063話 偉い人が来襲
オークションが終わって一段落したと思ったら、帝都から皇帝陛下がやって来たようだ。魔石伯が気絶してしまったので気付け薬代わりに、白虎ソファーを収納から出したら飛び起きたので迎賓館で待つ事になるが、問題があったので母に聞いた。
「アルティウスの件があるから蒼汰は隠して、ルキウスはどうする? 母さん」
「爺、ルキウスの事でお父様と喧嘩しないかしら?」
母が剣聖をジト目で睨んだ。剣聖は首を傾げて返答する。
「何の事じゃ? 陛下と儂が争う事などなかろう」
「例えばルキウスを皇族にするって言われたら?」
「そんな事はさせん! ルキウスは家の子じゃ!」
剣聖が俺を後ろから抱き留めて、渡さない姿勢を取った。剣聖が皇帝陛下に逆らえるのか、俺には良く分からないけど、俺の意見は聞いてくれるのか聞いてみた。
「爺が家の子って言ってくれるのは嬉しいんだけれど、例えば俺が皇族になりたいって言っても反対するの?」
「そ、そんな事はないぞ。ルキウスの……ソータ殿の意志は尊重するぞ。ただ一緒に居られれば良いだけじゃ」
「母さん。俺が皇族になったとして爺と一緒に居られないの?」
「血の繋がりがあるのだから引き離されたりしないと思うけれど、そんなに四六時中に一緒に居たいなら、護衛騎士に任命してもらえば良いじゃない」
「護衛騎士って何?」
「皇族を身辺警護する役職よ」
「母さんは居ないの?」
「私は騎士でもあるし、護衛騎士は婆がそうなのよ」
「えっ?!」
「これでも結構、私は出来るのですよ」
マレ婆は腰の魔法鞄から片手剣を取り出して、剣舞の最初の動作を行った。父や剣聖のような力強さはないが、流れるような動きで熟練の動作を思わせた。そう言えば父と剣聖と一緒に母と婆は朝の鍛錬をしていた。運動不足の解消なのかなと思っていたが、本格的な騎士の鍛錬だったようだ。
「あ、婆の腰の鞄って魔法鞄だったんだね。白虎に修理とスペックアップしてもらおうか?」
「よろしいのですか?」
「もちろん! この前に言ってくれれば良かったのに」
「白虎様のお手を煩わせるのが恐縮で……」
俺は白虎を呼んで、婆の魔法鞄を修理とスペックアップしてもらった。宝箱経由で渡したら一瞬で終わったので時間停止して作業したようだ。四隅の補強と可動部分が新しくなっていて、鞄の表面に革でひまわりの模様が編み込まれていて可愛らしい感じに仕上がっていた。
『ありがとう白虎』
『剣聖の息子のもう一人も、魔法鞄を修理とスペックアップするので呼ぶが良い』
『え? 会った事ないけれど』
『まもなく会えるであろう』
『分かったよ』
意味深な言葉を残して白虎は去って行った。
取りあえず蒼汰は隠してルキウスだけ会う方針にして、蒼汰からルキウスになって母に抱きかかえられた。
俺達は迎賓館で待っていると2台のレビタス車がやって来る。剣聖に似た護衛と思われる男性が車外に出て扉を開けると、中から1人の男性が剣聖を呼びながら駆け寄って来た。扉を開けた男性が窘めるが聞いていなさそうだ。
「フォルティス!」
「陛下っ!」
剣聖に駆け寄って来たのが皇帝陛下のようで、豪華な衣装を身に纏っていて金髪碧眼の長髪で優しそうな雰囲気の男性だ。そうすると剣聖に似た赤髪黒眼の護衛と思われる男性が、剣聖の2番目の息子でウェルテクスのようだ。皇帝陛下の護衛騎士だと聞いている。
皇帝陛下は剣聖に抱きつくかと思われたが、途中で立ち止まって母の腕の中に納まっている俺をチラッと見てから剣聖の顔と何回か見比べると、母の元に来て問い質した。
「アーラ。その子はサピュルス卿の子供かね?」
「お父様。その前に用件を伺いましょうか」
