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第十話 失われた記憶を求めて! その4

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 ・白蛇王――邪神討伐機関のひとつ大天使教会のリーダーである白い蛇。本名はサマエルの姉ミカエルと同じミカエル。


 ・ラファエル――サマエルの兄。沙希が率いるオカルト研究部の仲間でもある。


 ・瀬部倉――鰐頭の警備員。アヒルが大好物。


 ・鳴神姫――その姿を見た者に幸運を運ぶとされる巫女の姿をした幽霊。沙希達に同行する。


 ・リュシムナート――沙希の前世(?)に仕えていた真祖吸血鬼。

 タツと鳴神姫は知り合いのようだ。幽霊と交流を持つなんて好事家だわ……え、お前も好事家じゃないのかって? うっさいわね! 私はいいのよ、私は!



「なるほどね。後始末が必要のようだな。悪霊掃除機を用意しなくちゃいけないな」



「うんうん、お願い! まだ少し残っているからさ!」



「ああ、それなら持ってきているから、後からちゃっちゃと……」



 それはさておき、悪霊掃除機なんてモノをいつの間にかエリザベートが抱えている。やれやれ、私の知らないところでタツやエリザベート、それに鳴神姫の間で、なにがあったのかしらね。



「さ、悪霊退治と洒落込みますか!」



「うむ、そうしよう、ペルセポネー!」



「そんなことは後回し! 今は図書館へ行くのが先決!」



「悪霊退治は、お前達だけでやれー!」



 悪霊退治なんて今はどうでもいいよ! 今は図書館へ――殉教者の遺品倉庫へ行く方が先決よ!



「そういえば、図書館へ行く理由を教えてもらっていなかったな」



「あ、ああ、それは――」



「ウフフ、ごきげんよう。山崎さん、それにサマエルちゃん☆」



「あ、ミカエル姉さん! あれれ、行くって連絡した覚えはないんだけど……」



 何故、図書館へ行くのかタツに教えていなかったわね――と、その理由を語ろうと思った直後、ニコニコと微笑む尼僧(シスター)がやって来る。あのミカエル先生だ。



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 さてと、私はミカエル先生に案内されるかたちで図書館へとやって来る。つーか、ここへ来ることになる理由がバレていたっぽいわね。まったく、誰がチクったのよ!



「ヘルメスがいないぞ、沙希!」



「むぅ、さっきまで一緒にいたはずなのに……むぅ、ひょっとしてアイツなんじゃ!?」



 バラしたのはヘルメスのような気がする。まったく、白々しいわね。そういえば、どこへ行ったのかしら、アイツ!



「ウフフ、なんだかんだと、大天使教会S市支部へとようこそ~☆」



「は、はあ、よろしくお願いします」



「ま、そう硬くならないでください。私達はいつでも歓迎しますよ。アナタ方が聖なる猫の会の会員であっても、元は同じ邪神討伐機関XXXの仲間ですから~☆」



 ミカエル先生、私達を皮肉ってないか? だけど、とりあえず、私達の来訪を歓迎してくれているようなので安心したかも――。



「ニャハハッ私も歓迎しちゃうよ。君達は、あの化け猫のお仲間みたいだしねぇ、クククク」



「わ、白い蛇が首に巻きついている!」



「彼はミカエル。偶然にも私と同じ名前の蛇さんです。ああ、ついでにですが、彼は大天使教会のリーダーでもあります」



「ああ、ややこしいから、私のことを白蛇王とでも呼びたまえ! がっはっは~☆」



 ひゃわ、いつの間にか、私の首にマフラーのように白い蛇が巻きついている! てか、ミカエル先生と同じ名前で、おまけに大天使教会のリーダーさんみたいだ――てか、白蛇王って呼べって? 中二病的なニックネームだなぁ。あ、私だけかな? 白蛇王の黄金の眼から慈愛と善性を感じるのは――。



「殉教者の遺品倉庫へ行くのが目的なんだっけ、サマエルちゃん?」



「う、うん!」



「ほほう、あそこへ行くつもりなのか? 物好きだなぁ、お前達は――」



「確かに物好きですね、ウフフフ……」



 物好き? 白蛇王とミカエル先生が、ほぼ同時にニイイと怪しく微笑む。な、なにか嫌な予感がする微笑なんですけどっ!



「化け物がいるとか!」



「化物かどうかは微妙だけど、あそこには〝いる〟よ!」



「「「な、なんだってー!」」」



 と、茜が適当に――えええ、〝いる〟わけ!? い、一体、ナニがいるのよ!



