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運命の糸  作者: 輝
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10/10

やっぱり好きで好きで忘れられない

美樹

あれからどれだけの月日が流れたか。あの後再婚話は続けられ。とうとう今年高校へ上がると同時に結婚は確定するそうだ。今の私は志望高校の合格発表を待っている。今年の夏の淡い初恋はないものとなっていた。分かっている。

でも、消えないのです。心からあの笑顔が、声が、彼の全てが消えないのです。秋から始まった本格的な受験勉強も彼のせいで効率が悪かったように思えます。今頃あなたを思い出すだなんて。私の選択はあっていたでしょう。あの時彼のもとへ行っていれば幸せだったかもしれません。しかし、私の母の幸せを崩してまでは考えていなかったのです。あの夏の思い出が今となっては嘘のよう。たった数日で恋に落ち、その相手が幼稚園の頃に恋に落ちた相手と同じで、でも恋してはいけない相手で、それでも好きで。話しかけられるだけで自分がおかしくなりそうで。あんなに楽しい日々は一瞬で過ぎ去り。思い出の品など一つもない。目の前に合格発表の紙が貼られてゆく。

私の番号は1021。目で番号を追ってゆく。1001、1004・・・1019、1021。「あった」そう言った時に言葉が二重になっていることに気づきました。ふと横を見ると私と同じ受験生が自分の受験番号を指差し同じ言葉を発したのです。その人がゆっくりとこちらを向くのです。私は泣きそうになりました。だって。いや、もう私は見た瞬間涙で頬が冷たくありました。顔をクシャクシャにして。それは合格したからじゃなくて。相手が。目の前にいる人が。だって、だって。もう私は涙で言葉など出ません。だって、相手が晶さんだったから。


晶

俺は目を疑いました。合格に喜ぼうとした矢先振り向くと彼女が涙をこぼしてこちらを見ているのです。俺はそれを見て一緒になって涙を流しながら美樹の頭を撫でてやりました。「ごめんなさい」彼女が声を震わせながら謝ります。半年前の夏の物語の歯車がゆっくりと動き出します。歯車の歯は錆び付いていて自動的には動いてくれそうにもありません。これを動かせるのは俺と彼女だけ。

「気にしないで」俺は気遣ったつもりで言いました。しかし彼女の涙は止まるどころかますます量を増すばかり。「私はそんな言葉が欲しいんじゃあありません」次ははっきりとした口調で言いました。そうだった。俺の封印していたあの思い出が蘇ります。「大丈夫。俺は待ってるから」そう言いながらも自分は大丈夫な状態ではありませんでした。しかし、この言葉は本当です。まだ待っているのです。あの後、何度告白されようと心が揺らぐことなど一度もありませんでした。

「私のロミオ。私たちはまだ繋がっているのでしょうか?」と差し出す小指は赤く染まっていました。「もちろんですよ。俺のジュリエット」そう言い小指どうしを絡ませました。その小指はとても細く冷たかったのです。しかし、俺の心は暖かく、夏の思い出を鮮明に蘇らせます。合格発表の看板の前で俺たちは何をやっているんだろうか。あまりにも不器用な俺たち。

幼稚園の頃の別れ、中3の夏再開し、幼稚園の頃の約束を思い出すがまたもや別れることに、そして中3の冬の再開。絶対に手放すものか。もう何があっても離さない。俺のジュリエット。最後に訪ねました。「それは演技上の台詞?」俺は答えを分かっていながらあえて聞いてみました。彼女は「知っているくせに」そう言い唇を重ね合わせました。もう俺はこれが夢なのなら二度と覚まさないで欲しかった。これが現実なら嬉しく、死んでもいいとも思いました。


美樹

晶さんの唇はとても暖かく先ほどの小指の冷たさが嘘のようです。私は半年前の過ちに今になって気づくのです。遅い。遅すぎる。彼を何年待たせたのだ。

幼稚園の頃の別れ、中3の夏再開し、幼稚園の頃の約束を思い出すがまたもや別れることに、そして以下略。私の涙はいつの間にか消えておりました。あの後家まで手を繋いで帰り。家の前でもう一度口づけをしました。もう私は嬉しすぎて手を繋いで帰っただけで心臓が止まるのではないかと思いました。では、また。と別れをするときです。急に抱きつきました。

