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第十話 失われた記憶を求めて! その9

 主だったメンバーが元人間であると自称する猫で構成された邪神討伐機関こと聖なる猫の会のメンバーは、なにもそんな猫のみで構成されているわけではない。今は亡き大魔術師のマダム弓子の邪神討伐機関XXX(スリーエックス)のメンバーであれば、誰でもOKらしいわ。



 ま、それはさておき、私と茜、サマエルと狼姫、それにアヒルのアフロディーテと愛梨、ついでに真祖吸血鬼のリュシムナートは、サマエルの愛猫兼使い魔の黒猫のキョウタロウに案内されるかたちで時空を遡り、過ぎ去った過去へ行けるという秘薬――遼丹を精製することができるというディオニュソスの住処へとやって来る……あ、そういえば、ヘルメスがまたいなくなっている。まったく、どこへ行ったのかしらね!



「ちょ、ここにディオニュソスがいるの!?」



「てか、ここは酒店だよね、沙希ちゃん?」



「い、言わずもがな! そういえば、葡萄酒の神でもあったわね。件のディオニュソスは――」



「美味しそうなワインがあれば買っちゃおうかしら」



「わらわは酒が大好物だ! 酒が飲みたくなったぞ、沙希!」



「私はウイスキーを飲みたいわ。ああ、カクテルもいいかなぁ~♪」



「ちょ、あっちゃん! 私は未成年だから、お酒なんて飲めないわぁー!」



「どうでもいいが中に入るぜ」



 むぅ、ディオニュソスの住処というのは、私――山崎沙希が住む○○県S市の繁華街こと浪岡商店街アーケードの路地裏にある老舗の酒店である綾崎酒店らしいわね。さて、キョウタロウが綾崎酒店の店内へ入ったので、その後を追わなくちゃね。



「いらっしゃ~い……あ、シンタロウじゃない♪」



「シ、シンタロウ!?」



 ん、店主はギンッと逆立った狐のような大きな耳とモフモフした大きな尻尾が見受けられる眼鏡をかけたお姉さんだ。歳は二十代後半から三十代前半ってところかな? てか、キョウタロウのことをシンタロウと呼んでいるわね。



「その猫は私の愛猫のキョウタロウです!」



「違うわ! 私の愛猫のシンタロウよ!」



「それより、ディオニュソスってのはお姉さんのこと?」



「違うよ、綾崎麻衣。このおんぼろ酒店のしがない店主さ」



 ふむ、狐耳の女店主が、件のディオニュソスではないようだ。じゃあ、どこにいるのかしら!?



「ところでディオニュソスはどこにいるんだ、麻衣?」



「ディオニュソスの旦那なら、〝いつも〟の場所にいますよ。案内しましょうか?」



「ふむ、いつもの場所かぁ。よし、案内してくれ! アンタじゃないと扉を開けないからな」



 いつもの場所!? まあ、とにかく、キョウタロウと綾崎酒店の女主、綾崎麻衣はワイン、ウイスキー、焼酎、日本酒――様々な種類の酒が見受けられる店舗の奥へと移動する。ついて行ってみなくちゃ!



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「ここがディオニュソスの旦那の固有結界――酒泉郷(しゅせんきょう)よ」



「うわ、赤い滝だ!」



「あれは赤ワインの滝です。飲んでみますか?」



「い、いえ、遠慮します。私は未成年ですからっ!」



「ここは酒好きにとっては楽園のような場所ね、ウフフフ~☆」



「おおおっ! ウイスキーの泉だァァ~~!」



 さ、酒好きの楽園だって!? うへぇ、確かにそうかもしれないわね。ディオニュソスの固有結界こと酒泉郷とやらは、赤ワインの流れる滝、ウイスキーの沸く泉などなど、ここは酒で満ちあふれている。



「あ、あれ、お酒臭くないわね」



「うん、アルコール臭がまったく……」



 あ、あれぇ? ここはお酒の楽園なのはずなのに、まったくアルコール臭がしないわね。不思議だわ。



「あ、そうだ! 皆さん。ここには危険なら輩がいるので気をつけてくださいね!」



「き、危険な輩だって!?」



 ビンッと右手の人差し指を追っ立てながら、麻衣さんがそんな忠告を――ちょ、なにがいるわけ!?



「麻衣、そいつらってマイナス達のこと?」



「うん、マイナスのことよ。ああ、マイナスっていうのは、酒泉郷に住み着いている女性のみで構成された武装集団のことよ。ディオニソスの旦那を狂信的に崇めていたわね、連中……」



「う、うえぇ、そんな連中がいるわけ!?」



「あ、男性のみで構成されたプラスって武装集団もいるわよ」



「な、なにィィ!」



 女性のみで構成されたディオニュソスの狂信者の武装集団マイナスか、それに男性のみで構成された武装集団プラスもいるですって!? でも、なんでそんな物騒な連中がいるのやら?



「ねえ、なんでそんな物騒な連中がいるわけ!?」



「ん~、ありていに言えば、ディオニュソスの旦那が敵対者から酒泉郷を守るために世界の各地から連れてきた連中ってところかなぁ?」



「敵対者がいるの?」



「うん、ずっとずっと、悠久の昔にね」



 どれくらい昔の話なのかはともかく、マイナスとプラスという武装集団は、かつてディオニュソスが敵対者から住処である酒泉郷を守るために世界の各地から集められた連中らしいわね。



「あ、私が運営している酒店と酒泉郷をつなぐ出入り口周辺は、男性のみで組織された武装集団のプラスの支配下だったりのを忘れていたかも……」



「な、なんですってー!」



「わ、沙希ちゃん、足音が聞こえるよ!」



 ちょ、このへんの男性のみで構成されている武装集団プラスの支配下だって!? うお、ウワサをすれば影ってヤツか? ザッザッザッザという足音が聞こえるっ!