「其方とサピュルス卿の抗議文の件で来たのだ。説明をして欲しい」
「では後ろのレビタス車の方々もどうぞ」
母に言われて皇帝陛下がウェルテクスに目配せをすると、2台目のレビタス車から3人が降りて来た。1人は知っているオケアヌスだった。オケアヌスは母に抱かれている俺を見て嬉しそうに手を振った。母は降りて来た3人を見て感心した。
「内宮大臣と法務大臣と、軍務大臣のオケアヌスが一緒とは用意が良いですね」
「其方の名前が入っていたのだ。無視できまい」
「今から見せる資料はギルドカードのアーティファクト百台をダンジョンの宝箱から引き当てた者が、アルティウスから神託を受けて宝箱で託された資料です。前に皇妃殿下を神罰した理由と、実家の侯爵家の罪が書かれています」
「何故、神殿ではなく一介の平民の冒険者にアルティウスが託すのかね」
「アルティウスの事情は良く分かりませんが想像するに、別の神託に示されたようにアルティウスは神殿の獣人治療拒否を快く思っていません。その影響ではないでしょうか? 内宮大臣」
「成程……」
内宮大臣の疑問に母が答えた。事前に資料の出し方を母と打ち合わせして置いて良かったよ。
「資料の信憑性を含めて、内容を見てから決めれば良いのではないですか?」
オケアヌスの意見に大臣2人が頷いたので、皇帝陛下一行を資料のある会議室に案内した。目録を渡された大臣2人は、その量に圧倒されたようだ。
「これだけの資料をアルティウスが用意してくれたとは前代未聞ですな」
「資料の精査に時間が欲しいです。陛下」
「構わぬ。余はアーラと話し合わなければならぬ」
「精査が終わりましたら、この会議室の扉前の騎士におっしゃって下さい。陛下は応接室にご案内します」
「頼む」
「オケアヌスもこっちよ」
「うわっ! 修羅場に私も巻き込むつもりですね、姫様」
「関係者なのだから、当たり前でしょう」
魔石伯が大臣達に告げてから皇帝陛下を応接室に案内した。皇帝陛下とウェルテクスは、母がオケアヌスを関係者として、応接室に移動させた意味が分からずに疑問の表情を浮かべた。
応接室に着くと皇帝陛下にソファーへ座ってもらい、母が対面に座る。ウェルテクスは皇帝陛下の後ろに立った。俺は母の膝の上に座らされ、伯爵夫婦は別の横のソファーに座りディスペンサーがその後ろに立った。父と婆とオケアヌスは俺の後ろに立っている。
「それで、その子は誰の子なのだ? アーラ」
「私の子よ」
「……誰との子なのだ?」
「ホリゾンよ」
「!!」
皇帝陛下は突然に立ち上がって母に近づくと、俺を奪って顔を近づけてマジマジと眺めだした。しばらく俺の顔を眺めて納得したのか、俺を抱きしめると宣言した。
「若い頃のフォルティスに良く似て居る! 宮殿に連れ帰るぞ!」
「駄目じゃ!」
剣聖が素早く身を乗り出してきて、俺の右手を掴んだ。皇帝陛下は俺の左手を掴んで、2人して俺を引っ張り合いだした。
「い、い、いたいよっ! は~な~し~て~……いい加減にしないか!!」
最初は大岡裁きのように、どちらかが放してくれると甘い考えだった。しかし腕が千切れるかと思う程に引っ張られて痛くて耐えられなかったので、スーパー・ルキウス君になって身体を光らして2人を振りほどき、重力魔法と運動魔法を併用して天井近くまで浮いてしまった。
「ルキウス、もう隠せないわよ」
母がやっぱりと言った顔で呆れたように呟いた。俺はハッとしてスーパー・ルキウス君を解除すると、冷静さを取り戻して母の胸に飛び込んだ。皇帝陛下とウェルテクスは驚愕の表情で固まっているので、見間違いと思わないかなと赤子の振りをする。
「ママ。爺達が虐めるの……」
