めるなら本望だべ……」

「ちょっ! (いまわ)(きは)とか聞かせるなよな! 今、飲ませてやるから!」


 俺は収納からスピリタスの瓶を出すと、プラティウムの口に突っ込んで飲ませた。最初は咽たが酒と分かると目を見開いて酒瓶を奪い、あっという間に1瓶を飲み干してしまった。


「プハッ! 良い酒だべ! もっと欲しいだべ」


 生き返ったプラティウムは起き上がると、追加で酒を要求して来た。俺はジト目でプラティウムの髭を掴んで引っ張った。


「もしかして酒が切れていただけか?」

「い、痛いだべ! ドワーフの火酒では、もう満足できないだべ。ソータ様の酒がなくなって干上がって居ただべ」

「……ユニオレとソロル?」

『子供達に他では味わえない餌を与えないで下さいませ』

『贅沢を覚えてしまって、手に負えませんでしたのよ』

「俺のせいなのか……?」


 何故か責められているような気がするが違う気がして無視すると、部屋の隅に転がっている下のドワーフ兄弟達にも収納からスピリタスの瓶を出して突っ込んだ。プラティウムと同じように、あっという間に1瓶を飲み干して復活する。


「生き返ったぜ!」

「暫くぶりの旨い酒だ!」

「ソータ様のお酒がないと、もう生きて行けません!」



 俺の中でドワーフは酒で動いている説が急上昇した。まったく心配して損した!

 貴金属四兄弟に囲まれながら話を聞くと、俺と別れる前に渡した大量の酒は、精霊族のドワーフ仲間達に飲まれてしまったらしい。仕方なくドワーフ伝統の火酒で過ごしていたが、俺の酒の禁断症状で身動きが取れなくなっていたようだ。


「ギルドカードにメッセージをくれれば良かったのに」

「沢山送って無視されていただべ」

「そうなの? ミネルヴァ?」

『この様なメッセージが続いていたので、悪戯だと思っていました』


 「酒が切れた、酒をくれだべ……」こんなメッセージが百件くらい引っ切り無しに届いているので、ミネルヴァが悪戯だと思うのも無理はなかった。俺は今後の話として貴金属四兄弟を通して、精霊族の集落の窓口になって貰って食料や酒等の融通をする事を決めた。

 それからの母の船のエルフ姉妹の弟達を紹介して貰う。


「お前たちの姉が働いている俺の母の船だけど、エルフ姉妹が一緒に働いているじゃん。その弟達がここに居るって聞いたんだけれど、知らないか?」

「樹木四兄弟だべ? 案内するだべ」

「そう呼ばれているわね」


 通称は樹木四兄弟と言うらしい。母の肯定で貴金属四兄弟の居た建屋から出て、別の区画の建屋の中に案内された。4人のエルフ兄弟に片膝を跪かれて出迎えられた。


「彼らが樹木四兄弟だべ」

「こんにちは。俺はソータね。お前達の姉達が母の船で働いてくれているようなので会いに来た」

「アモー・アストラ・アニマ(愛しの天使よ)!」

「ブフッ!」


 ベトス語でふざけた事をほざいて来たエルフは、ミネルヴァによる名前表示によると樹木四兄弟の長男アルボルと言う名前だ。俺は噴き出してしまった。跪きながら俺に近寄って来て手を握って来たけれど、どうやって移動したんだろう? アルボルはエルフらしい美しい顔立ちで俺を見上げて来た。


「何て艶やかな黒髪に、漆黒の闇の如き深き瞳でありましょうか! 愛しの天使よ!」

「ブフッ!」

「まあっ!」


 再び拭き出した俺だが、アルボルの愛の告白もどきに婆は喜びの声を上げた。俺の妻と一緒で婦女子だからね……。髪の艶はシャンプーとコンディショナーのお陰だと思うけれど!

