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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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014話 ポーションは薬品ではなく健康飲料です[後半]

 普通は飲まない不味いポーションを、美味しくして健康飲料化しようと画策(かくさく)する。そうすれば薬を売っては駄目な法律を回避できるしね。

 冒険者ギルドで必要なくなった魔石を売って元手を稼いだ。俺と父と父の親友ミーティスの3人で分けても、1人当たり平民の月収半年分くらいになった。婆から貰った小遣いの残りもギルド口座に入金して、ギルドの会議室を借りる。後、受付のお姉さん経由でギルド長のアポイントメントを取り付けたら、「最優先で行きます」と返事を貰った。

 父経由でミーティスを呼んで貰ったら、上司の魔石伯は「行ってこい!」と激励(げきれい)してくれたらしい。ギルドには伝言サービスがあるようで、ギルドの窓口で頼むとギルドカードにメッセージを送れるようで便利だなと思った。ミーティスに魔石の代金の3分の1を渡したら、番になってと求婚されたけど断った。この世界の獣人、求婚が軽すぎて感覚が麻痺しそうなのが怖い。


 俺達3人は市場に出向いて、健康飲料の道具と素材を入手する事にした。


「おっちゃん、そのレモンと葡萄(ぶどう)を5箱ずつ買うからオマケして」

「5箱も買ってくれるのかい! もちろんオマケするよ」

「あ、その薬草の束もあるだけ欲しい」

「毎度!」


 俺はギルドカードで支払って、収納に計十箱の果物と大量の薬草の束を入れた。


「ポーションは高いのに素材は安いね。大体これで揃ったかな。冒険者ギルドに戻ろう」

「ソータ殿、市場の薬草を買い尽くした気がします」

「荷物持ちでもしようと思ったら、収納にあれだけ入るとか凄すぎる」


 冒険者ギルドに戻り、借りた調理場に向かうと1階にあって、今日買って来た品を机や床に並べた。まずは普通のポーションを作って見る事にした。薬草を乳鉢(にゅうばち)ですり潰してから布でこして、水属性の魔力で練るだけ。出来立てを計量(ます)で測ったら、薬草1につきポーション5本分くらいになる。父とミーティスにポーションを渡したら、自分の腕をナイフで切って試しだした。騎士怖いよ……。


「神殿で作っているポーションより効果が高いと思います」

「このポーションは欲しいですね」


 もしかして回復魔法の属性間違いと同じ事をポーション作りでもしている? 俺は最後の工程を光属性の魔力で練ってみた。薬草1につきポーション半分くらいになる。もう1回薬草を増やして同じ工程をして2本分のポーションを用意する。騎士2人が光属性ポーションを試すと、傷は全部が塞がらなかった。


「光属性だと効果も薄いね。回復」

「「ありがとうございます」」

「いつもの神殿のポーションの効果と同じくらいでした」


 薬箱が近くにあると無茶をするな騎士共……。まあ助かっているけど。


「もしかして神殿って光属性持ちしか居ない?」

「その可能性はありますね。神殿は孤児院も運営していますが、光属性持ちの子供は大人になると、神殿で優遇(ゆうぐう)されるようです」

「知り合いの子供が光属性持ちだと分かると、神官に熱心に神殿で働かないかと進められていましたね」

「この結果を神殿に伝えても何も変わらなそうだから次に進むか」


 俺は先ほど市場で買った紙束と羽根ペンとインク(つぼ)を、机に収納から出した。作りながら健康飲料の製法を記載するつもりだ。

 レモンを布で包んで、巨大な寸胴鍋(ずんどうなべ)の上で運動魔法を使って潰して果汁を貯める。本来の工程としては圧搾(あっさく)機等を使うように記載する。葡萄も同じようにして果汁にした。

 薬草をすり潰すのが面倒だったので、巨大な寸胴鍋に入れて蓋をし、鍋の中に運動魔法でミキサーの引きちぎるイメージを展開した。本来の工程としては石臼(いしうす)等を使うように記載する。

 後は水属性の魔力で練ると水属性ポーションができる。俺は鍋をしゃもじでかき回す行為に「ねるねる、ねるね……テーレッテレー」と言いながら完成させる。2人には「ポーションを作る呪文ですか?」と聞かれたので、美味しいポーションを作る呪文だと答えて置いた。何か凄く()に受けていたので、新しい呪文が誕生してしまったかも?

