第二章外伝①:FOXじいさんの武勇伝その1
第二部のすこし後のお話。
FOX爺さんの、新たなる武勇伝。
4月23日。
織田比部の住むプレハブの建物にFOX老人はいつものように遊びに来ていた。
「はい、お茶」
「おお……いつもありがとのぉ、クーちゃん。お前さんは死んだヨリちゃんよりも気が利く子だわい」
「気のせいだって。フミオさんは、おばぁに色々厄介かけたから、ああいうつっけんどんな態度とられてたのよ」
「まあな! ヨリちゃんにはピンチの時によくお金を貰ってからのぉ」
「貰った? おばあは、確か<借金>って言ってたがなー?」
「ふぉふぉふぉ、まあどっちでもいいわい。ちゃーんと、借りたもんは競馬で当てて返したしな。」
「ふーん。……ああ、そういえばこの前の笠松競馬どうだったの? 勝った」
「いな」FOX老人はお茶をすすった。
「絶対勝てると踏んでいたので外してな……マイナスじゃった。中盤まではワシの買ったショウワニトラスとコクミドロップの二頭が集団を抜けて、こんなふうに(しゅっしゅっ)抜きつ抜かれつの展開をしておったんじゃがのぉ。ロクトテイオウがあそこで巻き返すとは思わなかったぞ! ワシは悔しくて、その場で馬券を歯でガッシガッシと噛んでしまいそうだったわい」
「そりゃ、残念」
「だがな、くーちゃん。大須観音様とジャンヌ様はワシを見放してはおらんかった」
「と、言うと?」
「帰りに寄ったパチンコ屋で16連チャンしたんじゃ。虎仮面様がキラキラガオーと吠えまくってワシも心臓がドキドキしまくりじゃった! おかげで、競馬も取り返して少しプラスになったわい!」
「ほー、流石はフミオさん。根っからのギャンブラーだがや!」
「そうじゃろそうじゃろ? <巻き返しのフーちゃん>と呼ばれたワシじゃからのぉ、こういう事は日常茶飯事じゃ。この前だって、麻雀で-20000をひっくり返したしのぉ。一番凄かったのはやっぱり昭和64年5月30日の笠松ダービーじゃな。あの時は……」
老人の話は、軌道に乗りはじめた。こうなると彼の身の上話は止まらなくなる。
しかし、比部は終始、それを楽しそうに聞くのだった。