 俺はアルボルの頭を撫でて上げた。


「数年後に俺の船を建造するつもりなんだけれど、樹木四兄弟に木製部分の建造と、搭載する世界樹のメンテナンスを任せたいんだけど」

「「「「喜んで!」」」」

「そんなに簡単に決めて良いの?」

「私達は世界樹のために生きております。何を躊躇う事がありましょう」

「ちょっとユニークな世界樹だけど大丈夫? 世界樹の真祖ね」

「「「「真祖!!!」」」」


 俺は地球に帰りたい事を話した。もちろん秘密だと伝える。

 アルボル達は俺の近くで片膝を跪いて答えた。


「「「「喜んでお供します!!」」」」

「貴金属四兄弟も一緒だから仲良くね。それじゃあ今日は貴金属四兄弟の店舗と屋敷の完成祝いなんで、宴会でもしようか!」

「「「「「「「「「「…やったー!!…」」」」」」」」」」


 アルボルから本人と樹木四兄弟の下の弟達に挨拶を受けた。


 集落の広場に机と椅子を出して宴会にする。酒樽を収納から十樽出したらドワーフ共が群がり出して、そこから脱出するのに苦労した。エルフは肉料理が駄目かなと思っていたら好きじゃないだけで食べられるらしい。ただ好きじゃない物を食べてもらうのも可哀想なのでエルフ達には、たんぱく質は豆類の植物系の食事を用意した。餡子餅(あんこもち)、きな粉餅、ずんだ餅が大人気だった。豆腐ハンバーグとかのしょっぱい物も用意したら奪い合いが始まったので窘めた。


「もうお前達、意地汚い真似はよせよ! もしかしてエルフは、これも食べられるのかな……」

「ソータ様のお出し頂いた物ならば……美味しいです!」


 エルフ次男のトルンクスが納豆を頬張った。口から糸を引いている美男とかシュールだ!

 三男フォリウムはヒジキと大豆の炊き込みご飯が好きなようで、お代わりを要求される。


「ソータ様、お代わりください。こちらのお米と大豆と一緒に入っている黒い紐状の物は何でしょうか?」

「それはヒジキって言って海中に生えている海藻って言う草だよ」

「このお餅に巻いてある黒いのと、ゴボウに巻いてある黒いのも、そうですか?」


 四男ヌクスが推理して言い当ててしまう。


「うん。お餅の方は海苔で、ゴボウの方は昆布ね。昆布は出汁って言って煮込み料理とかの味に深みを与える時にも使うね。例えばさっきのヒジキと大豆の炊き込みご飯には昆布出汁を使っているんだ」

「普通の煮込みでは出ない深い味わいと香りですな。流石、愛しの天使よ!」


 長男アルボルが愛の言葉で締めてくれた。母と隠居伯が心配して来た。


「ちょっとソータさん。このエルフの愛の告白を受けるつもりなの?」

「態度をハッキリせんと、後で揉めるぞ」

「アルボルは俺個人に対しての愛の告白と言うより、神を愛するって事じゃないかな。そうだよね? アルボル」


 アルボルに話を振ると感激のあまり泣き出した。


「もちろんソータ様を個人としてもお慕いしておりますが、アルティウスが我々の前に現れて下さった事に深く感激しております!」

「兄様は創造神様から神託があった時から、こんな感じです」

「儂らにソータ様の事を根掘り葉掘り聞いて来て、正直、ウザかっただべ」


 エルフ次男トルンクスは呆れたように兄を見つめ、ドワーフ長男プラティウムは被害者だったようだ。

 ミネルヴァがミーティス一家の到着を教えてくれた。


『マスター。ミーティス一家が帝都の宇宙港にご到着です』

『ありがとう、ミネルヴァ』


 ミネルヴァに言って帝都の宇宙港を監視してもらって、ミーティス一家が到着したら教えてくれるように言っていた。


「じゃあミーティス一家を迎えに行ってくるね」

「「「「「「「「「「…行ってらっしゃい!…」」」」」」」」」」


 俺は宇宙港の波止場で、親友のミーティスが降りて来るのを待っていた父の近くに転移した。父が俺に気づいて声をかけて来た。


「ソータ殿。今、ミーティス達が乗っている船が着いた所です」

「皆を迎えに来たよ。剣聖は……あそこか」


 近くの剣聖が凄く目立っている。降りて来た乗客や係員まで剣聖に群がっていた。剣聖が俺を見つけると群がっていた人々に本来の目的を伝えて追い払う仕草をした。


「ほれ。儂は出迎えに来たのじゃ。仕事をさせてくれぬか」


 渋々、剣聖に群がっていた人々は解散して行った。剣聖は俺の隣に移動してくる。


「人気者は大変だね」

「顔が知られていると動きにくくて困るのう」


 しばらくするとミーティス一家が船から降りて来て、俺は手を振りながら出迎えた。ミーティスも妻のモーリスも元気そうで良かった。息子リージスと娘ミコが俺に駆け寄って来た。