 これらの配合比率が分からなかったので、水属性ポーションと果汁と、熊獣人から貰った蜂蜜の比率を変えた物を数十種類作って見た。試飲する前に朱雀に身体を貸して、父とミーティスと共に味見して貰う。


「私は両方、こちらの果物のスッキリ感がある方が好きです」

「葡萄はこれが一番美味しい。レモンはこれが良いです」

「僕は両方、一番甘いこれ!」

「「僕?」」


 皆の好みが分かれるが、コストもあるので皆の中間よりも多少、果汁と蜂蜜の量を減らして薬草のハーブ感を残す配合比率が良さそうだ。朱雀に身体を返してもらって、配合比率を記載した。僕っ子の疑問は無視する。

 父とミーティスは、また自分の腕をナイフで切って完成品で試していた。飲んでもかけてもポーションとしての効果があり、光属性ポーションよりも回復効果が2倍と驚異(きょうい)的な性能になった。

 俺は8個の蛇口(じゃぐち)付きの樽の上部に、冷却する魔法陣を書いた。昨日、売らずに取って置いた大魔石を魔力電池として、それぞれにセットする。魔法陣の効果で1度魔石をセットすると、魔力が切れるまで外れないので安心だ。大学時代にあった話だが、掃除のおばちゃんが実験用冷蔵庫のコンセントを、間違って抜いてしまった事件は絶対に忘れない……。そして樽に先ほどの配合比率で健康飲料を流し込むと完成だ。


「完成した!」

「「おおっ!」」

「実はもう商品名は決めてあるんだけど良いよね?」

「ソータ殿が考えた物なので異論(いろん)はありません」

「同じく」

「アクアヴィータって名前で命の水って意味。蜂蜜レモンと蜂蜜葡萄味と併記するつもり」

「「おおっ!」」


 俺は樽に商品名と味を記載した。お遊びで熊が蜂蜜の壺を持っているマークを商品名の横に描くのも忘れなかった。俺は商品サンプルを残して、散らかしたものを収納した。疲れたので少し休憩がてらに、ミーティスに商会を始める意思があるか確認だ。皆で椅子に座ってから父に目配(めくば)せすると、了解したようで話し始めてくれた。


「ミーティス。まだ商売をやりたい気持ちはあるのか?」

「騎士も嫌いではないが、やりたかった事かと言うと、そうでもないのが悩ましいな」

「ソータ殿からなのだが、このアクアヴィータを作って売る商会を、ミーティスに任せたいと言ったらどうする?」

「……父上がなんと言うか次第かな」

「ミーティスとしてやりたいのか、やりたくないのか聞きたい」


 俺が話を引き継ぐ。ミーティスは迷いもせずに答えた。


「是非やりたいです!」

「じゃあ決まりだね。商会名はどうしようか?」

「ソータ殿が樽に描いた物をシンボルマークにして、名前はウルスメル商会でどうでしょうか? 熊の蜂蜜って意味になります」

「それいいね!」

「商品に合っていますね」

「じゃあ、ミーティスは魔石伯を呼んで貰えるかな。俺達はギルド長を呼んでくる」

「実は魔石伯は今、城に戻っているので、すぐに来られます。ソータ殿から話があるのではないかと予感がすると言って、領都防衛隊の本拠地から私と一緒に戻られました」

「感が鋭くて助かるね」


 俺達は1時間後に、2階の会議室で落ち合うことにして、その間に俺は書類を書き上げた。


 何か大事になって来た!

