絶体絶命/巫女の覚悟
竜の弱点を見出したジャンヌ。
斎藤と比部の連携で、遂に竜に一撃を見舞った!
「へえ、僕の体に触れるなんて随分と頑張ったね」
「……!!」
比部が攻撃した部分には、何と、かすり傷しかついていなかった。
「僕は、ただの竜じゃないんだ。正確な名前は<ファイアプラチナドラゴン>。比部、君の持つ刀は折れ無かったから大したもんだけど、それで僕の鋼鉄よりもはるかに硬い体ににダメージを与えるのは残念ながら無理な話だね」
「くっ、これは分が悪いにゃ」
「さあ、僕がじっとしてるのもそろそろ終わりだよ! <大翼衝>!」
竜……FPドラゴンは、その大きな翼をはばたかせる!
すると、物凄い強風が巻き起こり、私達はその場に立っている事ができず、吹き飛ばされた。
「くっ、うぁっ!?」
障害物に背中を打ちつけられて、私はその場に腰を落とす。
運動不足の体にこの衝撃は、かなり効いた。体の節々が痛む。骨折くらいはしているかもしれない。
横を見ると、同じように尻もちをついた比部がいた。頭からは、どこかでぶつけたのか、血が滴り落ちている。
「ジャンヌ、大丈夫か」
「……ああ」
「あはは、とんでもなく大ピンチになっちまったがや」
「そうだな。全く歯が立たないという感じだ……」
「人生でも、こんな危機的な状況は一度もなかったにゃー。いやはや、ホント、とんでもない事に巻き込まれたもんだよ」
「すまないな、比部……」
「そんな事言わんでええ。私も、望んでここに来たんだからさ」
竜は、私達にゆっくりと近づいてくる。
わざとやっているかのようにゆっくりと。
「ジャンヌ、良い事を思いついたぞ……」比部が、急にその場を立った。
「どうした?」私も、重い腰を持ち上げる。
「ワシが死ねば、奴は契約消えるんじゃろ? ならば簡単だがね」
「……比部、まさか!?」
「そうさ……私がこの刀で自分の命を絶てば、お前たちは助かるし、フラガラックも手に入る!」
人の為に死のうとする。
そんな事をする人間は、ここに生まれ変わって初めて見た。オルレアンで戦った頃だってそんな人間は私含めて数えるほどしかいなかった。自分の命を捨てようとすると言うのは、並大抵の覚悟では出来ないのだ。それを、比部は言った。
「お前らを死なせてまで、罪を背負ってまでこの先生きたくは無いがや。お前らが助かればそれでいい」
「……」
「ジャンヌ、お前がここに来たその判断、ワシは間違っていなかったと思う。時の流れとは常では無い、形ある物はいずれは滅ぶ。この織田家の使命もいつかは終わりを迎える定めだったのよ」
比部は、刀の柄をを両手で持ち、切腹でもしようかと言うように自らの腹にその切先を突き立てる。
異界の風になびく巫女装束と長髪は、彼女の覚悟を現すように美しく見えた。




