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パーティーから追放された僕の最弱スキル『武器強化』が、気付いたら最強スキル【武器錬成】に進化していた件  作者: 五月雨前線
第2章

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第50話 ああいう輩

 その後もキュオルと他愛もない会話をしている内に、ダンジョン遠征に参加するメンバーが続々と集まってきた。


 今回のダンジョン遠征には総勢50名程が参加する。とはいえ50人がひとかたまりになって移動するのはあまりにも目立ちすぎるし、事前に敵に行動を察知される可能性が高くなってしまう。

 というわけで、4箇所に人員を分散して各自出発し、複数のギルドからそれぞれダンジョンに入った後、指定の場所で合流、という流れになっている。故にミラエルやノルドといった参加メンバーは周りにいない。


「おはようございます、リューオさん」


 声をかけられ視線を向けると、目の前にはウラナさんが佇んでいた。

 白衣を纏っていた以前の格好とは異なり、今のウラナさんは戦闘服に身を包んでいる。手にしている巨大なバッグには、実験に必要な様々なものが収納されているのだろう。


「おはようございます、ウラナさん。本日はよろしくお願いします」


「いつも協力ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」


「あ、ウラナ! 久しぶり〜! 元気してた?」


 僕とウラナさんが挨拶を交わす中、突然キュオルの明るい声が飛び込んだ。


「ああ、キュオル、久しぶりですね。やれやれ、キュオルは相変わらず騒がしい……」


「いいじゃん、それが私のアイデンティティなんだからさぁ」


 ウラナさんとキュオルは親しげに言葉を交わしている。その後キュオルは驚いている僕に気付き、「ウラナとは長い付き合いなんだよ」と説明してくれた。


「所属してる部門こそ違うけど、色々相談しあったり、愚痴を言い合ったりしてきた仲ってわけ」


「なるほど……」


「いやあ懐かしいなぁ。1年前くらいにウラナの恋愛相談に夜通し付き合った時のことは一生忘ぐええっ!?」


 キュオルの言葉が突然途切れた。楽しげに話していたキュオルの脇腹を、ウラナさんが強めにどついたのだ。


「その話は無かったことにしてください」


 ウラナさんは一見平静を装っているが、恥ずかしそうというか、楽しげな様子は隠しきれていない。よほどキュオルと仲がいいのだろう。


「分かったよ……あいたた……相変わらずウラナは手が早いなぁ、戦闘部門に移ればいいのに」


「研究が性に合ってますので。全員揃ったようですから、そろそろ出発しましょう」


 ウラナさんは周囲を見渡し、「今から出発します」と声を張り上げた。ウラナさんの言葉通り、この地点から出発する予定のメンバーはいつの間にか全員揃っていた。


「フェアード教団こそが我々を導いてくださる正義の団体である! 不平等の象徴である聖帝騎士団こそが悪なのだ! 今すぐ聖帝騎士団を解体するべきだ!」


 本部を出発して5分ほど歩いたところで、突然野太い叫び声が聞こえてきた。どうやら歩道の傍で5人の集団が固まり、街頭演説の真似事をしているようだ。

 5人の内の1人は、ドラム缶の上で拡声器を手に聖帝騎士団云々を叫んでおり、残りの4人はビラのようなものを通行人に配っている。そしてその5人の周りには十数人ほどの一般人が集まっていた。


「リューオ、ああいう輩とは絶対絡んじゃ駄目だよ。いないものだと思ってね」


 5人組の存在に気付いたキュオルは、先程とは打って変わって真剣な表情を向けてきた。僕は頷きを返し、5人組からすーっと視線を逸らす。


 6階層の襲撃事件以降、王都ではああいった連中が目に見えて増加している。さらに王都以外でも、世界中の至る所で教団に傾倒する人の増加が騎士団に報告されていた。

 きっかけはやはり、死に際に八鬧が放った言葉が全世界に拡散されたことだろう。八鬧の言葉は、不平等や理不尽に苦しむ多くの人々の心に刺さってしまったのだ。


 この問題の難しいところは、「現時点ではフェアード教団を信奉することを法的に罰することが出来ない」という点だ。信仰の自由が法律で定められている以上、あの5人組を逮捕することは出来ない。

