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神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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062話 オークション開催

 マギウスジェム領の領星アヌルスでのメリディム大陸の東海岸の入り江で、皇女殿下アーラ・フィリアレギス・サークルムを狙った宙族による暗殺未遂事件は大々的に報道される事になった。

 魔石伯ことサピュルス・コミティス・マギウスジェム伯爵は皇女殿下と連名で、サークルム帝国の内宮省(ないぐうしょう)法務省(ほうむしょう)軍務省(ぐんむしょう)宛てに事件の真相を究明するように抗議文を送りつけた。これは暗殺未遂事件だけではなく領政を脅かす越境(えっきょう)による侵略(しんりゃく)行為も含まれており、領都カストルムも衛星軌道上からの落下物の投擲(とうてき)によって攻撃された件についても付け加えられた。

 このニュースはマギウスジェム領の領都で、まもなく開催されるオークションと共に帝国中で注目される事になった。


 俺は海水浴とシーフード・バーベキューのバカンスを邪魔されたので怒っていた。魔石伯の城の迎賓館の会議室の1つを借り切って、皇妃殿下の悪事の足跡の資料をアルグラとミネルヴァで山積みにしていた。皇妃殿下の実家の侯爵家についても酷かったので追加した。アカシック・レコードをフル活用である。

 資料作成が一段落したので、辛いけれど母には見せて置きたい資料があったので母を呼んだ。


「これが母さんの母親で、こっちが兄で、これは叔父だから現皇帝の弟の資料ね」

「お母様とお兄様は確信していたけれど、叔父様もあの女の毒牙(どくが)にかかっていたの?」

「うん。調べていて反吐(へど)が出そうになった。辛いなら読まなくて良いよ」

「読むに決まっているでしょ。息子がアルティ……言えないね。信頼できる人から直接に真実を伝えられるなんて、普通はないからね」


 母はしばらく資料を読み(ふけ)るのに没頭する。一巡したのか最後にもう一度、母親達の資料を手に取ると嗚咽(おえつ)を漏らし出した。


「ううっ……こんなのってないよね……」


 俺はそっと母の後ろに回って肩を抱きしめてやり頭を撫でた。


「お母様とお兄様があの女の毒牙にかかった時は、私は5歳で高熱が出ていたので神殿に預けられていたの。高熱が下がってから宮殿に帰る間際に、お母様とお兄様が神殿に運ばれて来たわ。とても苦しそうにしていたけれど話はできたの。最初は食中毒を疑っていたけれど神官の神聖魔法でも治らないので毒を疑って、もう一度、神聖魔法をしても回復しなかったわ。凄く苦しそうに死んでいったのを覚えている」


 毒は大まかに3系統あり、その違いを認識できていないと神聖魔法でも回復できないので、その時の神官は知らなかったと思われる。俺も狐の巣穴ダンジョンでの母と伯爵夫人の毒殺未遂事件の後に知った情報だ。あの時はミネルヴァが居て助けられて良かった……。

 母は俺が狐の巣穴ダンジョンでの毒治療の話をすると少し落ち着いたので、俺は椅子に戻って罰をどうするかを聞いてみた。


「これらの資料も政府に渡す? 嫌なら破棄しても良いよ」

「渡して頂戴。お父様に知らせないと動けないでしょうし」

「追加で神罰を与えることも出来るけれど、どうする?」

「あれ以上は必要ないわ。これからは社会的に罰を受けるべきよ。しかしあれだけ探した毒の在処(ありか)が後宮だったとは盲点ね。宮殿を探し回っても、見つからない訳だわ」


 皇妃殿下が毒殺に使った毒は後宮に隠してある。現在、後宮は閉鎖されていて、皇妃殿下が皇妃になる前に使っていた建物に魔紋で入れる隠し部屋があって、そこに隠してあるようだ。俺が世界樹との契約を破棄させたので、隠し部屋に入れないので今でも処分はされていないようだ。

