エンカウントエネミー
“僕”恐々。
突然変異したロックワームの大きな鳴き声――ううん、僕等を威嚇する声に肌が、鼓膜がビリビリ震える。
そりゃ自分の餌場っていう縄張りを荒らされたらそうなるよね。
耳を塞ぎながらそんなことを考えていたら、ロックワームの体についている赤色の魔石が光ったような気がした。
突然、薄暗い坑道内にオレンジの火球が1つ、2つ、3つ、と現れて、その全部がヴィヴィアンに向かって飛んでいく。
これって、もしかして……
(火の魔法!?)
驚く僕とは対照的にヴィヴィアンはいたって冷静だった。
口の中で何かを唱えてる。かと思ったら、すぐに盾のような水の膜がヴィヴィアンの周りに展開された。飛んできた火球がその水の膜に当たって蒸発する。
その瞬間、ヴィヴィアンは地面を蹴って前に出た。
掛け声も何もない。ただ静かに――斬る、というよりは叩き付けるようにその大剣をロックワームの胴体にお見舞いしてる。
人間が受けてたら骨折どころじゃない、骨が粉砕していてもおかしくない一撃。
だけど、その攻撃はロックワームの胴体を鎧のように覆っている石や魔石のいくつかを砕いただけであんまり効いてないみたい。
「さすがに硬いか……なら、」
ヴィヴィアンがもう1度大剣を振るう。同じ箇所を集中攻撃してロックワームの硬い装甲、その下の肉体にダメージを入れようとしてるんだ。
ロックワームもそれに気付いたのかもしれない。そうはさせるか、とばかりに体をしならせて石や魔石で覆われている体でガードをした。
石と大剣がぶつかり合う音。ロックワームの胴体の石がまた砕けて、こっちに飛んでくる。
それを見た僕はと言えば、咄嗟のことで避けることも出来ずに体を硬直させるだけ。前にいる魔王様が舌打ちしたような気がしたけど、それどころじゃない。
魔王様が動くのが見えた。僕の体を守ろうと何かをしてくれようとしているのかもしれない。
けど、それよりも先に分厚い水の膜が僕と魔王様の前に張られて、飛んできた石を、その衝撃を吸収して防いでくれた。
「ヴィヴィアン、すっご……」
『腐っても騎士だな』
魔法の才能がない、とか言ってたけど、これだけ出来れば十分でしょ。
魔物と戦いながら僕等を守る余裕もあるなんて、やっぱり戦い慣れてる証拠だよね。
それに、ヴィヴィアンは不老不死。攻撃を受けてもすぐに回復出来る。……痛みは、あるだろうけど。
『その調子でさっさと終わらせろ。長引けば長引くだけお前が不利になるぞ』
「分かっている」
あ、そっか。
ここって魔素濃度が高いんだった。いくら死なないとはいえ、魔力酔いで動けなくなったらさすがのヴィヴィアンでも勝てないんだ。
「ねぇ、魔王様がいつもみたいにあの魔物の体を乗っ取って、中から壊しちゃえばいいんじゃないの?」
『それをしたら、もれなくお前も死ぬぞ』
「え、何で?」
って聞いたらため息を吐かれた。まるで、これだからバカは、って感じで。
僕を死なせるわけにはいかないから、だから魔王様は動かないでヴィヴィアンに任せてるってこと?