「なにがいるのか楽しみね!」



「全然、楽しみじゃないよ、あっちゃん!」



「ああ、アヒルちゃんが大好物かもしれないわ」



「ななな、なにィィ! ひえええっ!」



 強気なアフロディーテだったけど、アヒルが大好物のモノがいると聞いた途端、悲鳴をあげながら、愛梨と強制合体する。むぅ、愛梨の身体の中に逃げ込んだってわけね。



「アハハ、冗談だよ。まあ、アヒルちゃんが大好物な奴がいるのは本当だけど、殉教者の遺品倉庫の中に〝いる〟モノとは別かなぁ~☆」



「ムムムム、思わず大声を張りあげてしまったじゃないか!」



「フフフ、さあ、案内しましょう。殉教者の遺品倉庫へ――」



 殉教者の遺品倉庫内にいるモノも気になるけど、アヒルが大好物のモノも気になるわね。ま、それはともかく、ミカエル先生と白蛇王の後について行ってみるとしよう――。



                   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 浪岡自然公園内にある図書館内には、前述したと思うけど、姫神塚古墳から出土した古代の鎧兜や剣なども展示されている。当然、長いこと放置されていたモノである故、錆びついて原型を留めていない出土品ばかりだけど、その中に唯一、原型を――当時の輝きを保っているモノがあり、私はそれに注目するのだった。



「おー、これがオーパーツだってウワサの銅鏡かな?」



「錆びない銅鏡……まさにオーパーツね」



「あ、それは模造品(レプリカ)よ。本物は別の場所にあるわ☆」



「え、ええー! 模造品なのかよー!」



 ぐえー、まさかに模造品だったとは! でも、本物があるっぽいわね。



「アレは模造品だけど、他は本物よ」



「は、はあ……」



「うお、化物の土人形! 人間は物好きだなぁ。そうは思わないか、沙希?」



「むぅ、そうかもねぇ……」



 狼姫が化け物の土人形――埴輪が展示品の中にあるって言い出す。ああ、確かにあるわね。毛むくじゃらの太ったヒキガエルって感じの化け物を模った埴輪が展示されている。



「死霊秘法に挿絵が載っていたツァトグアに似ているわね」



「ツァトグア? 食べ物なのか?」



「食べ物じゃないわ。ハイパーボリアって超古代に栄えた大陸で信仰されていた神様よ。ま、邪神に分類(カテゴリー)される神のようだけどね」



「ウフフフ、ここには面白い出土品がたくさんあって退屈しませんよ。ま、それはともかく、殉教者の遺品倉庫へ行きましょうか――」



 あれはツァトグアの似ているだけのタダの埴輪ならいいんだけどねぇ。さ、ミカエル先生と白蛇王の後について行くするか――。



「地下にある殉教者の遺品倉庫にはエレベーターで向かいます。ちなみに、地下へ行くにはみっちゃんの生体認証(バイオメトリクス)が必要です」



「へぇ、何気に厳重だねぇ」



 ミカエル先生と白蛇王とともに、私達は図書館内にあるエレベーターの中に入る。さて、そんなエレベーターには、何気に厳重なセキュリティが施されているわね。地下にある殉教者の遺品倉庫へ向かうためには、白蛇王の生体認証が必要だったりするし――。



「さ、地下へ着きました」



「へ、へえ、地下は五階まであるんだ。地上階より、二階も多いのね」



「フフフ、無駄に空間が多いだけさ」



 無駄に空間が多いねぇ。ま、とにかく、私達が乗るエレベーターは、ゴゥンッと軽い振動をともないながら、殉教者の遺品倉庫があるという図書館の地下五階へ到着する。



「そういえば、君から私と同じ爬虫類のニオイがするんだけど気のせいかな?」



「き、気のせいです!」



 そりゃヘルメスがどこからか持ってきた恐竜の骨を媒介に変身すりゃ、そんな恐竜に変身できるけどさぁ。



「あ、警備員がふたりいるわ。チェスで遊んでいる……あ、ラフェエル兄さん!」



「チャックメイト……ん、サマエルじゃないか! ハハハ、沙希も一緒かぁ」



「わ、一緒にいる警備員の頭が鰐だわ!」



「ああ、彼は瀬部倉(せべくら)さんだ」



「あ、どうも瀬部倉です。この鰐頭のことを気にしないでくれ」



 さて、私は地下五階へと足を踏み入れる。ん~ドーム状の広場と銀行の金庫の扉を連想させる重厚な丸い扉があるくらいだわ。殺風景ね。んで、暇そうにしている警備員がふたりいる。ひとりはサマエルの兄ラファエル、もうひとりは頭が鰐で胴体が人間という鰐人間である。瀬部倉さんって名前らしい。鰐の仮面をかぶっている物好きな人物なのかな?



「おふたりさん、お勤めご苦労さん! 早速だけど、殉教者の遺品倉庫の扉を開けてくれたまえ。私の古くからの盟友バステトのお仲間が、そこに超がつくほど入りたがっていてねぇ、クククク」



 白蛇王の古くからの盟友バステトっていうのは、聖なる猫の会のリーダーであるカイムのことだろう。てか、あのニャンコロせいで、私まで嫌味を言われている気分だ。それはさておき、ラファエルと瀬部倉がふたりがかりで殉教者の遺品倉庫の重厚な扉を開ける。

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