「もう手遅れかと思います」
父の冷静な指摘に俺は観念して、母の隣に座り直して蒼汰に変身した。
「蒼汰に変身! 分身ルキウスを召喚! そして蒼汰とルキウスは同一人物だと神託!」
『ソータ様。了解しました』
「赤子が青年に!」
「なっ! 神託が!」
俺が蒼汰に変身すると、皇帝陛下とウェルテクスは驚愕の表情から困惑の表情に変わった。そして俺は分身ルキウスを母の膝上に出すと、世界樹の銀から神託を2人に降ろした。2人が跪こうとしたので俺は手で制した。皇帝陛下をソファーに座らせる。
「親族に畏まられたくないので、ソファーに座ってね。ウェル叔父さんも跪かないで」
ソファーに皇帝陛下が座るとオケアヌスを睨んだ。
「オケアヌスよ。其方は知って居ったのだな」
「口止めされていたので言えませんでした。まあ創造神様に止められているので、言おうとしても言えませんけれど」
オケアヌスは肩を竦めてボヤいた。
皇帝陛下とウェルテクスに俺とルキウスは魂が共通で肉体を使い分け出来るが精神は同一で、蒼汰は科学が発達していた地球生まれで高みに至ってアルティウスになって、創造神の要請でルキウスとして産まれた事を説明した。
皇帝陛下はアルティウスとしての俺の立ち位置を探った。
「創造神様にお会いできるなんて、ソータ様は高位のアルティウスなのであるか?」
「う~ん? アルティウスなら誰でも会え…ないのかな。でも俺が呼べば直ぐに来てくれるし、触ればモフフカだよ。会いたいなら呼ぼうか?」
「め、滅相もない!」
「眩しすぎて目が開けられないので呼ばないで下さい」
皇帝陛下は恐縮し、父は目潰しを食らった事を思い出して呼ぶのを拒否した。でもそろそろ理の言葉で俺がアルティウスだって抑止されそうと思ったら、創造神の念話が届いた。
『もうしたよ。ソータ』
「皇帝陛下とウェルテクスは創造神の理の言葉で、俺がアルティウスだって他に伝えられなくなったから」
皇帝陛下とウェルテクスは喉を詰まらせたように、俺がアルティウスだとしゃべれない動作を何回か繰り返した。
「爺と皇帝陛下が、俺を取り合う意味が分からないんだけれど?」
「ソータ様。皇帝陛下などと無粋な呼び方をしないでくれぬか。フォルティスと同じように爺と呼んで欲しい」
「爺が2人居るから困るね……。鑑定して見るか。鑑定!」
【名前:ウェントゥス・インペラートル・サークルム
性別:男
年齢:四十三歳
概要:ルキウスの母方の祖父でサークルム帝国の皇帝。
フォルティスを愛している】
「ブフッ! ちょっと創造神!」
『何? ソータ』
俺は鑑定の結果に耐えられずに吹いて創造神を呼んだ。感覚共有していないので他の者には見えないが、俺の目の前にフヨフヨと光の球が現れた。いきなり俺が創造神を呼んだので、前に目潰しをされた者は腕で目を覆い、それ以外の者は驚愕の表情で俺を見つめた。
『皇帝陛下を鑑定した概要の最後の部分は何よ?』
『ソータが欲しそうな情報が出て来るよ。私には何が見えているのか知らないけれど』
『……爺を愛しているって出ている』
『ああ。ウェントゥスはフォルティスが欲しくてアーラの母親を娶ったんだよ』
『どういう事?』
創造神の話では、当時はまだ剣聖でなかった若者と婆の夫婦は、アーラの母親の実家の伯爵家に仕えていたそうだ。そこで悲劇が起こった。伯爵家の領地でスタンピードが発生して都市結界が消失し成す術が無くなり剣聖の善戦も虚しく、アーラの母親と剣聖と婆は帝都に逃げ延びたそうだ。
伯爵家は領地毎に失ってしまったので後ろ盾が無くなって困っていた所、当時の皇子殿下で現皇帝が剣聖を見初めたが婆と結婚済みだったので、剣聖が臣下になる事を条件にアーラの母親を皇子殿下が娶った過去があるようだ。
