第三章 ある夜の星の風祭り
あっ、また流れた!
“ドスン!”
おじさんのいた方から重たい音が飛んできて皮膚を振るわせた。すると夜空に花火がパッと咲いて複数の火の粉がキラキラと輝きながら地上に落ちてくる。
まさか、流れ星を撃った?
「行け」
おじさんの静かで重たい声に反応して草むらから大きな塊がむくりと盛り上がった。
白地に黒いまだら模様のスマートな犬。ダルメシアンだった。
しなやかな躍動感を振りまいてダルメシアンは草原の奥へ駆けていく。
そしてしばらくすると何やらくわえて戻ってきて、おじさんの足元へそれを置くと、また奥へ向かった。
おじさんはダルメシアンが置いたそれを拾ってカゴへそっと入れる。
「星のかけらって、本当の星から採ってるの?」
眉をひそめて訊くと「そうだよ」とキネム。
「だって星ってずっとずっと遠くにあるんだよ」
「だから数ある流れ星の中でも近くを飛ぶ星を狙うのさ」
「簡単に言うけど、それってどんな理屈なわけ?」
頭がこんがらがっているとおじさんが「やってみるかい」とこちらを見ていた。表情は無い。
断ろうとするとキネムが私の腕を取って立たせる。
「やってみなよ」
キネムの無理矢理な誘いで私はおじさんから銃を渡された。そして席を譲られイスに腰掛ける。
それにしても銃ってこんなに重たかったんだ。
見た目よりも随分とずっしりとした重量感に驚いた。
それにこの鼻の奥を突く火薬の臭い。
「ほら、空に銃を向けて」
「でも重くて」
とりあえずキネムに言われるままに構えてみる。やっぱり重くて銃がふらついた。と、キネムが肩を抱き私の左手に手を添えて支えてくれた。
空には相変わらず流れ星が流れているのだけれど、現れたと思ったらすぐに消えて狙いが定まらない。
「私には無理だよ。当たるわけ無い」
するとおじさんが横に立ってぼそりとつぶやいた。
「当たるか当たらないかは撃たなきゃわからない」
そうかもしれないけど。こんなのどうやって撃てば良いの?
「目で見てからじゃ遅いんだ。夜空の呼吸を感じるのがコツだ」
おじさんはさらに「耳をすませてごらん」と片膝をついて、ジッと空を見上げた。




