表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/211

第67話 フォーミッドへの道中

ドラテッタ侯爵領に到着して4日目。

約束の日であった。


集合場所に集まった、3つの商人のキャラバン隊。

護衛であるハンターパーティーの“青の飛翔”の3人と、“オレ達に明日は無い”の3人。

そして、ディールとユウネの2人。


加えて。


「ご同伴を許可いただき感謝いたします。フォーミッド中心部までとなりますが、よろしくお願いいたします。」

「か、か、か、か、か、畏まりました!!」


笑顔のアデルの言葉に、背骨が折り曲がるような勢いで頭を垂れる3人の商人。

“青の飛翔”も“オレ達に明日は無い”のメンバーも、身を震わせながら恐縮するばかりであった。


キャラバン隊に、グレバディス教国最高位神官“四天王”【水の神子】 アデル・スカイハートと、その護衛である聖騎士団(8人)が同伴するのであった。


「姉さんはどっちに乗るの? やっぱり聖騎士さん達の馬車?」

「うーん、せっかくだからディール達と一緒がいいな。ね、いいでしょ団長さん?」


アデルは騎士団長に尋ねる。

騎士団長はニコニコと笑顔で「アデル様の仰せのとおり」と答えるのであった。


その言葉に、石像のように固まるハンターの面々。

“四天王”など、まさに雲の上。

言葉を交わす事どころか、その姿を目に映すことすら叶わない、大人物である!


「すみません、皆さまのお寛ぎになる場所を手狭にしてしまいますが…」

「いえいえいえいえいえ!!!ごごごご一緒できるなど有り難き幸せ!!」



――――



「ハンターの皆様、弟は何か粗相とはしていませんか? 皆様にご迷惑など……」

「ちょっと! やめてよ姉さん!!」


キャラバンが動き出し、少々。

早速、姉からの弟の遜りが始まったのだ。


だが、全員首を横に振る。


「いやいや! アデル様! 弟君のディール様は本当に素晴らしい方ですぞ!」

「本当ですよ! 先日現れた『灰被』の集団をあっさりと退けたのですから!」

「素晴らしい弟君でござる! さすがは【水の神子】アデル様の御姉弟でございます!」


過剰評価でも何でもない。

実際、この“弟” は同じハンターとは思えない程の実力を有している。

しかも、まだまだその実力の“底”が見えないのだ。


目を見開くアデル。


「え、ディール!? 貴方、『灰被』を退けたの!? “六魔”でしょ!?」

「あ、ああ…。オレ一人じゃないけど。」


そう言ってユウネを見る。

少し頬を赤らめて俯くユウネ。


「……話しは聞いたけど、本当にとんでもない二人なのね、貴方達は。」



ディールとユウネに“伝承”の話を伝えた日。

あの後、ディールとユウネから、【紅灼龍ホムラ】を紹介してもらった。


一度、連合軍“総統”マリィから【銀翔龍フウガ】を紹介してもらっていたとは言え、魔剣から“人”が姿を現す光景は、心臓が飛び出るほど驚愕したのであった。


当のホムラは、今、半透明の姿を現して馬車の幌の上で景色を楽しんでいる。

何か察知すれば、幌の上から上半身だけ出して伝えてくれる。

便利極まりない魔剣なのだが、それも心臓に悪い。


そして、最愛の弟の恋人ユウネ。

聞いたことのない【星の神子】という【加護】を持っていた。

彼女からステータスを見せてもらい、それが事実だと判明したが。


同時に、目が飛び出るほど驚いた。

そこに刻まれる、異常なステータス。


今思い出しても寒気がする。


『魔法力、約6万』

『数多い固有技能』

『多彩な“星”の魔法』

『“極星魔法”という、未知の凶悪魔法』


どれもこれも常軌を逸脱している。


特に4番目。

【神子】は上位種魔法を得ることが出来る。

アデルの場合は“水魔法”の上、“豪水魔法” がそれにあたる。


だが、そこまでだ。

上位種魔法を得られる【加護】は数が少ない。

その上、魔法の中で “上位種” と呼ばれるだけあって、その威力は“通常種”よりも遥かに高い。

恐らくユウネの場合は “星天魔法” が “上位種” にあたるのであろう。


それを超える “極星魔法” って何!?


話しを聞いた限りのことが事実だとすると……。



『個人で、戦略級大魔法が放てる』



つまり、“意思を持って動く大量破壊兵器” だ。

個人で軍隊を蹴散らす力量を有する事になる!



それを裏付ける、“魔法力、約6万”



例えば、同じ【神子】たるアデル。

アデルは3年もの厳しい修行の末、“四天王” となった。


その保有する魔法力は “約1万” 。


平均値100から見ると、通常の人より100倍の魔法力を持つことになる。

それだって、とてつもない人外ステータスなのである。

さらには同じ “四天王” で筆頭者である【雷の神子】 レナ・シャーマインは、グレバディス教国で最高値の魔法力1万2千。

さすがはレナ様! と思っていたが。


あっさり上回る、ユウネという弟の恋人。

一体全体、何をすれば、こんなステータスが刻まれるのか?


