第三章 ある夜の星の風祭り
「亜子、マダムはゼリーを作るのもうまいけど、占いも出来るんだ」
ゼリーを食べる手を止めてマダムを見ると、マダムはけだるそうに髪の毛をかき上げて「私は気が向いた時にしか占わないのは知っているだろう?」とそばにあった棚から煙草をひろう。
「私、元の世界へ戻りたいんです」
「へぇ、そうかい」
「大切な物の在りかを占ってもらえませんか?」
煙草を吸ったマダムは思慮顔で斜め上に煙をふーっと細く長く吐き「別にかまわないよ」と口にして、「本当ですか? ありがとうございます」なんて喜んでいると「ただし」と歪な笑みを見せた。
「ただってわけにはいかないねぇ」
「もちろんです」
私はズボンのポケットに手を突っ込んで気づいた。財布がない。取る物も取らずに出てきたんだから当たり前だ。でも家に帰れば「二千円ならなんとか」
「二千円? はっ。話にならないねぇ。私の占いは超一流さ。これだけは用意してもらわないと」
マダムは五本の指を立てて手の平を私へ向けた。
「ご、五千円ですか……」
まだ今月の小遣いをもらっていないから家に帰ってもそんなお金はないよ……。
「いいや。五十万だ」
「五十万!」
絶対に無理。私の貯金を全部下ろしたって五十万なんて大金は出てこない。
「払えなさそうだね。だったらさっさと行きな」
困っているとキネムが私の肩にそっと手を置いて「マダム。この子は例の子だよ」と言うや、マダムの目が大きく見開いた。そして青い瞳で私をまじまじと見つめる。
「そいつは本当かい?」
「嘘じゃないさ」
マダムは驚きと緊張の面持ちで私を穴が開きそうなほどに見ると煙草の火を近くの台の上の綺麗な石がはめ込まれたガラス製の灰皿でもみ消した。