「「ソータお兄ちゃん!」」

「リージスもミコも大きくなったんじゃないかな!」

「半年も経っていないので変わらないですよね」

「子供は目を離すと直ぐに大きくなるんだよ」


 息子を2人も育てている最中なのに、夢のない事を言う父に俺は呆れた。駆け寄って来た2人に俺は収納からお菓子の入った袋を渡した。


「「ソータお兄ちゃんのお菓子!!」」

「すみませんね、ソータ殿。お久しぶりです」

「こらっ! この子達はお礼を言ったのかしら?」

「「ソータお兄ちゃん、ありがとう!!」」

「遠い所をよく来たね!」


 ミーティス夫妻が子供達に追い付いた。モーリスに窘められて子供達からお菓子のお礼を言われる。

 父はミーティス一家が手ぶらなのを見て心配する。


「ミーティス、荷物が少ないが大丈夫なのか?」

「ソータ殿にこれを頂きましたし、引っ越しでモーリスにまで貸し出して頂きましたからね」


 ミーティスは腰にある魔法鞄を撫でて、モーリスの魔法鞄も見た。


「モーリスに渡したのも上げたつもりなんだけれど。貰ってくれると俺は嬉しい」

「これは私の物と同じ白虎様の最高級品ですよね? 売れば大型の宇宙船が新品で買えそうですが……」

「ええっ! そんな良い物なのね! 引っ越しの選別にと気軽に渡されたから安物かと思っていたわ!」

「帝都に着いて来てくれた貴金属四兄弟にも渡したんだから、モーリスも受け取ってね」

「……では、ありがたく頂いて置きます」

「ありがとうね。ソータさん」

「では入領手続きを済ませるとしようかのう」


 ミーティス一家が入領するために剣聖が先導して手続きしてくれるようだ。剣聖が案内すると殆どの手続きが顔パスなので早かった。

 皆で宇宙港から精霊族の集落に転移する事にした。


「それじゃあ精霊族の集落に転移をするね」

「初めてなので怖いです」

「ちょっとドキドキするわね」

「「?」」


 そう言えばミーティス一家は転移が初体験だった。子供達は何が起こるのか分からないようだ。

 精霊族の集落に転移するとミーティス一家は、とても驚いたようだ。


「いきなり風景が変わりますね」

「凄い! 世界樹がこんなに近い!」

「「うわっ!」」

「気持ちは分かりますね。未だに慣れないですね」

「儂もじゃ」


 父と剣聖は慣れて来たと思うけれどね。ミーティス夫妻は隠居伯の屋敷近くに屋敷を建てたので、お隣さんとしての挨拶を始めた。リージスとミコの兄妹は分身ルキウスとソラリスとスマラと一緒に、精霊族の子供達と仲良く遊び始めた。小さいエルフやドワーフは可愛いね。子供達は直ぐに仲良くなるので微笑ましい感じだ。

 マギウスジェム領からの長旅で疲れただろうと言う事で、俺はミーティス一家に料理を振る舞った。ミーティスは感慨深げに出された料理を味わった。


「マギウスジェム領からソータ殿が居なくなって、餌付(えづ)けされていたんだなと感じましたよ。時々、無性にソータ殿の料理が食べたくなって困っていました」

「ミーティス、凄く分かりますよ。私もこちらでソータ殿が隠居伯の屋敷に行ってしまったので、同じ苦しみを味わいました」

「私もソータさんの料理を食べられないと生きていけないよ」


 父と母がミーティスに追従した。父母は離婚の危機とか大げさだったからね……。貴金属四兄弟も俺の酒がないと干からびるとか調子の良い事を言い出す。

 ミーティス一家が落ち着いたようなので宴会はお開きにして、第2商業区に建てたウルスメル商会の社屋と貴金属四兄弟の店舗に転移魔法で向かう事にした。


「それじゃあ第2商業区に転移するね」

「第2商業区とは何ですか?」


 ミーティスは疑問の声を上げたが、見てもらった方が早いと思って転移した。貴族院に通っていたミーティスは、第2商業区が昔にどうなっていたか知っていたようで、驚きの声を上げた。プラティウムも察してくれたようだ。