 母が魔紋について質問して来た。


「魔紋で入れる隠し部屋って事は、もう誰も入れないじゃない。壊して突入しようとすると内部が破壊されるはずよ」

「じゃ~ん! そこはアーティファクトを玄武から借りて来たよ! これで世界樹との契約を破棄した者の魔紋を再現できる」

「用意が周到過ぎてビックリね! 私の息子で良かったわ」


 俺は玄武から借りて来た鍵型のアーティファクトを、収納から出して母に見せた。

 母との話は終わったので、父に引き取ってもらって慰めてもらう事にした。

 次は魔石伯を呼んで、衛星軌道上からの落下物の投擲によって攻撃された件の資料を見てもらう事にする。


「皇妃殿下は用意周到であるな」


 資料を見終わった魔石伯は溜息を吐いた。総数九十三隻の宇宙船で六百五十二人の宙族を使って事件を起こしたのだ。落下物の件は事実のままだと都合が悪いので口裏合わせが必要なので、魔石伯と感覚共有して落下物の時の映像を見せた。


「それで落下物の件だけれど、そのまま資料として出すのは不味いので、伯爵の領軍で対処した事にして欲しい」

「あの着せ替え人形達が凄まじい戦闘力ではないか! 生身で空を飛んで宇宙まで上がるとか誰も信じぬだろうし、それで良いのではないか?」

「俺と母さんとマレ婆が、この星に辿り着く少し前に宙族に襲われたのね。それも領軍で対処した事にしたい」

「それも構わん。白虎様が宙族を皆殺しにした奴であろう? 打ち捨てられていた船は領軍で回収したのだし問題ないだろう。ただ落下物の件の生け捕りにした宙族はどうするのだ?」

「宙族はこんな様に暗黒魔法で思い込ませた!」


 俺は魔石伯が二刀流で、宙族を次々と戦闘不能に陥れて行く特撮のような映像を見せた。魔石伯は気に入ったのか尻尾を大きく振り出した。


「良いではないか! 私が活躍しているのが素晴らしい!」


 おだてたワンコは尻尾を振るんだね!


 オークション開催前日、領都が攻撃されたので参加者が少なくなると予想していたが、領都に人が溢れかえる事態になった。宇宙港は拡張したにも関わらず一杯になったので、母の船や伯爵家の船は一時的に領軍団本部の発着場に退避させた。迎賓館も貴族達で埋まったので、領主館の俺達の客室を明け渡して母の船に一時的に滞在する事になった。商業区の宿泊施設も増やしていたが埋まったので、闘技場の経営者アデトに聞いた所、貧民街の宿泊施設も埋まっているようだ。

 俺は母の船の部屋で、ツインテールフォックスの敷物を広げて、その上で父達と寛いでいた。


「父さん、貧民街の宿屋あったじゃない?」

「ありましたね」

「その安宿の雇われ経営者は覚えている?」

「確か闘技場の経営者になりましたよね」

「うん。アデトにギルドカードのメッセージで聞いてみたら、貧民街の宿泊施設も埋まっているみたい」

「凄いですね! 私が泊まっていた時はガラガラでしたよ」

「オークションの開催で人が集まったからね」

「その当事者が私の腹の上に頭を乗せて寛いでいますが、良いのですか?」

「もう出品物は預けたし、俺の手は離れたよ」


 剣聖と婆は近くで分身ルキウスと戯れているし、母は父を膝枕している。

 寛いでいたと思ったら、部屋の扉がノックされた。


「ソータ様に伯爵が会いたいと言っていますが、如何なさいますか?」


 エルフのフロースが来客を告げた。特に断る理由もないので俺は了承する。


「どうぞ……うわっ!」


 魔石伯は俺が了承した瞬間に部屋に飛び込んできて、俺に伸し掛かって来て舌で頬をペロペロしてきた。


「ちょっと伯爵。また何かあったの? 来客対応で忙しいんじゃ?」

「しょ、食料が足りぬのじゃ……」


 魔石伯に聞いた所、城内に人が増えすぎて食料が足りないらしい。懇意にしている業者に在庫がなく、急遽、市場に買いに向かわせると便乗値上げで相場の5倍くらいになっていたそうだ。