 俺と父が五十人くらいは余裕で会議できそうなスペースがある会議室で人待ちをしていると、冒険者ギルド長を筆頭に6つのギルド長の全てが集合してしまった。その中に前に怪我を治療した熊獣人の男が、所在(しょざい)なげに混じっていた。何で呼ばれたのか分かっていないようで、俺に近寄って来てモフモフしてくれと言ったので、遠慮なくモフモフしてあげた。そう言えば名前を聞いていなかったので、グロスと教えてもらった。食物系ダンジョンの探索を得意としているパーティのリーダーらしく、何それ詳しく後で聞きたいと約束する。

 更に待っていると魔石伯がミーティスに案内されて入って来た。付随(ふずい)して2人を(ともな)っているが、その内の1人はミーティスの父のようで牛獣人なのですぐに分かった。皆が席から立ち上がって魔石伯に片膝を跪いた。前に会った時はモフモフ直行コースだったのもあり、俺は慣れない身分社会の作法にオロオロしていると、ニコニコした魔石伯に手招(てまね)きされたので近づいた。


「皆の者、今日は貴族に対する礼儀は不要とするので楽にしてくれ」


 魔石伯の(つる)の一声に、皆が一息ついて立ち上がった。


「ソータ。面白い事を始めるそうだな。私にも一枚()ませてくれるのだろう?」

「伯爵のお力添(ちからぞ)えがあれば心強いです。ミーティスの事をお願いします」

「彼は良き人材だ。父の男爵には、ここに来るまでの間に話は通して来たので案ずる必要はない。そして神殿には昔から()()を飲まされてきたのだ。今日は雪辱(せつじょく)が晴らされる事を期待しておる」


 魔石伯は俺の肩をバシバシと叩いた。身体強化をしてなかったので、結構痛かった。

 俺が壇上(だんじょう)に上がると皆が席についた。


「本日はお集まり頂き、ありがとうございます。先日の領都の医療崩壊に尽力(じんりょく)させて頂きました、ソータと申します。

 本日は医療崩壊に陥った原因の1つであるポーション価格を(うれ)いて、新しい商品を発表させて頂きます。その名はアクアヴィータで命の水と言う意味になり、ポーションの効果を持った美味しい飲料です。

 飲んで美味しく、また従前のポーションのように身体にかけても回復効果が発揮されます。回復効果は従前の2倍です。まずはその商品サンプルを用意したので、ご賞味(しょうみ)下さい」


 俺が父に促すと魔石伯からサンプルを配りだす。魔石伯は自分の腕をナイフで切ってから、アクアヴィータを飲んだ。魔石伯も脳筋なのだろうか……。


「旨い! それにしても回復効果も凄いな」


 魔石伯が付けた腕の傷はすぐに塞がった。アクアヴィータの瓶の口を舌でペロペロして、名残惜(なごりお)しそうに後ろの部下らしき連れにジト目を向けると、部下のサンプルを(うば)うようにして飲んでしまった。

 俺は材料とか製法を簡単に説明して、蜂蜜を使っているので乳幼児は飲めないと注意してから、ドンとアクアヴィータの樽を目の前に収納から出した。収納から巨大な物が出て来たのを初めて見た面々は驚くが、そこは無視して話を進める。樽の冷却魔法陣の事や、樽で販売してポーション瓶に自分で()む事を伝える。合わせて1樽に200本分のアクアヴィータが入っているのも伝えると、会議場がざわついた。


「今日はあまり用意できなかったのですが、この樽を合計8樽用意しました。味が蜂蜜レモン4樽、蜂蜜葡萄が4樽の2種類あるので、半々が違う味になります。まずは冒険者ギルドに4樽、領軍に4樽をお譲りしたいのですが、ご購入の意思がありますでしょうか?」

