第56話 酷似
毎度投稿が遅れてしまい申し訳ありませんm(_ _)m
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【リューオ視点】
(第52話のリューオ視点の最後からの続きです)
「リューオ、大丈夫?」
「だい、じょうぶです……」
移動しながら心配そうに声をかけてきたキュオルに、僕は息を切らしながら言葉を返す。本音を言うと大丈夫ではないが、それを言ってもどうにもならないので言わないことにした。
先程僕が2本の剣を錬成し、ノルドは2本の剣を手にミラエルの元へ向かった。その直後、キュオルが戻ってくると同時に僕たちは撤退を開始したのだった。現在は時折現れる魔物やフェアード教団の敵を倒しつつ、広大な城内をひたすら移動している。
戦闘部門以外の団員も多数いること、アルオスを飲んだとはいえ僕とユミナがかなり消耗していることから、移動のスピードは全速力とは程遠かった。
加えて複数の入り口が意図的に破壊されていた影響で、未だ城内からの脱出が出来ていなかった。焦りを感じていたが、足を動かす以外道はない。
「げははははは! 死ねえええええ!」
その時、幅が広い通路の前方から1人の男が現れた。黒い鎧を纏い、巨大な斧を構える男が叫びながら突っ込んでくる。フェアード教団の刺客に違いない。
「私たちを妨害するな! 妨害するなら攻撃するぞ!」
「やってみろ、この偽善者どもがっ!」
最後通告のようにキュオルが声を張り上げたが、男が動きを止めることはなかった。キュオルは舌打ちし、黒い杖を構える。
『五行、【土剛弾】!!!』
キュオルは叫び、杖を勢いよく振った。同時に杖の先端の黄色い宝石が光を放ち、虚空から無数の土塊が出現して男を襲う。土塊が直撃し、男は即座にダウンした。
「敵は強くないけど、断続的に現れるから気を抜けないのがきついね……」
キュオルはそう呟き、引き続き周囲に視線を向けて警戒を続けている。
僕は傍のユミナに視線を向けた。ユミナの顔色は悪い。息を乱しながら、なんとか僕たちについてきているという感じだ。
「ユミナ、さっきも言ったけど、しんどかったら僕がユミナを背負うからね」
「リューオさんにそんなことさせられるわけないじゃないですか! 大丈夫です、私は大丈夫ですから……!」
ユミナは汗を拭いながら言った。ユミナの性格上そう言うとは思っていたが、見たところかなりしんどそうだ。
アルオスを飲んだことで、神級スキルを使ったことによる消耗は抑えられている。しかし、ぶっ倒れずに済んでいるというくらいで、消耗が完全に無くなっているわけではない。というかめちゃくちゃしんどい。
それなりに鍛えてきた僕がこれだけしんどいのだから、僕よりも体が小さく、体力も少ないであろうユミナがもっとしんどいのは明らかだ。一刻も早く安全なエリアに移動して、ユミナを休ませてあげたいところだったが……
「!! 止まって!! 何かがいる!!」
《止まってください。前方から極めて強力な敵が接近しています》
キュオルが叫び、ほぼ同時に頭の中で神級スキルが警鐘を鳴らした。
「極めて強力な敵が接近している、と神級スキルが言ってます! 最大限の警戒をしてください!」
僕は仲間に声を張り上げ、神級スキルの言葉を共有した。複数の戦闘部門の団員が頷きを返し、戦闘態勢に入る。
「……何でこうなるの……クソが……!」
キュオルは忌々しげに呟きながら杖を構えている。キュオルがそういう反応を示してしまう程、前方から放たれる殺気と圧が極めて大きかった。
そして、それは突然、闇の中から現れた。
黒い。身長が150センチにも満たないその人間はとにかく黒かった。そして格好が異質だ。黒い着物、黒い袴。さらには両腕と両足、着物の内側が黒いアンダーアーマーのようなもので覆われている。
腰からは1本の刀を提げていた。剣ではなく、刀だ。格好といい刀といい、遥か遠い昔に存在していたとされる「侍」を連想させる。
髪型は極めてシンプルで、やや長めの髪を縛って後ろでまとめているだけ。そして最も驚いたのはその顔だ。やや丸い顔の輪郭、大きい瞳。そう、それはまさしく……
「ユミナ!?!?」
キュオルが驚きのあまり叫んだ。無理もない。目の前に現れた謎の少女の顔は、限りなくユミナに酷似していたのだ。ユミナの瞳の色は黒、対して少女の瞳は水色で、格好は違うもののそれ以外はユミナと殆ど同じだ。
「え、うそ、なんで……?」
ユミナも同様のことを思ったのか、目を丸くして口に手を当てていた。
「ユミナ、あの子って……」
「知りません知りません! 私とは全く関係ありません!私は一人っ子です! だ、だからこそ今、本当に驚いてます……!」
僕が声をかけるとユミナは慌てた口調で続ける。ユミナとは関係ない、ならば偶然顔が似ているということか?
「……たしかに驚いたけど、そんなことどうでもいい。アンタ、フェアード教団の人? 私たちの行動を妨害するなら容赦無く攻撃するよ。これは最後通告だから」
キュオルは謎の少女を睨みながら冷たい口調で言い、杖の先端を少女に向けた。他の戦闘部門の団員も前に出て武器を構える。
一方の少女は静かに僕たちを見つめたまま、刀の柄に右手をかけ、口を開いた。
「私は三蠱。九重塵羅の1人。リューオ・アルブレードとユミナ・ブルークイーン、ミラエル・ソードフレアの強制連行を命じられている。故に今からそれを実行する」
※第57話は2026年5月28日の午後9時20分に投稿します。お楽しみに。
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