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貧しさの彼方から  作者: 此道一歩
3/9

松島グループ支配人

そんなある日、たか子と奈々子がリビングで夕食後のデザートを楽しんでいる時、明子がやってきてたか子の隣に腰を下ろした。

「奈々子さん、学校でいじめがあるって噂を聞いたんだけど何か知っている?」

「えっー、うちの学校でいじめがあるの? 聞いたことないけどなぁ」

奈々子は不思議そうに答えた。


「そうなの、でも何かわかったら教えてね」

「はい了解です」奈々子はそう言うとニコニコしながら敬礼をした。

「あなたといると楽しいわね」その傍らでたか子は微笑んでいた。


「ところで鬼軍曹、 一つお聞きしたいのですがよろしいですか?」

奈々子は背筋をピンと伸ばして微笑みながらそう言うと

「何?その鬼軍曹って……」たか子が笑った。

「あのねえ、お願いだから、せめてその鬼は取ってくれる……」

明子は笑いながら参ったというように話すと

「はっ、軍曹殿わかりました」

「その軍曹に何が聞きたいの?」

「あのですね、明子さんは、どうやってママと知り合ったの? どうして支配人になったの? ずっと知りたかったの……」

「それはね、神様の導きね 」たか子が優しく言うと

「え、何かすごいことがあったの? 」奈々子は目を見開いて興味津々で尋ねる。


「実はね、私は大学を出て、最初は佐久間商事に就職する予定だったの、内定をもらって喜んでいたら大学を卒業する三月になって、急に内定の取り消し通知が来て、慌てて会社へ行ったの、そしたら内定は誤りだったって言うのよ」

「えっー、そんなのあり?」奈々子が驚く。


「そう思うでしょ。だからそんなこと今頃言われても困りますってだいぶ食いついたんだけど、どうにもならなくて、でも最後に、『それじゃ社長夫妻のお嬢さんの家庭教師をしてみませんか』って言われたのよ。『給料は同じで社長夫妻の家に住んで、食事も出してもらって、その代わりに拘束時間が増えてしまいますがどうですか?』って言われて、もう受けるしかないって思ったのよ。問題がなければそのうちには本社採用にするからって言われたし、仕方なく家庭教師として働くことに決めたんだけど……」


「佐久間ってパパが行ってたあの佐久間なの?」

「そうあの佐久間なのよ」

「なんか汚いことするんだよね」奈々子も顔をしかめていた。

「ほんとにね、でもその時はもうどうしようもなかったのよ。だけどその娘がまぁワガママで好き放題で、やりたい放題、母親は佐久間の後妻なのよね。継母だったからかもしれないけど、その子を叱ることをしないのよ、だからその子はやりたい放題、もう無茶苦茶だったわ」

明子はいくらか昔の腹立たしさを思い出しているようだった。


「すごいね、そんな子いるんだ!」

「いるわよ、奈々子さんの高校の同級生よ、佐久間信子って言うの、知らない?」

「うーん聞いたことないなぁ」

「だけどね、小学生になったんだし、何とかしてあげないとこのままだったら大変なことになると思って、何かあるたびに一生懸命お話ししたのよ。でもね全然話が聞けないの、とにかく気に入らなかったら何でも投げるの、ちょうど一週間目の夜、算数教えていたら問題が分からなかったのか、突然、ふてくされて横向いて止めてしまったから、お説教始めたら『いやっー』ていって、教科書を放り投げたの、私ももうだめって思って、その手をピシャって叩いたのよ」


「おっ、やるねー」奈々子が歩調を合わす。

「そしたら大声で泣きながら『ママ、ママ』って、走って部屋から出て行って、その後母親の亜美がきて、『子供叩いてどういうつもりなの、叩いて教えるんだったら誰にでもできるわよ、あなたにはがっかりしたわ、この子に謝りなさい』って、すごい剣幕でねー、私が説明しようとしても聞く耳持たずで、参ったわ」

「それでどうなったの?」奈々子は目を見開いて前のめりになる。

「『謝るの、謝らないの』って言うから、『子供のためになりません、だから謝りません』って言ったら、そのまま首になったのよ、『もうやめてちょうだい』そう言われて突然家を追い出されたの」

「信じられないね、何なのあの人、やっぱり、昔からおかしいのね」

息をのんで聞いていた奈々子も呆れてしまった。

たか子はその様子を見ながら何も言わずただ微笑んでいた。


「参ったなぁって思いながら大きな荷物を二つ持って坂道を登っていたらちょうど後ろから車で会長が通りかかって声をかけてくれたの、『どうなさったのこんな夜に! どこまで行かれるの?』って会長が優しく聞いてくださったのよ、だから、急にクビになって追い出されていくところがなくてどうしようかと考えていますっていったら、ここに連れてきてくださったのよ」

