第三章 ある夜の星の風祭り
キネムも黙り、私も耳に神経を集中させる。
風はやみ、草も息を潜め、あたりはしんとして耳に刺さるような静寂に包まれた。
夜空の呼吸。
夜空の呼吸。
数多の星が張り付いた夜空を見つめているとその星の一つ一つに顔があって、呼吸があって、鼓動があって、存在を感じ取った。
流れ星が来ると思った。そうしたら本当に現われて、流れて、消えた。
これなら撃てる。不思議とそう確信し、私はまた神経を張り巡らして夜空を感じた。
来る。
“ドスン!”
手が千切れるかと思うほどのもの凄い衝撃だった。でも私は引き金を引いた。
夜空に変化は無かった。
おじさんのように花火が咲く事は無く、無言で星が輝いている。どうやら外してしまったらしい。辺りに風のざわめきや星の囁きが戻って来る。
「惜しかったな」
私の肩にポンと手を置いたおじさんは「それでも君は撃った。撃たずに諦めるよりも何倍も価値がある」と口にした。そこにはやはり笑顔は無かったのだけれど、何故だろう、たくましい優しさを感じた。
「そろそろマダムの所へ戻ろうか」
キネムに言われて私はおじさんへ銃を返した。
その時におじさんはカゴの中から一つ石を拾って「参加賞」と無愛想につぶやいて私にくれた。片手で握りこめるほどの大きさの温かい石だった。
「ありがとうございます」
お辞儀するとイスに座ったおじさんはそれっきり黙って、星のかけらを集めに向かったダルメシアンを待っていた。
私はもう一度、深々とお辞儀してキネムと一緒に草原を後にした。




