千四十四生目 刹那
魔力も放出され身動きもとれなくなる。
おそらく出来て鎧の展開にイバラ伸ばし。
やったところで状況はひっくり返せない。
全員……私含めて瀕死。
私も脳内物質過剰分泌により意識を保ち痛みを抑えているだけ。
あと私自身死にかけるのはわりと慣れがある……
殺されたいわけじゃないが私の生は2度目。
最初から私が生きるために優先順は決まっている。
だが……それすらできるのか? 今の私たちに……!
「見よ、大地は眼下に、空は夜でまないのに暗みだす。これが今我らが居る場所だ」
「星が……あんな遠くに……!」
「俺たち……こんなところまで……」
グレンくんは勇者の剣だけは手放さないように強く握っている。
小イタ吉たちは刺されている身がかなり痛みがキツイのか身をねじっていた。
景色はすっかりと前までとかわり外側魔王がいる位置をからの景色を360度ビューイングで映す。
暗い空に大陸を大陸として認識出来始めるほどの距離。
そして大陸の色がじわじわと変化していっているのも。
この星が覆う空気の層の外側に来ていることは私にもわかった。
もうあんまり時間もない……
「そこで息絶えるまで、貴様らの行為が何もかも無意味に終わり、自身の命がなんの意義もなかったと悔やみながら、そこで尽き果てろ。それこそが我の心を少しでも潤す」
「ど……どうにか……しないと……ゴボッ」
インカは自慢の鎧ごと中身を貫かれて四肢も縫い付けられていた。
全員避けて避けて避けたその先にさらに食らっているから頭部や首は最悪塞いでいるがそれだけ。
戦闘などとんでもない。
魔王ラキョウはあまりに一方的に言い捨て私達の興奮を冷やしにかかる。
ここで心が折れたらそれで十二分に死ぬ。
そこまで踏まえての発言。
みんなの顔は血が抜けているせいかそれとも心情か。
毛はやつれにおいは衰退し青い顔をしていた。
私も他者から見たら似たようなものか。毛は元から青いが。
やるとしたら……もうこれを切るしかない。
手がないがこれに賭けるしかない……
対策されないためにチャンスはただのひとつ。
そのためには……!
「うん?」
長剣化したゼロエネミーが魔王に斬りかかる!
見た目だけはまっぷたつに裂けた……が。
何事もなかったようにすぐに戻る。
「主人はもう死ぬというのに。健気な剣だ。だが、無意味というものを理解する脳があれば、より良かっただろうに。我はこれから途絶えたエネルギー経由を直し大きく摩耗した力を取り戻し、本来の予定に軌道を戻す必要がある、だから……」
魔王ラキョウはゼロエネミーに面倒くさげに話をしている。
だがその間もずっとなんども切りかかり無意味にすり抜ける。
次元の向こう側に居る存在を斬る力はゼロエネミーにない。
魔王ラキョウは完全に勝っている。
故にもはや次の行動を考えているわけで。
そしてこの技が連発出来るものではないというのを明かしているのも同じ理由。
2撃目は本来いらない必殺の技。
ハックの力が特別なだけだ。
そしてハックの作り出した時間すらも今無意味に化そうとしている。
だからこそ。
「諦めろ!」
ついに面倒がったのかゼロエネミーに対し大量の刃が飛ぶ。
一気に壁際までふきとばされその刀身ごと刺し――
「――っく、いかん、余計な力を……」
実はこの状況で私達にトドメを刺そうとしないのはかなりおかしかった。
余裕を見せる以上に戦術的意味がない。
もちろん驕りや苦しめるという目的もあるだろうが……
それ以上の意味を今見せた。
ガクリと椅子の上で上半身が崩れたのだ。
次の1撃がいらない必殺で供給されているエネルギーはかなり絶たれている状況。
つまりは力を大きく使い込んでしまっている状況。
これを待っていた!
神の力を今ここに!
敵のこの力……魔王の力を。
必殺の概念を持つ刃たちを全て。
ありうべからず概念を!
「消し……されぇぇー!!」
「な、何!?」
私が持つ神の力を絞り出し敵の刃を打ち消していく。
一気にみんなの刃が消え地面に叩きつけられた。
そう。今まで他の刃は現れて消えていたのにこの私達を縫い付けていた刃だけはなぜか消えなかった。
これは魔王ラキョウにとっても特別な技。
簡単に次が出せるものじゃない。
その証拠にゼロエネミーを刺した刃はもう消えて魔王ラキョウは明らかに疲労している。
「糞が……」
「ヤアアァァーッ!!」
走る。
次が来る前に的を絞らせないために。
まだ放ってこなくても次のために。
神力全開"時眼"を自身に適用最大加速し全力で加速。
脳が今は焼き切れるほどに熱くなったとしても良い。
命を賭ける!
「糞が……!」
「よみがえれ、みんな!」
伸びた時間の中アインスとドライも総動員かつ魔法4枠使用で唱える。
聖魔法"リターンライフ"を全員……いや私以外の4名に適用。
本来はこんな速度で放てるものじゃない。
でも。やる。