「へえー、それが二人の出会いなんだ、ホントなんか神がかってるね」

 奈々子は佐久間の話が済んでほっと一息ついた様子だった。


「この家の客室に泊めてくださって、食事までいただいて、ホテルに泊まっているようだったわ。お風呂頂いた後にちょうどこの部屋で、『一杯飲みませんか』って誘われてビールを飲みながら二人で話したの、それで松島グループの会長だって知って、頭が真っ白になったの、今でも覚えているわ!」

「そりゃ、びっくりするよね」

「それだけでも驚いているのに、会長が、行くところがないのなら私の秘書をしてくれませんかって言ってくれて、もう夢でもみているのかって感じだったの」

「へえー」


「私にとって松島グループって言えば、天空の上のそのまだ上の存在だったから、それもそこのトップの会長秘書だなんて漫画じゃないんだからって思ったけど、現実の話なのよね。でもさすがに大学出たてで、世の中のことも知らないし、自分がそんな人間じゃないことぐらいはわかっていたし、お世話になった方に、ご迷惑おかけするようなことはさすがにできないって思って、断腸の思いでお断りしたの」


「えっー、一度は断ったんだー、ねえママ、ママはどうして初めてあった人に秘書してもらおうって思ったの、それが知りたい、どうして? どうしてなの?」

 奈々子は目を輝かせて身体を乗り出した。

「奈々子ちゃん、楽しそうね」たか子が微笑んで見つめると、

「そりゃ、ママ、そこは知りたいよ、ママと明子さんのコンビって、無限大分の一の確立だよ、化学とか物理では絶対に証明できない世界だよ、奈々子、何よりもそこが知りたい」滅多には見せない奈々子の好奇心であった。

「奈々子さんらしいわねー、天才少女の頭で考えても答えが出ないから、必死なのね、でもね、コンビじゃないのよ、あくまで会長と支配人ですからね、そこだけはわきまえているのよ」

「明子さんはいつまでたっても堅苦しいのよ、でもやっぱり誰が見てもコンビよ、コンビだから違和感がないのよ」

「会長……」明子はうれしそうだった。


「車の中から見た時に、不思議な違和感があったの、何て言うか、エネルギーっていうか、オーラっていうか、でも、その時に感じたのは、本当にかすかなもので、どちらかというと、違和感みたいなものだったの。でも、入浴した後の彼女はすごかった。エネルギーに満ち溢れていて、オーラなんていうのは、言葉でしか知らないけど、でも、これが人のオーラなのかって感嘆したわ」

「すごいね、ママ、そんなの感じるんだ!」

奈々子は感動したように彼女を見つめた。


「そんな意味じゃないのよ、オーラが見えたわけじゃないし…… ただ、感じたのか、直感しただけなのか、それはわからない。でも、その瞬間、絶対にそばにいてほしいって思ったの」

「すごい、運命だねー」


「父が亡くなってまだ三か月ぐらいの時だったから、信頼できる話し相手が欲しいって言う思いもあったし、グループ内の一部の人から、責任の重さを説かれて、何か始めなければ、っていう思いもあった。そこだけ考えても、明子さんにいてもらう価値はあったの。でもあの時感じたものは、そんなことはどうでもよかった。私の魂が彼女を求めたような感じだったの。でもあの不思議な感触はもう忘れてしまったわ、彼女の日々を見ていることで当たり前になってしまったのね」


「やはり、なんか、神秘的な話だねー、こんな話、奈々子、大好きだよ……」

彼女がにこにこしながら口を挟んだ。


「お受けするだけの力がないってお話ししたら、会長がね『どうせ誰もやる人がいないんだから大丈夫よ、会長秘書なんているだけでいいんだから、それで自分に分かることがあったら適当に意見言っていればいいのよ、わからなければ黙っていればいいの、そんなものよ、それに行くところも仕事もないんでしょ、だったらそれで我慢したら…』って言って下さって…… 最初から圧倒されてね、すごい人だなぁって思ったわ、そこまで言っていただけると私も欲が出たのね、もともと野心家だから願ってもないチャンスだったのよ」


