19、ソロキャンパー、海を渡る。
19話目です。
一日投稿遅れてしまいました。ごめんなさい。
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今日の朝ごはんはなんと和食。
といっても、おにぎりとおかず1品だけどね。
朝起きてアイーシャと一悶着あった後、取り敢えず気持ちを落ち着かせようとご飯を炊きはじめたところに、リゼルさんが港の朝市から卵を買って来たのだ。なんでも「夜泣き鶏」という鳥の卵で、かなり美味しいというので買ってきたのだそう。
では卵焼きを作りましょうかねと、卵を一つ割って見た。青かった。黄身が。
想像してほしい。普通の卵なのに黄身が青い、黄身じゃなくて青身だ。
食欲湧く?僕は湧かない。それでもリゼルさんが執拗に奨めてくるので嫌々ながら卵焼きを作り始めると、青身が真っ赤になった。某クラシ○のお菓子みたいだなと思いながら、真っ赤な卵焼きを一口つまみ食い。
なにこれ、超美味いんですけど!この卵、出汁巻きなんかにしたら最高だろうなあ。
てことで手早くおにぎりを握って、卵焼き君レッドをおかずに朝ごはんと相成ったわけ。
本音を言えばもう1、2品おかずが欲しいところではある。
海苔に納豆、明太子、目刺しにシシャモ。シャケなんかもいいなあ……嗚呼。
『『ところでユズルよ』』
口の周りにいっぱいおべんと付けてタラちゃんが聞いてくる。
「なんです?…米粒いっぱい付いてますよ」
『『うむ?そうか…、昨日の事なんじゃがの』』
米粒を指先で摘まみながら話を進めて来る。
「昨日の事、僕が意識を失ってからの事ですか?…まだ付いてますよ」
手ぬぐいを渡しながら答える。
『『おお?すまんの。そうじゃ、あの後一体何があったのじゃ?』』
「そうそれ!昨日襲ってきた翼の生えた奴ら、あれってなんなんです?」
レッドアイが割り込んでくる。
「確かに。見ていた限りでは魔物には見えませんでしたが…」
リゼルさんも便乗してきた。
アイーシャはおにぎりと卵焼きを交互に食べていた。なんだかそういうロボットみたいだ。
『『うむ…、それはじゃの…』』
言い淀むタラちゃん。気持ちは分かるがもうここまできたら――。
「タラちゃん、もう話した方が……」
『『そうか…、そうじゃの…、その方が良いかもしれんの』』
「何の話でしょうか?」
『『うむ、はぐれ人の真実と役割についてじゃな』』
「「「はぐれ人の真実と役割?」」」
『『ん?アイーシャには初めて会った時に伝えた筈じゃがの?』』
「? そうでしたっけぇ?」
『『…はぐれ人の役割というのはじゃな…』』
タラちゃんはスルースキルを覚えた!スキルレベルが1上がった!
タラちゃんは話を続ける。はぐれ人の伝承は神代の者が世に混乱をきたさぬ様でっちあげたものである事。
数百年に一度、空からこの星を蹂躙しに来る者がいて、神と呼ばれている事。昨日の翼を生やした者達はその神々だという事。
その侵略行為を【神々の収穫】と呼んでおり、自分達神代の者とはぐれ人で何度も退けて来ていた事。その事実を長い間可能な限り隠してきた事。
ユズルも間違いなく【収穫】に対応する為に呼ばれている筈だが、今回はイレギュラー要素が強い為今後どうなるか読みづらい事等を淡々と話していく。
『『と、まあこんなものかの…、ユズルよ』』
続きを促す様にこちらを向くタラちゃんに頷く。
僕が話を継いでいく。僕が襲撃されて意識を失った後、本来のこの星の神に出会った事や、自分を召喚したのはその神様だった事。
また先程神々と呼ばれていた彼等は神ではなく所謂宇宙人だという事。
正式な手順での召喚では無かった為、はぐれ人としての力が不完全であった事。
まだ完全ではないが、一応不完全だった力は修正された事。
しかし、その力を完全にするにはユズル自身の底上げが必要で、タイムリミットは半年である事等だ。ちなみに神様が色ボケしている事は秘密にしておいた。
「とまあ、こんな感じですかね」
ここまで話して思い立つ。このまま皆で旅をしていけば、下手したら皆を死なせてしまうかもしれないし、勿論自分が死んでしまう可能性もある。出来るならば皆を死なせたくは無い。
――だから。
「これからは危険な旅になるかもしれません、下手したら死ぬ可能性もあります。だからここからはタラちゃんと二人で」
「なんとも衝撃的な話ですね…」
またもやリゼルさんが割り込んできた。でもまあ衝撃的な話だよな…。
「ね!まさかタラちゃんがあのタラスクだったなんて!もうビックリだよ!」
って、そこ!?気にするとこそこなの!?レッドアイさん!?