「うおおお、兄貴ィィ! マ、マイナスがいるぞ!」



「なんだと! わしらに断わりもなく領土内に入り込んできたのか、許さんっ!」



「サングラスをかけたチンチクリンなハゲ頭のオッサンと筋骨隆々のヒゲのオッサンがやって来たわ、沙希ちゃん!」



「コイツらが男性のみで構成された武装集団プラス!? う、汗臭いわねぇ……」



「だ、誰が汗臭いだと! 貴様らァァ、ぶっ殺すぞ、オラァァ!」



 サマエルが汗臭いって言い出す。まあ、確かに、あのふたりのオッサンが現れた途端にブワッと酸っぱいニオイが――と、それはさておき、ふたりのオッサンは男性のみで構成された武装集団のプラスのメンバーなのか!?



「口だけが達者なマイナスの小娘がっ!」



「ああ、筋骨隆々のヒゲのオッサンが殴りかかってきたわ、沙希ちゃん!」



「うむ、コイツで黙らせてやんよ! (ベアー)マグナム! うらああっ!」



 むぅ、ヒゲのオッサンが殴りかかってくる。こうなったら、熊マグナムを――必殺の右ストレートを叩き込んでやんよ!



「フン、そんな小枝のような細い腕と小さな拳から繰り出される一撃なんぞ役に立たぬわ! 片手で防いでやるぞ、グフフ♪」



「小枝のような細い腕と小さな拳だぁ!? その馬鹿にした態度を180℃覆してやる!」



「は、威勢だけはいいようだな。しかし、軽い軽い。まるで蚊に刺されたような軽い拳だ……う、うぎゃあああ!」



 ヒゲのオッサンは、フンと鼻で笑いながら、私の必殺の右ストレート――熊マグナムを左の手の平で軽々と受け止める。だが、蚊に刺されたような軽い拳だって馬鹿するには早いわ! 私の必殺の右ストレートこと熊マグナムはスズメバチの針の一撃だ!



「ぐ、ぐおおおっ……腕が熊のものに変わった!? 身体が痺れるっ! がああああ!」



 バコーン! と、その刹那、ヒゲのオッサンの巨体が宙を舞う。ホッキョクグマのパワー+拳圧で発生させた空気中の静電気を直撃させるのが、熊マグナムの原理ってところだろうか? 肉体を持たない気薄な亡霊はともかく、人間なら軽々と殴り飛ばすことができる。



「あ、オッサンが兎に変化したぞ、沙希!? とりあえず、捕まえておくか!」



「ど、どういうわけ!? あの兎が筋骨隆々のヒゲのオッサンに化けていたってこと?」



「沙希ちゃん、ちんちくりんなサングラスのオッサンを捕まえてみたよ」



「ムムム、コイツの兎に変化したわね」



 ドサアッ! と、勢いよく地面に落下したヒゲのオッサンの筋骨隆々の身体が、まるで空気の抜けた風船のように縮小していく――兎だ! 小さな兎に変化したわ、どういうこと!? さて、豹に変身した茜が、もう〝一羽の兎〟も捕まえる。グワッと鋭い牙で首根っこを甘噛みしちゃっているわね。ああ、もう一羽の兎は、もうひとりのちんちくりんなサングラスをかけたオッサンが兎に変化したモノだ。



「む、無念……煮るなり焼くなりしろっ!」



「じゃあ、遠慮なく! わらわは兎の丸焼きが大好物なんだ~☆」



「「も、もぎゃー!」」



「まあ、とにかく、アンタ達って人間じゃなかったのね」



「う、うむ……」



 狼姫がジュルリと口許をナメ回す。あ、私も兎の丸焼きを食べてみたい! それはともかく、男性のみで構成された武装集団のメンバーと思われるふたりのオッサンの正体が、まさかまさかの小さな二羽の兎だったとは意外だわ。



「そ~こ~ま~でに~して~おいて~くれんかのう」



「わ、ヨボヨボの兎獣人(ワーラビット)!?」



「「おお、老師ラビエルっ!」」



「え、老師!?」



 ムムム、腰の武という文字がプリントされた酒瓶をぶら下げているヨボヨボに年老いた二足歩行の人間の子供と同サイズの大兎(ビックラビット)が現れる。ちんちくりんなサングラスをかけたハゲ頭のオッサンと筋骨隆々のヒゲのオッサンに変身していた二羽の兎が、ヨボヨボに老いた二足歩行の大兎のことを老師って呼んでいるわね。



「ア、アンタは何者!? プラスって連中のボスなわけ?」



「ん~ん~わしは違うぞぅ~。わしはそこにおる二羽の兎の師匠じゃ~。さ~て~、お主らは~マイナスではないようだのう~」



「当たり前じゃん!」



「ヒョッヒョッヒョ、じゃが武術に~長けておるみたいだのう~」



「あ、あら、判る?」



「うむ~、わしは~こ~見えてもプラスの武術師範だからのう~」



 え、プラスの武術師範!? ホントかなぁ? 見た目はすごく弱そうなんだけど……。



「さ~て~と、わしらの~本拠地へ~来るかい、お嬢ちゃ~ん達? そ~こ~で我々の話を~するとしようかのう~」



「ど、どうしよう、沙希ちゃん?」



「もちろん! 行くに決まってるじゃん!」



 老師ラビエルと一緒にプラスの本拠地へ行ってみる必要がありそうね。ついでに、何故、男と女――プラスとマイナスが敵対関係にあるのかってことと、酒泉郷の主であるディオニュオスが、どこにいるのかってことも訊いてみようかしら?

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