「なるほどねー、それで十年してすごい人になったのかー、なんか感動物語だね……」


「でもね、彼女はほんとにすごい人だったのよ、彼女が家に来て三日めぐらいだったけど、松島企画の社長が企業買収の話を持ってきたの…… 」


「そこで支配人が活躍したの? 」


「そうなの、何でも思ったことがあったら意見を言えばいいからねって、そう言って彼女は私の隣で話を聞いていたの……」


「ヘえー、それで何があったの?」



 話は当時に遡るが…


 明子が松島の家に来て三日めの午後二時のことであった。

 松島企画の社長が企業買収についての決裁文書を持ってやってきた。


「会長、この半導体の需要はこれまでの流れをみてもわかりますように、今後ますます増大していくことは周知の事実です。私も以前からこの部門への進出を検討していましたがなかなかいい案がまとまらず、部下ともども悩んでいたところだったんです。そこへ、この斎藤部長が、企業買収の提案をしてくれまして、十分な調査をいたしましたところ、これは買い物だと確信いたしました。一から立ち上げることは難しいですが、既に確立されたものを安価で手に入れることができるわけですから、ここは松島グループが乗り出すべきと考えております 」

 社長は手柄を土産にやって来たような顔をして、ソファにもたれたまま、そばにいる斎藤部長の肩をポンポンと叩きながら自信満々に話した。


「会長、ちょっとよろしいでしょうか」

 その時、恐る恐る明子がたか子に伺いを立てた。


「どうぞ、気になるところがあれば何でも聞いてちょうだい」たか子が答えると


「半導体の需要が今後ますます拡大するという見込みを持たれているようですがその根拠は何なのでしょうか?」明子が社長に向かって尋ねた。


「失礼ですがこちらの方は? 」社長が驚いたように会長を見つめて尋ねると


「私の秘書です。私はよくわかりませんので、今後は彼女が私に代わってすべてを仕切っていくことになると思います」たか子は冷たく言い放った。


「会長、こんな若い女性に全てを任せるのですか、それはちょっと無謀じゃないですか、内にも優秀なスタッフはたくさんいます、もっと彼らを頼って欲しいのですが…… それに彼女はどこから連れてこられたのですか?」

 呆れたように社長が尋ねると、


「会長の私が、 一企業の社長のあなたにそんな事を答えなくてはいけませんか? 私のすることがお気に召さなければどうぞご自由になさってください」

 大きな瞳を見開いて睨み付けるように社長に突き刺した。


「いえ、全くそんなつもりはありませんので、失礼しました」


「挨拶が遅れて申し訳ありませんでした、高島と申します。今後ともよろしくお願い致します」

 明子は平静を装って挨拶するのが精一杯だった。


「おい、需要調査の資料は持ってきているのか?」

 社長が担当課長に尋ねると


「いえそれは……」


「持ってきてないのか、じゃあ仕方ない。会長申し訳ないのですが改めて資料を持って出直しさせていただきます」


 これが、明子が対応した初めての仕事であった。大学時代に経済学を学んでいた彼女は、『需要に対して供給過多に陥る日本経済の脆弱性』と言う卒業論文をまとめていた。

 仮にそれがなかったとしても、半導体部門において今後供給過多に陥る事は多少経済をかじったことがあるものであればたやすく理解できるところであった。

 一部の企業においては既に半導体部門から撤退を始めている現状にあって、この時期にこの分野に手を出すということは全くあり得ない話だった。


「会長、すみません生意気なことを言ってしまって…… 」


「とんでもない、とても助かった…… 今まではね、よくわからないし、もうめんどくさいからすぐに印鑑をついていたのよ、だけどね、本社の社長が口うるさく言うのよ、少しお勉強していただきたいって、もうすぐそこの社長が来るけどね」



「失礼します」こう言って部屋に入ってきた初老の男性は松島グループ本社の社長、青野であった。


「社長、紹介します、先日電話でお話しした高島明子さんです」


「はじめまして高島明子と申します。どうぞよろしくお願いいたします」


「こちらこそ、本社の青野と申します。大変でしょうが頑張ってください、会長のことよろしくお願い致します」

 彼は紳士的に挨拶した。


「社長は、こんな若い女で大丈夫ですかって言わないのですか?」


「会長、あなたが見つけてきてあなたが決めたんでしょ、若かろうが、男であろうが女であろうが、スタートする前からそんな失礼な話しはしないですよ。お父上はよく言っておられましたよ。お嬢さんの人を見る目だけは大したものだって……」

 彼は微笑ながらそう言うと、作ってきた名刺と二つの携帯電話を明子に差し出した。


「携帯は、とりあえず、会社内部と外部で使い分けされてはどうですか。名刺はとりあえず五〇〇枚ありますので、足りなくなったらまた言ってください」


「はいありがとうございます。」


「それから、 一つだけ忠告させていただいてよろしいでしょうか」


「はいお願いします。」

 明子は背筋をぴんと伸ばし真剣な表情で青野に向かった。


「高島さん、あなたが一〇〇点の人間だとして、不安そうにおどおどしてしまうと、相手は六〇点の人間だと思ってしまいます。でもあなたが自信を持って、威厳を持って話をすれば、あなたのことを相手は二〇〇点の人間だと思います。人と向き合うというのは、そういうことだと思います。心配しないで持っている知識をすべて吐き出せばいいですよ。そのことで仮に失敗したとしても、会長はそんなことは責めないし、なんとも思いません。むしろそれはあなたの今後の糧になる、私はそう思います。亡くなられた会長も、現会長も、見かけや年齢、育ちや性別で人を判断することは絶対にいたしません。だからあなたも、この位置に立つと決めたからには最低でもそれだけの事は腹に据えてかかっていただきたい」