「俺、オークションの資料で食料の確保と、便乗値上げ対策するべきだって書いていたはずだけれど? 説明もしたし……」

「今、思い出したのだ……」


 駄目なワンコは可愛らしいけれど、城内の人を飢えさせる訳にもいかないので、解決策を提示してあげた。


「ミーティスに領都で消費される数ヵ月分の食料を渡してあるよ。ウルスメル商会から仕入れさせるよ」


 俺はミネルヴァに言ってミーティスにメッセージを送ってもらった。魔石伯の顎をモフモフしながら、やって欲しい事を伝えた。


「後は領軍使って通達を出して、便乗値上げを止めるように指導しないと。同時にウルスメル商会なら値上げ前の価格で買えると宣伝すると効果高いよ」

「それは良い案なのだ! 早速、通達してく……いた、痛いぞ!」


 俺は立ち上がろうとした魔石伯の耳を掴んで引き留めた。


「何か忘れているよね?」

「お礼は大事じゃぞ、ワンコ」


 剣聖が正論で魔石伯を正した。


「ソータよ。ありがとうなのだ!」

「どうも致しまして。来客対応、頑張ってね」


 魔石伯が出て行くと、俺は明日の打ち合わせをする事にした。


「父さんと爺には新しく作った鎧を着てロビーで魔法金属の宣伝して貰うね」

「「了解」」

「母さんはまだ完全に安全じゃないから、イージス・ペンダントを持っている人以外に有効な認識阻害かけるね。伯爵夫人と婆と一緒に化粧品セットとかの宣伝をロビーでよろしく」

「「はい」」



 オークション当日は晴れて良い天気だった。商業区のギルドの建物が集中している中央に巨大な建物があって、ギルド会館と呼ばれている講堂がある集会場でオークションを行うようだ。

 外では冒険者ギルドから派遣された警備員が警備しながら、ドラゴンの骨が2匹分を展示してあって人垣が出来ていた。更にオークションのお祭り騒ぎに便乗してウルスメル商会の屋台がいくつか出店していたので、ミーティスに挨拶した。


「ミーティス、繁盛している?」

「ソータ殿! とても繁盛していますね」


 屋台はハンバーガーや焼肉、ドーナツやクッキーにジュースとお酒も販売していた。列も出来ていて冒険者ギルドから派遣された整理員が誘導している。


「モーリスはどうしたの?」

「今日は悪阻(つわり)が酷いので休ませました。アーラ様と伯爵夫人は大丈夫ですか?」

「2人は元気だね。時々に酸っぱい物を強請られるから、これを作って渡してある」


 俺は収納から黒糖黒酢(くろず)飴を取り出してミーティスに渡した。ミーティスは袋から1つ取り出して舐めて見た。


「あー、これ甘酸っぱくて良いですね。モーリスも酸っぱい物を欲しがるので頂けますか?」

「もちろん、持って行ってね。妊婦に必要な栄養素もたっぷりだから母体にもお腹の赤子にも良いんだよ」


 ロビーに入って行くと、いくつかの人が集まっているグループがあり、女性陣が集まっているグループを見てみた。母と婆と伯爵夫人が化粧品セットと鏡の宣伝をしてくれていた。


「この化粧品は今回のオークションに出品されますの?」

「ええ。百セットなので数は少ないですが出品されますよ」

「この鏡は素晴らしいですわね! もう1人の自分が居るようですわ」

「今回は世界樹銀の枝で作成した、このような杖も出品されますわよ」

「「「「「…まあっ!…」」」」」


 今回は化粧品セットと手鏡と姿見鏡を百ずつ出品した。手鏡と姿見鏡は割れないように透明部分をテクタイトで薄くコーティングしてあり、反射する部分はミスリルを真空蒸着して作り込んでいる。枠は世界樹の銀の枝製で、装飾も(つた)に小さな魔石が実っているようなデザインにしてあって高級感を出した。母と婆と伯爵夫人は、この手鏡と姿見鏡が宣伝する報酬になっている。

 世界樹銀の枝の杖は十本を出品した。これだけ世界樹の枝を使うと作っている途中でなくなったので、玄武と打ち合わせてアルティウスが来ると神殿がライトアップされたり鐘が鳴ったりするギミックを止めて、認識阻害をして忍び込んで何本か貰って来た感じだ。

