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閑話17 連合軍vs帝国軍

「現状を報告します。」


時刻は夜、22の刻。

十二将官邸の十二将専用会議室に集められた十二将の内、8人が揃った。

帝国軍30万人の進撃、それを率いるのが帝国軍大将団“十傑衆”2位カイゼルを筆頭とした5人。

半年前に起きた衝突に比べ、進軍規模も率いる将軍の数も違う。


前線は、常に警戒をしている第7席シータ。

そのシータの奥義である転送魔法“霧雨縮地の陣”によって、第4席マイスター、第5席ゴードン、第9席ザインが前線に送られている。


連合軍の前線には、第1軍、第4軍の一部、後方支援で第7軍の一部が待機している。

その数、全部で8万人。


圧倒的に多勢に無勢である。


頭を抱える、主席シエラ。


「すでに残りの第4軍は向かわせる準備が整った。援軍として第2軍と第5軍、第9軍と第10軍をそれぞれ“十二将専決権”にて軍団長の意思決定を待たず進軍準備させているところ。これで33万人。出来れば、あと第8軍も投入したいところね。」


各軍団は、それぞれ5万人の兵が在籍している。

だが、全員が全員、戦闘要員ではない。

敵である帝国軍の30万人も全て戦闘要員ではないが、現状後手となってしまっているため、大至急援軍を送る必要がある。


同時に、ここフォーミッドの護衛も必要だ。

前線にばかり兵を割けない事情もある。


「ここから前線まで3日かかるわ。軍団長会議にも掛けているけど、進軍可能な4つの軍のうち、前線近くの部隊は即座に戦線へ向かうよう伝令を走らせた。本格的な衝突が始まる前に、どれほど数を揃えられるかが勝負ね。」


ユフィナも顔を顰めて報告する。

そして、意を決して提案する。


「私の魔法、“光足俊足”を全軍に掛けて進軍させれば、半日で前線に着くわ。」

「大丈夫なの?」


シエラが呆れたように言う。


「大丈夫な訳ないでしょ。いくら【神子】でも3日は魔力枯渇で使い物にならなくなるわ。それでも、万全な状態で前線に軍を送ることが出来る。他に代案がなければ、準備が出来た軍団から始めるわ。」

「効能のよい魔力ポーションを用意しておきますね。」


両目を閉じたまま、ため息をついてエリスが言う。


「頼むわエリス。」

「進軍はユフィナ殿に頼るとして、我ら十二将はあと誰が前線へ向かう? 相手は十傑衆5人ぞ。一兵卒が相手をして良い奴等ではない。少なくとも、十二将か上位の軍団長が当たらねば危険だ。」


第10席にして前主席のレオンが低い声で伝える。

頷くシエラ。


「フォーミッドの守護を、ぶっ倒れ予定のユフィナを除いて、マリィ、エリス、オーウェン、アスラン、そしてレオン様にお任せします。」


その宣言に、全員目を見開く。


「ぜ、前線には……まさか!?」


現時点で前線にいる4人と、名を呼ばれた1人と5人。

つまり、名を呼ばれなかったのは2人。


「私とディエザで出る。」


世界最強の二人。

ガタリと椅子を倒して勢いよく立ち上がるレオンが大声で制止する。


「待たれよ! 主席のシエラ殿が前線に出るなど、前代未聞だ! 連合軍総大将として貴女も守護に回り、報告と指示をするのが主席の務め!」

「それはレオン様が居れば良いと思うわ。」


にこりと笑ってシエラが答える。


「今、連合軍や四大公爵国は未曽有の危機に瀕している。前線にいる8万の兵と、4人の十二将。この命を守るのも、主席の務めよ。」

「だが……!!」

「それにめっちゃくちゃ嫌だけど、ディエザも連れていく。いいわよね、黒装束野郎!」


ギロリと隣の席に座るディエザを睨むシエラ。

ディエザは、コクリ、と頷いて答える。


『お任せください。私とシエラ様が居れば十傑衆の5人程度、敵ではありません。』


その言葉に十二将の面々は期待を込めるが、隣のシエラは嫌悪感丸出しの表情であった。


「そんなわけで早速、私とディエザで前線に向かうわ。ユフィナ、“光足縮地”を私とこの不気味野郎に掛けて。私たちの足なら、数時間で着くでしょう。後のことはレオン様の指示に従って!」