「こ、この先は住宅街なので大きな岩山が遮っていたはずですが、まさか……」

「ソータ様はやってしまっただべ?」

「想像通りですね。マギウスジェム領と同じ事が起きました」


 父が答えを教えてあげる。まずはウルスメル商会の社屋に案内した。


「これがウルスメル商会の社屋ね。大体はマギウスジェム領の冒険者ギルドと同じくらいの大きさかな。5階建てなので広くて良いよ」

「……獣人の私だと借りにくいのでソータ殿に任せましたが、まさかこれ程の建物になるとは思いませんでした」

「これで驚いたら後が持たないぞ。ミーティス」

「えっ?! これより凄い事があるんですか?」


 社屋内を案内して父がニヤリと笑った。頻繁に連絡は取っていたようだけれどミーティスには秘密にしていたのね。

 次に貴金属四兄弟の店舗へ案内した。マギウスジェム領では売り場と商談スペースと事務スペースが同じ部屋だったが、別の部屋に応接室や事務スペースや休憩室を用意した。鍛冶場が隣接する隣の建物になったので音の心配が減った感じだ。材料置き場は屋内と屋外の2ヵ所にして高い素材は屋内にするようにと伝える。ちなみにマギウスジェム領と同じように、材料置き場は盗難対策に契約魔法で処置したので安心だ。完成品は地下倉庫に入れる感じになる。

 貴金属四兄弟は店舗や鍛冶場を見て回った。


「す、凄いだべ……」

「広いな……」

「新築だ……」

「新品の魔石炉だ! しかも大きいのもある! ……これは何ですか? ソータ様」


 四男キュープラムが見慣れない機械類を見つけた。


「それは魔術旋盤(せんばん)機と魔術裁断機と魔術研磨(けんま)機と魔術溶接(ようせつ)機だ。今まで手作業で行っていた削り出しと研磨を魔術具で、正確に素早く出来るようになった。溶接は金属同士を溶かして接合する魔術機器になる。使い方は後でアダマス・メイドを派遣するよ」

『了解しました。マスター』

「凄い事になっているだべ……」


 屋外に出るとアルボルが不満を零した。


「プラティウム達の店舗を見せつけるために、我々も連れて来たのですか?」

「隣に木工屋を建てたんだけれど、お店を始めない?」

「「「「はぁっ?!」」」」


 樹木四兄弟は驚愕の声を上げた。彼らに木工屋の屋内を案内すると真剣に見だした。鍛冶屋と比べると鍛冶場が製材場になって、魔術具が魔術旋盤機と魔術裁断機と魔術研磨機と魔術圧着(あっちゃく)機になっている。貴金属四兄弟と合わせて産業革命を起こして欲しい。俺の宇宙船のためにね。


「それでやってくれるかな? 時々、市場でエルフが作った木工製品が良い仕事をしているので、俺の宇宙船の木工部分の建造もお願いしたいから、店舗で慣れて欲しいんだけれど。駄目なら他を探すよ」

「や、やります! やらせてください!」


 アルボル達の樹木四兄弟は俺に向けて片膝を跪いた。白虎の最高級品の魔法鞄を樹木四兄弟にそれぞれ上げた。

 次いでなので上げてなかった皆にエリクサーを1本ずつ上げる。ミーティス一家と貴金属四兄弟と樹木四兄弟に、第2商業区にレビタス車両で入るための認証用の魔術具を大量に渡して置いた。