「ユウネは本当に凄い。オレなんて全然さ。」


そう言い、ユウネの手を握るディール。

頬を赤らめ、笑顔になるユウネ。


「ううん。私なんてまだまだ……。お義姉さん、本当にディールは凄いんですよ?」


褒め合う二人。

それを恍惚とした表情で眺める6人のハンター達。


ドン引くアデル。


だが、話しを聞く限り見えてきた、実弟の人外級の実力!


遥か先まで探知できる魔導士を超える、探知能力。

そこから索敵をし、全く見えない魔物を“飛ぶ斬撃”で屠る。


あり得ない。

あり得るわけがない。


そんな魔法、見たことも聞いたこともない。

伝説の“深淵”【紅灼龍ホムラ】だからこそ出来る芸当か?


いや、いくら魔剣が強くても、それを握る人間の実力や魔力、さらに魔剣の力を引き出す能力が乏しければ、名剣が鈍らに負ける世の中である。


“神の魔剣、握る凡人なら棒切れにも劣る”


この諺が指し示すとおりなのだ。


“深淵”たる【紅灼龍ホムラ】を手足のように十全に扱う、我が弟ディール。

そして意思を持つ龍神たるホムラの厚い信頼を得ている。


【加護無し】であるためステータスが見えない。

むしろ、最高位神官である【神子】の自分は、ステータスプレートなど見せてもらわずとも、相手の【加護】は自身の持つ固有技能“鑑定”で見えるのだ。


【神子】たるアデルの“鑑定”は、最高位の“至高”である。

相手が“鑑定妨害”の効果のある“探知系”や“察知系”を持ち、しかも同じ“至高”レベルで無い限りは容易に暴くことができる。

そんな自分の“鑑定”でも、ディールのステータスは見えなかった。

【加護無し】である、証明。


だが、最愛の弟は、“落ちこぼれ”ではない。

同伴するハンター達が絶賛するほど、その戦闘力は計り知れない。



(どうやら……私が思っている以上に、弟と義妹は、化け物ってことか。)



ディール達と同じ馬車に乗った理由の一つ。

ディールとユウネの実力を見定めるためだ。


二人の話しを聞いた限りでは、正直分からなかった。

何故なら、二人が二人を、“凄い凄い”と互いを持ち上げる一方であったからだ。

傍目で仲睦まじい恋人同士なのだが、“恋人の居ない”アデルにとっては、正直苦痛でしかなかった。


そして、もう一つ。

アデルの心に去来した危機感。



(恋人いないの、私だけじゃない!!)



兄ゴードンはすでにテレジという女性と夫婦となった。

そして弟ディールは、目の前の可憐なユウネと仲睦まじい恋人同士。


確かに兄も弟も、アデルから見てとても良い男、ぶっちゃけイケメンである。

周囲に言わせれば、アデルも相当な美女であるのだ。


でも、自分だけ!?

恋人が、居ない!!!



ズーン、と落ち込むアデル。


「どうした、姉さん!?」

「まさか、酔いましたかっ!?」


“手を繋ぎながら心配されても……”

頭を抱える、アデルであった。



――――



「婚姻前の男女が同じテントの下で過ごすなんて、非常識です。」

「で、でも! お義姉さんっ!」

「いーえ、ダメです。」


フォーミッド中心部への道中の、最初のキャンプ地。

そこで、野営のためそれぞれテントを張ったが……。


ディールとユウネが、一つのテントで過ごすという事実。

それを看過できない小姑アデルがピシャリとユウネに言う。


『そうだそうだ! 大人しく外で寝てろ、この乳お「ホムラさぁん?」何でもないごめんなさい!』


その隣で騒ぐ半透明のホムラの叫び。

頷くアデル。


「ホムラ様の言う通りですよ。……さすがに外で寝るのは酷ですし非常識なので、ユウネは私のテントで寝てください。」

「そ、そ、そんな~~~。」


涙を流してガックリするユウネ。

その後ろでガッツポーズをするホムラ。


バッ!と後ろを振り向くユウネ。


「ホムラさんもっ! 私とアデルお義姉さんと一緒ですよ!?」

『ええっ!? 何で! 私は…』

「そうですね。ホムラ様も私たちと一緒に過ごしましょう。」


愕然とするホムラ。

せっかく、憎き乳女を離れさせて久々のディールと二人の夜を過ごせるというのに!

しかも、相当長い時間を“本体化”できるのだ。

流石に恋人ユウネの手前、変なことは出来なくても、抱き着くくらい良いだろ!?

