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閑話16 『金』と『銀』

「おーい、『銀』、聞こえるかー。」


『誰かと思えば『金』のじじぃかよ。スイテンかシロナなら良かった。』


「相変わらずじゃのぉ。それより話があるんじゃが、今いいか?」


『手短になー。今忙しいんだよ、オレッチは。』


「嘘付けぇ。どうせ“宿主”の娘が今日もまた素振りに精を出して、お主は良いとこ放置なんじゃろ?」


『何で分かるんだよ!?』


「本当だったんじゃな。可哀想なフウガじゃの。」


『うっせぇ! で、話って何だよ?』


「前、シロナやスイテンから話しがあった、『紅』と“資格者”、それに【星の神子】の女子おなごが来たぞい。」


『お? すげえ時間が掛かったな。スイテンのところを出てもう3ヶ月は経つぞ?』


「おお、すまんすまん。言い忘れていたが儂のところで修行中じゃ。」


『はぁ!?』


「今のところ半分ってところかの? まだまだ弱くて話にならんわ、“資格者”は。」


『早く言えよ! それ、シロナやアグロにも話したんだよな?』


「これからじゃ」


『呑気過ぎるぞ、ジジィ!』


「まぁまぁそうカリカリするな。同時に【星の神子】も鍛えているところじゃ。大目に見てくれんかのぉ?」


『あー、わかった。わかったよ。あんた、そういう爺さんだったな。で、どうなの“資格者”と【星の神子】のお嬢さんは?』


「二人とも鍛え甲斐があるわ。儂の出す課題をみるみる熟し、みるみる強くなっていっておるわ。年甲斐もなく心躍るの。それに、毎日旨い物が食える。ユウネ殿は良い奥方になるなぁ。」


『羨ましすぎるぞ、じじぃ!』


「お主とて、確かマリィ殿と言ったな? 彼女と一緒に食事を摂っておろうが。」


『いや、マリィちゃんは鍛錬一筋で飯の時間すら忘れる子だ。エリスちゃんっていう【闇の神子】の子が怒らなくちゃ食事しなくて鍛錬場でぶっ倒れるレベルだ。一緒に食事なんて、2ヶ月に一度あるかどうかだぞ。オレッチもその【星の神子】のユウネちゃんの食事を食べたいわ! あと、可愛い子!?』


「相変わらずじゃのぉ。ユウネ殿はそれはそれは可憐な娘じゃぞ。あと数年もすればスイテンも裸足で逃げるくらいの美貌になるじゃろ。」


『おぃジジィ! 修行は“資格者”の小僧だけにして、早くそのユウネちゃんをオレッチのところに送ってよ!』


「目的がすり替わっているぞフウガよ。そもそもユウネ殿は“資格者”ディール殿の恋人だぞ? それはそれは仲睦まじく、かつての『紫』と『紅』を見ているようじゃ。」


『その二人は……グダグダだったじゃねぇかよ…』


「そうだったかの?」


『このジジィは……。まぁでも“資格者”の恋人なら仕方ない、な……って、“資格者”と【星の神子】が、恋人同士ぃ!?』


「そうじゃ。仲睦まじいぞ?」


『え、て、ことは、あの“魔法”を……?』


「まだ無理じゃな。魔力も気力も、何もかもが足りない。この修行を終えても、まぁ無理じゃろな。」


『おぃおぃマジかよ、それ。シロナも何か企んでいる感じだったけど、それってもしかして……』


「そういう事になるなぁ。だがそのためにも“資格者”ディール殿がどれくらい強く逞しくなれるかに懸かっておるがのぉ。」


『うーん。話によると”今代”は【神子】は全部揃ったし、【聖】も【武聖】以外覚醒したみたいだし、これはいよいよかなぁ。』


「そう考えるのが自然じゃの。500年前とは訳が違うだろう。」


『オレッチはあんたみたいに長生きしていないから知らないんだけど……その前って2,000年前、だっけ?』


「そうじゃな。あれは……酷かった。」


『ギリギリ“魔女”を処分したって聞いたけど?』


「そうだ。そして儂以外の“龍神”が全員、死んだ。」


『悪い、ガンテツ。嫌な事を思い出させたな。』


「構わぬ。いずれ“全員”が揃う時に、話さねばならぬ事だしな。」


『ああ。心しておくよ。そして500年前に、今、か。』


「間隔が短くなっている。奴ら曰く“準備”が整いつつあるのだろうな。」


『こっちはこっちで戦争だ。そのうち大きな衝突もあるかもしれない。ところでガンテツ、さっきの話をディエザちゃんにしてもいいか?』


「ディエザちゃん?」


『おいおい、それも忘れたのかよジジィ! ほら、例の、“咎人”の!』


「おおお、彼の者か! どうじゃ、彼は“ディア”を屠れそうか?」


『さあね? まだ無理じゃね?』


「だろうな。」


『だったら聞くなよ! うちのマリィちゃんも、きっと、絶対あれ、“ディア”をぶった切る事しか考えて無いぜ?』


「止めろよフウガ。下手に刺激して“奴”が目を覚ましては不味い。恐らく“ディア”の屑共も必死に探しているところだろう。下手に突いて勘付かれては不味いぞ。」


『わかるよ、わかる。ディエザちゃんにも怒られるだろうし、オレッチの目の黒い内は全力で止めるよ。』


「頼むぞフウガ。儂らもまだ準備が始まったばかりじゃ。こればかりは水面下で進めるしかない。こちらも気付かれては全てが水泡となるからの。」


『おーけー。』


「儂は“資格者”と【星の神子】を徹底的に鍛える。その次はいよいよお主の処じゃ。神殿に居らぬなら、お主から出向くことも視野に入れるのじゃぞ?」


『そうだなー。マリィちゃんとも相談してみるわ。』


「よし。頼むぞ。……ぬ? 済まぬがこれで念話を切るぞ。」


『はいよ。またな爺さん。』



――――



「どうした、ディール殿?」

「はぁ、はぁ……。師匠、言われたノルマ、達成したぞ……」


汗と擦り傷、ボロボロな姿でディールはガンテツに告げる。

その後ろから、同じくボロボロな姿のユウネもフラフラと歩いてきた。


「お、お師匠様……やりました。ユウネも……ノルマを達成しました……」


二人共、目が死んでいる。

その姿を見て、ガンテツは笑みを浮かべる。


「よしよし、素晴らしいのお! さぁ早速次の課題じゃ!」

「「や、やす、休ませて……」」


項垂れるディールとユウネ。

ガンテツの“修行”は、まさに命懸け。

すでに心身共にボロボロな二人であるのだ。


その二人を見て、さらに笑顔になるガンテツ。


「ふむ、そういう時こそ限界を超える機会というものだ。さぁ、今、新たな“敵”を用意した。よく観察し、よく見定め、見事倒してみせなさい。今日はそれで最後じゃ。あとはゆっくり飯にしよう。」

「「ええええええええええーーーー…」」


文句言いつつ、死んだ目でフラフラと“大部屋”へ向かう、二人。

笑顔のガンテツ。


「強くなれ、二人よ。今は届かなくとも、いずれ時がこよう。」



ガンテツは、拳を作り、その手を睨む。



「首を洗って待っていろ“ディア”の屑共。世界は貴様らの“玩具”ではないぞ。」



そして【白陽龍シロナ】と【黒冥龍アグロ】への報告を忘れ、後に盛大に呆れられるガンテツであった。

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