085話 魔法は爆発だ!
貧民街からモフモフ街への獣人の移住が始まった。住宅街と貧民街を隔てる川に架かっている粗末な吊り橋はレビタス車が通れる橋に架け替えられて、各ギルド職員が貧民街に出向いて手続きを行ってくれている。工場勤務等の物作り希望者は工業者ギルド、農業従事者の希望は農業者ギルド、商売を始める者や賃貸や住宅の購入やお金の貸付は商業者ギルド、移動や運輸関係の希望者は航宙者ギルドの担当になった。レビタス車だと時間がかかるので、航宙者ギルドの依頼で宇宙船が用意されてピストン輸送をするようだ。
移住後の貧民街は墓地になるようで、住んでいた場所が名残惜しい獣人にも納得してもらった。中には帝都を離れたいという獣人も居るので、渡航費用を商業者ギルドで貸付してマギウスジェム領に移住してもらう者も居る。
俺は蒼汰でミーティスと、モフモフ街の移住受け入れ本部の仮設テントで、移住の様子を眺めていた。貧民街の獣人は三十万人も居るので、今日は第1弾の移住になっている。
ミーティスは呆れたように俺を見つめた。
「まさか貧民街の獣人をモフモフ街に移住させるとは、発想が大胆過ぎて未だに頭が追い付きませんよ」
「農地も工場も用意して働き口に人が必要なんだから、丁度良いじゃない」
「大変に助かりましたけれどね。お金は足りるんですか?」
「建設と移住の費用が足りなくなったから、さっき父さんと爺に大白金貨5千枚ずつを追加で渡したよ。そんなに必要ないって言っていたけれど」
「流石にソータ殿の口座残高は減りましたよね?」
「それがね、まだ桁が減らないの! もう少しで減りそうなんだけれどね」
「どれだけ持っているんですか!」
ミーティスと笑い合っていると、リベラと狐人のヴィクトルがやって来た。
「見知った顔が居たと思ったらソータじゃないの」
「うっす! ソータ。今日からモフモフ街で世話になるぜ」
リベラは第2商業区の演劇場のオーナー、ヴィクトルは同じくレビタス・レース場のオーナーに内定している貴族院の学生だ。後で知ったが2人は幼馴染らしく、リベラはヴィクトルの引っ越しの手伝いに着いてきたようだ。
ヴィクトルが不思議に思ったようで、ミーティスの事を訪ねて来た。
「それで、そっちは誰だ?」
「ウルスメル商会の頭取のミーティスね」
「よろしく」
「「はぁ!?」」
2人は驚いたようで、ヴィクトルはミーティスとの関係性を聞いて来た。
「ウルスメル商会の頭取って言ったら、飛ぶ鳥を落とす勢いの商会じゃねぇか! どんな関係なんだよ?」
「俺のパーティメンバーの1人の親友だよね?」
「フフッ! そうなりますね!」
アルティウス関係は言えないので、表向きの関係はそうなる。俺とミーティスは笑い合った。
ヴィクトルは釈然としないようで、食い下がって来た。
「じゃあこんな大金使って貧民街の移住費用を出して手伝ってくれるのは、ウルスメル商会が金の出所か?」
「いえ、違います。これは完全にソータ殿の慈善事業です。逆にウルスメル商会はソータ殿が実質的なオーナーなので、私も雇われ頭取のような者ですよ」
「ミーティスが適任だと思ったからお願いしただけで、俺は雇われとか思っていないよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですね!」
俺が商会をやると、地球に帰るのが遅くなってしまうので、これは本心である。面倒は出来る人に投げると良い!
