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運命の糸  作者:
9/10

突然の別れ

これは、幻覚か。はたまた現実か。今朝は昨日の夢の続きを見ようとあんなにも目を輝かせて言っていたではないか。きっと彼女は俺が彼女を連れ去ることで両家の傷がもっと深くなる事を恐れているのだろう。しかし俺の考えは違う。これ以上両親、ご先祖様に振り回されるのはごめんだ。やっと見つけたんだ。

幼稚園の頃の別れ。あの頃はまだ幼く、自分の感情が分かっていなかった。しかし今は違う。この感情を知っている。この今にも口から溢れそうなこの感情を。目の前には彼女。婚約者に手を引かれている。俺の答えは一つだ。彼女を奪い去る。それだけだ。俺は困惑している婚約者の母と、唖然としている彼女の母を押しのけ彼女の手を取る。

「来てください。俺は、あなたが愛してやまない日比野晶です」その言葉に彼女は振り向き項まで赤くして「い、いけません。私は…」と言いかけたところで婚約者が口をはさんだ。「女の立場を分かっての台詞ですか?彼女の家の家計は今にも崩れそうなのは知り合いなら知っているでしょう?」彼は鋭い目つきでこちらを見ながら言った。知っていた。俺は計略結婚だということを頭では薄々気付いていた。しかし心はそれを拒否し、現実を見ようとしなかったのだ。


美樹

私はその時水樹さんの本性を見た気がした。さっきまでずっと笑っていたのに。あの微笑みはどこへ行ったのでしょう。水樹さんは続けます。「彼女は父が亡くなってから贅沢をできなかった。だからこそ僕が助けてやるんですよ」私は一番触れて欲しくない面を彼にさらされ涙がこぼれてしまいました。

「黙れ」晶さんは私の思いを言葉にしてくれました。「何を言っているんですか。あなたが誰かは知りませんが、佐々木家が係っているのですよ。もちろん決めるのは彼女です。しかし、断ればどうなるかくらいは知っているでしょう。あなたも。そして、彼女も」そう言い私と目を合わせた。怖い。晶さんは黙り込んでしまった。きっとこの場を動かせるのは私だけ。私の言動一つで運命は変わる。

幼稚園の時の別れ中3の夏、運命の再会。自分とは真反対と言っていいほどの彼。それでもこの感情を消すことはできない。イケナイ恋だということは知っています。でも、好きで、好きで。好きという言葉では表したりないような。言葉にできないほど愛しています。しかし、幼稚園の頃同様私の父が亡くなってからここまで育ててきてくれた母はどうなるのでしょう。きっと私が知らないうちに大変な苦労をしたことでしょう。なんせ娘2人です。あぁ。神様私はどうすればいいのでしょうか。

「私は…」自分の答えは?彼が好き。でも親を見捨てるなんてできない。私の選択肢は2つ。晶さんを取るか、水樹さんを取るか。こんな人生最大級の問の答えは?

「私は…水樹さんを選びます」


彼女の言葉には迷いがあるように思えた。しかし、それを口に出せる状況ではなかった。「ごめんなさい。晶さん。許さなくてもいいから。忘れてもらえないですか?」それを聞いたときにはもう走り始めていた。

俺は自分でもどこに向かっているか分からない。どうして?昨日はあんなにも喜んでいて。君だって気づいていただろ?運命を裏切るのか?まるでこれじゃあ俺が子供のようで。あんなにも喜んでいたのは嘘だったのか。あんなにも、あんなにも。

知らない路地を曲がり、転けても立ち上がり。ただひたすら走り続けた。目の前が涙で霞む。目が痛い。息をするのが辛い。美樹。俺のジュリエット。あなたはあの頃のことを覚えていないのですか?指切りしたのを覚えていないのですか?結婚しようと。俺たちは強い糸で繋がってるって。忘れたのですか。俺のこの想いは届かないのですか?神がいるのであればあんまりだ。酷すぎる。あの時もしもあれがドラマだったら彼女は俺を選ぶだろう。しかし現実は…。

神よ。あまりにも理不尽ではありませんか?あんなに期待を押し付けてから別れさせるだなんて。適当に走ったはずが、知らぬうちにあの川辺まで来ていた。ここでの思い出はあまりにも綺麗で。あれも嘘だというのですか。俺には彼女しかいない。あなたが振り向かないのであれば俺は死を選ぶ。あなたのいない世界なんて考えられない。


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