「買うに決まっておるだろ。財務方どうだ?」

「価格次第ですが、これだけの量のポーションだと思えば購入しない手はありません」

「冒険者ギルドとしても願ったり叶ったりよ」


 魔石伯にアクアヴィータを奪われた人は、領の財務担当のようだ。


「値段は1樽で大金貨四十枚になり、ポーション瓶1本当たり大銀貨2枚となります」


 これは神殿が作る光属性ポーションの5分の1の価格である。


「絶対に購入して下さい、伯爵!」

「うちのギルドにも欲しい!」


 後半は悲鳴(ひめい)のような願いが聞こえたが無視して、先ほど出した樽を収納にしまって、商会の立ち上げ話を進める。


「皆様ご静粛(せいしゅく)に。今回は数に限りがあるので、一番に使用頻度(ひんど)の高い所に優先販売となります。続いてですが、このアクアヴィータを製造や販売を手掛ける商会ウルスメルの頭取(とうどり)にミーティスについて貰います」


 ミーティスが立ち上がって、右腕を胸の前で折り曲げてから頭を下げた。


「伯爵、よろしいでしょうか?」

「かまわん。我がマギウスジェム領が全面的に支援する事を、このサピュルスの名の下に誓おう。良いな? 男爵」

「はい。喜ばしい限りです」


 ミーティスのお父さんは渋々かと思ったら、少し嬉しそうだ。息子が認められて喜んでいるのかな。


「冒険者ギルドは蜂蜜の安定供給を担当させて貰うわ。こちらのグロスがリーダーのパーティは、蜂蜜取りの名人なの」

「魔法者ギルドは水属性魔法を扱える者を紹介させて頂きたい」

「工業者ギルドは生産設備なら任せて頂きたいです」

「農業者ギルドは薬草と果実の栽培と供給に貢献するつもりだ」

「航宙者ギルドは運送を任されたい」

「商業者ギルドは商売についての手助けが主だが一つ問題がある。特許契約には神殿の力がどうしても必要だが、この商売は神殿の既得権益(きとくけんえき)侵害(しんがい)しているので、神殿の反発(はんぱつ)が予想される」


 俺は製法特許に関わる書類を、机の上に収納から出す。


「ここに製法特許に関わる書類があります。今から製法特許を契約魔法で(しば)ります」


 俺は分かりやすいように書類に手の平を向けて、契約魔法の呪文を唱える事にした。まあパフォーマンスだね。


「我がアクアヴィータが知識の調べを害される事なきよう、高みに至ったアルティウスの※※※※(剣持蒼汰)に契約を願わん」


 机に置いた紙束が頭上からの光に照らされる。自分が書いた内容が自分の脳内にクローズアップされて、契約の承認を求められたのを感じた。普通は続けてアカシック・レコードで重複がないか精査(せいさ)するらしいが、すでに調査済みなので契約承認を続けて行った。


「アクアヴィータ#&&&&#※※※※#&&&&」

(アクアヴィータの契約履行を剣持蒼汰が承認する)


 承認すると机に置いた紙束が光出して宙に舞い、俺の頭上をクルクルと回った。しばらくすると舞った紙束が元の机に舞い降りた。パッと見で順番通りに戻ったので、並べ直さなくて良かったので嬉しい。自分が提出した書類に自分で判子を押したような気がするが、神殿に配慮する気もないので使える物は親でも使おう!


「神の名が聞き取れなかったと言うか、音として感じなかった。あと続けた言葉も同じだ。あれは何なのだ?」

「今の枚数の契約だと、神殿では大金貨八十枚は取られるのではないか?」

「契約魔法なんて司祭長以上でないと使えない神聖魔法だぞ! しかも契約の承認が一瞬だった。普通、最低3日はかかるのに」


 こんな判子を押すだけの単純なお仕事に、3日もかけるのか他のアルティウスは……。俺は契約魔法に使った紙束を収納にしまった。そう思っていたら会議室の扉がノックされたので向かって開けると、受付のお姉さんが神官服のような恰好(かっこう)をした男と一緒に会議室に入って来た。唐突に神官服の男は神殿長(しんでんちょう)の伝言を言い放つ。


「ソータと言う者に神殿長がお会いしたいそうだ。至急(しきゅう)、お越し願いたい」


 嵐の予感に俺はニヤリと笑った。

次回の話は翌日の19時になります。

次回は魔石伯の視点です。


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