ヴィクトルは疑問点が徹底的に気になるようで、更に突っ込んで来た。ミーティスは俺の噂を知らなかったようだ。
「ソータは獣人の神様だって言われているけれど本当か?」
「ソータ殿が獣人の神様なのですか?」
「う~ん。何かそう言う噂が獣人の間で広がっているんだよね。俺から言った訳じゃないよ」
「ソータはオケアヌス将軍と一緒に貧民街に来たし、良く分からないんだよな」
「この子とホリゾンは面識ないのですか?」
「初めて会った時にはオケアヌスだけ一緒に居たかな」
「何にも話していないんですね!」
「人聞きが悪いなぁ。話す時間がなかったんだよ!」
「いつまでも来ないからどうしたと思ったら、獣人の神様に突っかかっているではないかっ!」
貧民街でまとめ役をしていて長老と呼ばれている狐人の老獣人プリムスがやって来て、ヴィクトルに拳固を落とした。
「いてっ! 何しやがる、ジジイ!」
「私の息子がご迷惑をお掛けしましたかな?」
「迷惑はしていないよ。ヴィクトルは息子さんなんだね」
「同じ狐人なので捨てられていたのを拾いました。血は繋がっておりません」
「へぇ、立派だね。ちなみに俺の事を聞きたいらしいけれど、どう答えようか迷っていた所」
「私も聞きたいわ」
今まで黙っていたリベラも話を聞きたそうだ。まあこういう時は有名人に頼るしかないよね。
「ソータ殿。白金貨を投げ付けてギルドと役人達は黙らせて来ましたよ」
「白金貨と言っても大きい方だとは思っておらんかったようで、驚いておったが」
丁度良い所に父と剣聖が来たので、リベラとヴィクトルに紹介しようと思った。ギルドと役人達は建設と移住の費用が足りなくなると慌てて俺に詰め寄って来たので、父と剣聖にお金を持たせて黙らせてもらって来たのだ。硬貨なんか投げたら痛いよね? 父と剣聖なら投げるモーションをしただけで屈服させそうだけれど……。
俺はジト目で2人を見た。
「本当に白金貨を投げていないよね?」
「ギルド口座の残高を見せただけですよ。私達を何だと思っているんですか!」
「儂もそんな事はせんぞ。酷いのではないか? ソータ殿」
「それなら安心だけどね」
脳筋だから心配なんだよね。ちなみに「札束で頬を張る」の金に物を言わせて人を屈服させる慣用句は、こちらでは「白金貨を投げ付ける」のようだ。
リベラとヴィクトルとプリムスは、剣聖の登場に驚いたようだ。
「け、剣聖……よね?」
「剣聖だ……」
「剣聖とお知り合いなのでしょうか? ソータ様」
「剣聖とその息子のホリゾンとは同じパーティメンバーなんだよ」
「「「えっ!?」」」
そしてホリゾンとミーティスが親友なので、ウルスメル商会をミーティスに任せた経緯を軽く説明した。
「複雑だから説明に苦労するよね。面倒だから黙っていたい」
「一番、複雑な人が説明しないでどうするのですか。説明が足りないと思います」
「さっきも獣人をこんな僻地の結界の外に追い払ってとか文句言われたけれどね。マギウス・ポータルと結界モニュメントの話をし忘れていたよ! 見せたら納得してくれたけれど」
「ここのマギウス・ポータルと結界モニュメントは元からあったものですか?」
プリムスが聞いて来た。
「あれは俺が作ったんだよ」
「「「えっ!?」」」
「設置だけは父上と私が手伝いましたけれどね。作ったのはソータ殿ですね。この様子ですと貴族院の方も言っていなさそうですね」
「「あれもか!」」
リベラとヴィクトルは貴族院のマギウス・ポータルと結界モニュメントが、誰が作ったのか知らなかったようだ。貴族院領主セネクスに全校集会で告知するとか言われたんで、慌てて止めたんだよね……。そんな事をされたら恥ずかしくて通えなくなってしまう。
俺的には説明が面倒だった所を、剣聖に見破られた。
「別に便利になる分には、誰が作ったって良いじゃん」
