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第十一話 悪魔と天使と新人魔法少女 その6

「旧体育館か、懐かしいわね。うう、ここで私は……」



「早苗……」



 私達は永遠砂浜(エターナルビーチ)から、旧体育館へ移動する。ちなみに、ネロジーさんが一瞬で、私達を旧体育館へ移動させてくれたわけだ。むぅ、そんなわけで、あのおぢいちゃんの正体が、すっげぇ気になったわ! さて、早苗姉ちゃんの顔色が悪いわ。旧体育館(ここ)には嫌な思い出があるようね。あの黒魔術殺人事件絡みかしら?



「なあ、沙希、この鶏をどうにかしてくれよ! 頭の天辺がムズムズするんだ!」



「ハハハ、何気に似合ってるぜ。つーか、俺の使い魔はガラの悪い……」



「おいおい、誰のガラが悪いって、相棒?」



「アハハハ、ふたりともお似合いの使い魔が得られてよかったじゃん♪」



「「よ、良くないィィ~~!!」」



 あ、そうそう、ここへ転移するちょっと前に、私はツチグモとヤスにも使い魔を選ばせるのだった。んで、紹介すると、ツチグモの使い魔はヴァレリアヌスという古代ローマ皇帝のような名前の雄鶏、ヤスの使い魔は見た目は可愛いが、中身はガラの悪い不良のような性格の小妖精のフレイヤだ。



「さて、その特訓の内容を語るとするかぁ――早苗姉ちゃん、真田先生、ツチグモ、ヤス、今から旧校舎内に潜んでいる悪魔を捕まえてもらいます! どこぞの馬鹿が、旧校舎内で悪魔召喚を行ってしまってさぁ」



「「「「な、なんだってー!」」」」



 早苗姉ちゃん達は大声を張りあげて驚く。そりゃ、そうよねぇ、新人研修も兼ねた特訓の内容が、まさかの悪魔の捕獲ってわけだし――。



「そうそう、悪魔って呼ばれる連中だけど、有害、無害に問わず、色々な場所にいるわよ。例えば、早苗姉ちゃんの使い魔のレインやミスティアの使い魔のファムは、夢魔という種の悪魔だしね」



「う、ファム、お前、悪魔の類だったのか!」



「ちょ、今更、知ったわけ?」



「う、うん……」



「オーノー!」



「ま、とにかく、捕まえなきゃいけない悪魔っていうのは、なんだかんだと有害っぽいのよ。そんなわけで捕まえなきゃって思ってさ」



「ところで沙希、アンタは何故、悪魔の存在を?」



「私も、それが気になりました」



「あ、それは――ヘルメス、例のモノを早苗姉ちゃん達に!」



「ああ、これのことかな?」



「ん、それはアンタがお父さんに誕生日プレゼントとしてもらったタブレット型パソコン?」



 私が何故、旧校舎内に悪魔が潜んでいるのを知っていたのか!? その疑問に答えようじゃない。さて、その前にヘルメスが持ってきたモノ――私が愛用するタブレット型パソコンの液晶画面を見てほしいわね。



「お、旧校舎全域がマップ化されているぞ!」



「師匠、これって一種のアプリっすか?」



「そう、アプリの一種ね。ちなみに、普通には買えない特殊なアプリよ」



「普通に変えないアプリ?」



「うん、これは現界に潜む人外――魔物の類を表示する危険なアプリだからね。あ、ちなみに、アプリ名は悪魔ホイホイ君だったかしら?」



 悪魔ホイホイ君ってアプリは普通に購入できないアプリの一種である。私達が住む現界に潜む悪魔、邪神、魔獣といった害の異界からやって来た有害な来訪者の存在を表示するモノである故に――てか、異界からやって来た連中の中には、自分達の存在に気づいた人間に対し、過敏になるモノもいるのよねぇ。最悪の場合、連中の魔の手に遭ってしまい――とまあ、通常販売していないアプリである。



「ま、このアプリに反応があったわけで、急遽、特訓内容を変更したってところかしらね」



 本来の新人研修を兼ねた特訓は別のモノを用意していたけど、悪魔ホイホイ君に反応があったわけだし、こりゃ捕まえておくべきかなぁと思ったのよね。



「ウフフ、悪魔ホイホイ君は役に立っているようネ」



 そんな声とともにミカエル先生とサマエルが現れる。ん、ミカエル先生の背中に一対の純白の翼が――。



「魔法少女形態ですか? 外見年齢にあんまり変化がありませんね、そういえば……」



「ウフフ、そこらへんはノーコメント! 可愛いに年齢は関係ありませン!」



「は、はあ……」



 んー、確かに天使のような姿であるミカエル先生は可愛いとは思う。だけど、二十代半ばの大人の女性が魔法少女を名乗るのは、いささか妙な話だなぁ。



「むぅ、不覚だわ。数日前までお姉様が魔法少女だったことを知らなかったとか……」



 さて、悪魔ホイホイ君他、色々な魔法少女御用達のアプリは、すべてミカエル先生から購入したものである。つーか、この人も魔法少女だったとは意外だ! ちなみに、妹のサマエルは、つい数日前まで、そのことを知らなかったらしい。