皇帝陛下に取って自分の娘である母と、愛する人の息子である父が結ばれて、愛する人と血の繋がった共通の孫って溺愛案件な気がする。ルキウスの複雑な出自に俺は創造神を睨んだ。
『普通は有り得ないバランスを保ってルキウスが産まれたのは分かったけれど、ここまで複雑にする必要があったの?』
『ふふ。私が拘った訳ではなくて、必然が実を結んだだけだよ。このルートでしか宇宙を救えなかったからね』
『そう言う事にして置くよ。あとでモフモフしに行くから』
『楽しみにしているね!』
創造神が消えたので、俺は溜息を付いた。皇帝陛下を見て俺は言った。
「ウェン爺。そう呼ばせてもらうよ」
「おおっ! 何と良い響きだろうか」
「ぐぬぬぬ……爺は儂1人で良いのに」
俺は皇帝陛下の横に移動して、手を取ってお強請りする表情を浮かべた。
「ウェン爺は俺の事を孫って認めてくれるの?」
「アーラが自分の子であると言っておるし、あの容姿は紛れもなくフォルティスの血族に違いない!」
「じゃあ父さんを俺の父親だって認めてくれるの?」
「もちろんだ」
「それでね。俺達、特に母が狙われて襲われたのね」
「そうらしいな」
「帝都って安全なの?」
「そ、それは……」
「安全なら俺、行ってみたいけれど、今は怖いよね」
「そ、そうであるな」
「安全にするには、どのくらいかかるの?」
「皇妃を廃するのは時間がかかる。少なくとも2~3年は欲しい」
「それならそれまで、こちらで母さん達と過ごして良い? 伯爵も良いよね?」
「わ、私の所にはいつまで居てくれても良い……と言うか、ずっと居て欲しい」
突然に話を振られた魔石伯は断言してくれた。皇帝陛下は逡巡するも、帝都の危険度と愛しい孫の頼みに悩ましい表情を見せたが決断したようだ。
「それで構わぬが、こちらでの安全も確保したい」
「母さんが危ないから爺を寄こしたんでしょ?」
「その通りだ」
「皇族に護衛騎士って1人って決まっているの?」
「筆頭を1人選んで、その下に何人か付けるのが普通だ」
「母さんの筆頭って婆なの?」
「そうよ」
母が答えてくれた。狐の巣穴ダンジョンの時のように婆が連れ添えない時もあるので、母の安全に爺の代わりに父を任命して貰おう。
「母さんの護衛騎士に父さんを加えてもらって良い?」
「ホリゾンであるか……」
「ドラゴンスレイヤーで剣聖の技が使えるから凄いよ」
「そのように聞いておるが、誠であるか?」
「俺がこの目で見たって言っても信じてくれない?」
「いや、アルティ……言えんな。私の孫の言葉であれば信じよう。ホリゾンをアーラの護衛騎士に任ずる!」
「謹んでお受け致します」
父が胸に手を当てて騎士の礼をした。
「ルキウスには護衛騎士は必要ない?」
「そ、それは……」
「ウェン爺が嫌じゃなかったら、爺を筆頭の護衛騎士にしてもらって良い?」
「そ、それはっ!!」
「ウェン爺は爺が好きなんでしょ?」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
「そ、そうだな」
「孫を好きな人に預けるのは駄目なの?」
「フォルティスは手元に置いておきたいのだ……」
「長期任務の時はどうしていたの?」
「時々に会いに来させたりしていた」
「今回もそれじゃ駄目かな?」
「儂はそれで構わぬ」
剣聖は了承してくれた。
「ウェン爺が会いに来ても良いよね? 伯爵」
「も、もちろんいつでも歓迎致します」
魔石伯の尻尾が萎れたので、歓迎している訳ではなさそうだった。今回はワンコには犠牲になって貰おう!