「嫌な予感がするのう……この土地と建物が、ソータ殿の金で出来ておると獣人達に言っていないのではないか?」
「「「えっ!?」」」
「その情報は必要?」
「「「必要です(じゃ)」」」
リベラとヴィクトルとプリムスは新事実に驚き、父と剣聖とミーティスに突っ込まれてしまった。リベラから疑問をぶつけられた。
「それじゃあ第2商業区の持ち主もソータなの?」
「「「そうです(じゃ)」」」
「ソータから演劇場のオーナーになってくれって言われたんだけれど、本気なのかしら?」
「俺もレビタス・レース場のオーナーになってくれって言われた」
「あの土地と建物もソータ殿のお金でできていますね。私と父上にも、その名前の設備で運営したいと言っていたので、嘘ではありませんよ」
「え? 嘘吐きだと思われていたの? それはショックだなぁ……」
「説明が足りていないソータ殿が悪いと思います」
「むむむ」
父に諭されたけれど、今は身分が低いので俺は信用ないからね。
「まあ演劇場とレビタス・レース場は未完成だし、モフモフ街を優先で工事しているから、2人が来年に貴族院を卒業してからになるね」
「私達は卒業できるけれど、貴方は大丈夫なのかしら?」
「そうだぞ。こんな所で油を売っていて、お前は卒業できるのかよ?」
リベラとヴィクトルに俺が貴族院の卒業できるのか心配された。
「フフン! これは自慢しても良いよね。俺はもう6学年分全教科のスキップ試験が受かっているから、講義を受けるのは必須部分の半分で良いんだよ。2年で卒業できる予定ね。ちなみにもう2年生なんだよ!」
「「「「「「はやっ!!」」」」」」
俺は立ち上がると収納から学生服を魔法で一瞬に装着して、左肩の飾り紐が2本に増えているのを皆に見せた。そう言えば父と剣聖にも言っていなかったかも知れない。スマラより学年が上になって一緒に講義が出来なくなって泣かれたけれど、行ける日は転移魔法で送り迎えだけはして上げている。
今日は演習場で魔法科の講義の日なので、これから演習場に行かなければならない。
「それじゃあ俺、演習場で魔法科の講義があるから行ってくるね。とう……ホリゾンと剣聖とミーティス、後はよろしく! 引っ越しする3人も頑張ってね!」
「ここから演習場はマギウス・ポータルを使っても時間かかるわよね? 間に合うの?」
「結構かかるよな」
リベラとヴィクトルに心配されるが、俺には転移魔法がある。そう言えばミーティスを除く獣人3人には見せていないかも知れない。俺は演習場のマギウス・ポータルがある丘の上に転移した。後で近くに居たアダマス・メイドに聞いた所によると、3人は凄く驚いていたようだ。
近くに居た2年生の女生徒から軽く悲鳴が上がった。俺が突然に転移して来たからだ。
「キャッ!」
「ソータ君。驚かせるような魔法の使い方は感心しないな」
「次からは気を付けますね。驚かせてごめんね」
「いいの。突然出て来たからビックリしただけだから平気」
魔法科の教師に窘められたので、俺は女生徒に誤った。父と剣聖だと驚かない距離だったけれど、あの2人は異常な察知能力なので比較にならないので、他の人には気を付けようと思う。
1年の時の魔法科は安全な魔法しか教えていなかったので講堂で行っていた。魔力感知から始まって身体強化になり、慣れてくると結界と収納を教えていた。呪文を覚えないとならないので大変そうだった。俺は何故か教師のサポート役をさせられていた感じだ。解せぬ……。
今日は2年生の魔法の実習で、攻撃魔法を使うので初めて演習場での講義だ。教師が5人で生徒は合計三十人のようで生徒が6人グループになって、教師が1人付く構成にされた。普通の攻撃魔法がどういう物か、ちょっとワクワクしている自分だった。
他の生徒達を少し羨ましいと思ったのは、魔法の杖を皆が持っている事だ。折角、魔法が使える所に来たのに、格好が良い装備品が装備できないのが悲しい。
『ソータが魔法を使う予感』