「はいわかりました。精一杯勤めさせていただきます」明子は大きく目を見開いてしっかりと彼を見つめ答えた。


 その様子を見ていたたか子はにこにこしながら、父が最も信頼したこの本社社長の青野に感謝していた。

「ここに入る前、本社から電話がありました。企画の企業買収の話が通らなかったと聞きましたが、会長就任以来、初めてのことですね 」


「いや、別に拒否したわけじゃないんですよ、彼女が需要調査の資料を求めたら、出直しますって慌てて帰って行っただけなのよ」


「そうですか…」彼は嬉しそうに何かをかみしめているようだった。


 そして三日後、松島企画の社長が担当部長と課長を連れて、再び会長のもとにやってきた。

 差し出された資料を見て明子は驚いた。

 確かに半導体の今後の需要が僅かずつではあるが伸びていく事は彼女も理解していた。

 しかしその資料には海外への依存率の動向、国内における供給過多の状況がまったく示されておらず、それはまるで子供が作った資料のようであった。

 驚いた明子は「それでは少しお時間をいただけますか、改めてこちらからご連絡をさせていただきます」自信を持ってそう答えた。


「いや時間がないんですよ、その資料見ていただければ一目瞭然でしょう、ご理解いただけるのなら早めに承認をいただきたいのですが……」


「会長の所へ資料を持ってきて、それを検証する時間もなくすぐに承認しろと、おっしゃるのですか?」


「いやでも時間がないんですよ」


「それはおかしいことをおっしゃいますね、先だってからまだ四日しか経っていないんですよ、少なくとも三十億近い買い物をするのですから、会長のところで十分時間がかかる事は想定できたんじゃないですか、それとも会長は黙って承認すると思っていたんですか?」

 明子は想定していたシナリオを立て板に水のごとく語った。


「言ってる事はわかりますが、我々も時間がない中で動いていくのです。もしこのことで、買収ができなくなったらあなたは責任が取れるんですか?」


「そうなれば縁がなかったということですね」

 たか子が初めて口を開いた。


「会長!」社長が驚いてたか子に目を向けた。


「検証する時間をいただけないのであれば、この話はなかったことにしてください。私は承認するわけにはいきません」


「わかりました。それでは待ちますができるだけ早くお願いします」


 彼らが帰った後で、

「会長、この資料の一番下にある谷さんという担当の方と話をしても構いませんか」明子は早速たか子に尋ねた。


「ええ、大丈夫よ、ただ彼も立場があるでしょうから、内々で話してみますか?」


「はいできればそうさせていただきたいのですが……」


「わかりました、じゃあ来てもらいましょう」

 たか子はこの事情を本社青野に説明し、彼から谷に連絡が入った。


 不思議に思いながら谷は、会長からの呼び出しにおそるおそるやってきた。

「はじめまして、マーケット調査課の谷と申します」

 三〇代前半の気持ちの良さそうな若者であった。


「どうぞお座りになってください。松島ですよろしくお願いしますね」


「会長秘書の高島と申します。お忙しいのにお呼びだてして申し訳ありません。

実はこの資料についてお伺いしたいのですが……」

 明子がそう言って需要予測の資料を彼の前に差し出すと、それを手に取った彼は目を大きく見開いて明子を見つめた。


「どうしてこれがここにあるんでしょうか?」


「おたくの社長がこれを持ってきて、 BBCデータを買収したいと申し出てきました。半導体の需要はまだまだ拡大傾向にあるからこれはいい買い物だと言う判断をしたようです」


「とんでもないです。そんなこと言ってたら笑われます。これは一昨日半導体の需要予測だけを求められたもので、不思議には思っていましたが…… 確かに需要の伸びはいくらかは見込めますが、もう一年後には完全な供給過多になってしまいます。海外企業のシェアーも増えていますし、国内では既に撤退する企業も出ています。今頃そんな企業買収してどうするんですか!」

 それを聞いたたか子と明子は顔を見合わせて微笑んだ。


「わかりました、私もおっしゃる通りだと思います。今後はそれに沿った形で進めさせていただきますが、あなたにご迷惑をおかけすることになってはいけないので、このことは内々にしていただけますか?」