「それよりも私、幸せになれないのでしょうかぁ…、いやならいでか!!」
アイーシャもぶれないね!ホント!キャラはぶれてるけどな!!
「いやいや皆、ちゃんと考えて?死ぬかもしれないんだよ?」
と皆の方を向く。その目は皆キラキラと輝いている。
『『クフ、クフフ、クハハハハハハッ!ユズルよ!もう無理じゃ!諦めよ!!こ奴ら何があってもついてくる気でおるぞ!止めても無駄じゃ!クフ、クフフフ!』』
「ちょっと、タラちゃん」
『『無理じゃ!見よ!こ奴らの目を!ここで離れる気など更々無い目じゃ!期待と好奇心!こ奴らの目は期待と好奇心に満ち満ちておる!誰が止めれるものか!ユズルよ!儂は決めたぞ!この先何があろうとも儂とユズルでお主らを守ってみせよう!そう!なにがあろうともじゃ!!』』
「ちょっと、タラちゃん!勝手に決めないで……」
「いやですぅ!私もお手伝いします!回復魔法は得意ですから!それにここまで来て幸せを掴めないなんてあり得ません!冒険もしたいです!」
「私はアイーシャ様のお目付けですし、剣にはそこそこ自信がありますしね」
「あたしも!武器や防具のメンテは任せて!これでも1等スミスだしね!」
なんだこれ、少年マンガか、友情・努力・勝利か。
『『さてどうする?ユズルよ?』』
タラちゃんがニヤニヤしてる。
――ああもう!
「あーもう!分かりましたよ!一緒に行きましょう!そのかわり何があっても知りませんからね!」
「「「はーい!!!」」」
ほんとなんだこれ…、皆いい奴すぎるだろ、これ…。
…泣いてまうやろ。
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え?これ、船?え?船っていうか。
――フェリーじゃん、これ。
朝から一頻り青春した僕達はいよいよ海を渡る為トライアの船着き場に来たのだけど。
乗る予定の船が上半分は中世に見る様な帆船、下半分はいわゆるフェリーの様に開閉出来る様になっていてちょっとあっけに取られてしまったのだ。
不思議な形の船に困惑しつつも乗船料を払い、馬車もといネルルク車で乗船する。
この船は船倉が馬車、荷物、物資等を乗せる様になっており、そのまま下から3等、2等、1等船室になっている。今回は奮発して1等船室だ。なんと1部屋大金貨2枚!1泊2日でだ。
少々、というかかなりお高いがエルダーも一緒に泊まれるし、なんと言っても異世界初めての船旅!折角だしね!船室に貴重品を放りこみ、皆で甲板へ出る。
「おお!これは中々…、凄いな」
港町という事もあり交易が盛んなのだろう。人族を始め、色々な種族が甲板に溢れていたのだ。人族が多かった公都よりも異世界感が強く、思わず声を漏らしてしまった。人族の他に、魔族や獣人族、蛙みたいな顔の種族、エルフ、ドワーフ、様々でまさに人種の坩堝って感じ。
甲板を舳先に向かって進むと、数々の品物を敷きものに広げて行商を始めている人や、チェスのような盤上遊戯に興じている人達もいる。
その向こうにはエメラルドグリーンの大海原、甲板の端に行って下を覗いてみれば、とんでもない透明度。
ふと右に目を向けたら、島なのか地磯なのかは分からないがカッパドキアの奇岩群を数倍にして詰め込んだような陸地が見えて、その上を翼長10メートルはありそうな鳥が群れで飛んでいる。何とも異世界情緒ムンムンだ。
「あ、あの飛んでいるのが『夜泣き鳥』ですね」
……へ?