 次にモフモフ街の工場と屋敷に案内しようと、マギウス・ポータルに向かう。


「次はこれを使ってモフモフ街に行くね」

「こ、これは……」

「貴族院に向かうやつとは色が違いますが、マギウス・ポータルに見えますね……」

「隠居伯の屋敷付近が遠かったので、作っちゃった!」

「作っちゃったって……普通は作れませんよ」


 ミーティスが常識論を振りかざすが、俺は無視してマギウス・ポータルを通ってモフモフ街に移動した。モフモフ街は三十万平方キロメートルもあるので工業区と農業区と住宅区の3区画に分けた事を説明した。


「さっきの第2商業区と大陸のここら辺りを買ったんだよ」

「ちょ、ちょっと広すぎではないですか?」

「ヤバイだべ……」


 ミーティスが遠い目をして、プラティウムも同意した。アルボルが辺りを見回して怯えるように言う。


「ここは結界の外ですよね?」

「結界モニュメントを新しく設置したんで安全だよ」

「「「「「「「「「「結界モニュメントまで!!」」」」」」」」」」


 ミーティスは父を問い詰めた。


「ホリゾン! まだ半年も経っていないのに、息子がやり過ぎじゃないですか?」

「私に言われてもなぁ……。ここだけじゃなくて貴族院にも手が伸びているし」

「貴族院がどうしたんですか?」

「演習場あるだろ? 遠くて不便だって皆でボヤいていたやつ」

「まさか……」

「そのまさかでセネクス先生に唆されて、卒業製作の代わりにマギウス・ポータルで行き来が楽になって、演習場の大平原を結界モニュメントで囲ったんだぞ」

「うわぁ……私の在籍時にして欲しかったですね……」


 ミーティスも演習場は遠くて不便だと思っていたようだ。

 俺はミーティスに工場の一角を貸してくれるように頼んだ。


「隠居伯の屋敷も宮殿も匂いが駄目なんで、工場の一角を貸して。ミーティス」

「それは良いのですが、工場ってどこにあるんですか?」

「モフモフ街の西側の工業区へ転移で行こう」


 俺はモフモフ街の西側に皆を転移した。巨大な建物が3棟出来ている。


「この手前がウルスメル商会の第1工場で、向かって右手側が造船所で、左手側がレビタス車両工場ね」

「待って下さい! 第1って何ですか? 続きがありそうじゃないですか」

「今は第1工場だけだけれど、第3工場まで建てる予定だから広くて良いよね」

「ホリゾン。息子が暴走していますよ」

「いつもの事じゃないか? 仕事が早すぎて、こちらが振り回されるパターンだ」

「魔石伯が慌てふためいていたのが分かりました。レビタス車両工場や造船所は発掘品を使うんですか?」


 普通はベトスの遺跡からレビタス車や宇宙船の本体か魔術基盤を発掘して外側だけ作るのだが、俺が魔術基盤を作れる事を言っていなかったかも知れない。この際なので皆に説明する。


「魔術基盤は俺が作れるから」

「「「「「「「「「「「「「「えっ?!」」」」」」」」」」」」」」


 レビタス・バイクや帝都の大陸船の魔術基盤を引き合いに出して、父や母達に説明した。


「そう言えばどこから魔術基盤を調達していたのか謎でしたが、作っていたのですね……」

「私もソータさんが遺跡に行って取って来たか、四神様の誰かにもらっていると思っていたよ」

「魔術基盤を作れないと、自分のオリジナル宇宙船なんて作れないからね」


 取りあえず子供達が大人の話に飽きて来たので、ミーティス一家と貴金属四兄弟と樹木四兄弟の屋敷に転移した。隠居伯の屋敷の近くなので、子供達は遊び始める。樹木四兄弟の屋敷は俺の屋敷にしようかと思っていた所だが、隠居伯に出て行かないでと泣かれたので完成後も保留になっていた屋敷になる。執事のヴァサルスとスマラと共に泣いて縋られたら、モフモフ好きとしては引っ越しができなかった感じだ。子供を出しに使う所が老犬らしく狡猾(こうかつ)だよね!

 ミーティスが子供達を見ながら父に尋ねた。


「まだ何か驚く事を隠していないですか?」

「サプライズがあって楽しいだろ?」


 父はミーティスに言葉を濁すとニヤリと笑った。

次回の話は2025年5月6日(火)の19時になります。

爆発が蒼汰君を求めているようですね!


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