剣をその手に
絶体絶命の危機にジャンヌがとった行動は「祈り」だった。
彼女の祈りは、フラガラックに向けられ、それは聞き届けられた。
目の前に聖なる神剣が姿を現す!
「さ、さっさと私を引っこ抜きなさいよ?」
「……あ、ああ」
言われるがままに、私は目の前の剣の柄を右手で掴む。
久しぶりに持ってみたが、華奢なこの体でもその剣を持つのに負担は一切かからなかった。下手すると漫画の単行本一冊よりも軽いんじゃないかと思う。
「久しぶりねぇ、ジャンヌ。また会えるとは思ってなかったわよ」
「私も、思っていなかった。あなたが喋ることが出来るなんて……」
「まあ、積もる話は後、目の前の敵をやっつけないとね!」
竜は随分と近くまで来ていたが、今の事態に驚いたのかじっと立ち尽くしている。
目は、ぎょろりとこっちを見ていた。
「おいおい……」竜が、困ったような声を出す。
「これは一体、どういうつもりだい? フラっち」
「アンタには悪いけど、お祈りされちゃこっちも手伝わないわけにはいかないのよ。増してや、それがジャンヌダルクの生まれ変わりならね」
「そうか、ちゃんと僕達の話聞いてたんだ」
「当たり前でしょ! あんな、大きな声出してちゃ〇聞こえよ! 大体、私をなんだと思ってるの? 神の剣よカミノツルギ!」
「わかったわかった。要するに、そっちの味方をするわけだね」
「そーいう事! ……それで、アッちゃんはどうするの? もう、守る物も無くなっちゃったけど~」
「うーん、まあ、奪われたんなら、<守護神>としては取り返さなくちゃならないね」
「そ! それじゃあ、覚悟することね! 千年以上もボーっとしてたからと言って、このフラガラック様の力が衰えたなんてことぜーんっぜん無いんだから!」
「わかったよ、じゃあ、かかってくるがいいさ。ジャンヌダルクが君の主に相応しいかどうか試させてもらうよ!」
勝手な2者の会話の末、結局竜と私はフラガラックとともに戦うことになった。
しかし、いくら神剣を手にしたとはいえ……
「能力的には一般人、本当に勝てるのだろうか? ……って、いま思わなかった?」
「思ったよ」
「それなら安心していいわよ。 フランスにいた頃や、戦国時代の時のみたいにただの剣でいるつもりはもうないから」
「それは、つまり……」
「いまから、私の真の力を開放するってことよ!」
彼女(声からするに多分)は、そう言うと金色に輝きだした!
そして、私の体からも黄金のオーラの様なものがブワッと吹き出す! まるで、どこかの野菜っぽい名前の戦闘型宇宙人になったみたいだ! 流石に神の色が金色にはなっていないみたいだけど……
ゴオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
とにかく、体から、力がこみ上げてくる!
かつての肉体よりもはるかに大きなエネルギーが湧いてくる!
ひきこもり生活で失われていた闘志が蘇る!
明らかに体が軽い、まるで別の肉体に進化したような感じだ。
これなら……戦える!
「フッ……さすがは、<大いなる理力のフラガラック>! 僕の体がこんなにゾクゾクするなんて久しぶりだよ!」
「名前の覚えにくい竜よ……悪いが、私達にこれ以上危害を加えるのならば、この聖剣でお前を倒させてもらう!」
「いいよ! 僕は、君の力が見てみたいんだ! 新たなるジャンヌ=ダルクの力を!」
「ならば、いざ、参る!」
私は、フラガラックを両手で握りしめ、竜と対峙する。
暫くは、お互い出方を伺っていた。しかし、その均衡も破られる。
先に攻撃を仕掛けたのは竜の方だった。
大きな口を開けて炎を放つ姿勢を見せる。
「この炎かわせるかい? もし、君達が回避しても、ほかのみんなに当たっちゃうかもしれないけど?」
「……その必要はない」
「何!?」
私は、左手を前方に出す。
そして、こう叫んだ。
「聖なる羽よ……我を守りたまえ! <聖綱防護翼>!」