何で僕が死んじゃうのか、それについてもう1度「何で?」って聞いた声は、ロックワームの咆哮でかき消された。
見ると、ロックワームがその太い胴体を伸び上がらせていた。
『おいおい、まさか……!』
「くそっ!」
魔王様とヴィヴィアンはロックワームが何をしようとしているのか分かったみたい。
ヴィヴィアンがこっちに向かって走り出してくる。
それをぽけーっ、と見ていた僕の額に魔王様の体当たりが炸裂して僕は後ろにバランスを崩す。
すぐ傍まできたヴィヴィアンがそんな僕の体をいつもみたいに支えてくれるのかと思いきや、
「うぎゃっ!?」
上から覆いかぶされて押し潰される、っていうね。
ロックワームが思いっきり胴体を伸び上がらせて、天井に体当たりをぶちかますのはそれと全く同じタイミングだった。
岩盤が爆発したみたいな激しい音。崩れた天井の岩が、僕達の上に降り注いでくる。
ヴィヴィアンが即座に自分の上に水の膜を張った。それだけじゃない。僕を圧死させないためだろう、自分と僕の間にも同じ膜を張って守ろうとしてくれた。
「ヴィヴィ――」
呼びかけようとしたら、水の膜の向こうでヴィヴィアンがフッと笑うのが見えた。
「大丈夫だ。お前は、俺が守る」
崩れ落ちて来る岩の音と一緒に、そんな声が聞こえた気がした。
水の膜で防げる威力と衝撃、そして重量には限界がある。
だから、膜を破って落ちてきた岩は全部ヴィヴィアンがその体で受けてくれた。
そう。
ヴィヴィアンは、僕の目の前で――――絶命したんだ。
『ノル、』
別に、人の死を見たのが初めてっていうわけじゃない。
貧民街では死体なんてしょっちゅう見たし、野良猫のように隠れて死んだ片腕のおじさんの遺体だって僕が見付けて埋葬したんだ。
『ノル』
だから、取り乱すこともない。
誰かに守られたからって、僕の心が揺さぶられることなんてない。
何より、僕は知ってる。ヴィヴィアンは不老不死だから、こんな程度じゃ死にたくても死ねないってことを。
『ノル!泣いてる暇があったら、そいつの下から退いてやれ』
「っ……泣いてないもんっ」
僕と、ヴィヴィアンの間の水の膜が顔に当たって、そこから流れ落ちてきた水が涙に見えるだけだ。
水の膜を押し上げて、僕は手の甲で乱暴にその液体を拭う。そのままヴィヴィアンの下から這い出して、邪魔にならない位置に移動する。
息を引き取るその時まで気合と根性、もしくは騎士としてのプライドで四つん這いに耐えていたヴィヴィアン。その体が岩の重量に押し負けて地面に倒れ込んだ。
何とかしてその岩を退かしてあげたかったけど、変に触って余計な痛みと苦しみを与えたくないし、何より僕の細腕じゃ無理だった。
「何とかならないかな、魔王様」
『叩き起こせばいい』
有言実行、とばかりに魔王様は地面に降り立って、その翼でヴィヴィアンの顔をバシバシ叩きだした。
鬼畜の所業である。
止まっていた心臓が動き出したのかもしれない。ヴィヴィアンの口から「うっ」という言葉が漏れた。
尚も魔王様は叩くのを止めない。正に血も涙もない存在だから出来る所業である。
『起きろ、雑魚騎士』
まるで日頃言い負かされている恨みをぶつけるかのように叩き続ける魔王様。だけどすぐに罰が当たる。
ヴィヴィアンの右手が動いて、そんな魔王様の体を鷲掴みにしたんだ。
『うぎっ!?』
驚きと、とてつもない握力で握り締められたことで魔王様の口から変な声が出た。そういえば、あの体って痛みを感じるのかな?
「ごほっ……っぐ。け、がはっ……怪我は、ないか……ノル、ディス」
意識を取り戻したらしいヴィヴィアンにそう聞かれて、僕は即座に頷いた。
「う、うん、僕は大丈夫!だけど、ごめん。僕の力じゃその岩を退かせなくて……痛い、なんてものじゃないよね。ごめんね」
契約上、僕を守らなきゃいけないヴィヴィアン。
……ううん、きっとヴィヴィアンは契約なんてなくても騎士の矜持から絶対に僕を守っただろうけど、足手まといの僕がいなければっていう申し訳なさで居た堪れない。
「苦しいよね」と、もう1度「ごめんなさい」って口にしたら、何でか分からないけどヴィヴィアンが軽く目を見開いた。
「君は……」
ヴィヴィアンの言葉は続かない。何か、困惑してる感じだったけど、すぐにその顔に笑みを浮かべた。
どうしてこの状況でそんな顔が出来るの?とも思ったけど、今は何とかして助け出さないと。僕は頭をフル回転させる。
一瞬魔法が頭に過ったけど、すぐに却下する。岩を砕けるような、そんな魔法を僕は知らない。
(あっ、そうだ!)