『僕、ソータの火魔法が見たい』
『水魔法は派手さに欠けるからなぁ……』
『私は風魔法を希望するわ』
『土魔法も地味なのが残念である』
創造神と四神達がやって来た。
『皆、来たんだね。俺の魔法なんて見ても詰まらないと思うけど』
『この前、この近くに大穴を開けたのを見逃したのよ! 詰まらない訳ないでしょ!』
『あれは魔法を補助に使った科学だから、普通の魔法のカテゴリーと違うよ。まあ見ていても良いけれど、講義に集中させてね』
『『『『『は~い』』』』』
青龍に突っ込みを入れられた。演習場の中心部がクォーク・エクスプロージョンの爆発で大穴が空いたので、仕方なく土属性魔法で埋め戻したのを思い出した。後始末が面倒だよね……。
俺が属しているグループの教師が木で出来た的を用意する。最初は危険が少ない水属性魔法から撃つように指示された。
「水属性魔法からだ! ソータ君は的を壊しそうなので最後だ」
「え~っ!」
強制的に列の最後に並ばせられた。まあ普通の魔法を見たかったので丁度良いかも知れないが。
最初の生徒が呪文を唱えて杖の先から水属性魔法を撃ったので、俺は時間魔法で周辺の時間を止めた。魔法を撃っている生徒の近くに寄り、杖の先を手の平をかざして魔力感知した。
『魔素を水に変換しているのか』
『俺はそんな事を気にして撃ったことないぞ』
『ソータは気にし過ぎなんじゃないかな』
玄武は気にして撃ったことないらしい。創造神にちょっと呆れられた。
『普通が分からないからね。これと同じくらいでいいか』
『『『『『え~?』』』』』
文句を言いたそうな創造神と四神を無視して、時間停止を解除する。自分の番が来たので自信満々に水属性魔法を的に向けて撃ち出した。手を水鉄砲のようにして水が噴出し、水が的に当たって濡れて終わりだ。凄く普通なので俺は満足した。
教師が首を傾げて告げる。
「ソータ君。普通過ぎて詰まらないのでやり直しで」
「ちょっ!」
『『『『『ですよねぇ!』』』』』
「魔聖と魔法科のアドミラリ教授が都合で来られないので私が報告しないとならないのです! 普通の報告をしたら首を絞められるので、やり直しを要求します!」
「ぐぬぬ……2人には後でお仕置きだな」
仕方がないので両手の平を開けたまま根元でくっ付けて的に向けた。某有名漫画やアニメのようなポージングをする。まあ有名ゲームでも良いんだけれど。
「何とかはめ波!!」
ドゴォォォォォォ!!
俺が掛け声を発すると水属性魔法はダムの放流のように激しい水流で轟音を響かせながら駆け抜けて、的を飲み込んで吹き飛ばした。遠くに吹き飛んだ的は木っ端微塵だね。
『秒速四十メートルなので、時速換算すると百四十四キロメートルで噴出しました。マスター』
『『『『『おおっ!』』』』』
「これでよろしいですか? 先生」
「……ああ」
何か他のグループからも注目されているので俺は恥ずかしくなった。創造神と四神も満足したようで感心の声を上げていた。
次は風属性魔法を最初の生徒が撃ったので、俺は観察した。空気を動かしているだけじゃなくて、気体を生成しているようだ。今度の的は旗で生徒の撃った魔法ではためいていた。
前の2人の男子生徒が俺に話しかけて来た。
「ソータ先輩。風属性魔法も凄いの撃てるんですよね?」
「俺達に披露してくれませんかね?」
2人は前に並んでいる女子生徒のスカートをニヤつきながら指差した。
「君達、男の子だねぇ! でも事故なら仕方がないよね!」
「「やった!」」
俺の番が来たので教師に聞いてみた。
「また派手じゃないとやり直しですか?」
「当然だ!」
「先生が責任を取ってくださいね!」
「ど、どういう意味だ?」
「フフッ!」
俺は笑ってお茶を濁して風属性魔法を発動させた。両手の平を下の方から掬い上げる感じに動かす。地面から上空に風が舞い上がった。
ブボォォォォォォ!!