そう考えていたホムラであったが……。


「何やらやましいことをお考えですね、ホムラ様? 貴女様も、私たちと同伴していただきます。」


ピシャリと言う、アデル。

ガクッと頭を下げるホムラであった。


「さ、ディール! ホムラさんを渡して!」

「お、おぅ…」


ディールは剣帯からホムラを取り出し、ユウネに手渡した。

『あーっ!』と叫ぶ、涙を流すホムラ(半透明)


「ま、まぁ、オレもユウネも、それにホムラも索敵範囲は広いから何かあればすぐ対処できるしな。問題があればすぐ大声で教えてくれ、ホムラ。信用しているぜ?」


そのディールの言葉で、無い胸を突き出して笑顔で言う。


「まっかせなさい!」


「単純ね。」

「単純ですね。」


アデルとユウネは、呟くのであった。



----



「さて、折り入ってユウネに聞きたい事があります。」


夜。

食事を終えて、ディールと夜の別れを終えてガックリと項垂れるユウネにまじまじと尋ねるアデル。


「は、はい。なんでしょうか、お義姉さん。」


寝間着に着替え、半透明のホムラに「こっそりディールのところに行くの禁止!」と口酸っぱくして言ってたユウネ。

少し唸りながら、アデルは意を決して尋ねる。


「正直、ディールとはどこまで(・・・・)したの?」


ボンッ!

と顔を真っ赤にさっせるユウネ。

ゲラゲラ笑うホムラ。


「聞いてよ、お姉さん~。この二人ってばさぁ」

「ホムラさんっ!!」


恐ろしい!

この小姑アデルに普段のディールとの夜の逢瀬のことを聞かれたら、何を言われるかわからない!

しかも相手はグレバディス教国の最高位神官!

もし『婚姻前で!?』とか言われ、普段から話すことすら制限されたら!?


耐えられないっ!!


戦々恐々とするユウネ。

ニヤニヤするホムラ。

ホムラは“いっそ、怒られろ!”と思っているのだ。


それを知ってか知らぬか、アデルはあっさり言う。


「大丈夫。別に夫婦の契りが云々とか言わないから。若い男女なんですから、夜伽をすでに共にしていたとしても、おかしくはありませんよ。」


真っ赤になるユウネ。

同じように赤くなるホムラ。


この姉は、何てことを言うのだ!!


「わわわ、私たちはっ! まだ、そこまで!!」

『そ、そうよ! 私がいるのに、そこまでなんて許さない!』


ワーキャー言う二人の女性に、うふふ、と笑うアデル。


「意外と健全なお付き合いをしているのね。」

「あ、でも……」


茹で上がったように顔を真っ赤にするユウネ。


温泉郷ヒルーガでの一件。

そして、修行を終えた夜の逢瀬。


もう少し、あと少し、でディールと“それ以上”に繋がることが出来た。

どちらも、ホムラに邪魔されたのだが。


隣で真っ赤になって大慌てするホムラを睨むユウネ。

そうだ、このヘンテコで五月蝿い龍神に邪魔さえされなければっ!


師匠ガンテツ曰く“ 龍神は人間に祝福を与え、庇護する存在” なのだが、言動は真逆。


晴れて恋人同士になったディールとユウネ。

唇を重ね、抱き合う関係。

でも、それ以上の発展が、無い!


全部、このホムラの所為だ!!



ユウネの視線に気づくホムラ。


『な、何よ……ユウネ。』

「ホムラさん。“次”は、許しませんから。」


ゾワッとするホムラ。

いつも穏やかで、ディールの事となるとすぐ顔を赤らめる照れ屋ユウネ。

そんなユウネから発せられる、何とも言い難い気配。


全身という全身から、汗を噴き出すホムラ。



そんなユウネとホムラのやり取りを見て、何となく理解するアデル。


「まぁ、ディールもユウネもお似合いの二人だし、慌てることは無いと思うわ。ホムラ様も大目に見て、二人を祝福していただけると嬉しいですわ。」


その言葉に『うぐっ』と詰まるホムラ。

彼女もまた、ガンテツに言われた言葉を思い出しているのだ。


『わ、わ、わ、私は、認めないー!!!』


叫びながら伏せるホムラ。

呆れるユウネと、アデルであった。




――――



「静かだな……。」


ホムラとユウネが居ない夜。

久々に訪れた“一人”の時間。


久々に集中して、素振りが出来た。

久々にゆっくりと身体を拭けた。


だがこうしてベッドに身体を預けて薄暗闇の中、一人でいると。

何というか、寂しい。



姉アデルに会えた。

姉アデルに、恋人ユウネの仲を認めてもらえた。

聞かされる驚愕の“伝承” の話。


そして、敬愛する兄の、惨状。



目指した連合軍本部フォーミッドの中心部。

いよいよ、目前となったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