第二話 急いで幽霊と遭遇すべし その2
「で、あれから何か連絡あったか?」
「……ううん。それが全く」
「……そうか」
そう言った藤巻は隣で歩く俺を一瞥するだけでまた視線を前に戻す。
二人並んで歩くスピードはゆったりとしている。
もうすぐホームルームが始まる事もあって廊下にいる生徒はまばらだ。
「……なぁ、山咲」
「なに?」
「……その……よ。……あぁと……」
「?」
何か言葉を探しているのか、言い淀む素振りをする藤巻は、少し時間をかけてやがて言った。
「……巻き込んじまって悪かったな」
「へっ?」
いや、何が?
と、言いかけて俺は口をつぐんだ。
それは藤巻があまりにも勇気を振り絞ったように見えたから。
「悪かったも何も藤巻は命の恩人だよ。俺の方こそありがとう」
「……………いや―――」
俺が礼を言うと、藤巻は何かを言いかけて飲み込んだ様子だ。
昨日の事を気にしてて、教室の外に連れ出したのか?
そろそろホームルーム始まりそう。
「……えぇと、藤巻。そろそろ教室にーーー」
「……ちょっと訊きたいんだけどよ」
「あ、ん? な、何?」
いきなり食い気味に俺の言葉を遮断する藤巻。
その表情が、なんか焦ってるように見える……けど。
「お前、あの狭間……さんだっけか? どうやって知り合ったんだ」
「え? 狭間さん……?」
俺が聞き返すと並んで歩く俺に、神妙な顔でコクリと藤巻は頷いて前を向く。
「えと、呪い解決してくれる人を探して……で、普通に検索して……たどり着いたのが(たまたま)狭間さんだったんだけど……」
「……で、依頼したっつーことなんだな?」
「うん。そだよ?」
その横顔に返事をすると、藤巻は言いにくそうに頭を掻いて。
「あのよ……」
と、重そうに口を開いた。
「ん?」
「もし……俺も頼みたい事があったら引き受けてくれると思うか?」
「え……? そりゃ話をすれば分かっ……って、もしかしてあれからまた何かあったの?」
「いや昨日の事じゃねぇ……。これは別件―――」
言いかけた藤巻が言葉を切って静止した。
「藤巻?」
と、俺がその横顔に問いかける。
が、返事はない。
藤巻は険しい視線を、前方へ向けていた。
「おいおい……。昨日死んだ奴が立ってるぜ?」
藤巻が眉間にシワを寄せて不敵に笑う。
その藤巻の視線の先を追従した。
そこにいたのは昨日確かに自身の車によって圧し潰された――。
「眞元……!!」
その首は奇妙な角度で曲っていた。
当人の胸に左の耳が付くほど、だらんと垂れていた。
上半身は俺たちに対して横へ向けているが、下半身は真正面を向いている。
ただ。
その体は透けていた。
「……地縛霊ってか? 今度は俺達で決着つけるかよ。なぁ、山咲?」
そう藤巻は言うが……。
俺たちだけで除霊なんてできるのか?




