届かぬ物資ー退避ー
女性が荷馬車のほうへ向かってくるのが見えた強面の男性は急いで駆けつけ、女性の代わりに槍の男性を担いで踵を返す。
「おい!しっかりしろ、死ぬんじゃねー!」
「ちょっと!縁起でも無いこと言わないでっ!」
「ははは……大丈夫、こんなところで死ぬつもりはないよ……」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらも無事に荷馬車にたどり着く。
「申し訳ございません!傷に効きそうなものがないかと探したのですが……見つかりませんでした」
本当に申し訳なさそうにする商人に槍の男性は弱々しくも、だがしっかりと微笑みながら答える。
「いえ、お気持ちだけでも十分です」
「しかし……なら今の私に出来ることはなにも……」
「それでは……お水をいただくことは出来ますか?」
「!!もちろんです!少々お待ちを!」
商人は急いで荷台に入り、水を持ってくると槍の男性に少しずつ飲ませてあげた。
「ありがとうございます。少し落ち着きました。……このお水代はいずれ」
「いえいえ!お代は結構ですよ!」
顔だけでなく両手も勢いよく横に振る商人。
それをみた槍の男性は「ありがとうございます、お言葉に甘えます」といってお礼を言う。
ほんの少しだけ落ち着きを取り戻した彼らは、彼らの代わりに戦おうとしている支配人のほうを見ると、魔人が支配人に向かっていくところだった。
槍の男性以外が「危ない!」と声をあげようとしたが——彼らの言葉が言い終わる前に、戦況がかなりの速度で動いた。




