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でもイノセントでの身体強化魔法の反動はもっと軽かったはずだ。
走ってるときに感じたのは全身のダルさ。
もしかしたら身体弱化系呪詛を使用されていたのかも……
「もしそれならかなりマズイな……」
一刻も早く呪詛を破壊しなければならない。
その手の呪詛はイノセントでも何度か受けたことがあるのだが、時間と共に効力を強めるものが多かった。
「はぁっ……
ふー……」
僕は息を整えると何とかして立ち上がる。
何故か刀音は服の下に手を入れて自分の身体を触っていた。
「刀音、ちょっと離れてて……」
剣を創ると地面に魔法陣を記入していく。
記入式魔法陣は自然魔力を使用するため、僕は魔力を使わずにその魔法の効力を得れるのだ。
「これで……いいかな。
『滅悪の光刃塵』!」
魔法の上に立ち、僕はある剣技を使用した。
この魔法は使うことなどほとんどあり得ない。
なぜなら……
「ぐ、あぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「お兄ちゃん?!」
僕の叫び声に気が付いた刀音は僕に駆け寄ろうとする。
「ち、近づいちゃダメだ!
ぐ……く…」
僕の全身を大量の光の粒子が回転して包み込んでいる。
『滅悪の光刃塵』
対象者に施されている呪詛やマーキングを強制的に解除する剣技の一つ。
光の粒子は全て魔力の刃で、その刃によって対象者の呪詛を破壊するのだ。
だが、呪詛を破壊するには其れ相応の反動があり、自身を傷つけることになる。
「……く…」
浄化を終え、身体の所々から血を流しながら僕は地面に倒れた。
「お兄ちゃん!大丈夫!?」
心配そうに僕が苦しむのを見ていた刀音が駆け寄ってくる。
「……大丈夫、だよ。
魔法陣が回復してくれてる」
地面に書きこんだ魔法陣のお陰で僕の傷は徐々にだが回復している。
あと30分ほどで何とか普通に動ける程度まではいけるだろう。