 たか子が心配して尋ねると


「はいよろしくお願いします、私も社長を飛び越えて、会長の前でこんな話をしたことが知れると、どうなるかわかりませんのでそこのところはご配慮をお願いします」


「これは私の携帯番号です。今後、何かありましたらこれに連絡いただければと存じます。私の方からご連絡をさせていただく時にも必ずこの携帯電話を使いますのでよろしくお願いします」

 明子が名刺の裏に携帯番号をメモして渡した。


 不審に思った明子は、たか子に勧められて本社の青野に相談をした。

「どうしてもこの買収は不可解でなりません。何か裏があるように思うのは考えすぎでしょうか?」


「いやあなたがそう思うのなら、そこはとことん調べてみるべきだと思いますよ。そんなことで企業が揺らぐような事は絶対にありませんが、それでも懸命に頑張っている社員の気持ちを削いでしまうことになりますからね、もしそこに何かあるのであれば、明確にしておく必要があると思いますね」


「こういう場合、どうすれば……」と言いかけた彼女を遮って彼が話し始めた。


「会社に関することで経費が必要になる場合、全てこちらでお支払いをさせていただきまので、請求書は、松島グループ本社あてでお願いします。ただこうしたものを外部に発注する場合、会社の信用問題に関わる場合もありますので…… そこはご理解いただけると思うのですが……」


「はいよくわかります。だからこのことについてもどうしたものかと……」


「松島企画には、内々で話ができる総務課課長補佐の神崎という切れ者の男がいます。信用のできる男です。会って話を聞いてみますか?」


「ぜひお願いします」


「わかりました。私の方から事情を話して、高島さんの携帯へ電話を入れさせます。がんばって下さいね」


「はい、ありがとうございます」


 青野は、明子がたか子の秘書として、やっていけるとは思っていなかった。

会長秘書は、社会一般的に言われる秘書とは全く異なっている。会長の判断に大きく影響を及ぼすことができなければ、その職責が果たせない。

 経済を読み、政治を知り、場合によっては政界に圧力をかけることも必要で、何よりも信頼できるブレインを抱えなければ、多様な事案に対処できない。

 しかし、彼は、幼くして母を亡くし、父親を亡くしてまだ三ケ月あまり、莫大な資産を相続しながらも、身内は一人もなく、子どもを産めない身体であることが結婚をも断念させ、日々悲しみに暮れているたか子が不憫でならなかった。

 だから、高島明子はたか子の心の支えになって、彼女を癒してくれればそれでいい、それでたか子の心が救われるのであればそれでいい、何がどうあろうと松島グループは存続していく、彼はそう考えていた。

( 後どのくらいの時間があるのかはわからないが、伝えられるものから、一つずつ伝えていこう……)彼はそう思っていた。


 三〇分後、神崎から電話をもらった彼女は、明朝九時に会うことを約束した。


 九時に松嶋邸にやって来た神崎の口から

「あのBBCデータは、社長の母親の実家が立ち上げた会社で、社長の娘さんの名義で一五%の株を所有しています。会社は既に倒産寸前で、時価評価は限りなく0に近いと思われます」


「よく調べられていますね、この話を聞いてから調べられたんですか?」

 明子が尋ねると、


「はい、いろんな部署に、心ある社員がいますので、おかしな案件については、ほとんど情報が入ってきます。そうした者達の力を借りて、内密に調査を行います。青野社長からそういった指示を受けていますので、必要になるかどうかは別にして、必ず答えだけは出して待っています」


「何を待っているんですか」たか子が申し訳なさそうに尋ねると、


「会長からお呼びがかかるのを待っています」彼はたか子の目を見て訴えるように答えた。


「無能な会長で、本当に申し訳ありません。皆さんのご苦労をずっと無駄にしてきたんですね、ほんとにごめんなさい」


「会長、止めて下さい。責めたつもりは、全くありません。私が申し上げたいのは、命令をいただければ、いつでも内密に動くことのできる人間が、いつでも会長のおそばにいますよということを知っておいて欲しいのです」


「ありがとうございます」


「私は、先日から会長の秘書をいたしておりますが、右も左もわかりません。会長のためにどうか、これからもお力をお貸しください」

明子が深々と頭を下げると、


「もちろんです。正直言って、驚いています。あなたのように若い方が…… ただ青野からも、今後は高島さんの指示に従うように言われています。何でもおっしゃって下さい」彼の誠実さが伝わってくる。


「いえ、お恥ずかしい話ですが、今は指示が出せるような人間ではありません。ですから、むしろご指導をいただかなければ、何もできないと思っています。どうかよろしくお願いします」明子は重ねて深く頭を下げた。