「あい分かった! フォルティスをアーラの警護任務から解き、ルキウスの筆頭護衛騎士に任ずる!」
「謹んでお受け致します!」
剣聖が満面の笑みで、胸に手を当てて騎士の礼をした。皇帝陛下も安堵の表情を浮かべると、爆弾発言をした。
「これで皇太子も決まりであるな! ルキウスを皇太子に……」
「それは駄目!!」
俺は悲鳴のような声で皇帝陛下に駄目出しをした。ルキウスに転生したのは目的があって、第2のマギウス・テンペスタスを防止する事と、世界樹の真祖を見つけて宇宙船を建造し、マギウスマテリア銀河の封鎖を解いて故郷の地球に一度は帰りたいと伝えた。
皇帝陛下はマギウスマテリア銀河の現状に疑問を投げた。
「やはりこのマギウスマテリア銀河は封鎖されておるのか?」
「うん。創造神にそう聞いたよ。第2のマギウス・テンペスタスを引き起こす可能性があるので、他の銀河に影響が出ないように理の言葉で隔離してあるって」
「銀河の外延部より外へ出られないので、昔から何かあると言われておったが、そのような理由があるのだな。皇太子の件は仕方がないが諦めよう」
「ありがとう、ウェン爺。でも諦めなくても良いかも。母さんのお腹に子供が出来たんだよ」
「それは誠か!!」
「!!」
皇帝陛下とウェルテクスは驚いたようだ。母がお腹を擦りながら皇帝陛下に言った。
「ええそうよ。まだ男の子か女の子かは分からないけれど、ソータさんの言う通りなら男の子でしょうね」
俺は剣聖遺伝子の説明をして、剣聖一家は男の子が生まれる確率が高い事を伝えた。皇帝陛下は感極まったのか、少し涙目になって父に感謝を述べた。
「これで帝国は救われた。皇族が少なすぎて断絶の危機だったが、まさかこのような形で救われるとは夢にも思わなかった。ホリゾンよ、感謝する」
「勿体ないお言葉です」
普通ならば娘に何てことしてくれるんだと怒られるシーンだと思うが、父は拍子抜けしたようで頭を掻いていた。皇妃殿下の廃妃も決まったし、職業不詳の父が職に付けたし、爺2人の争いも防げたし、俺の目的の擦り合わせも済んだし、全てが良い方向に収まって良かった。
俺は白虎に言われていた事を思い出す。ウェルテクスが持っている魔法鞄の修理とスペックアップを申し出て速攻で作業してもらった。
『会えたであろう?』
『そうだね。鞄、ありがとう』
皇帝陛下とウェルテクスは原初の海とのやり取りがスムーズ過ぎて驚いていた。普通は神殿で儀式をして神託を受けてからダンジョンに行って、宝箱から下賜って流れだからね。
俺の眷属を2人に紹介する。
「ソータの旦那の眷属で、錬金窯のアルケミア・グラールの愛称アルグラでやす!」
「マスター・ソータの眷属の元ダンジョン・コアで、今は精霊族のミネルヴァです。お見知りおきを」
しゃべる錬金窯と人型精霊に2人は驚いていた。その流れでイージス・ペンダントを2人に作って渡した。機能と注意点を説明する。ちなみにデザインを皇帝陛下は2本の世界樹に六芒星の帝国の紋章にして、ウェルテクスは渦巻にした。皇帝があっという間に出来たアーティファクトに驚き、ウェルテクスは性能に驚いていた。
「アーティファクトがこんなに簡単に……」
「凄い性能のペンダントですね……」
今まで控えめだったウェルテクスが俺に疑問を投げかけて来た。何か少し興奮しているような気がするのは何故だろうか?
