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悪役令嬢は、彼に一途な恋をする  作者: しろとくろの
3/3

番外編 琢磨様のおしおき

初めて10,000PVを頂いたので、記念に番外編を書きました。

たくさんの方に読んで頂けたことを感謝してます。


少しでも楽しんでいただけますように!

「百合亜、これはどういうことかな?」


 私に向けられる、とても素敵な琢磨様の笑顔。でも今は目が笑ってない! あれは絶対怒ってる……!!

 そもそも私がこんなことをしてるのは琢磨様のせいなのだ。

 た、たぶん。きっと。断じて私のせいではない、はず。


 今朝、琢磨様はヒロインよりも私を選んでくれた。

 その時の私は、琢磨様に好きだと言ってもらえたことが嬉しかった。琢磨様と一緒にいられるかもしれない。少なくとも、後一年は一緒にいられる!

 私は琢磨様の傍にいられることをとても喜んだ。


 その時の私は気持ちが通じあったことに舞い上がっていた。

 なので、すっかり忘れていたのだ。琢磨様が、私に『おしおき』をすると言っていたことを……!!


 帰りのホームルームが始まる頃『あれ?そういえば、さっき琢磨様が何か言っていたかもしれない』と、その事を思い出した私はとても焦っていた。

 お父様に急いで電話をして、帰りの車を用意してもらった私は、その車の中でお父様に相談をしてしまった。

 よりにもよって、お父様に……だ!

 さすがに全部は言えなかったので、琢磨様から逃げたいんです。と言ったと思う。


 繰り返し言うが、私は焦っていたのだ。

 相談する人を間違えた、なんて気づくはずがなかった――と言い訳をしておきたい。



 私を心配したお父様から提案されたのが、その名も『バリケード作戦』だ。

 部屋の扉の前に、物をたくさん置いて外から開けられなくするこの作戦は、以前お父様と一緒に見たドラマで、主人公が使っていた方法なのだ。

 この作戦だったら大丈夫かもしれない。そう思った私とお父様は、ハイタッチして喜んだ。


 でも、私もお父様も失念していたのだ。

 私の部屋の扉が引き戸だということを……。


 さっき、お父様は部屋から出たときに気づいたはず!!

 お、お父様……言ってくれればよかったのに……!!


 そして今、琢磨様は難なく扉を開けて、私は絶体絶命といった状況なのだ。


「百合亜。一緒に片付けてあげるから、早くこっちへおいで」


 琢磨様が笑って、私とお父様がぐちゃぐちゃに置いた本のタワーやらクッションやらを片付けてくれる。


 あれ? もしかして、そんなに怒ってないのかも?

 そう思った私は、笑顔の琢磨様にふらふらと近寄っていってしまった。


「百合亜……やっと来たね。一緒に帰ろうと思って百合亜を迎えに行ったのに、教室にいなかったから……心配したんだよ?」

「琢磨様……ご心配をおかけしてすみません……」


 クラスが分かれてしまった私を、琢磨様は迎えに来てくれたようだった。悪かったなと思い、素直に謝った私を抱きしめて、琢磨様がにこにこと笑っている。


「大丈夫だよ。さあ、百合亜を捕まえたし始めようか?」

「え? 何をですか?」

「忘れちゃったの? おしおきだよ。百合亜が一緒に帰ってくれれば何もしなかったのに。先に帰った百合亜がいけないんだよ?」


 う、嘘でしょ……。お父様への電話が裏目に出るなんて。


「そこへ座ろうか」


 私を抱き上げて、琢磨様は近くのソファに座る。その体勢のまま琢磨様が座ると、私は琢磨様の膝に座るようになってしまう。


 それはすごく恥ずかしい体勢だった。

 琢磨様の顔がいつもよりも近くて胸が苦しい。綺麗な青い瞳で見つめられると、身体の芯が熱くなる。


「お仕置きは何にしようか?」

「そ、そんな……おしおきだなんて嫌です」

「でも、可愛い嫉妬をした罰と、先に帰った罰を与えないとね」


 そう言って、琢磨様は私の顔に手を添えて親指で唇をなぞる。


「ねぇ、百合亜。百合亜の唇を食べてもいいかな?」


 た、食べる!? 食べるなんてそんな……!!

 初めてのキスもまだなのに……!?

 い、いやいや! そんなの無理!


 私がいやいやと首を振ると琢磨様は「冗談だよ。言ってみただけ」と、くすくす笑っている。


「百合亜のことが大好きだから、おしおきでキスなんてしないよ。だから、今はこれだけ」


 そう言った、琢磨様の唇が私の首筋に触れる。その瞬間、軽い痛みが私を襲った。

 一瞬戸惑ったが、何をされたか理解した私の身体が、徐々に熱くなっていく。


「百合亜が俺のものだっていう印、ね」


 その言葉が恥ずかしくて、琢磨様をちらりとしか見られなかったけど、琢磨様の頬も耳も赤くなっていた気がする。

 私も恥ずかしいけど、琢磨様も恥ずかしいのかもしれない。そう思うとちょっとだけ安心した。


「これからも二人の思い出を作っていこう。今までみたいに、これからもずっと」

「……はい、琢磨様」


 こうして、心配していた琢磨様からの『おしおき』は、幸せに包まれて終わった。

 琢磨様が帰った後、『琢磨様の印』を鏡で見た私が「こ、これが噂の!?」と一人で悶絶していたのは、誰にも言えない秘密である。

ハロウィンお祝いです(*'▽'*)

短いので内緒でアップしました。


☆☆☆


「百合亜、トリックオアトリート」

「え、琢磨様?」

「お菓子くれないと悪戯するよ?」


 小首を傾げる琢磨様の悪戯顔に、私の顔が熱くなる。


 ちょ、その顔反則です! 可愛すぎる!

 顔が熱い。火が出そう。

 いや、出る! もうすぐ出せる!


「百合亜、そんなに可愛い顔しないで。我慢できない」

「あ、琢磨様」

「お菓子がないなら、唇をもらおうか。前は食べさせてもらえなかったからね」

「だ、だめです。琢磨様」

「しー……。ほら、黙って?」

「んぅ」


 琢磨様は飴を私の口に入れる。


「食べさせて? 百合亜……」


 無理、無理無理! 絶対無理!

 慌てて琢磨様から顔を逸らして、飴を飲み込む。


 く、苦しい! 飴が! 飴が詰まった!!

 涙目であわあわしてる私に琢磨様が水をくれる。


「……ありがとうございます、琢磨様」

「冗談なのに……百合亜は本当に可愛いね」

「ううぅ……」

「しょうがないな。また今度食べさせてもらうよ」


 そう言って琢磨様は笑うのだった。

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