「分かったわ。シエラ、ご武運を!」


ユフィナは魔力をこめ、シエラとディエザに“光足俊足”を掛ける。


「よし。遅れるんじゃないわよ、骸骨野郎!」

『承知しました。』


そう言い、シエラとディエザは会議室を飛び出した。


「大丈夫でしょうか?」


エリスが心配そうに呟く。

それに答えたのは、意外にもマリィであった。


「……大丈夫。シエラは凄く強い。それにディエザも。」

「私は、あのディエザの実力をマルゼン総統閣下から伝え聞いたに過ぎないのですが?」


怪訝そうな顔をするエリス。

不穏な空気が会議室に立ち込める。


世界最強の一角。


そう呼ばれるが、その実力はまだ誰も見たことがない。

そもそも気持ち悪い髑髏のような白い鉄仮面でその正体は伏せられている。

男とも女とも、性別すら判別していない。


【戦場の死神】も、ただ、その見た目だけで付けられた二つ名ではないか?

そんな疑問もある。


だが、マリィがはっきりとした口調で答える。


「……ディエザは強い。はっきり言って、シエラすら足元にも及ばない。“彼”が本気を出せば、十傑衆が全員束になって掛かっても、負けないでしょう。」

「そんな馬鹿な。十傑衆は我ら十二将に匹敵する戦力だぞ。マリィ殿、それは即ち、我ら十二将が全員束になっても、ディエザ殿に勝てぬとおっしゃっていることと同義ぞ?」


レオンが顔を顰めて言う。


「……そう申しておりますレオン様。私たち11人が全力で、束になって掛かっても“彼”には勝てないでしょう。…はっきり言われたことがありますわ。“マリィは弱い”と。」


その言葉に全員が驚愕する。

連合軍で【剣聖】を超える唯一の天才剣士、強大な【加護】と魔剣“フウガ”を持つ十二将“第1席”マリィ・フォン・ソリドールを“弱い”などの評価は絶対にあり得ないからだ。


「ど、どんだけ強いんスか、ディエザって。」


オーウェンが震えながら呟く。


「……そんな事より、早く援軍の準備とフォーミッドの防衛網について協議しましょう。時間が勿体ない。」

「そうね。まず私は準備が整った第4軍に“光足俊足”掛けてくるわね。」


残された6人は防衛について話し合うのであった。



(……ディエザですら、手も足も出ない“ディア”、か。)


マリィは、誰も気づかれず、笑みを一瞬浮かべるのであった。

いずれ斬り伏せたい、本物の“敵”。

今は届かなくても、いずれ……。



――――


同時刻。

連合軍本部フォーミッドの東端。

ソリドール公爵国とバルバトーズ公爵国の国境境にして帝国との戦線。

“紫電霊峰”の間と間にある、通称『霊峰の平原』


ここが、連合軍と帝国軍の戦地であった。


連合軍本拠地。

10m級の石壁に覆われた巨大要塞『東方大要塞』

ここが、帝国軍を押さえる文字通り“砦”であった。

煌々と松明や灯りを灯す魔石をふんだんに使い、昼間のような明るさを照らして『霊峰の平原』の帝国領側を警戒する。


大要塞内にある幕僚室。

そこに、前線警戒の第7席シータと、彼女の魔法で転送された第4席マイスター、第5席ゴードン、第9席ザイン、それに各軍幹部を揃えて会議を行っている。


「帝国軍は30万人の大軍を進軍させ、恐らく明日の明け方にはこちらに到着する見込みです。」


“霧雨縮地の陣”にて魔力がかなり低下したが、何とか回復して現状を伝えられるまでになったシータが告げる。


「30万か。そんなのに突撃されたら、この要塞なんてすぐ破壊されるな。」


椅子に深く背を預け、マイスターが呟く。


「結界魔法を多重展開したとしても、時間稼ぎにもならないな。」


白い髭を撫でながらザインも続く。


「それだけじゃない。戦略級大魔法なんてぶっ放されたらそれこそ、こちらも敵も被害が甚大だ。だが敵は数が多い。“その程度の犠牲”で済ます可能性もありますね。」


地図を眺めながらゴードンが言う。

会議を共にする幹部たちが顔を青ざめさせる。


「こちらも戦略級大魔法で迎撃をするのはいかがでしょうか?」


第4軍軍団長が提案する。


「それは可能か、第7軍軍団長。」


ザインが第7軍軍団長に水を向ける。

第7軍軍団長は首を横に振る。


「無理です。結界魔法の維持だけでこちらの魔法兵は手いっぱいです。戦略級大魔法の準備と詠唱で、大要塞は丸裸となってしまいます。援軍が到着するまで、控えるべきです。」