 次は主にドワーフが多く集まっているグループに向かうと、父が全身鎧で剣聖が略式鎧に身を包んで魔法金属の宣伝をしてくれていた。


「こ、この剣と盾は出品されるのかね?」

「これは売り物ではありませんね」

「おおっ! オリハルコン製の両手剣グラムクルッジを間近で見られるとは!」

「こいつは売り物でないからの。触るでないぞ」


 2人は調子に乗って剣舞を始めてしまった。狭い場所で器用に剣舞を舞っているので、沢山の観客が集まって来た。2人への報酬は超硬合金アダマンタイト製の投げナイフを十本ずつだ。試させた所、城の内側の塀が崩れてしまったので、魔石伯に怒られてしまった。投げナイフが超音速で飛んでいくのを失念していたからだ。

 少し離れた所に貴金属四兄弟の長男プラティウムが自分の店を宣伝しつつ、魔法金属と改良魔石炉の宣伝をしてくれていた。宣伝の報酬はスピリタスを4樽で、報酬とは別に二十樽を追加で売ってくれと要求された。前にも結構な量を渡したけれど、もう飲んでしまったのか……。


「この魔石炉でないとマギウスチタン、ドラゴニアは溶けないだべ」

「このハサミと研石も付いてくるのか?」

「そうだべ。高温になるので、そのハサミじゃないと取り出せないだべ。それからマギウスチタン、ドラゴニアは硬すぎて、この研石じゃないと削れないだべ」

「魔法金属はどれだけ出品されるんだ?」

「この重さのインゴットか袋で、ミスリルが三百本、魔鉄とヒヒイロカネが五百本ずつ、マギウスチタンとアダマンタイトが百本ずつ、ドラゴニアが五十袋だべ」

「「「「「…おおっ!…」」」」」


 インゴットと袋の重さは1キログラムにした。完全に俺の都合で決めてある。

 この他にドラゴンの鱗と肉と魔石以外の素材が2匹分、レビタス車3台分くらい入って重量軽減で時間遅延の効果がある魔法鞄が百個、ギルドカードのアーティファクトは百台を出品した。


 ギルド会館の講堂でオークションが始まった。俺達は舞台横の出品者席に案内されて見守る事になった。

 まずは化粧品セットのバラ売りからで、大白金貨はボリ過ぎなので開始値は大金貨1枚から始まる。バラ売りを二十回やってから、その後に十セット単位に移るようだ。


「大金貨5枚が入りました! さあ、他にはいらっしゃいませんか?」

「大金貨6枚!」

「他に…いらっしゃいませんね……。それでは大金貨6枚で落札です!」

「「「「「「「「「「…おおっ!…」」」」」」」」」」


 ドレスで着飾っている貴婦人の付き人が、大金貨6枚で声を上げて決まった。たかが化粧品セットに大金貨六枚とか笑いが止まらない!

 母が近寄って来て原因を教えてくれた。


「入れ物のデザインを凝ったのが原因よ」

「え? 流石に売り物だから、無骨なデザインだと悪いと思って頑張ったんだよ」

「あんな奇麗なデザインの容器は他にないのよ。容器だけ売って欲しいって人も居たわ。私達にもあのデザインの容器で寄こしなさいね」

「うへぇ! そう来たか!」


 母とか婆とか伯爵夫人の容器は売り物でないので無骨なデザインだった。今回に出品した物には全体的に雪の結晶がデザインされていて、美白をイメージして奇麗目なデザインにまとめたのだ。容器の形も凝ったので、確かにこちらの銀河では斬新に見えるかも知れない。