「ミカエル先生にコーチとなってくれるように依頼したわ」



「コ、コーチですって!」



「ウフフ、よろしくお願いしますネ~☆」



「さてさて、悪魔の反応は、今のところふたつあるわね。どこぞの馬鹿が、これ以上、悪魔を召喚してしまったら面倒くさいしね」



「ウフフ、ですネ。さて、ここから一番近いのは、二階にある旧職員室ですネ」



「師匠、旧職員室はヴィジュアルバンド部が使ってるっす。だけど、今やダチの沼倉しか部員がいない部活っす」



「へぇ~まだあったのね。部員がたったひとりとか落ちぶれたわねぇ」



「まあいいわ。ヴィジュアルバンド部へ行ってみましょう!」



 なんだかんだと、旧校舎二階にある旧校舎――現ヴィジュアルバンド部の部室へ行ってみよう。何者かは知らないけど、これ以上、悪魔を召喚されたらたまったもんじゃないわ! 増える前に、何匹を捕まえておかなくちゃね。



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「天城先輩も、新人魔法少女候補生として参加するんですね」



「うん、なんだかんだと、魔法少女になって三日目だからね。ま、とりあえず、清水さんとコンビを組んでみたわ」



「私も人間なら、魔法少女になっていたところなんだけどねぇ」



「アハハ、そうなんだぁ」



「さて、皆さん、旧校舎の二階へ到着デス。例のヴィジュアルバンド部の部室こと旧職員室は、すぐ目の前ですので用心してくださいネ!」



「は、はい! うう、なんだかすっごく嫌な気配を感じます!」



 私達は旧体育館から、悪魔の反応がある旧校舎二階にあるビジュアルバンド部の部室前にやって来る。ん、やって来て早々、嫌な気配をひしひしと感じるわ。



「そういえば、今は部員がひとりしかいないんだっけ?」



「そうっすね、師匠の姉上。一昔前はたっくさんいたそうっす。よくは判らないっすけど、カリスマ的存在がいたような……」



「そのカリスマ的存在というのは、MASAKIって人のことかな? 何年か前、光桜学園からカリスマ的歌手が誕生したって騒がれていたのを思い出したわ」



「あ、MASAKIなら私も知っています。我が校からメジャーデビューした歌手ですね。在学時から大人気でしたね」



「へえ、そんなカリスマな人がいたんだぁ」



 ふーん、今やヤスの友人がたったひとりの部員として切り盛りしているヴィジュアルバンド部には、かつてカリスマ的存在のMASAKIって先輩がいたね。そこらへん知らなかったわ。詳細を愛用のタブレット型パソコンからネットにつないでで調べてみるかなぁ――。



「沙希、件のMASAKIについて恐怖話があるみたいだぜ」



「ああ、もしかして、デビュー曲を発表した翌日にMASAKIが怪死にまつわる話でしょう?」



「お、あの話は外国でも有名っぽいな!」



「うん、この手の話は大好きでね。色々と調べているわ~☆」



 ミスティアとサマエルが語るMASAKIの怪死事件とは、一体!? 外国人であるサマエルも知っているようだから、何気に有名な話かもしれないわね。



「MASAKIは亡くなる数時間前まで母校にいたらしい」



「え、MASAKIの母校って光桜学園のことじゃん!」



「あくまでウワサだけど、MASAKIは母校に遊びに来た際、見ちゃったらしいのよ。〝自分そっくりなモノ〟を――」



「それってドッペルゲンガーでは!? あの正体不明の怪異は自身の生霊という話もあるわね」



「そんな話はともかく、この部屋の奥にいる悪魔を捕まえるんじゃなかったのか?」



「わお、忘れていたわ、テヘ~☆」



「よし、わらわが扉を開ける! わおおおーん!」



 ムムム、カリスマ的歌手のMASAKIの怪死にまつわる話に集中してしまったわ。さて、悪魔が潜むヴィジュアルバンド部の出入り口の扉を狼姫が勢いよく開けるのだった。



「ううう、なんて音なの!?」



「扉を開けた途端、頭が痛くなるようなギターの音がっ!」



 ぐえええ、頭がズキズキするっ! あ、悪魔の仕業かは判らないけど、ヴィジュアルバンド部の出入り口の扉を開けた途端、毒音波がズドドドドッ! と、鳴り響く――く、これじゃ入るには入れない!



「あらあら、汚らしい旋律ですネ。悪魔さんは音楽の勉強をすべきデス」



「ちょ、平気なわけ?」



「はい、この程度、涼しいものです。さ、入りましょう~☆」



「ちょ、うがあああ、耳が……耳がァァ~~!」



 ミ、ミカエル先生、平気なわけ!? うがああ、無理矢理、ヴィジュアルバンド部の部室内に引っ張らないでっ――がああ、毒音波に脳がやられてしまうっ!

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