相性の良い【加護】同士で、魔力同調を行って強力な最上位魔法を放つ、戦略級大魔法。

戦争の切り札であり、戦局を左右する要素がある。


だが、同時にリスクもある。

数百人、場合により数千人が魔力同調を行うだけで、膨大な時間が掛かる。

さらに、長文詠唱を紡ぐ“連結詠唱”を繰り返すことで生み出せる最上位魔法を練り上げるには、生半可な集中力と魔力ではたどり着かない。

戦局を左右する切り札は、発動までのリスクが非常に高いのだ。


防御を捨てるか、攻撃を捨てるか。

現状の兵力では、二者択一となってしまうのであった。


「ただいま本部より連絡が入りました!」


通信具で伝令を受けた第1軍軍団長が報告する。


「すでに第4軍の本体がこちらに向かったとの事。加えて第2軍、第5軍、第9軍、第10軍が援軍として準備整い次第出立するとの報告です! 第4軍は、ユフィナ様の魔法により、こちらに半日で到着予定とのこと。他の援軍も、同様に順次到着予定とのことです。」

「半日……ありがたいが、戦線維持に間に合うかギリギリだな。」


マイスターがため息をつきながら言う。


「で、あとは誰が来るって?十二将は。」

「そ、それが、あと2人のお方がこちらに向かっているそうです。」


その言葉にマイスターが「はぁ!?」と叫ぶ。


「おいおい、前線にたった二人しか送ってこないのかよ!? 何考えているんだ、シエラさんは!」


そのマイスターの言葉に、少しビクビクしながら第1軍軍団長が答える。


「それが、その……」

「で、誰と誰よ?」

「シエラ様、ディエザ様とのことです。」


全員、目を丸くして驚愕する。


「マジ、かよ。最強の二人が来るのかよ。」

「……マイスターさん、さっき言っていたこと、シエラ様に伝えておきますね。」


ゴードンが半笑いで伝える。


「おい、やめろ! ゴードン、本気でやめろ!!」

「貸し一つですよ、マイスターさん。」


頭を抱える、マイスターであった。



――――



翌朝。

空が白み始めた頃。


「敵襲!! 敵襲!! 眼前に、帝国軍勢あり!!!」


『東方大要塞』の見張り台から、拡声器で声が鳴り響く。


「来た、か。」


ゴードンは『霊峰の平原』に広がって陣を構える、帝国軍を見て息を飲んだ。

前回の衝突も大軍と大軍が激突した。

だが、今回はその規模を遥かに超える、敵。


そしてこちらは、最低限の防衛しか引けていない。


もう少し、早い報告があれば……。

いや、あのタイミングならば仕方がない。

本来なら、皇帝オフェリアが謀反にあった時点で敵の動きなど掴めなかったはずだ。


オフェリアの“作戦”の協力者の一人、4位アーシェもあの中に将軍としているとのこと。

彼女とコンタクトを取ることが出来れば、一部でも敵兵を撤退させることが出来るかもしれない。


まだ悲観するのは早い。



その時。


『ドガアアアアアアアアアアアアアン!』


轟音が鳴り響いた。


「何だ!?」

「ててて、敵襲!! あれは、十傑衆、6位ゾルゲ!!!」


『東方大要塞』のと平原の間にある巨大な人工溝の跳ね橋。

現在は上がっており、敵の足を食い止める役を果たす溝だが、そこに大量の土砂が流れ込み、足場が出来上がっていた。


見ると、魔法で出来た巨大岩を、一人の巨漢が鉄の棍棒で殴り、その岩や土砂で溝を埋めていたのだ。


「ガハハハハハハハハハ!!! 連合軍のひよっこ共、こそこそ隠れてないで出てこい! 我は十傑衆6位ゾルゲ・マザード! 人呼んで“不死王ゾルゲ”なり!! 十二将の小童共、そこに居るのは分かっておる! 我と死合え!! さもなければ……」