 加えて、僕たち騎士団は教団の凶悪さ、非道さを声高に主張し続けているものの、それらを肌身で体感していない一般市民たちには主張がいまいち伝わってない現状がある。故にそういった人々は教団に傾倒してしまう可能性がある。その辺りが非常にデリケートで難しい。


「あ! おいお前ら! ちょっと待て!」


 干渉せずに素通りしようと思ってたのに、演説をしていた男が僕たちに気付いてしまった。


「奴らが聖帝騎士団だ! 我々から搾り取った金で甘い汁を啜り、この世界の不平等を助長させるためだけに存在している団体だ! 奴らを絶対に許してはならない!」


 男は僕たちを指差し、拡声器を手に絶叫している。甘い汁を啜る? 不平等を助長? 一体何を言ってるんだ?


《ああいう類の人間は、自分たちの主張や思い込みで頭がいっぱいになっているので、客観的に物事を捉えることが出来ないんですよ。無視してください》


 神級スキルに頭の中で言われるも、なんだかモヤモヤした気持ちになってしまう。


「待てっ! そうやっていつものように俺たち弱者を見過ごすつもりかっ!」


 意味不明な主張をぶつけるだけでは飽き足らず、なんと男はドラム缶から飛び降り、先を急ごうとする僕たちの前に立ち塞がった。


「何か用ですか?」


 前に出ようとした僕をキュオルは手で制し、男に冷たい声をぶつける。


「何故俺たちを無視する! そんなに俺たち弱者と向き合うのが嫌なのか! この偽善者共が! お前らなんかよりフェアード教団の方が素晴らしいに決まってる! おい、なんとか言ってみろ!」


