表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/118

第十話 失われた記憶を求めて! その21

「沙希、僕の特技を知っているよね?」



「え、特技!?」



 さて、私達一行はオリンポス十二神の一柱である酩酊の神ディオニュソス――守銭奴な女装男子の姿をした分霊の固有結界こと酒泉郷から、出入り口である綾崎酒店の店内へと戻ってくる。さて、戻ってくると同時に、そうヘルメスが訊いてくる……ん、確か、そんなヘルメスの特技って!?



「ど、泥棒!? 盗み?」



「ポンポーン~☆ 正解だよ、沙希。そんなわけで遼丹をディオニュソスのもとから盗んできたよ!」



「わ、わああ、マジで!? ヒュー、超サンキューだわ!」



 ヘルメスは泥棒の神でもあったわね。ふ、ふう、なんだかんだと、多額のお金を支払うことなく遼丹GETだわ!



「これが遼丹だよ、沙希」



「え、たった一個!? むぅ……」



 ムムム、ヘルメスが盗んできた遼丹は、たったひとつの小さな錠剤である。うーむ、もう二、三個必要な気がするんだけど――。



「これが関の山だよ。まあ、飲んでみるといい」



「う、うん……」



「待てぃ! それはわらわが飲む!」



「ああ、狼姫! 私が飲むんだから邪魔しないで!」



 むう、狼姫が飛びかかってくる。自身の失われた過去を取り戻したいのは判るけど、コイツは私が飲むんだ! たった一個しかない貴重な秘薬なのだから!



「ああ、落としちゃったじゃない! ど、どこへ行ったんのよ!?」



「あ、店の外へ転がっていったわよ」



「うげ、マジで!?」



 綾崎酒店の主人である綾崎麻衣も酒泉郷から現界へと帰還する――え、遼丹が外へ転がっていった!? わああ、探さなくちゃ!



「わらわが探す! お前はそこにいろ!」



「いいや、私が探すんだ!」



「沙希ちゃん、探すのを手伝うよ!」



「まったく、あんな小さなモノなんだし、落としたら大変じゃん!」



 ムムム、狼姫も同時に綾崎酒店の外に、くそ小さな錠剤なだけに探すのが大変だわ! 茜とサマエルが一緒に探してくれるんだけど、見つかるかどうか心配になってきたわ。



「やれやれ、せっかく盗んできたというのに、それを落としてしまうなんて……ん、君、まさかとは思うけど?」



「あれぇ? なんで私の方を見ているんです、妖精さん?」



「フ、まあいいさ。あれは持っていない方が沙希のためだと思う」



 さて、ヘルメスがニヤリと笑いながら、麻衣さんを見つめている……ん、あれは持っていない方が私のため?



「な、ない……下水道に落っこちたのかな?」



「う、うん、ありえるね。そこのマンホールがあるし、美味い具合に少しだけ開いてるわ、沙希ちゃん」



「うぬ、この中に落っこちたのか!? わらわは絶対に見つけ出す……うおおおっ!」



「ああ、狼姫が下水道に!」



 遼丹は下水道に!? 綾崎酒店の出入り口のすぐ側にある下水溝のつながるマンホールのフタが、何故か半分ほど開いているんだけど……わ、狼姫が、そんなマンホールのフタを全開にし、その中へ飛び込んだわ。



「沙希ちゃん、追いかける?」



「いや、やめておく。悔しいけど、下水道に落っこちたんなら見つけるなんて不可能だろうし……」



「確かにね。余程のことがないかぎり、遼丹は見つからないと思う」



 く、悔しいけど、狼姫を追いかけるのを断念しよう。下水道に仮に落っこちたんなら見つかりっこないわ。サマエルが言うように余程のことがない限りは――。



「沙希ちゃん、どうにして万札を得て、再度ディオニュソスさんにつくってもらおうよ」



「ああ、僕が銀行の金庫の中の入り込んで万札を~☆」



「ちょ、それはダメー!」



「ハハハ、冗談だよ。さて、一旦、帰宅しようか――別の方法で過去へ遡る方法を考えるためにも!」



「う、うん、そうだね……あれ? なにか忘れていない?」



 うーん、私はなにを忘れているんだろう? 思い出せない……まあ、気にするほどのことじゃないんだろう?



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「おーい、おーい、俺をここから出してくれよォォ~!!」



 と、悠太は暗闇の中で叫ぶ。しかし、返事は帰ってこない。そんな悠太がいるのは酒泉郷の弧狐隊のアジト内にある牢屋の中である。あ、ああ、すっかり悠太のことを忘れていたわ、テヘ~☆



「あ、君のことを忘れていたかも、エヘヘ~♪」



「わ、でっかい狐が……九尾の狐がやって来た! うわああああ、ブクブク……」



 ギイイッと牢屋の扉が開く。その瞬間が悠太は満面の笑みを浮かべ解放される喜びに浸るんだが、牢屋内を覗き込む皇狐の姿を見た途端、口から泡を吹いて気絶する。



「ちょ、失礼な! なんで私を見た途端、気絶するわけ!」



「アハハ、怖いと思うよ。一度、鏡を覗き込んでみなよ~☆」



「うわ、ひどっ! ディオニュソスさん、ひどい!」



「アハハ、気にしない、気にしない~☆ てか、どうでもいいんだけど、この少年をどうする気なんだい?」



「ああ、解放して酒泉郷から追い出そうかと……」



「フフフ、それじゃ面白くないよ。私の考えがある、クスクス」



 ん、ディオニュソスはまだ弧狐隊のアジトにいるっぽわね。さて、そんなディオニュソスは自分とおそろいの真っ白なドレスを抱えている……ま、まさか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