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第十一話 悪魔と天使と新人魔法少女 その11

「ちょ、なんで開かないわけ! このままじゃ異次元社の自主制作アニメ大賞の締め切りに間に合わなくなるじゃん!」



「美雪、諦めよう。つーか、あのジャンルは一般には向かないと思う!」



「うっさいわね! 私がOKと思ったら、それでいいのよ!」



「唯我独尊だねぇ。知らないよ。落選しても……」



 とまあ、そんな相槌を打つポニテの女のコとしゃべるアライグマの姿が、旧視聴覚室こと自主制作アニメ部の部室前に――。



「仕方ない扉をぶっ壊すわよ! ハンマーを用意して、ヘパイストス!」



「ほいほい~! てか、扉を壊したら部費をもらえなくなっちゃうよ、美雪? 生徒会の連中にタダでさえ目をつけられているんだし……」



「いいのよ、細かいことは! その時はその時ってヤツさー!」



 ポニテの少女は美雪、そしてしゃべるアライグマはヘパイストスという名前らしい。さて、次の瞬間、美雪の左腕の二の腕から下が、グワアアアッと巨大な鋼鉄の蟹のハサミといった形状に変化する。



鋼鉄巨蟹剛腕(キャンサー)を叩き込む! うらああああっ……あ、あるぇ~? も、もぎゃー!」



 巨大な鋼鉄の蟹のハサミに変化させた左腕の二の腕から下の部分を自主制作アニメ部の部室に出入り口の扉を破壊すべく勢いよく突き込む美雪だったけど、その刹那、バキンッ跳ね返されてしまう。ん、扉がバリバリと放電している!



「ちょーっ! なによ、あれ! 扉がバリバリと放電してる! わああ、電流の奔流が蛇みたいに襲ってきた、あがががっ!」



「アギャギャギャーッ! し、痺れるぅぅぅ!」



 自動防衛システム!? 自主制作アニメ部の部室の出入り口の扉の仕掛けられた罠が発動したようだ。バリバリバリと蛇のように蠢く電流が美雪とヘパイストスに襲いかかる――ありゃー、感電してふたりは白目を剥いて気絶しちゃったわ。



『クケケケ、俺様のアジトに入ろうとするから、そうなるのだ!』



 美雪とヘパイストスの意識が、フッと一時的に夢の世界へ旅立って間もなく、そんな不気味な笑い声がこだまする――と、私達一行も自主制作アニメ部の部室前に到着する。



「あ、誰か気絶しているぞ!」



「うむ、つーか美雪じゃね?」



「うん、間違いなく! 返り討ちにでも遭ったのかしら?」



「あのアライグマはともかく、あのポニテのコは沙希の知り合い?」



「件の自主制作アニメ部の部長の若本美雪よ。しかし、何故、気絶しているんだろう?」



「ムムム、左腕の二の腕から下が蟹のハサミみたいです! もしかして、彼女も!?」



「そうよ、真田先生。美雪は私らと同じ穴のムジナ――魔法少女よ」



 自主制作アニメ部の部長こと若本美雪は、私らとは同じ穴のムジナである――え、それを早く言えって? まあ、行動を見ていりゃ判るでしょう? 判らなかったわけ、クククク~☆



「おはよー☆ 美雪が眠ったから、私が起きた……ん、沙希ちゃん!」



「む、ひょっとして雪美? そうか、美雪の人格が眠りについたんで、アンタが出てきたわけね」



「は~い、そういうことです!」



「てか、なにがあったわけ!?」



 カッと美雪の両目が開く。夢の世界からの帰還――意識を取り戻したってところね。でも、目を覚ましたのは若本美雪のもうひとつの人格である〝雪美〟の方だけどね。さて、ここでなにがあったのか? それを雪美に訊くのだった。



「私は興味がないんだけどさぁ。美雪の奴が今、取りかかっている自主制作中のアニメの原画を、ここに取りに来たわけ――だけど、〝なにか〟が部室を占領しちゃっているのよ。んー、この感じはひょっとして悪魔の類かな?」