「無視しているのではなく、仕事場に向かおうとしているだけです。通してもらえませんか?」


 感情を露わにする男とは対照的に、キュオルはどこまでも冷静だ。そんなキュオルの態度が癪に障ったのか、男は「ふざけるな!」と声を張り上げた。


「そうやって何かと理由をつけて俺たちから目を逸らしたいだけだろ! お前たちみたいに恵まれてる奴らには、俺たち弱者の苦労は一生分からないだろうなぁ!」


「理由をつけているのではなく、事実を述べているまでです」


「ふざけんな、このくそアマがぁっ!!」


 男は叫び、キュオルの持つ杖を手で軽く払った。その瞬間、様子を監視していた自警団の3人組が飛び出し、「はい、公務執行妨害ね」と言って男を取り押さえた。


「すみません、お手数をおかけしてしまって」


 男に手錠をかけた自警団の男性は、キュオルにぺこりと頭を下げる。キュオルは男に触れられた杖の一部分を手で払いながら、「別にいいですよ」と言った。


「これも我々の仕事なので。残りの4人も逮捕を……って、逃げてるじゃん。かああ、無駄に小賢しいなぁ」


 視線を移動させたキュオルは、呆れたように言って溜め息を漏らした。キュオルの言葉通り、残りの4人は忽然と姿を消している。


「ふざけんなてめえらっ! こんな世界が正しいと思ってんのか! フェアード教団が新世界を作ってくれれば、厄介ごとが全部解決するって何で分からねえんだよっ!」


「はいはい、その話は署でゆっくり聞くからねー」


 自警団の方々は暴れる男を押さえつけ、署へと連行していった。


「これからああいう輩がどんどん増えていくのかなぁ、嫌になっちゃうね。さ、早くダンジョンに行こ」


 キュオルは何事も無かったかのように明るく言い、歩き始めた。釣られて僕たちも後に続く。

 キュオルはきっと、男が手を出してくるのを待っていたのだろう。公務執行妨害でなら、信仰の自由云々関係なく逮捕することが出来るから。


 変人だけど、なんだかんだ頼りになる。そんなキュオルの背中が、いつもより少しだけ大きく見えた。



 それから数十分後、僕たちは集合場所である、ダンジョンの9階層の一角に辿り着いた。

 ダンジョンは階層ごとに特色があることで有名だが、この9階層は平原の至る所に様々な構造物が設置されているのが特徴だ。


 巨大な城、要塞、点高く聳え立つ塔など、いつどのように作られたのか分からない構造物が随所に存在しており、どこか不思議な雰囲気に魅せられる冒険者は多いと聞く。


 現在僕たちがいるのは、無数に存在する構造物の1つ、超巨大な城の入り口付近だ。城の高さは目測でも200メートル以上あるように見える。


「リューオ、久しぶりだな」


 背後から声をかけられ、どくん、と僕の心臓が跳ねる。その声を聞くのは実に3週間ぶりだ。


「あ、えっと、お久しぶりです」


 僕は振り返り、おずおずと声を発した。金髪のショートボブをなびかせ、銀色の戦闘服を纏うミラエルは相変わらず美しかった。


「ああ。今日は長丁場になるかもしれない。お互い頑張ろう」


「はい。頑張りましょう」


 僕の返答を聞いたミラエルはふっと頬を緩め、研究部門の団員の元へ向かって行った。

 3週間前にお家デートをした時の、オフモードのミラエルの姿がはっきりと脳裏に焼き付いているだけに、通常モードの今のミラエルとのあまりのギャップに戸惑ってしまう。


「相変わらずエロいなぁ、とか思ってたりするの?」


「そうですね、やっぱり胸が……ちょちょ、何言ってるんですか! そんなわけないですよ!」


 不意にキュオルに耳元で囁かれ、思わず本音が出かかってしまった。慌てて否定する僕を見てキュオルはくすくすと笑っている。


「リューオはいつも反応が良いから、ついからかいたくなっちゃうんだよね〜」


「もう、やめてくださいよ……」


「あ、移動するみたいだよ。ほらほら、早く行こ」


 僕が抗議してもキュオルはどこ吹く風だ。完全にキュオルのペースに飲まれている。僕は溜め息をつき、移動する人たちの後に続いた。


 その後僕たちは城の中に移動し、本格的に実験に取り組むこととなった。最初に行うのは強化武器の性能テストだ。


「ミラエル様、これを」


「ああ」


 大勢に見守られながら、ミラエルは研究部門の団員から剣を受け取った。


 神級スキル『武器錬成』で錬成した剣に含まれていた元素を解析し、その解析結果を元に作られた「強化武器」の試作品だ。強化武器には件の元素が大量に組み込まれているようで、既存の武器を上回る高い性能が期待出来るらしい。


「軽いな」


 剣を数回振ったミラエルはぽつりと呟いた。


「はい。戦闘時のパフォーマンスを最大化させるための重量に拘って作成いたしましたので」


 応対する研究部門の団員は緊張している様子だ。騎士団のトップであるミラエルを相手にしているのだから当然の反応といえるだろう。


「研究開始から3週間でこれほどの武器を作ってくれたのか。ありがとう、よく頑張ったな」


「い、いえ、そんな……!」


 団員は手を振って謙遜しているものの、見るからに嬉しそうだ。他の研究部門の方々も静かに色めき立っている。ああいうことをさらっと言える辺りが、ミラエルが騎士団長に選ばれている所以なのだろう。


「魔物が一体接近しています!」


 その時、見張り役を務めていた戦闘部門の冒険者が叫んだ。左方向から一体、体長3メートルほどの巨大な黒い蛇の魔物が高速でこちらに向かっているのが見える。Bランクの魔物、ナイトサーペントだ。


「ちょうどいい。強化武器の性能を試すとしよう」


 ミラエルは静かに言い、剣を構えながら一歩、また一歩と足を踏み出す。その間にもナイトサーペントは高速で接近しているが、ミラエルは動じる素振りを見せない。


「はっ!!!」


 両者が交錯したと思った刹那、ミラエルの叫び声が轟いた。次いで剣で空気が裂かれる音、さらにナイトサーペントの断末魔の絶叫が響く。

 

 次の瞬間には、ミラエルは静かに剣を納め、その足元には胴を両断されたナイトサーペントが転がっていた。


※第51話は2026年5月22日の午後8時50分に投稿します。お楽しみに。

明日は交流戦前の最後のカード!


必ず勝ち越しするぞ!


マリーンズファイティン!

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