「「「「「キャァァァッ!!」」」」」
『『おおっ!』』
『下品だよソータ』
『悪戯した男子に女子が恋に芽生えたり……しないわね!』
『ソータ面白い!』
玄武と白虎には好評で、朱雀と青龍からは低評価だった。創造神は面白がってくれたので良いだろう。イメージとしては地下鉄の通風孔から風が舞い上がり、有名女優のスカートが翻った光景が繰り広げられた。風が舞い上がる範囲を的だけじゃなくて、攻撃魔法の練習をしている他のグループも巻き込んだ感じだ。男子からは称賛の言葉が上がり、スカートを履いていた女子からは非難の声が上がった。
教師からはジト目を向けられたが、顔は笑っていた。男の教師なのでロマンが分かるようで良かった。
「これで良かったですか?」
「もちろん合格だ! 良くないが良くやった!」
「まあ攻撃魔法の実習でスカートを履いて来るのが悪いですからね」
「それもそうだな。残念だが後で通達を出して置こう」
発案元の2人の悪ガキにも褒められたが、おっさんになるとあまり嬉しくないね。若い時ならときめいていたかも。
次は土属性魔法で先行の生徒を観察すると、石礫が的に当たっている感じだった。土属性魔法は生成した石とか岩とかを消したりが出来ないので、巨大にするとまた収納の肥やしが増えるだけな気がするので、超硬合金アダマンタイト弾くらいの大きさの小さい岩を生成して、高速に回転させて射出速度を速くするしかないね。でも的に小さな穴が開いたくらいじゃ教師が納得しないと思うから、マシンガンのように数で勝負しようと思った。
タッタッタッタッタッタッタッタッ…………
『『『『『おおっ!』』』』』
一斉に岩を飛ばすと何が起きているか分かりにくいと思ったので、岩の生成と発射の間隔を三百ミリ秒くらい開けて的に撃ち込んでみた。指を鉄砲型にして標的を定める。毎分二百発で岩が当たった所から的に穴が開いて行き、支えを失った所から的がもげて弾け飛んで行った。
創造神と四神はご満悦で、チラッと横の教師を見ると満面の笑みなので合格のようだ。
「凄く良いね!」
「ありがとうございます?」
まったく……魔法に派手さを求めるなんてナンセンスだよね。最小限の労力で最大限の効果があれば良い訳で、攻撃魔法なんて敵の無力化ができれば良いだけだ。俺としては派手さが必要だと思えない。効果を求めて派手になったのなら仕方がないと思うが。
次の火属性魔法が厄介だった。普通は可燃性のガスのような物を生成して火としているが、それだと燃え移るまでに効率が悪い。俺が調理とかで加熱する時は電子レンジのように分子を運動魔法で振動させて熱しているので、その方法で的を消し炭にしても派手じゃない事が問題だった。
『う~ん。火属性魔法を派手にすると、大惨事になる予感しかしない』
『離れて撃てば大丈夫だよ! 僕はそうしている』
朱雀が助言をしてくれたが、派手にすると酸欠の心配があったので、酸化剤として酸素も一緒に生成して燃やそうと思った。イメージとしては燃料気化爆弾だ。可燃性ガスと酸素をばら撒いて発火させるとガス爆発になる。貧者の核兵器と呼ばれるくらいには威力が高いので、効果が派手になる事は保証済みだ。
俺は教師に警告した。
「派手な火属性魔法は危険なので、俺の結界で防御するので他のグループも集めてもらって良いですか?」
「幸いにして他のグループは終わっているようだ。そうしようか」
教師の号令で他のグループも俺の近くに集まって来た。的は五十メートルくらい先に設置してもらう。それから結界魔法イージスで皆を囲った。
「あと結構強烈に光ると思うので、爆発の瞬間を凝視しないで下さい」
「そ、そんなに派手なのか?」
「ええ……」
他の生徒の火属性魔法が松明くらいの炎が的に当たっているくらいなので、燃料気化爆弾とか見たら腰を抜かすかも知れない。今日はTNT火薬換算で1キログラムくらいに抑えるつもりなので、前のクォーク・エクスプロージョンに比べれば蝋燭の炎くらいに小規模になる。右手の平を標的に向けて火属性魔法を発動した。
「フューエル・エアー・エクスプロージョン!!」
頭の中では(小)とか後ろに付けて発動したと思っていたが失敗した。可燃性ガスと酸素を混ぜた事によって瞬間的な燃焼が起きて威力が増大したようだ。青い光を撒き散らした後に爆炎が立ち上がり、的だけでなくて地面の一部を吹き飛ばしながら周囲に轟音が鳴り響いた。
ドドォォォォンッ!! パラパラパラ…………
「「「「「…うぉぉぉぉっ!!…」」」」」
「「「「…キャァァァァ!!…」」」」
『『『『『おおっ!』』』』』
結界を張っていて良かった。地面の破片が高速で飛んできたので当たったら怪我をしていたかも知れない。また地面が抉れてクレーター状になってしまった。的なんて跡形もなく吹っ飛んだだろう。教師を見ると怯えながら合格をくれたけれど、クレーターの後始末をさせられたのだけは腑に落ちなかった。
次回の話は2025年5月10日(土)の19時になります。
蒼汰君が拉致されてしまいました……。
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