岩が動かせないなら、その岩から這い出せるように隙間を作ってあげればいいんだ。
スコップ……は、向こうに置いた鞄の中だから手元にない。
僕は、手近にあった石を手に岩に潰されているヴィヴィアンの体の横を掘り始めた。
「ノルディス」
「待ってて、すぐ掘るから。そしたら、少しは楽に……」
「――ありがとう」
「いや、お礼を言うのは僕の方だし!助けてくれてありがとう」
「俺の礼は……そういう、意味じゃ、ないんだが……」
「えっ?」
掘るのに夢中で聞き間違えたのかと思った。
そういう意味じゃないって……どういう意味?
疑問に思いつつも、僕は手を動かし続けた。だけど、
『ちまちま、ちまちま。そんなのでどうにかなるわけないだろ』
未だヴィヴィアンに鷲掴みにされている魔王様に言い捨てられた。
でも、これしか方法が、って言い返そうとした僕の体が金縛りにあったみたいに硬直する。
魔王様が僕の体の中に入ってきたんだって理解するのにそう時間はかからなかった。
《お前はこっちだ》
地面を掘るのに使っていた石が手から離される。それだけじゃない。立ち上がって、ヴィヴィアンの傍から離れさせられた。
「ちょっと、魔王様!」
《俺がお前の体を使って何とかする。だから大人しくしてろ》
反論も、勝手に体を使わないで、っていう拒絶もその一言で黙らせられた。
仕方なく僕は体の支配権を魔王様に譲る。
《よく見てろよ》
頭の中に声が響く。
僕の体を動かしている魔王様が地面に置いたままにしていた鞄を拾い上げる。
そして鞄の中に手を突っ込んで、そこから青色の魔石を取り出した。
《魔法の使い方を教えてやる》
僕の魔力が、魔石に注がれるのが分かった。だけどそれはほんのちょっとだけ。
手の中にある青色の魔石がそんな僕の魔力に応えるように、青い光を灯した。
口が、勝手に動く。魔王様が僕の声を使おうとしてる。
「――穿て水龍」
現れたのは、前世でやってたゲームとか見てたアニメに出て来るような水の龍。
妖怪で言う蛟を思わせる姿をしたソレは、空中を泳いでヴィヴィアンを押し潰している岩にその体をぶつけた。
衝撃と水圧で岩が砕け散る。……なんて威力なんだ。
《基本的に魔法っていうのは攻撃よりも防御の方が使い易い。理由は分かるか?》
え、こんな状況で勉強させるつもりなの?
また僕の魔力がほんのちょっとだけ魔石に注がれる。
勝手に使われている視線の先には、標的を定めるかのように鎌首をもたげるロックワームの姿。あれに挑むわけじゃないよね……?
質問に答えない僕にしびれを切らしたのか、魔王様が言葉を続ける。
《答えは手順の少なさだ。脳が魔力を操るための回路の少なさと言ってもいい。壁や盾、膜、結界……なんていうのは想像力さえあれば、魔力を使って簡単に具現化出来る》
こんな風にな、って声が頭に響いたかと思うと、地面から水の柱が生えるように伸びてきて、僕に向かって突っ込もうとしていたロックワームの進行を阻んだ。
ぎょっ、としたように止まるロックワーム。
その間に体の傷が回復したらしいヴィヴィアンが大剣を持ってこっちに来てくれた。
《この雑魚騎士が攻撃魔法を使えないのは、自分の体を動かしながら複雑な魔力操作を行なえないからだ。強力な攻撃魔法ほど回路が多くて、想像力だけじゃなく一定の計算も必要とする。並列化は難しい》
魔王様の言葉は僕にだけじゃなく、ヴィヴィアンの頭の中にも響かせていたみたい。
ヴィヴィアンは苦虫を嚙み潰したような顔をしてた。
