21、ソロキャンパーの、異世界旅歩き。 ③
21話目です。
気づけば累計PVが3000超えていてびっくり。嬉しいです。
あと2~3話で第1章が終了予定です。
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――無意識下じゃないと干渉出来ないと言ったのは何だったのか。
「干渉というのは私の部屋に呼び出すことであって、そちら側に話しかけるのは私の定義において干渉ではありません」と意味のわからない屁理屈をこねる色ボケ女神様に、そういうのも含めて干渉って言うんですよ、と優しく言ったら「それはあなたの考えですよね?」等とどこかの掲示板創始者の様な事を言い返された。
で、めんどくさいので「今後は無意識下かつ重要な時のみ連絡してくれ」とお願いしたら、なんて言われたと思う?
「はい論破!」だって。意味が分からない、論破どころの話じゃない。。
なので「今後どうでもいい連絡したら手伝わない」って言っておいたさ。
「ちょっと!それは卑怯じゃないですか!?」なんて慌てていたので、返事をしないことにした。
ずっと煩かったけど1時間程すると諦めたのか「分かりました、今後は慎みます」と通信?を切ってくれた。正直助かった。
部屋に戻ると皆ぐっすり、でも頼むから服着てお休みになって!?お願いだから。
なんとも生殺しの一日だったなあ、とか寝床に入って考えていたらいつの間にか眠ってた。
ちょっとだけ期待していた夜の襲撃はなかった。――残念である。
船室の窓から差し込む朝日で目が覚める。皆も起きだしている様で、色んなところで毛布がモゾモゾ動いている。今日はマクサーンに上陸、シブカンまで一日半だからどこかで一泊になるとは思う。
大分南に行くことだし、今までと景色も変わってくるだろうから中々楽しみだ。
取り敢えず顔を洗いに行って来ようっと。
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皆で朝食をどうするかなんて話してるとマクサーンの港が見えて来た。
そこは同じ国の港町、トライアと雰囲気が似ていて、聞こえる朝の喧躁に少し気分が浮つく。
どちらの港も大きめの船着き場が二つと小舟が停泊出来る様な…、地球でいえばヨットハーバーの様な所があって、そこに数十艘は止めれるようになっている感じだ。
地中海、ギリシャ辺りの海辺の町に似てるかな。町全体が白壁で石造り、両方の街で違うのは屋根の色、トライアはオレンジだったけどこっちの町は全体的に青い屋根。
大きめの船着き場から1本の大きな石畳の坂道が続いていて、その両脇に市場だったりお店っぽいのが並んでる。ぶら下がる看板から察するに宿や食堂もそこそこあるみたいだ。
そういえばこの町の名前を聞いてなかった。
地理に詳しいと思われるリゼルさんに聞いてみるとこの町は『ダブラ』というらしい。
さすがだなと思っていると「乗船の時に航路の説明があったはずですが…」と言われてしまった。いかんね、これは反省。
船が接岸を始めたので自分達の馬車へ向かおうと「パックマック」の75リットルザックを背負う。高2の時に購入したのでもう3年の付き合いだ。
普通のザックは生地にコーティングして撥水機能を持たせるものが多いのだけど、このザックは水分で生地が収縮して水の浸入を防ぐ仕様なので、加水分解での劣化が気にならない優れ物。
タラちゃんが「無限収納に入れれば良いのじゃ」って言ってくれたけど、何となく断った。
75リットルパンパンに荷物を入れると結構重いのだけど、なんというか自分のアイデンティティの様なもので、背負ってないと背中がさびしくなる時があるのだ。
まあ今はエルダーが引く馬車の旅なんだけど、それでもね。それに食品は無限収納行きだし。
エルダーが引く馬車、ネルルク車でダブラに降りると、やはり注目の的になってしまう。
さすがに慣れたけどやっぱりちょっとは気恥ずかしさを感じるな。ちなみに今回も御者台は僕とタラちゃんだ。船から降りる前に朝食は屋台なんかで軽く済ませようって話になってたので、街道を冷やかしながらのんびり進む。
5人がめいめいに屋台を見に行っては食べ物を買ったり買わなかったりだ。
僕は肉の串焼きを2本と、お好み焼きっぽい何かを買ってきた。
アイーシャとタラちゃんは串焼きを5本も買ってた。朝からよく食べるな。
リゼルさんはタコスみたいな食べ物、レッドアイは、あ、これイカ焼きだ。
タラちゃん曰くエルダーは街を出たらボア肉を食べるらしい。
白壁が並ぶ街道をしばらく行くと街の囲いを抜けて、先の方にちょっとした丘が見える。そこまでは草原で、丘の向こうは薄い林になっているみたいだ。エルダーの並み足で丘まで目算30分位だろうか。丘まで行ったらエルダーのご飯にしようとタラちゃんがいう。
ふと甘い物が食べたくなって、チョコレートがあったのを思い出す。リゼルさんに御者台を代わって貰い、ザックをごそごそしてると中にいた二人がザックを覗いてくる。
「なに探してるんです?」
「あ、これは空間収納じゃないんだね」
「ちょっとチョコを捜してて、ちなみにこのザックは元の世界のだよ」
「「チョコって?」」
ザックから出した板チョコを三つに割って「食べてみる?」と2人に差し出す。
「まあ、甘いお菓子だよ」
『『チョコと聞こえたが!?』』
タラちゃんが御者台からコーチに顔を覗かせて聞いてくる。
「え?タラちゃんチョコ知ってるの?」
『『当り前じゃ!儂がこれまで何人のはぐれ人と出会ってきたと思っておるか!』』
確かにそうだ。そりゃチョコぐらい知っててもおかしくはないか。
「タラちゃん様はその『チョコ』を食べたことがあるんですかぁ?」
『『おう、あるある!それは中々に良いものじゃぞ!そうじゃユズルよ、チョコはどれだけあるんじゃ?』』
「えーと、板チョコがこれも入れて3枚ですかね」
『『さほど多くはないの。ならば丘で一服する時に儂にも少しくれるか?』』
「いいですよ」と返事を返すと。ほかの皆も丘まで我慢することにした様で、それならば、と一緒にコーヒーの準備もしておくことにした。
丘までの坂道を進むと段々と見晴らしが良くなって、左右どちらも海が見渡せるようになってきた。
後ろを振り返ればダブラの町がかなり下のほうに見える。登山をしている時の、あまり登っていない気がするのに、下を見ればその高度を実感するようなあの感じだ。
もう10分も進むと丘の頂上、取り合えずコーヒーブレイクだね!