ゾルゲは傍に居た魔法兵達が造り上げた岩を、棍棒で殴り飛ばした。

その礫は豪速音と共に、大要塞の魔法結界にぶつかり、轟音と共に結界にヒビが入った。


「このチンケな結界をぶち破って、貴様等を根絶やしにしてくれる!! ガハハハハハハハ!!!」


豪快に笑うゾルゲの元に、目にも止まらぬ速さで斬りつける者が。


「ぬっ!?」


ゾルゲは棍棒でそれを防ぐ。

と、同時に『ドゴォン!』と爆発した。


「グヌゥ!! き、貴様は…」

「おいおい、筋肉ダルマ。何勝手に人様の家の庭を埋めているんだよ。」


上半身を肌蹴させ、服を腰に巻き付けて魔剣を抱える男、第4席マイスターが立っていた。


「貴様は! 怨敵十二将のマイスター・フォン・ランバルトと見た!」

「そうだよ筋肉ダルマ。死ね!」


問答無用でゾルゲに斬りかかるマイスター。

ゾルゲはその剣を棍棒で防ぐ。

だが、再び『ドゴォン!』と爆ぜる。


「グヌゥ!! こ、小賢しい真似を!!」

「だったら斬られてみな。【白夜火爆】マイスター、参る!!」


第4席【白夜の英雄】マイスター・フォン・ランバルト。

質実剛健で有名なランバルト子爵の長子で、【白夜火爆】という加護を得た。

その魔剣で切り裂かれると、火が爆ぜる。

ただ斬るだけでなく、火傷、破裂傷を同時に与える。

受ければ致命傷は必至であり、単純ながら強力な能力である。


上半身を無防備ながら脱ぐのは、彼のスタイルであった。

【白夜の英雄】と連合軍で名を馳せるマイスター。

だが、ぶっきらぼうな性格で酒に弱く、戦場では必ず上半身を露出させる姿で敵と対峙する。

そんな彼を指して【白夜の変態】という不名誉な蔑称もあったりする。


マイスターは火を爆ぜらせながらゾルゲを斬りまくる。

だが、ゾルゲもまた十傑衆に名を連ねる猛者。

最初は爆撃に戸惑ったが、すぐ対応し、その剣戟と爆撃を防ぐ。


「グッ、ハハハハハハハ!! その程度かぁ、マイスターよ!」

「余裕だな、クソダルマ。だがなぁ……これは戦争だぜ?」


マイスターが呟いた瞬間、その脇を影が通り抜け、ゾルゲの脇腹を深く傷つけた。


「グアア!!!」

「悪いなデカブツ。あんた等の対処はオレ達の仕事なんだ。」


そこに居たのは、【剣聖】ゴードン。

全身を青白いオーラを身に纏わせ、ゾルゲを睨む。


傷から血が噴き出るが、すぐに血が止まり、内部から肉が浮き出るよう傷が塞がった。

目を丸くするゴードン。


「グフッグフッ。驚いたようだな。我は伊達に“不死王”などと呼ばれておらんよ。それに……」


ゴードンの頭上に影が。

背筋に悪寒を感じ、すぐ横に避けるゴードン。


『ドン!!』


ゴードンの居た場所に、何かが降ってきた。


「滅ぼしたいのは貴様等だけではない。我らも目的は同じだ。」


下卑た笑みを浮かべるゾルゲ。

そして、空から降ってきた“それ”はゆっくりと立ち上がり、ゴードンとマイスターを睨む。


「良い勘だな。さすが【剣聖】だ。」

「お前は、十傑衆ウルフェルか!」


真っ白い顔に、隈に覆われた目、不気味な眼光を放つ男、ウルフェルが立っていた。

ウルフェルは腕を伸ばすと、腕から羽のように魔力が展開された。


「ご名答。私は“空戦鬼ウルフェル”。英雄たる【剣聖】を葬るのは本意ではないが、敬愛する皇帝オズノート様の御意向こそ神の意志!貴様等を我が皇帝の覇道の礎としてくれよう!!」


そう叫び、ウルフェルは天高く飛翔した。

数少ない飛翔系加護を持つ、ウルフェル。

天空からの奇襲は、前回の衝突で十二将の一人が再起不能となったのだ。


「ゴードン! お前は空飛んだ不健康野郎を狙え! オレはこの筋肉ダルマを押さえる!」

「わかりました!」


十二将と十傑衆の衝突。

その脇で遂に起きる、連合軍と帝国軍の衝突。


戦力差はあるが、地の利はまだ連合軍にある。

それに魔法結界が張ってある。

『東方大要塞』から発するこの結界は、味方の自動防御として効果があり、敵にはその恩恵が得られない。

数では負けていても、徐々に帝国軍兵を切り裂いていく連合軍兵。


だが、それでも数が違う。

徐々に結界を破られ、追い詰められていく連合軍兵。


「ちっ! このままでは……」


マイスターはゾルゲとの剣戟の応酬の合間に、斬られていく連合軍(味方)が映り、舌打ちをする。

援軍はまだか!?