 

 誠実に頭を下げる彼女を見て、彼の脳裏には

「みんなで彼女を育ててやってくれ」といった青野の言葉が浮かんできた。


 神崎は四二歳、明子は二二歳であった。最初に話を聞いたとき、神崎は(かんべんして欲しい)と思ったが、それでも尊敬する青野に言葉を返すことができず松島邸に足を運んだ。

 しかし、たか子の疲れたような悲しい表情に触れて、加えてまだ若い明子が懸命に何かをしようとしている様子を見て、彼はできることはしてあげようと考えるようになっていた。


「神崎さんはこの件をどう処理すべきとお考えですか、よろしければご意見を伺えなんでしょうか」心配 そうに尋ねる明子に


「それは私が最初に答えるべきお話しではないと思います。この後あなたは会長とよくご相談なさって、ある程度の方針を定めた上で、進め方や手続きなどについて心配があれば私にご相談いただければと思いますが…… 」

 彼は機械的に答えた。


「でも私はあなたの個人的な意見がお伺いしたいです。これまでおそらく私が無能なせいであなた方の努力を何度も無駄にしていると思います。社長については、長い間見てこられたはずです。そうしたことも含めてあなたの今の個人的な見解お伺いしたいのですが……」

 たか子は何としても彼の思いを聞いてみたかった。


「わかりました。私の個人的な見解ということであれば辞表を出して頂きたいと考えてます。あの人はあまりにも利己主義に走り過ぎています。したがって彼を取り巻く周りの人たちもその色に染まってしまって、このままでは彼の霞が周囲をますます侵食してしまいます。身内の利益のために、会社を利用しようとした人です。考える余地はないと思います」


「ありがとうございます、ただ最終的な結論は少しだけ考えさせてください」


「わかりました」


「あなたはどうするべきだと思うの?」

 神崎が帰った後たか子は明子に尋ねた。


「私は来たばかりでいろいろなことがわかりません。あの方が社長になった背景も知りません。ですがどんなことがあったにしても、今回のことは絶対に許されるべきではないと思います。ですから、辞表を書いていただくべきだと思いますが、ただそれに伴って、次の社長がすんなり決まるのかどうか、私にはそのあたりのことさえわかりません。こんな時秘書は何をすれば良いのでしょうか?」

 明子は、はっきりと判断しかねる部分については包み隠すことなくたか子にぶつけた。


「青野さんに思いをぶつけてみたら?」たか子が微笑むと


「そうですね、今の私にはそのツールしかないですよね。ですが、その前に、会長はどう思われているのですか?」


「私はよくわからない…… だから全てあなたに任せるわ」


「そんな…… 会長、でも……」


「大丈夫よ、どっちにしたって一〇〇点の解答にはならないわ、だからあなたに任せる」


「わかりました。では、青野社長の所へ行ってきます!」


「そうね、電話より出向いた方がいいわね、それから、移動の時は、遠慮しないで、運転手さんに言ってね、いちいち私に断る必要はないから……」


「はい、ありがとうございます」


 青野は、

「あなたが一連を仕切っていく中で、私の意見を聞くことは避けた方がいい。もし、私が反対意見を述べて、あなたがそのことを納得したとしても、あなたの思いとは違った結論に向っていくわけですから、どこかで違和感が生じてしまいます。その時にはベストな結果を得ることができなくなります。もちろん、今日のことについては賛成ですよ、ただ今後のために余計な一言を言わせていただきました。どこか、頭の片隅にとどめておいて下さい」


「はい、ありがとうございます。助かります」


「それで、進め方なんですが、まず周囲の取り巻きを一人ずつ引き離して、孤立させたところで会長から印籠を渡していただく…… こんな感じですかね」


「まず、外堀を埋めるということですね」


「いや、彼らが堀の役目を果たしているとは思えないので、ちょっとその表現は当てはまらないかと思いますね」


「そうですね、失礼しました、その周囲の人間の処分は、その後で検討すればいいですね」


「そうですね、そこまで気にしていたとは驚きました」


「とんでもないです。まだ、自分でも何をしているのかよくわかりません。早く自分を取り戻したいです」


 それを聞いて、彼は微笑んだ。

 彼は、衆議院議員の秘書をしていた彼女の父親が、議員の収賄疑惑を全てひっかぶって亡くなったこと、母と二人苦労して生きてきたこと、さらにその母親も彼女が大学三年の時に他界し、苦悩の中で何とか大学を卒業したこと等、彼女については詳細に調べていた。


( おそらく相当な苦労をしてここまで生きてきたのだろう。安易には人を信じない、人の言葉の裏を読もうとする。聞くことを恥じと思わないこと、何よりも自分自身をよく知っている、常に冷静に自分を分析している  )


