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第八話 魔法少年としゃべる獣達 その2

 あれは一年と四か月くらい前の光桜学園の入学式の時だ。同級生で友人でもある三嶋愛梨と目が合った途端、ズギュウウウンと俺の心が躍った! いわゆる一目惚れってヤツだな。



 俺にはふたりの姉がいる。人形集めが大好きな現役警察官の姉と変身を得意技とする魔法少女――とまあ、そんな姉だ。さて、三嶋はそんなふたりにない魅力を感じるんだよなぁ。ああ、容姿は地味な眼鏡っコだが、俺はそんな彼女に夢中である。んで、その熱い思いを必死に隠す猫かぶりな状態を維持しているわけだ。



 さて、親友である田所や後藤は、同じく彼女に一目惚れをした恋の好敵手(ライバル)でもある。そういえば、三嶋にも姉がいた気がする。ウワサじゃ不良(ヤンキー)らしいけど、もしかして……。



 それはともかく、俺達は動物園の園内へ足を運ぶ。ああ、この動物園の名前は姫神塚動物園。あの姫神塚古墳を発見した人物にあやかってつけられた名称のようだ。



「ん、そういえば、あのフェレットや黒い狐、ついでにアメショーがいなくなっているな」



「あ、ホントだ。どこへ行っちゃったんだろう?」



 いや、〝いる〟。穏行の術で姿を見えなくしているだけだって――つーか、ずっと姿を見せなくていいよ。鬱陶しいから……。



「私はよくここに来るわ。師匠(せんせい)にお会いしにね」



(師匠? 元人間を自称するお仲間がいるのかな?)



 穏行の術で三嶋達の姿を見えないようにしてはいる状態のアメショーの朱莉は、今いる姫神塚動物園によく訪れるようだ。師匠とやらがいるらしい。一体、どんな動物なんだろうなぁ、何気に気になるぜ。



「悠太ぁ、一緒にいる眼鏡のコはアンタの彼女?」



(うえ、沙羅っ! あっちへ行けよ、お前!)



 むぅ、園内に入った直後、元人間を自称するカラスの沙羅が舞い降りてくる。む、無視しよう!



「無視したでしょう? 突っつくわよ」



「…………」



「キャハハ、沙羅ちゃん、だっせぇ~♪」



「うお、言ったな、このハゲ頭ァァ!」



「ハゲじゃねぇよ! この真っ黒コゲ!」



 むぅ、沙羅が今いる地点のすぐ側にある檻の中にいるコンドルと口論となる。今のうちに立ち去るとするか――。



「やあ、狐君。人間に化けるのが上手いね」



「う、ううう……」



 と、思ったけど、引き止められてしまう。今、俺がいる場所――猛禽類館で飼育されている大鷲に……コ、コイツはしゃべったぞ!? まさか元人間なのか?



「ああ、私は浅川由梨。ちょっとした事故で大鷲になっちゃった元人間だ」



「は、はあ、そうなんだ」



 もう驚きはしないぞ。てか、姫神塚動物園で飼育されている動物の大半が元人間なんだろうなぁ。さて、今いる姫神塚動物園の園内がどうなっているか少し説明しておこう。


 園内の出入り口から真っ直ぐに進むこと三十秒ほどの場所に猛禽類館、その向かい側にカンガルーやコアラなどオーストラリアに生息する有袋類など南国の動物が飼育されている南国動物館、そこからさらに進むこと一分ほど到着できるのがチンパンジーなど世界のお猿が飼育されている世界の猿館、アフリカゾウやキリンといったアフリカ大陸に生息している大型哺乳類が飼育されているアフリカ動物館などがある。



「先生は、世界の猛獣館にいらっしゃるわ」



 アメショーの朱莉が先生と呼ぶモノは、どうやら世界の猛獣館にいるようだ。ライオンや虎などの猫科の大型肉食獣、それにグリズリーやマレーグマなどの世界の熊、狼やハイエナもいたかな?



「ウチらのメンバーの中にいる〝元人間〟ではないメンバーの教育係みたいな人物かなぁ、先生は――」



 さて、アメショーの朱莉は、俺の家の居候であるが、その一方で聖なる猫の会という組織の本部を行き来している。雉飼探偵事務所ってところだったかなぁ?



「お前は悠太という名前だったかな? この動物園の北海道動物館に我々、妖狐の御大がいらっしゃる。狐の同胞として、後でご挨拶に行くぞ」



「へえ、アンタ達の御大もいらっしゃるのね。ああ、私が先生と呼ぶ存在は猫科の動物よ」



「むぅ、なんで挨拶なんかに……」



 仙狐の御大とは、クロベエ達、妖狐のボスみたいな存在? つーか、クロベエの奴、俺を同胞だと思っているようだな。ぐぬぬ、俺は狐じゃねぇー! それはともかく、先生とやらは猫科の動物のようだ。ライオンや虎じゃないかなぁ、と予想しておこう。



「おい、悠太。さっきから独り言をぶつくさ言っているんだ?」



「お、おう、スマンな……」



 穏行の術で姿を見えなくしている朱莉やクロベエと会話をする俺の姿は、独り言をぶつくさ言っている怪しい輩に見えるんだろうなぁ。



「あれ、気のせいかな? 一瞬だけど、浪岡自然公園にいたあのフェレットや猫ちゃんの姿がチラッと見えた気がする。あ、あの黒い狐の姿も……」



「き、気のせいさ! うん、間違いなくな!」



「ふむ、あの娘には魔術師の才能があるのかもしれん」



 え、一瞬とはいえ、普通の人間には絶対に目視できないはずの穏行の術を行使中のアポロンや朱莉、ついでにクロベエの姿が三嶋には見えただって!? アポロン曰く、彼女には魔術師の才能があるっぽいぞ!



「気のせいじゃないか? というか、仮に変なモノを見てしまった場合、知らん顔をした方がいいかも……」



「え、どうして?」



「ほ、ほら、アレだよ、アレ!」



「ん~要するに、目をつけられるかもってヤツ?」



「そ、そういう感じかなぁ?」



 むぅ、ズバリその通りって言いたい。穏行の術を打ち破って、その姿を見てしまった魔術師でもない人間に対し、ナニを仕出かすか判らない気がする。ま、まあ、俺の周囲にいる連中なら穏便に済ませてくれそうだが、逆に姿を見られちゃ不味いと思っている悪意あるモノだった場合、危険だぞ!



「お前ら、なにやってるんだよ。世界の猛獣館へ行こうぜ!」



「お、おう!」



「ああ、そうだ。俺の気のせいかな? さっき、そこに中嶋がいたんだよ。なんだか虚ろな表情だったなぁ……てか、いつの間にかいなくなってたんだ」



 気づけば、俺は世界の猛獣館の前に俺はいた。ここに朱莉が先生と呼ぶ存在がいるんだったな。それはともかく、洋書の翻訳で忙しいって理由で来なかった中嶋の姿を野田が目撃したようだ。てか、中嶋に似た別人なんじゃ?



「まあいいや、世界の猛獣館に入ってみよう」



「ああ、先生は悠太のことをすでに知っているわ。会いたがってたわ」



「う、うえ、マジかよ。俺って何気に有名なわけぇ?」



 うへぇ、俺はすでに知られた存在なわけ!? うーん、その裏には姉の沙希が関わっていそうだな。さてと、俺は朱莉と一緒に世界の猛獣館の中へと足を踏み入れる。先生とやらは、どこにいるんだろう? 

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