その瞬間が命取りとなった。


「勝機!!」


ゾルゲの鉄の棍棒の横薙ぎが、マイスターの胴をとらえた。


「グアァ!!」


咄嗟に出した剣の脇で防ぐが、勢いよく飛ばされるマイスター。

その瞬間を見逃すほど、十傑衆は甘くない。


「今だ! ジャッカル!」


帝国軍勢に紛れていた、8位ジャッカルが飛び出してきた。

手には鉤爪の武具。

それを倒れ込むマイスター目がけて切り裂く。


「グハアア!!!」


マイスターの胸板に4本の爪傷が付く。


「ケッ、浅いぜ!」


憎々しくジャッカルは叫び、距離を取る。

マイスターは辛うじて身を下げ、致命傷を避けた。


「うぬぅ……さすがは英雄マイスターと言うだけあるか。今のを避けるとはな。」


ゾルゲが感嘆したように呟く。


「だが傷は負わせた。もはやオレ達の勝利だろ? 後はオレに任せろよ。」


ジャッカルは鉤爪に着いた血を振り払ってマイスターを睨む。

その言葉にゾルゲは眉間に皺を寄せる。


「何を言うか。きゃつは我の獲物だ。お主の役目は終わりだ。お主は引き続き戦線で連合軍を切り裂くことと“アレ”の合図を待て。」


ゾルゲの言葉に、チッ!と舌打ちをしてジャッカルは背を向ける。


「かー、つまんねぇ。オレも十二将と戦りたかったわ。援軍は来ないのかぁ!?」

「阿呆め。この進軍は、連合軍を蹂躙し、我が物顔の四大公爵国の屑共を屠る一歩だ。十二将との邂逅はまだまだあるだろう。我慢せい、小童が。」


ゾルゲの物言いに、青筋を立てるジャッカル。


「あー、そうかよそうかよ。別にいいわ。そんな手負いの雑魚を嬲って満足するクソ親父に譲ってやるわ。オレはもっと強敵とギリギリの闘いを楽しみたいんだよ。シエラって言ったか? 主席の女。そいつと命のやり取りがしてぇよ!」


その言葉にゾルゲも青筋を立てる。


「身の程知らずが。言葉を選べよ? この手負いを殺した次は、貴様でも構わぬのだぞ?」


その言葉に、ジャッカルは見下した目でゾルゲに言う。


「おお、いいぜ!! ゾルゲの旦那は“不死”なんだろ? 切り裂き甲斐があるってもんだ。やろうぜ!? そんな雑魚放っておいて、今すぐ、オレと!」

「糞が。我も戦闘は好むが、貴様みたいに見境の無い無節操ではないわ。大人しく作戦に従え。この場にはカイゼル様もおるのだぞ。」


次の瞬間、ゾルゲの元に影が。


「ぬ!」


『ドゴン!!!』


「おいおい、何オレを無視して言い合っているんだ。一対二? 手負い? 構わねぇよ。来いよ、クソ野郎共。」


傷から血を流しながら、マイスターが挑発する。

その姿に、ゾルゲもジャッカルも笑みを浮かべる。


「くくくく、それでこそ宿敵というものだ! 認めるぞ! 認めるぞマイスター! 貴様こそ、真の強者だ!」

「おもしれぇ! やっぱりこいつとやらせろ、ゾルゲの親父ぃ!」

「抜かすな小僧! 早い者勝ちだ!!」


同時に襲いかかる十傑衆ゾルゲとジャッカル。


マイスターは魔剣に魔力を込める。


「これは……カイゼルのクソ野郎に使う予定だったんだがな。」


その時。


『ガァン! ガァン!』


一瞬にして、ゾルゲとジャッカルが吹き飛ばされた。

ぎりぎり、武器でその攻撃を防いだが勢いは殺せず、倒れ込む二人。


マイスターの前には、ゴードンが立っていた。


「マイスターさん、さすがに一対二はきついでしょ。オレも助太刀しますよ。」

「ゴードン、お前……ウルフェルは!?」


ゴードンはくいっと後ろを見る。

そこには、切り伏せられ、血を流しながら倒れるウルフェルが居た。


「さすが7位って奴だ。中々骨が折れましたよ。」

「それをこうもあっさり切り伏せるからなあ。流石は【剣聖】ゴードン様だぜ。」


嫌味を言って笑うマイスター。

そのやり取りの中、十傑衆のゾルゲとジャッカルが立ち上がった。


「まさか、ウルフェルを切り伏せるとはな。」

「おいゾルゲの親父。【剣聖】はオレに寄越せ。」


構える二人。


「遊んでいる場合じゃ、ありません!」


女の声。

ゴードンは剣を構えると、目にも止まらぬ速さでゴードンの剣を捉える女。

そのまま、女に吹き飛ばされるゴードン。


「ゴードン!!」


マイスターが叫ぶ。


「おいおい! 待てよアーシェ!!」

「横取りするとは、十傑衆の風上にもおけぬぞ!!」



唖然とする二人の十傑衆。

ゴードンと対峙するように見せかけ、この場から離れさせたのは……。


帝国軍大将団”十傑衆”4位、アーシェであった。

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