第五章 ある山の小屋と砂浜の光
「命っていったいなんなんだろう?」
訊いてもキネムは黙っていて、私は話を続けた。
「死んじゃうのに生まれてくるなんて……。子孫を残すためだなんて話もよくきくけど、そうやって命を繋いだ先にあるものは何? 私たちは何を求めて、目指して、こんなにも必死になって命を繋いで行かなきゃならないの?」
「先には微かにでも光があると感じているからじゃないかな。命が持つ好奇心がまだ見ぬ未来に素敵な光があると信じて走る事を使命としているから、……いいや使命だなんて軽いもんじゃないな、本質、本能、習性、と呼べるそれらがあるから、未来へとがむしゃらに命を繋いで行くんだろうね。だって、そうでないといったい誰が今の自分自身を救ってくれるって言うんだ?」
キネムは両手で器を作って波際のホタルイカを海水ごとすくう。
キネムの白い手の平の上で輝きながら触椀をくねらすホタルイカは美しい。
波の音と風の音、たくさんの命に私たちは耳を傾けた。
まだ見ぬ光はどこにあるのだろう?
空には天の川が輝きながら遠く遠く北東へ、海のずっと向こうへ向かって流れている。
いつか行ってみたいな。
きっと素晴らしい出来事が待っている事は信じられる。キネムの言うように、きっとそこには素敵な光があるんだ。