僕は、今の説明に納得。だから世の中の人の全員が全員魔法を使えたり、上手く使えるわけじゃないのか、って。
魔石に灯っていた青い光がフッ、と消える。魔力を使い果たした、ってことなのかな?石の色も青からその辺に転がってる石と同じ色に変わってた。
その石を投げ捨てて、魔王様はまた鞄から青色の魔石を取り出す。一連の作業を見ていたヴィヴィアンが魔王様に向けてこう言った。
「魔石は自分の魔力属性に合ったものしか使えないはずじゃないのか」
「え、そうなの?」
「自分の属性とは違う属性の魔石を使うとなると、自分の魔力を石の魔力に変換させる装置……魔導具が必要になるはずだ」
《ああ、その知識は正しい。だから黒の賢者――魔導学者オルンは魔法と人類の発展のために魔導具を生み出した》
「そんな魔道具を生み出せたのも、違う属性の魔石を直接使えるのもお前が言う“闇の魔力は特別”だからか」
《その通りだ》
何そのチート能力。心の底からいらないんだけど。
魔法は凄かったり、ある程度使いたいとは思うよ?思うけどね、それで僕のお腹が膨れるわけじゃない。むしろ逆、魔力を使えば使うだけお腹がすく。それがいただけない。
温かくて美味しいご飯を食べたい時に出せる魔法とかがあったらいいのに……。
現実逃避さながらにそんなことを考えていれば、視線の先にいるロックワームの体についている赤と青の魔石が同時に光るのが見えた。
《あんのクソミミズ……!》
ロックワームがいる地面、そこに赤と青、二重の魔法陣が浮かび上がる。同時に鎌首のようにだらん、と下がっていた首が伸びてゆらゆらと弧を描いてる。
ゲームで見たことがある。あれは言語を持たない魔物独自の詠唱方法。その詠唱が必要ってことは、
(強力な魔法を使おうとしてる……!?)
《命令だ、ヴィヴィアン!複合魔法がくる前にノルと荷物を担いで鏡まで走れ!!》
「ノルディス、舌を噛むなよ!」
何かしらの反応や返事を返す暇もない。
軽々と片手で抱き上げられて、ヴィヴィアンの肩越しにどんどんロックワームが遠ざかっていくのが見えた。
僕等は広間を抜けて、さっき歩いてきた坑道に入っていく。魔王様がまた僕の体を使って青色の魔石を取り出して、そんな広間と坑道の間に水の壁を作った。
魔王様、ロックワームがやろうとしてたのは複合魔法だ、って言ってたけど……
「魔物も魔導具なしで魔石を使えるの?」
って聞いたら、僕の中から魔王様が出て行く感覚がした。
すぐに鳥さんの中に戻ったんだろう。翼を動かして隣を飛びながら答えてくれる。
『そこらへんの仕組みは人間と変わらない。けど、あいつは例外だ。変異した、って言っただろ?あいつは長い時間をかけて魔石を体内に取り込んで、体に火と水の魔力を馴染ませたんだ』
「人間も魔石を食べたら同じことが出来るの?」
『理論上は可能だ。けど変異したソレはもう人間とは言えない。体が魔力に耐え切れず寿命が縮み、知性も理性も失う。要は化物になるんだよ』
「うえぇ……」
想像しただけで嫌な気分。
魔王様にそんな知識があるってことは、それをした、させた、もしくはさせられた?人間がいた、ってことだよね。グロ過ぎる……。
三半規管が盛大に揺れてることもあって気持ち悪くなってきた……。
「吐きそう……」
「もうちょっと我慢してくれ」
「あぃ……」
口に両手を当てて深呼吸を繰り返す。早く新鮮な空気が吸いたい。
蛇行する道を僕と荷物、そして自分の武器である大剣をを担ぎながらヴィヴィアンは走っていく。騎士の筋力凄過ぎない……?