「うん、そうみたいね。ああ、私らは新人研修の一環として、そんな悪魔を捕まえにやって来たのよ」



「へえ、新人研修ねぇ。なんだか面白そう~☆」



「面白いわけがありません! さっさと悪魔を捕まえましょう、山崎さん!」



「あ、あれぇ? 新人って真田先生……なんだか背が低くなったような? それに若返ったような?」



「む、むぅ、身長はともかく、若返ったのは確かですね……」



「そういえば、大人を勧誘する場合、条件として……ククク、そういうことね」



「む、なんですか、その条件って!?」



「ええと、それは――」



「沙希、そんな話はともかく、旧視聴覚室の扉が放電しているわ! あうっ……これじゃ触れられないわ!」



 そんな話はともかく、旧視聴覚室こと自主制作アニメ部の部室の出入り口の扉をどうにかしないといけないわね。



『フハハハハハッ! なにをしようが無理だぜェェ~~! 俺様の電磁結界を破れるものかよ!」



「ムムム、なんか今、不快で下品な笑い声が聞こえた!? 気のせいじゃないよね?」



「気のせいじゃないぞ、沙希! きっと、自主制作アニメ部の部室内にいる悪魔の声だぜ!」



 む、むぅ、そうなのか……まあ、そうだろう。しかし、聞いているだけで不快な気分になる笑い声だわ。一体、どんな悪魔が潜んでいるわけ!



『ゲハハハハッ! 俺様のアジトには人間の力では入ることなどできぬ! ほ~れ、電流を食らってオネンネしちまいな!』



「はわわ、扉の電流が蛇のように――っ!」



「早苗姉ちゃん、危ないっ! カメキチ、カメゾウ!」



「沙希ちゃん、ボクらの出番だね……ぎゃあああ!」



「うぎぎぎっ! 痺れるぅぅ!」



 ズギュウウン! と、自主制作アニメ部の部室の扉がカッと閃光を放つ――うお、高電圧の電流がイカの食腕のように縦横無尽に蠢きながら早苗姉ちゃんに襲いかかってきたわ! させるかっ! とばかりに私は、新たな使い魔である翼の生えた二匹の亀ことカメキチとカメゾウを召喚し、間一髪のところで防ぐ! だけど、防げるのは一回切りだわ。カメキチとカメゾウの堅牢な甲羅も、あの触手のように縦横無尽に蠢く触手のような高電圧の電流の前では無力に近いしねぇ。



「沙希ちゃん、ゴメン……あうっ!」



「せっかくの出番だったのに……ぐへっ!」



 せっかくの活躍の場がァァ~~! と、意気込んだつもりだったけど、呆気なくやられちゃったわ。まあ、死んではいないけど、しばらくは動けないわね。



『その扉は生きている! しゃべりはしないが、俺が命を与えたのだァァ~~!』



「い、生きている扉ですって!? ムムム、部室の扉を仮初の命を与えたに変えたのか!」



『ゲヘハハハハッ! 振れたモノに仮初の命を与える……それが俺様の特技よォォ~~!』



 むぅ、触れたモノに仮初の命を与える能力だって!? うへぇ、能力の持ち主のようね、自主制作アニメ部の部室を根城にしている悪魔は――ったく、面倒くさいわね!



『グヒャヒャヒャァァ! 俺様が手出しをする必要はない! お前らは生ける(リビングドアー)に八つ裂きにされる運命なのだァァ~~!』



 生ける扉とはねぇ、しかし、鬱陶しい不快な笑い声だわ。一発、顔面に鉄拳をブチ込んでやりたい気分になるわね。



「く、あの扉をなんとかする方法はないのかしらね!」



「うむー、近づいただけで電流攻撃を受けちまうし……」



「あ、沙希、そのことだけどさ」



「こっちに扉は魔法生物じゃないよ~☆」



「あ、あああ、ホントだァァ~~!」



 わお、サマエルとディオニュソスが魔法生物化していない〝もうひとつ〟の扉があることに気づく。まさかとは思うけど、悪魔の罠では!?



『な、なにィィ! 気づかれてしまったかァァ~~! てか、入り込まれちまった! まあいい、俺様の固有結界の中で死ねィィ!』



 アハハハ、単純にもうひとつの扉を魔法生物化させていなかっただけのようね。ひょっとして馬鹿? ま、とにかく、私達は魔法生物化させていない自主制作アニメ部の扉を開け、ドッと中へ――悪魔の巣の中へと駆け込むのだった。

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