 化粧品セットが終わって次は鏡だ。手鏡のバラ売りの開始値は大金貨3枚から始まる。


「大金貨十三枚が入りました! さあ、他にはいらっしゃいませんか?」

「大金貨十五枚!」

「他にいらっしゃい……」

「大金貨二十枚!」

「他に…いらっしゃいませんね……。それでは大金貨二十枚で落札です!」

「「「「「「「「「「…おおっ!…」」」」」」」」」」


 手鏡が大金貨二十枚で、姿見鏡は大金貨五十枚の値が付いた。父と剣聖が横で茫然として口をハクハクとさせていた。


「手鏡が私の給金1ヵ月分……」

「儂は孫に養ってもらうかのう……」

「次は待望のドラゴン素材だから2人にもお金を渡せるよ」

「「そうだった!」」


 ドラゴン素材が2匹分で1匹は俺の取り分で、もう1匹は父と剣聖で山分けになる。鱗は2匹共にドラゴニアの原料にして、肉は食べてしまった。魔石は使い道があるので俺の買い取りで、それ以外の素材を出品した。ドラゴン素材は部位数が多いので、途中で飽きてしまい用足しに行ったりしていた。その時に収納から新ナノ・ゴーレム薬を父にかけておく。父は不思議な顔をしていたが、身を守るためには必要な事だ。

 父が頑張って落札金額をメモしていたようなので、表にして税金を引き、取り分を計算してギルドカードで1人辺り大白金貨十五枚と小白金貨4枚を2人に渡して、受け取りのサインをしてもらった。

 突如、父が俺の脇を掴んで持ち上げようとしたので、ミネルヴァに止めさせた。


『ミネルヴァ!』

『もうしました。マスター』

「あ、身体が動かない……」

「俺の事、身体強化して投げようとしていたでしょ?」

「無意識ですね。すみません……」


 ルキウスの身体能力なら平気だが地球人の俺は最悪だと死んでしまうので、新ナノ・ゴーレム薬で父の狂喜時の行動に防止策をしていて良かった……と思っていたら、今度は剣聖に抱きつかれてキスの嵐を受けた。髭がくすぐったいので止めて欲しい所である。


「ソータ殿! ソータ殿!」


 大金を受け取ってはしゃいでいるのだが、外から見るとどう見ても剣聖と剣聖の息子に求愛されているように見える。それを見た会場がざわついたが、オークション進行役の冒険者ギルド長エレガンターはハンドベルを鳴らして静粛にさせて、次の出品物に移る事にしたようだ。後で怒られそうな気がする……。


「次は少し変則的な出品になります。改良魔石炉にはハサミと砥石セットが付いて来て、この改良魔石炉を落札した方でないと加工できないので、マギウスチタン、ドラゴニアの素材は改良魔石炉を落札した方が入札可能になります。十基あって小白金貨5枚からです」

「小白金貨5枚!」

「小白金貨7枚!」

「小白金貨9枚!」

「小白金貨9枚が入りました! さあ、他にはいらっしゃいませんか?」

「大白金貨1枚!!」

「他に…いらっしゃいませんね……。それでは大白金貨1枚で落札です!」

「「「「「「「「「「…おおっ!…」」」」」」」」」」


 次は改良魔石炉を落札した人たちでマギウスチタン1本が大金貨5枚、ドラゴニア1袋が小白金貨1枚で落札された。

 次はミスリル1本が大金貨2枚、魔鉄1本が小金貨6枚、ヒヒイロカネ1本が小金貨6枚、アダマンタイト1本が大金貨7枚で落札された。

 父と剣聖にはミスリルの取得とドラゴニアの材料のドラゴンの鱗取りを手伝ってもらったので、その分配金も渡すことにした。さっきの表に追記して税金を引き、取り分を計算してギルドカードで1人辺り大白金貨8枚と小白金貨8枚を2人に渡して、受け取りのサインをしてもらった。契約魔法で受け取りの書類を処理する。合計すると父と剣聖それぞれに渡した金額は、平民の平均年収の二百五十二年分になった。