「それでソータ様。ソータ様が作られる宇宙船は速いのですか?」
「え? 世界樹の真祖を動力源にして転移する船になる予定だから、他よりも移動は速いんじゃないかな」
「「「「「「「「「「「世界樹の真祖!!」」」」」」」」」」」
「そのような素晴らしい船を作る費用は、陛下にお強請りするのでしょうか?」
「え? それなりに稼いでいるからウェン爺には迷惑をかけるつもりはないけれど」
俺は収納からギルドカードを出してタップし、ギルド口座の残高を見てみた。オークションが終わって税金も払って落札代金が振り込まれたはずだ。皇帝陛下とウェルテクスは俺のギルドカードを覗き込んで目を剥いた。
「「大白金貨二千枚超え!!!」」
「やっぱり超えましたね。父上、支払って下さい」
「ぐぬぬぬぬ……まさか超えるとは思わんかった。仕方がない、ほれ」
父と剣聖はオークションの落札金額で賭け事をしていたようで、ギルドカードで掛け金の精算をした。今回は父が剣聖に勝ったようだ。
「そ、その船に乗せてもらえますか!」
「別に良いけれど」
「おおっ! ありがとうございます!」
「ウェル兄上。ソータ殿は地上でも速い乗り物を持っていますよ」
「なにっ!」
父がウェルテクスにレビタス・バイクの初号機なら、世界樹の影響を受けないのでスピードが出せると教えていた。乗り物が好きなのかな、ウェルテクスは。
折角なのでレビタス・バイクの試乗を、皇帝陛下とウェルテクスにしてもらう事になった。皇帝陛下は剣聖と一緒に参号機に乗って城内を周回した。とても楽しそうにしているので良かったと思う。
ウェルテクスは俺と一緒に初号機に乗って城内を周回する事にした。何周かしてコツを掴んだのかウェルテクスが操縦したいと言うので、俺は魔素供給に徹する事にした。
「と~~~~め~~~~て~~~~っ!!!!」
「フハハハハハハッ!! これは爽快ですね、ソータ様!!」
ウェルテクスはスピード狂だった。スピードメーターを見ると毎時二百キロメートル近くのスピードで城内の周回路を攻め続けた。もう付き合いきれないので三十周くらいしてからスタート地点で魔素供給を止めたので、初号機は呆れている皆の前で止まった。
俺はキッと父を睨んだ。
「父さん! 俺を嵌めたでしょ!」
「何の事でしょうか?」
父は惚けて知らない振りをしているが、ウェルテクスがスピード狂だと知っていたはずだ。
「父さんは3日間おやつ抜きね!」
「そ、それは酷くないですか!」
「これはソータ様が帝都に来る日が楽しみであるな!」
「私はルキウスが貴族院に通う時が不憫だと思うわ」
皇帝陛下が楽しそうに笑うが、母が不吉な事を言ったので気になって聞いてみた。
「何で? 母さん」
「私は婆が護衛騎士だったもの。皇族だって身分を隠して通えたけれど、ルキウスは爺と言うか剣聖が傍に付くのよ? 隠すのは無理ね。絶対に目立つと思うよ」
「あっ!」
そこまで考えていなかった! 俺は皇子って柄じゃないよなと思いながら、違う銀河の学園に思いを馳せた。
第1章 幼少期編 完結
第2章 貴族院編 続く……
次回の話は2025年3月8日(土)の19時になります。
次回から第2章に突入します。
蒼汰君が難しい魔法を覚えます。
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