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urban legend  作者: 子寝虎
10/15

堕ちた国の少女

  少女は闇の中で座っていた。

  決して光の届かない暗く瘴気に満ちた世界。

  「他者を信じる」なんて甘い考えは存在せず、ただ孤独の花を綺麗に咲かせるだけの世界。

  少女はそんな闇の中でただ座っていた。

  紅く染まっている手を洗おうともせず、さっきまで激しく動いていた無数の人形をに積み上げたを山の上に夜空に輝く三日月のような笑みを浮かべながらただ座っていた。


  彼女が信じているのは「愛すべき兄の言葉」と「己の言うことをよく聞く武器」のみだ。

  それは彼女が昔裏切られた経験があるわけでもなく、仲間に殺されかけた記憶があるわけでもない。ただ、闇がそうしているだけなのだ。

 

  「あはは、あはハハ、アハははハハ」


  彼女の気味の悪い笑い声が闇に響く。

 

  ゴロン。


  彼女の笑い声から逃げるように紅く染まった人形の頭部が山を転げ落ちていく。

 

  ギィイイイィイイィイイン。


  彼女の笑い声をかき消すかのように彼女の武器は哀しみの悲鳴をあげている。



  人間とは非常に不思議な存在だ。



  こんなに世界から外れた彼女にさえ魅力を感じ、己の欲望のいいなりにさせたいと思ってしまう。



  人間とは非常に不思議な存在だ。


  どんなに汚れた夢の存在だろうと彼女を自分の手で終わらせたい、近くに置いときたいと願ってしまう。


  まぁ、そういう感情を抱いたものがあの山の材料なのだが……。まさしくグズも積もれば何とやらだ。



  「あはは、あはハハ、アハははハハ」



  夜風が彼女の銀の髪を靡かせながら笑い声を吸い取っていく。


  「…………遊びは終わったかい?アリス」


  笑い声を響かせている彼女のもとにお面を被った1人の少年がぽつりと現れた。


  彼も欲望に取り憑かれた人形だろうか?


  いや、違う。


  彼は彼女なんかに魅力を感じたりしない。そもそも彼は人間そのものに魅力などこれっぽっちも感じたことがない。


  彼はただ彼女の才能のみに魅力を感じているのだ。決して銀髪の少女というレッテルに惹かれているわけではない。


  彼女の才能。それは人間を人間とみなしてないことだ。彼女にとって人間は玩具、道具、暇潰しのアイテムでしかないのだ。

  もちろん人間はたくさん存在しているから飽きたら捨てればいい。壊れたってまた新しいのを持って来ればいい。

  彼女にとって人間はファストフードについてくるプラスチックの玩具なのだ。


  それが彼女の才能。生を生とみなさない才能。兵器としての才能なのだ。


  少年は彼女のそんな才能に惚れているだけだ。もちろん彼も彼女のことを使えないなと感じた時点で、まるで鼻をかんだテッシュのようにポイッと捨てるだろう。

 

  そんなたいした感情もこもってなくどちらかというと幼児のお人形遊びのような感覚の声でお面の少年は彼女に語りかけていた。


  「うん!」


  彼女は万遍の笑みで頷くと叫び続けているチェーンソーを掴み、山から飛び降りた。


  綺麗な銀髪とゴスロリ服のフリルが月光に照らされながら宙に舞う。

 

  ばちゃ。


  彼女が舞い降りたせいで地面を流れてる紅い液体が飛び跳ねた。


  「お兄ちゃん!おかえりなさい!」


  彼女は思いっきりお面の少年に飛びついた。

  実に微笑ましい光景だ。


  チェーンソーさえ少年の身体に突き刺さっていなかったら。


  ギィイイイィイイィイイン


  チェーンソーは叫び続けながら紅い華を四方八方に撒き散らした。


  少年はまるで日常の一部と思わせる笑顔のまま己の腹に刺さったチェーンソーをゆっくりと引き抜くと、狂った声をあげている少女の頭を二回撫でた。


  「あれぇえ???なーんだこれでもしなないんだぁ。つまらないなぁ」

  「いつもいってるけど僕はきみの魔力じゃ死なないよ。あとチェーンソー、これ地味にだるいから今度からやめてね」


  少年がそういうと彼女はふてくされた顔をしながら少年から離れた。

 

  「で、なんのようなの?私のところなんて珍しいじゃん」

  「ほんとは自分でやりたかったんだけどね。どうやら警戒されちゃって……」


  少年はあまり多く語らず、少女と二、三秒眼を合わせるだけだった。


  「うんわかった。借りもあるからね」

  「ありがとう。けど、普通は借りがある相手に対して殺そうとは考えないけどね」

  「えー?殺されそうなことをしたのはどっちよ?」


  少年はお面の下から軽く笑うとその軽い口調のまま続けた。


  「ヴァキュラスの方が盗られた」


  闇が一気に静かになった。しかし、彼女の口は裂けるようににやけていた。

  ヴァキュラスが盗られた。その言葉だけで彼女は依頼の内容を全て察したからだ。


  「それってさそれってさそれってさ!私にヴァキュラスと殺りあってもいいっていってるんだよね?」


  彼女は狂ったテンションを過剰にあげてくる。


  「基本は生け捕りね。あと、殺してもいいけど身体と脳みそは確実に持って帰ってきて」

  「うん!ありがと。ね?チェーンソーちゃん遊びにいこ!」


  彼女はそういって頷くと相棒のチェーンソーちゃんを肩に担いで闇へと走っていった。


  「………本当にわかってるのかな?」


  少年……都市伝説はそう呟くと自分の帰路へと足を向けた。


  「まぁ大丈夫か。あの子なら」


  あの子……つまりアリスのことだ。

  アリスもルナと同じく魔邪教に造られたdust Childrenだ。しかし、彼女はルナとは違い「オーヴァーロード」ではない。魔邪教が「dust Children量産計画」を行なうための試験体として彼女を造った。いわば「プロトタイプ」なのだ。

  プロジェクトの内容はいたってシンプルで母体に対して強制的に「悪夢」を見せることでストレスを与え、より短期間で多くの種類のdust Childrenを造るというものだ。

  しかし、そのプロジェクトは失敗に終わった。

  簡単に言えば与える「夢」によって個体の安定度が非常に異なるため制御が不能になることが判明したのだ。

  制御できない魔法兵器。それが彼女なのだ。

  ただ可笑しくて、犯しくて、をかしい存在。

  闇に生きる、闇そのものの力。


  誰も止めることの出来ないそんな存在。


  人はそんな彼女のことを「堕ちた国の少女」と呼ぶ。






  そう、Alice In Underlandと………

 

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