「離したくない。ジュリエット」そう言い一層きつく腕を私の背中に回しました。「私もです。でも、その名前で私を呼ばないで」そう言い、しもやけで真っ赤になった頬を膨らませると彼は「美樹」とただ一言言いました。耳元で囁くその声は懐かしく。涙がまた溢れてたまりません。「晶さん」私は返事をしました。すると私の方に雫が落ちるのが分かりました。きっと彼も泣いているのでしょう。

「美樹、君の家に行っていいかい?」と聞くのです。しかし家には合格の結果を待ち望む家族がリビングに。「しかし・・・」私は私の両親が彼へ向ける態度を思い浮かべ悲しくなりました。「分かってる。でも、この物語ももうそろそろ決着をつけなきゃいけないだろ」そう言い私の背中から腕を振りほどき私の目をじっと見つめました。私は了承し家へ入れることにしました。ドアを開けると母の明るい声が玄関に響き渡ります。

「おかえり、美樹。結果は・・・」晶さんが見えたのか急に口をつぐみました。「どうしたの?」急に声のトーンが低くなりました。私は身震いしましたが、彼は少しも揺るがない表情でいるのでした。「少しお話が」と彼が言うと母が「上がりなさい」そう言いリビングに消えてゆきました。私が不安そうにしているのに気づいたのか彼がこちらを向きにっこり微笑んだのです。私はなんだかそれだけで落ち着くような気がしました。

リビングに入ると母はもう席に着き「話って何かしら」と落ち着いて聞きました。今までの全てを晶さんが母に話しました。それで全てが収まると思いきや私の母の眉間のしわは深くなるばかりでした。「まるで、ロミオとジュリエットね」ただそれだけを言い、目を細めていました。まるで彼はその答えを待っていたかのように返事をしました。「そうですね。しかし、俺はロミオのような間違いを犯すつもりはありません」私は初めなんのことだかよく分かりませんでした。

「ロミオ?」と私の母は問い質します。彼はゆっくりと説明しました。「確かに俺は1年前目の前で美樹さんを取られたときは死んでやろうと思いました。でも、死んだからといって彼女が俺の作戦に気づいたでしょうか。これじゃあまるで悲劇の物語ロミオとジュリエットになってしまう。だから俺は歯を食いしばり耐えました。耐えて。耐えて。やっと今手に入ろうとしているのです」私はその時自分の半年前の愚かさに改めて気づきました。あの時自分の事で手いっぱい。晶さんの気持ちなど手に取ってはいないことに恥じました。「まるでドラマのよう。しかし私だってあの物語のようにあなたの家族を許すつもりはありません」私の母はきっぱりと言いました。

「あなたは、美樹さんの幸せを奪うのですか」いよいよ私の話になりました。母はそんな彼の質問にも難なく避けるのです。「奪っているのはあなたでしょう」母はずっと落ち着いた口調です。「違います」と断言する彼に母はまたもや動じず思わず本心を口にしたようでした。「違わない。私がどんな思いで育てたと思っているの?」私は目が覚めました。こんな言い合いをただ聞いているだなんて私は馬鹿か。とうとう私はこの討論に口を挟みました。

「お母さん。交際を認めてください。これが私の幸せです。お母さんはよく私に幸せになりなさい。それがお母さんの幸せでもあると言ってたではありませんか」私は今の気持ちを正直に言いました。少し母のまゆがピクリと動いたような気がいたしました。「確かに言ったわ。でもね、美樹」私はここで母の言い分を聞いていては自分の感情が抑えきれないと思い母の言葉を遮って言った。「分かってる。でももうそろそろ気づいてよ。昔の話を引きずってもどうにもならないってこと。それから彼と居る時が私の一番の幸せってことを」これが私の答えです。お母さん。母は無言でした。これで最後だと彼と顔を見合わせ、「お願いします」と頭を下げました。

母は観念したのか「分かったわ」と言いキッチンへと消えていきました。私たちは安心したのか顔をほころばせて喜びました。


晶

あの後俺の家に行き、両家の仲を戻すことに成功しました。俺は運命という名の神がいるのであれば心からお礼を申し上げます。ありがとう。俺は一生彼女に尽くそうと心に誓うのです。


運命は必ずある。信じる者には訪れます。私は書きかけの野球少年の青春物語を改自分の恋の物語を残すことにしたのです。私、佐々木美樹は一生をかけて日比野晶と幸せになることを心に誓い、この物語に刻み、永遠と言う名の運命に喜びを感じているのです。



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