負担にならないようにしないと、って僕が体勢を変えようとした時だった。遠ざかった広間の方から、ドンッ!っていう空気を揺らす重い振動が伝わってきた。
途端、坑道内の温度が急激に上がった気がした。
「何、これ……」
喉が、熱い。
『火と水で高温の蒸気を発生させやがったんだ。ノル、直接吸うな!袖で鼻と口を塞げ!』
魔王様にそう言われて、僕は左肘を曲げてそこに顔を埋めた。
ヴィヴィアンは大丈夫?と思って、右腕を伸ばして僕の袖でガードしてあげようとしたんだけど、問題ないって言われちゃった。
そんなに苦しそうなのに問題ないわけないじゃん。速度だって落ちてるじゃん。とか言いたかったけど、息をまともに吸い込めなくて言えなかった。
(何か、出来ることないのかな……)
ぼんやりと考えるもいい案は浮かばない。
そして、そんな僕を待ってくれるほど現実は甘くない。
坑道の壁や天井、地面、そこに点々とあった穴という穴から、蜘蛛の子を散らすように一斉に魔物が飛び出してきた。
この蒸気のせいだ。ムカデ型、蜘蛛型、芋虫型、コウモリ型……色んな魔物が我先にって感じで広間の方から逃げ出していく。
虫を見慣れている僕でもさすがに背筋がゾクッ、としちゃった。そして、
『ぎゃあああああ!!!?』
脚の多い虫が苦手な魔王様は盛大に発狂。逃げるように僕の脇腹に突っ込んできた。
「ぐぇっ」
おい、こら。僕は君の依代になる体のはずだろ。もっと丁重に扱え。
もぞもぞと僕とヴィヴィアンの体の間に身を入れてくるもんだからこそばゆいったらありゃしない。何この新手の拷問。
それでいいのか、魔王……と問いかけずにはいられないよ。威厳も何もないじゃないか。
その時だった。
広間の方からあのロックワームの咆哮が聞こえてきた。
どうやら、餌場を荒らした存在を絶対に許す気はないらしい。身をくねらせて追いかけてくる姿を見てそれは驚いたよ。
ロックワームはその大きな口を開けてどんどんこっちに近付いてくる。このままじゃ食べられちゃう。
「ま、魔王様っ……何とかならない!?」
鼻と口を袖で塞ぎながらくぐもった声でそう言うも、僕のお腹の辺りで身を震わせてる魔王様には届かない。肝心な時に使えないんだから!
「げほっ……俺が、あいつを止める。その間にノルディス、お前は鏡まで走れ」
「無理だよ!今度こそ生き埋めにされちゃうよ!」
何か……!何かない!?
あの魔物に対抗出来るような強力な――
「あ、」
思い浮かんだ。
考えるより先に右手が、魔力が動いた。
僕が、闇の魔力を使って出来ることなんて限られている。
「――生体模写」
大量の魔力を消費して生み出したのは、僕が生まれて初めて見た魔物。魔王様が僕の体よりも先に寄生していた獣型の魔物――ウルフの姿。
体長4、5メートルぐらいの姿を生み出そうとしたんだけど、屋敷で魔王様が言っていた通り、今の僕の魔力じゃその四分の一ぐらいの大きさが限界だった。
それでも姿かたちはウルフそのもの。その口から漏れる低い、どこまでも低い唸り声が坑道内にこだまする。
『よせ!止めろ!!』
僕のお腹の辺りで震えていた魔王様が素敵に復活。
何か止めてきたけどもう遅い。僕が生み出したウルフはもうロックワームに向かって突撃してる。
『そいつにお前の魔力を喰わせるな!!』
――はて?
どうして、なんて問いかける間もなかった。
ウルフとロックワームはぶつかり合い、もう既にお互いの体に噛みついていた。瞬間、不思議な現象が起こる。
「何か……光ってる?」
ロックワームの体についている魔石が強烈な光を放ち始めた。何これ?
「まさか……!」
『ヴィヴィアン!!鏡に飛び込め!!』
そこからの出来事は、変にスローモーションに見えた。
ロックワームの魔石だけじゃなく、体まで発光し出した。僕は魔王様に体を乗っ取られて、来るのに使った魔石に魔力を注がれた。
今まで見えていなかった場所に来た時に使った鏡が姿を現す。
後はヴィヴィアンにされるがまま。
そのまま鏡の方へ
それと同時にロックワームの体が――――爆発した。
僕等は爆風で鏡の中に吹き飛ばされる。
そして僕は、その後に知ることになる。
今の現象がどういうものだったのか。あの現象はゲームの中でも出てきた単語の1つ、
“魔力暴走”――っていうんだって。