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丘に着くとすぐに休憩の準備をして皆にコーヒーとチョコを配る。
ちょうど丘の上に木が一本生えていたので、その下で日差しを避けながら休憩することにしたのだ。
「へえ、これ美味しいね!」
レッドアイがチョコを齧りながら言う。
「本当に!この風味と甘さは癖になりそうですぅ!」
「確かに。これは癖になりそうですね」
『『じゃろ?儂も初めて食べたときは驚いたわ!しかもじゃ、これはオカカの実から作れるらしいぞ!?』』
オカカの実?あれかな?割ったらフリカケ見たいのが出てくるとか?
「あの苦いのから?信じられませんねぇ、あれは薬に使うものでは?」
『『わしもそう思ってたからの、聞いた時は驚いたのう』』
ああ、カカオの実の様なものがあるのかな?確か元々は薬としての利用だったはず。てことはカカオの実を見たことがあるような人がこの世界に来てたってことかな?そういうのを考えると中々に浪漫だよなあ。
地球に帰った人もいるだろうし、このダリアに骨を埋めた人もいるだろう。
僕はどうするかなあ、母は幼い頃に離婚してるし、父親ともいい関係とは言えないし…、ただなあ、やっぱり地球の生活は捨てがたいしなあ。
こないだも考えたけど、とりあえずは目の前にある問題を処理してからだな。うん。
死ななければ帰ることも出来る訳だしね。
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軽い休憩を終えてまた移動を始める。
薄い林の中に入ってしばらくすると水音が聞こえてきた。どうやら街道は川に沿う様に進んでいるようだ。
「川沿いで良さそうなところを見つけて、今日はそこに泊まりましょうか」
リゼルさんの提案に皆同意する形でうなずくと移動を続ける。
日が傾き始めたところで広めの河原が見つかった。馬車を停めても余裕がありそうなのでそこにサイトを設営することにする。
「お、滝がある」
河原の上流50メートル程にそこそこの滝があり、直下は淵のようになっている。
川の右岸、上流に向かって左には節の多い見慣れた植物。
これは…、篠竹だ。
今まで全く見なかったけどやっぱり竹もあったのか。でも、できればもう少し早く見つかって欲しかった。
「う~ん、釣り竿買った後で見つかるかあ」
まあしょうがないかと、滝へ向かう。
サイトの設営も終わってないけど、散歩がてら行ってみる。こういうのって何かワクワクするよね。
「おー!」
滝に着いてみると流れ落ちる水しぶきが心地よくて思わず声をもらす。
淵を覗いてみると結構な数の魚が泳いでいる。透明度が高い所為もあり、魚の姿ははっきり見えた。
これはちょっと竿を出したいなあと、サイトに釣竿を取りに行くことにした。
『『悩んでおる様じゃの?』』
ビックリしたビックリしたビックリしたビックリした!
振り向けばそこにタラちゃん。ホラー漫画か。昨日からこっち驚かされすぎだわ。
『『帰りたいのかの?』』
意外とよく見てるな…、さすがに年の功というやつか。
「…まあ、帰りたくないと言ったら嘘になりますけど、だからといって今の状況をほっぽって帰るというのはなんか……、それは駄目だろって感じなんですよね」
いきなり異世界に飛ばされて、その世界が脅かされている事を知って、なし崩し的に旅を始めて、挙句の果てには救世主扱い。しかもとびっきりの可愛い子に何故か惚れられているみたいだし。そりゃ悩むよねー、だって意味分かんないもん。でも。
「それでまあ、とりあえずは目の前にある問題をきちんと解決しようとさっき決めたんです」
『『ふむ』』
「召喚された理由も分かったし、帰るにしろここに留まるにしろ、やる事やらないとどうにもならないって分かったんで、ま、やってみようかな、と」
『『それで良いのかの?』』
「良いも悪いも、やっちゃわないと前に進めなさそうですしね」
『『クフッ、それは確かにその通りじゃの』』
「でしょ?」
『『うむ。……ならばわしはお主を鍛えるとするかの。力を付けなくてはならぬのじゃろう?』』
「え?」
『『え?ではないわ、そうじゃな、リヴィアスの元に着くころにはせめて今の三割増しを目指さぬとな!あ奴は絶対に喧嘩を売ってくるでの』』
「は?でも、明日にはシブカンに着く予定ですよ?どうやって?というか喧嘩売ってくるって?」
『『こうやって、じゃ』』
タラちゃん、いやタラスクの気配が膨れ上がる。
先日の『エスペラーザ』との戦いで見せた、半竜半人の姿をとったタラスクは口角を少しだけ上げながらユズルを見据える。
そして――。
『『では、ゆくぞ?』』
如何だったでしょうか?
第1章終了後、4日ほど空くかもしれません。




