第三章 ある夜の星の風祭り
「分かった。占ってやろうじゃないか」
「でもお金が」
「金なんかいらないさ。そうしなきゃいけないんだからね。それより占うには時間がかかる。あんたはキネムとそこらをぶらついておいで」
裏の棚から小さな赤い座布団を出し、その上に透明な水晶玉を乗せるマダム。その一連の動作を見ているとキネムが私の手を引いた。
「そう言うことらしいから、僕たちはもう少し祭りを堪能してこよう」
「私もここにいないと失礼にならないかな?」
「失礼どころか、いられちゃ邪魔だよ。占いには集中力が必要だからね」
マダムにそう言われて手でしっしと追い払われると、申し訳なく思いながらもキネムと一緒に一旦みず屋を離れることにした。
商店街を歩く人たちは一様に笑顔だった。
農協の駐車場に建つやぐらの上で訊き慣れないリズムの太鼓を鳴らす人たちとその周りでゆったりとした踊りを踊る人たち、見たことのない不思議な景品の当たるくじ引きや美しい金魚すくいに必死の子供たち、楽しい会話をしながらまたは足を止めて飲食に興じる人たち、みんながみんな純粋に祭りを楽しんでいる。
夏休みが終わって、お父さんがあんな事になって、私の世界は静かに色を落として、気がついた時には日々曇りの空のように灰色だった。
でもこの祭りは押しつけがましくなく、本当にスッと心へ入り込み、暗闇で光るハロゲンヒーターのようにじんわりと優しい明るさをくれる。
こんなに穏やかな気分は久しぶりだった。
「キネム、あれはなんだろう?」
私の目に留まったのはニット帽を目深にかぶり白くて長いひげをぶら下げたお爺さんが背中を丸めてうつむき店先に座る露店。