あの絶品卵焼きの元の元が、あのバカでかい鳥?え、マジで?卵とならべた時の縮尺おかしくない?異世界ェ。
後で聞いた話だけど、夜泣き鶏は一度に10~15の卵を産むらしい。
成程、それならばなんとか納得がいく。今度肉も手に入れてみたいな。
「ユズルさん!あっちの方で催しものやってるみたいですよぉ!行ってみましょう!」
アイーシャに手を引かれ船尾の方へ向かう。
何故か皆生暖かい笑顔で僕ら二人を見ている。リゼルさんに至っては絶賛サムズアップだ。
そこはかとなく陰謀の匂いを感じながら船尾に着くと、確かに何かやっている。
『トローリング体験』
そう書かれた看板の横で、如何にも海の男といった風体のおじさんが呼び込みしていた。
「さあさあ!お客さん方!折角の船旅だ!リケーア海の大物!釣り上げてみないかい!?」
しかし、中々お客さんは付かない様だ。だって一回銀貨3枚だもん、高いわ。
でもせっかくなので。
「おじさん、1回お願いします」
「おう!兄ちゃんやってくのか?ならそこに座りな!」
「ここでいいの?」
「おう!そこだっ!って、偉い別嬪さんばかり連れてんな!おい!羨ましいな兄ちゃん!」
「いやいやいや」
「何言ってんだ!折角だから姉ちゃん達にいいとこ見せなきゃな!」
「ハハハ」と苦笑しながら竿を受け取る。
でも釣り好きとしては頑張って大物釣り上げたいよね!海だしね!
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見ればユズル達は釣りなど始めた様だ。
「それにしても…」
タラスクは一人ごちる。
今回の召喚はおかしなことばかりだ。突然のユズルの召喚から始まり、兆候なしの襲撃。
本来の神の存在、挙句の果てはこの星を滅ぼしに来たじゃと?
流石のワシでも戸惑いを隠せぬ。
それにユズルのあの力――。
あれは異質だ。しかもとびきりの。本来はぐれ人の力はその本人に付帯するものであって、持ち物を介しての発動などある筈がないものだ。
セイは勿論のこと、シンベエやその他多くのはぐれ人と共に万を超す歳を重ねてきたが、今まで一度もその様な事は無かった。
その力自体の威力もおかしい。あの小童如きならまだ分かる。だがケルビムと言ったか、あ奴らあの光線には幾度も辛酸を舐めさせられてきた。それを一撃で断ち割り消し去るなど…、あり得ない。しかもそのまま強制帰還まで簡単に追い込んで見せた。
元来の持ち主であったシンベエにすら無理な所業だ。魔法にしても一撃でケルビムを戦闘不能直前まで追い込む威力、何よりあの魔法は見た事がない。
更に、更にだ、未だ完全に力は十全でないときた。完全に力が戻った時はどれほどの…。
「おお!来た!掛かった!てか重っ!なにこれ!おっも!」
む。ユズルの竿に何か掛かった様じゃの。
色々と考えさせられる事は多いが、今のところ突然の襲撃以外に問題は起こっていない様なものだ。
――ま、大丈夫じゃろ。
思わず口をついて出た言葉、その言葉が以前ユズルにかけた言葉と同じものだと気付いたタラスクは、苦い笑みを顔に浮かべると皆の元へと戻っていった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回はできれば明日投稿したいと思っていますが、予定は未定。