 とても二二歳の大学を出たばかりの娘とは思えなかった。

 彼は、彼女を見ていて、もう少し話してみたくなった。

「あなたが大変な目に遭って会長の所に来られたことは聞いています。松島企画の社長が流暢に人を巻き込むように言葉巧みに話を進めていく中で、それを冷静に分析して、その需要の根拠を求められたのは立派だと思います」


「ありがとうございます」


「ただ、会長を支えていくということは想像もできないようなことにたくさん出合っていきます。うまく行くこともあるでしょうが失敗することもあると思います。極端なことを言えばあなたがすべて失敗したとしても松島グループが揺らぐような事は絶対にありません。松島グループにはそれだけの仕組みができています」


「……」明子は口を真一文字に結び静かに頷いた。


「松島グループの傘下には一七の会社があります。それぞれに社長がいますが、社長は単独では代表権を執行することはできません。だから何かあれば今回のように会長の所へ承認を取りに来ます。松島グループ本社というのはその一七の会社を総括する会長の直属の組織だと考えてください」


「はい……」


「これまでの松島グループ本社の姿勢としてはそれぞれの会社の管理、運営、企画には口を出さないこととしてやってきました。ただ各社の意向を知った上でそれを会長へつなぐという役目を担っております」


(えっ、つなぐだけ?) 驚いた明子は口を挟みたかったが、そんな雰囲気ではなかった。


「真面目に懸命に頑張る人が報われる企業でなければならない、そういった先代の思いに応えて私たち本社の人間は頑張っています。本社といってもご覧の通り私を入れた九人です。日ごろ、彼らは好きなことをして過ごしています。例えば、一番手前のブースにいる彼は、いつもトレードで稼いでいます。現在は自分の資金でトレードしているはずです。でも、会社の資金が苦しくなってくると、会社でログインして、会社資金でトレードをして、あっという間に、会社の資金を調達します」


「すごいですね」明子は、驚いて瞳を見開くと、彼を見つめた。


「二番目のブースにいる彼女は、ハッキングのプロです。いつも、どこかに侵入して遊んでいます。でも、そこから思いもよらない情報が入ってくることがあります。例えば、国会議員、スポーツ選手、芸能人等、㊙の情報をたくさんストックしています。特に国会議員は資金が必要ですから、時々、頭を打った議員が、威圧的に資金の無心に来ることがあります。幹事長にでも電話すれば直ぐに収まるのですが、それは借りをつくることになってしまいます。そんな時、彼女が持っている情報が役に立ちます」


「……」驚いた明子は呆然とした様子で彼らに見入っていた。


「三番目の彼は、政界を知る生き字引です。後は、経済のプロが二人、弁護士もいます。あの彼女は、霊感の強い人です。そして、一番手前の彼女が、心理学の専門家で、彼ら全員を集めた人です」


 聞いていた明子は頭がくらくらして、身動きできなくなった。

(こんな人達と何をすればいいの、私なんか必要ないじゃないの! )


「今回の、松島企画の、企業買収の件も、問題があることがわかっていたんじゃないですか」彼女が不安そうに尋ねると


「おっしゃる通りです。しかし、この本社から問題提議はいたしません。ここからの問題提議は、ここの部署、この本社の思惑になってしまいますから…… あくまで、会長からの指示を待ちます」


「そんな……」


「会長の指示がなければ、おかしな案件でも承認されてしまいます。先代の時は、その横で私が問題提議をさせていただいて、会長の指示を待ちました。しかし、現在の会長にはあなたしかいません」

彼は真剣な眼差しで訴えるように彼女を見つめた。


「どうして青野さんが会長秘書を続けないんですか? 私なんかが、いるべきじゃないと思います」彼女は責めるように彼に言い放ったが


「先代がなくなった後、会長からもお願いされたのですが、私はもう六〇歳を過ぎています」


「六〇歳なんて、まだまだですよ、七〇歳過ぎて現役の人だってたくさんいるじゃないですか」明子は必至だった。


「確かに、そのとおりです。この会長秘書というポストは魅力もあります。地位も名誉も、権力も…… さらに正当に財を築くこともできます」


「なら、どうして…… 」彼女は不満そうであった。


「でも、私は永くやりすぎてしまいました。正直にいうと体調もあまりよくないのです。二~三年で誰かにバトンタッチするのなら、新会長には新しい秘書の方がいい、そう思っているんです」


