ただ高みを目指して
俺の今身につけなきゃいけないことは……
星屑はそんなことを考えて帰路を歩いていると携帯が振るえた。
「三浦先輩?どうしたんですか?」
「星屑………」
やけにもったいぶる。少し長すぎるくらいに間をあけて言った。
「新しい戦術……………欲しくないか?」
「!?どういう事ですか?」
「いや、なぁ鍵矢からお前の、その……………」
三本鎖が思い出せないらしい。
「三本鎖ですか?」
「ああ!それそれ!………で、今より効率よく、エネルギーを取り出して戦う方法を考えたんだ。今からうちに来い」
電話では説明しにくい。という事だと思い、星屑は三浦の家に向かった。
「お前から来るとは思ってなかったな。村雨」
「僕も自らここにくる事になるとは考えて無かったよ」
村雨はある教会に来ていた。理由は簡単だ。こいつに会うためだ。
「久しぶりだね。情報屋、いや日々野鉄也」
「すいません。どなたかいらっしゃいますか」
三浦の家に着いた星屑は取り敢えずチャイムを鳴らした。
「おぉ!よく来たな。さ、入れ入れ!」
「お邪魔しまー………げっ!」
中はすごくきたなかった。はんだづけをしたような匂いと、訳の分からない機械やパソコンで埋め尽くされていた。
「あのー……これはなんですか………?」
星屑はガラクタを指差して聞いた。
「ん?あぁ、それは俺の作った盗聴器と暗視カメラ。それにモニターとかモデム」
「三浦先輩ってパソコン強いんですね……」
真っ暗な部屋で眼鏡をかけ、一人黙々と機器をいじる三浦先輩。シュールっていうかなんかマッドサイエンティストみたいだ。
「で、なんで盗聴器とかあるんですか?」
ニヤニヤ笑いながら返事をした。
「……商売道具」
脅す方か、それを手伝う方なんだろうな。
「単刀直入に聞きます。俺の力の効率を上げる方法は?」
「いきなりだな。まあ座ってくれ」
そこらのガラクタを退け、足場をつくり、そこにあぐらをかいた。
「お前の力、ようは不可逆の強制発動だろ」
不可逆。それは簡単に言えば氷とお湯を混ぜて水は作れるが、水から氷とお湯を取り出すことはできない。ということだ。
「まぁ、一概にそれだけではないですが」
「じゃあさ、50と-50をつくったとして、さらにそこから100と-50ってできないか?」
は?
星屑がわかってないことが分かると三浦は紙に50と-50をかいた。
「いいか、このうち-50の方だけ何らかの方法で使ったとするだろ。ここまでいいか?」
三浦はシャープペンで-50にバツ印をし、星屑が頷いたので話を続けた。
「残った50を片方は+100、もう片方は-100をさらにするんだよ。こうすれば150と-50が残るだろ」
「つまり…………どんどん炎の温度を上げていくってことですか?」
「そうだ」
もし、もしもだ。そんなことが出来るなら俺の炎はどこまでも熱くできる。
それだけで星屑は勝利への道筋が見え始めていた。
暗い道場の中、一人の男が正座していた。そこに影から現れるように鍵矢が道場に入ってきた。
「久振りです。親父殿」
「よく来たな。鍵矢」
親父殿に会うのは何年ぶりだろうか。親父殿、それは俺の血縁者でもなく、この道場の師範代だ。
「実は前々から溜めていた例のアレを使いたい。頼めるか?」
師範代の目が光った。
「…………あれを使うのは禁じたはずだが?」
「あぁ。誰かを『助けたい時』意外な」
師範代はニヤリと笑い、鍵矢に聞こえるか聞こえないぐらいの声で小さく言った。
「お前も…………強くなったな」