「す、凄い金額ですね……」

「儂もこの桁の金額は初めて持ったぞ」

「まだ大物が残っているよ」

「私は目眩がして来ました……」


 父と剣聖は受け取った金額に驚愕し、母と婆は残りの出品物が気になるようだ。プラティウムが青い顔をしてやって来て、俺の腕を取った。


「ソータ様。改良してもらった魔石炉が、あんな高額になるとは思わなかっただべ。タダで改良してもらって良かっただべ?」

「貴金属四兄弟には色々と手伝ってもらっているからね。是非、そのまま受け取って欲しいね」

「ありがたいだべ! 儂らはソータ様に一生付いて行くだべ」

「大げさだな!」


 俺はプラティウムの髭をモフモフして、落ち着かせてから席に戻らせた。

 次は世界樹銀の杖だ。開始値は大白金貨1枚から始まる。


「大白金貨3枚が入りました! さあ、他にはいらっしゃいませんか?」

「大白金貨4枚!」

「他に…いらっしゃいませんね……。それでは大白金貨4枚で落札です!」

「「「「「「「「「「…おおおっ!…」」」」」」」」」」


 後で聞いた話だが、このオークションを見ていた鼠人で冒険者ギルドの教官グリは、世界樹銀の杖の落札金額を聞いた瞬間に気絶したらしい。まあ平民の平均年収の約四十二年分の品をタダで上げたからね!

 次は魔法鞄だ。開始値は大白金貨2枚から始まる。


「大白金貨5枚!」

「大白金貨6枚!」

「大白金貨6枚が入りました! さあ、他にはいらっしゃいませんか?」

「大白金貨7枚!!」

「他にいらっしゃい……」

「大白金貨8枚!!!」

「他に…いらっしゃいませんね……。それでは大白金貨8枚で落札です!」

「「「「「「「「「「…おおおおっ!…」」」」」」」」」」


 最後にギルドカードのアーティファクトだ。開始値は大白金貨5枚から始まる。


「大白金貨6枚!」

「大白金貨8枚!」

「大白金貨9枚!」

「大白金貨9枚が入りました! さあ、他にはいらっしゃいませんか?」

「大白金貨十枚!!」

「他にいらっしゃい……」

「大白金貨十一枚!!!」

「他にいらっ……」

「大白金貨十二枚!!!!」

「他に…いらっしゃいませんね……。それでは大白金貨十二枚で落札です!」

「「「「「「「「「「…おおおおおっ!!!!…」」」」」」」」」」


 会場内がどよめいて、しばらくは喧噪(けんそう)が止まずエレガンターはハンドベルを鳴らして、次の入札を続けた。ギルドカードのアーティファクトが百台終わると、エレガンターはオークションの終了を告げた。


「これにてオークションは終了しました! 落札者は右手側の係員の指示に従って下さい! その他の御来場の方は左手側の出口よりお帰り頂けます!」


 俺はオークションの感想を述べた。


「ギルドカードのアーティファクトは熱い勝負だったね」

「ほ、本当に…こ、国家予算ですね……」

「個人で稼げる金額ではないぞ」

「ソータさんは狙われそうだけれど、絶対に捕まらないしね!」

「私は夢を見ているのでしょうか……」


 父と剣聖は金額に驚き、母は不吉な予言をしたが捕まる気はないので無視し、婆は額を抱えていた。


ドサッ!


「貴方?」


 近くで何かが倒れる音がした方を見ると、魔石伯が口から舌を出しながら倒れていた。俺は即座に収納から新ナノ・ゴーレム薬を出して魔石伯にかけた。


『ミネルヴァ?』

『……興奮が許容量を超えたことによる失神です。頭のコブだけ治して置きます』

「興奮し過ぎた、ただの失神だって。入って来る税収に興奮し過ぎちゃったんじゃないかな」

「そうなのですね。ビックリしました」

「どれ、儂が担いでいこう」


 伯爵夫人は安心し、剣聖が仕方なしと言う感じで魔石伯を脇に抱えた。

 オークションは一波乱があったが無事に終わった。


 翌日にオークション来場者の波が宇宙港から去って行った後、入れ替わるようにもう一波乱が帝都からやって来た。夜に打ち上げパーティでもしようかと母の船から城に戻って居間で皆と話し合っていた所、ディスペンサーが震えながら突然に来客を告げる。


「こ、皇帝…へ、陛下が……い、いらっしゃい…ました……」


 魔石伯が、また倒れた……。

次回の話は翌日の19時になります。

爺が増えますね。


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