「それでしたら、せめてあなたの所で私にも経験と勉強する時間を与えて下さい、それでもいいじゃないですか!」


「それだと、私の色が続いてしまいます。時代が変わって、そこに生きている人々も変わって、もう私なんかが先頭で旗を振る時代ではないのです」


「そんな…… 」


「でも、私も体調の許す限り、お手伝いはさせていただきますよ、ただし、方針はあなたに定めていただきたい…… 」


 一瞬、見えたかのように思った灯りが再び消えてしまい明子は大きくため息をついた。


「それから今後会長を支えていくうえで考えなければならない大きな問題が一つあります。それは後継者の問題です。悲しいことですが彼女は子供が産めない身体です。養子をとるのか、全くの第三者に任せるのか……」

 彼は目を伏せて悲しそうに、そして、訴えるように話した。


「そんなこと…… 私にだってわかりません…… 」彼女は今にも泣き出しそうな顔をして俯いてしまった。


「高島さん、これは誰も解決できないと思うんですよ。だけど、今後会長の傍で多くの時間を過ごすことによって見えてくるであろうものに期待するしかないんですよ」


「でも、見えてくるでしょうか?」明子は不安でいっぱいだった。


「正直言って私にはわかりません。でも、この問題については二〇年以上の猶予があります。二〇年後のあなたが、この問題をどう考えるかですね。だから、今は、課題があるということだけにとどめて、出せない答えを考えるのは止めませんか…… 」


「そうですね、私だって、直ぐに首になるかもしれませんしね…… 」


「若いあなたにこんな酷な話をしたくはなかったのですが、中途半端な思いで職を維持されると、周りの者たちが困るんです。少なくとも先日まで会長は心が揺れていました。ただあなたとお会いしたことで、あなたがそばにいることで、今は彼女が非常に安定しているような感じを受けています」


「……」彼女は言葉にはしなかったが瞳を大きくして、少しうれしそうであった。


「彼女の個人的な話をすれば何千億もの資産がある中で、何もしんどい思いをして会長を続ける必要は無いわけです。ただ、グループの扇の(かなめ)がなくなると扇子が壊れてしまうということを彼女は知っていますから、いやいやではありますが会長職についているのです。でもあなたも進むことを決めたのであれば、それだけの覚悟をもって進んでいただきたい」


 この話を聞いていた明子は

( 確かにその通りだ、中途半端な思いでは務まらない。まして自分なんか何の取り柄もない、どうして会長が私に手を差し伸べてくれたのかもわからない、佐久間の家を追い出されたあの夜、会長に会ってなければ私はどうしていたんだろう…… )


 考えてみても想像がつかない、だが会長に拾われた事は運命としか思えなかった。


『人生は必ず大事なところで一石が投じられる、それによって生じる波紋をどう捉えてどう考えていくのかはその人次第。一石から目を背けるのであれば、議論の余地さえない……』

 父が生前よく言っていたことを思いだした。


 明子の意思は決まっていた、絶対に逃げるわけにはいかない、あの仏様みたいなたか子は、私が絶対に支えていく。

 まだ知識も知恵もない彼女だったがその思いだけは確固たるものになっていた。

 その後明子は、青野の力を借りて、徐々にではあるが、自らの手足となって動いてくれる人材を集めていった。

 本社の八名は、自分の世界さえ守らせてくれるのであれば、その上に立つ者の歳など気に留める者はいなかったが、松島企画の神崎のような立場の人材を求めるのはかなり大変であった。

 しかし、三年も経過したころには、明子網はほとんど完成され、彼女も自信をもって動くようになっていた。

 それをみた青野は、本社の社長を、社員七人を集めた心理学のスペシャリストである武田芳子に譲り、明子は支配人として今まで通りの組織を維持することを提案して身を引いた。

 秘書を支配人としたのは、対外的にその位置の高さを明確にするためで、今後は明子が前面に出てその存在を社会にアピールするためのものでもあった。

 青野は明子のこの三年を見て来て、彼女の覚悟を知ることができたし、何よりたか子が明るく元気になったことがうれしかった。

 グループ本社の八人はもちろん、彼女が創り上げた明子網も十分に機能していた。

 彼はその後二年間の間、相談役として本社に残ってくれたが、明子がたか子のもとに来てから六年目を迎えた春、たか子や明子、そして息子夫婦と三人の孫に見守られながら、静かにこの世を去った。

 享年六七歳、たか子の祖父にその才能を見出され、二代の会長に仕える中で、分社化された企業の統一を図るため、松島グループ本社を設立し、ゆるぎないグループの礎を築いた男の最期であった。

 この後、生前の青野の配慮により、明子は三〇歳の頃には、グループにおける絶対的な地位を築き上げていた。


 この話を聞いた奈々子は

「すごいねー、やっぱり支配人はすごいね、そんな中でスタートして一〇年でここまで来るんだもの……」 そう言って明子に見とれていた。


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