第三章 ある夜の星の風祭り
マダムから頂いたゼリーがなくなった頃、キネムは露店の並ぶ商店街から裏路地へ入った。
そこは神社へ通じる道で中学生の頃はよく学校へ向かうのに近道になるから使った道だった。
道は暗く、だんだん闇が濃くなって背中に聞こえる祭りの喧騒が遠くなる。
……あれ?おかしい。
歩いても歩いてもあるはずの神社が見えてこない。商店街からは五分もしないうちに着くはずなのに。
そしてついに神社は現れず、なんともだだっ広い見渡す限りの開けた草原へ出た。
有り得ない。
本当なら神社があってそこからさらに進むと図書館や全国チェーンの電気屋やコンビニとか国道なんかもあるはずなのに、私の目には満天の星空の下、静かな風に草が揺れるどこまでも広がった草原だけが映っている。
しかも草原はところどころ青色に弱く輝いていて、私の足元にも光が一つ。注意して見てみるとそれはつゆ草で、おしべが蛍のように光り、その光を浴びた青い花びらが柔らかく輝いている。
そうだった。ここは私のいた世界じゃないんだった。
「あそこだ」
キネムの指す方には熊みたいに大柄な人がこちらへ背を向けてキャンプなんかで使う折り畳み用の椅子に腰かけている。二人で近づいていくと、大きな背中のその人は私たちの気配に気が付いてゆっくりとこちらを向いた。
表情の無い四角い顔の短髪のおじさん。手には……銃を持っている!両手で持たなきゃならない長い筒のライフル銃。私は思わずキネムの後ろに隠れた。
「調子はどうです?」
キネムの問いにおじさんは「いつもの通りだ」とぶっきらぼうに答え、長靴をはいた足元のカゴをアゴで指した。




