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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師との冒険〜 第3章 冒険者への道

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第51話 サイレンの弱点

「はい。

 今回の報酬金になります」

「ありがとうございます」

「メリ!」


 サソリ戦士を二体倒した後、

 報酬金を受け取った。

 そして、当然のように報酬金を山分けする。

 ついでにギルドに預けていたエアリーも俺の頭に乗っかる。


「しばらくは依頼受けなくても食っていけるで!」

「……そうだな」

「ヨゥ!

 おめえらご苦労だったな!」


 俺の背中をバンバンと叩くのは、

 腕が太い小柄な戦士だった。

 見たところドワーフのようだ。


「メリ!」

「いや~!

 大変やったわ~!

 サソリ戦士、結構強くてのぅ」

「まあ、新人相手にサソリ戦士はきついな。

 下手したらハサミ攻撃だけで殺されかねない奴らもいるし」

「ああ、やっぱり」


 俺は一応特撮やアニメで戦い方を真似て何とかしているが、

 参考がない人がサソリ戦士に勝つに訓練なしで厳しいだろう。

 ハサミで武器を飛ばされかねないし、

 鋭い尻尾で貫かれたら一発だ。

 ドラゴンの鎧だから何ともなかったが、

 幸運な部類だろう。

 革の鎧では防ぎきれない。

 革の盾もアウトだ。

 余程の頑丈な鎧ではないと耐えきれない。


「加えて頑丈やったもんな」

「生半可な武器では弾かれるな」


 少なくとも、

 マジック・ウェポンを付与した武器レベルの威力がないと弾かれる。

 サイレンは幼少期から訓練していたから平気だが、

 サイレン以外の魔術師はわからない。


「……つまり、フルイってことか」

「嫌な言い方をすればそうなるな」


 力のある冒険者とない冒険者はここで分けられる。

 ただ、力だけある冒険者が生き残れるわけでもなく、

 適材適所だろう。

 色んな人のための様々なランク上げ方法だ。


「わっ!」


 すると、誰かが悲鳴をあげる。


「ん?」

「メリリ?」

「か……!」

「か?」

「カメムシだ~!」

「カメムシだと!?」

「メリッ!?」


 あっ、今いる世界にもカメムシがいて、

 呼び方もそのままなのか。


「ちょ、こっち来んな!」

「だ、誰かカメムシを追い払ってよ!」

「無茶言うなよ!

 カメムシ、臭いんだよ!」


 カメムシ一匹でギルドは大混乱である。

 確かにカメムシは臭いしな。

 俺も首筋にカメムシが引っ付いてきた時は、

 最悪で大変だった。


「大変なことになったな、サイレン……

 サイレン?

 ん?」

「メリ?」


 すると、サイレンの姿が何処にもいなかった。

 まるで、最初から存在しなかったように。


「サイレン!?」

「メリリリ~?」

「じ、嬢ちゃん、カメムシの名前を聞いた瞬間に去ったぞ」

「マジで!?」

「メリ!?」


 俺に一言もなく行ったってことは、

 もしかしてサイレンってカメムシが嫌いなのだろうか。

 あるいは臭いものが嫌いなのか。

 でも、サイレン、普通に納豆食べることができていたし。

 もしかすれば虫が嫌いなのかも知れない。


「もう!

 何とかしてよ!」


 と言うよりも無駄に暴れ回るから、

 カメムシも警戒している。


「……しゃーないわな。

 ちょいと借りるで」

「メリ?」

「え?」

「……《ストーン》」


 ボソリと石を出す魔法を使って、

 もう片手にはコップを握っている。


「な、何をするつもりだ」

「てい」


 冒険者の質問に答えることはなく、

 俺は石をカメムシにぶつけた。


「馬鹿~~~!

 石なんか投げて当てたらカメムシから臭いが!」

「よっと!」


 罵倒が飛ぶ前に、

 そして、カメムシから臭いを発する前に、

 コップを使ってカメムシを閉じ込める。


「え?」


 カメムシは魔獣扱いになるのだろうか。

 どっちでもいいが、

 元の世界同様カメムシも力はなく、

 コップから出られない。

 すると、カメムシはもがき苦しんだ。


「え?

 ……え?」


 そして、耐え切れずにカメムシはバタリと倒れた。


「よし、失神したで」

「カメムシって自分の臭いで失神するの!?」

「するで。

 カメムシの臭いは天敵のカマキリにも通用するんやけど、

 密封空間やと自分の臭いも嗅ぐことになるから、

 今見たみたいに失神するんや」

「へぇへぇ!」

「もちろん、空気を入れればすぐに復活するんやが、

 放置すれば死んでしまうやろうな。

 ちなみにカメムシの臭いは、

 臭腺と呼ばれる油状の液体やで。

 せやから、

 もしついたら洗剤と酢で対処した方がええで。

 間違ってもお湯やアルコールはあかんで。

 えらいことになるからな」

「そ、そうか」

「ちなみに他のカメムシも閉じ込めることができれば、

 連鎖的に臭いを出すから全員失神するんや」

「……開けたくねえな」


 臭いが酷そうと思って顔を顰めて苦笑する男性冒険者。


「ちなみに虫が死んだりすると、

 仰向けに倒れたりするやん?」

「ああ……」

「倒れた格好が彼らの休憩の姿なんや」

「休憩?」

「昆虫の足は六本。

 体重を上手に分散させて、

 屈伸させて動き回れるようになっとるんやけど、

 もちろん筋肉が関節を統制しとるからなんや。

 せやけど、

 昆虫が死ぬと筋肉が変化して収縮してしまうんや。

 そして、足が内側に折り曲げられて、

 体の重さを支えられなくなり、

 コロッとひっくり返るんや。

 蝶は死ぬと横に倒れるんやけど、

 原理としては同じやな」

「へぇ~、よく知ってるな」

「雑学の本は結構読んどるからな」


 そろそろ死んだだろう。


「ほな、取るで」

「お、おう」


 すると、モーゼのように冒険者達がさっと離れた。

 コップを開けるとカメムシはぴくりとも動かない。


「……《フロート》」


 流石に素手で触りたくないので、

 フロートで浮かせて持ち運ぶ。


「……《ドロー》」


 死骸をドローで引き寄せて、

 被害が出ない草むらまで誘導する。

 魔力を解除するとポトリとカメムシの死骸は落ちた。


「終わったで~」

「た、助かった……」

「練人くんって、虫平気なのね」

「虫は平気やな」


 尤も虫を踏んで殺したくはない。

 特にゴキブリは。

 小学校一年生の時、

 動き回るゴキブリを先生が踏んで殺したのを、

 間近で見てしまったからな。

 その姿は……

 うん、もう書くのはやめておこう。


「練人くん?

 顔、青くなっているけど、大丈夫」

「だ、大丈夫や……

 幼い頃の嫌な記憶が蘇ってな……

 そっとしてくれた方がありがたい」

「そ、そう?」

「にしてもサイレンがカメムシ相手に逃げるとはな」


 流石に驚きだった。

 しかも俺を置いて一目散だったから余程嫌いなのだろう。

 驚いたがサイレンも人間だなと思えて少し安心した。


「可愛らしいじゃねえか。

 カメムシ相手に逃げるのはーー」

「せやな。

 まあ、あんたらは大混乱やったから、

 言える義理はなさそうに思うが」

「う、うっせ!」

「む、無理の範囲だろ、

 むしろ、対処できたお前すげえよ」


 とは言え、苦手なものと遭遇した時の反応が大人しいのは助かった。

 キャラによっては暴走するし、

 周囲の被害を顧みずに、

 攻撃したり逃げ回ったりするキャラもいるからな。


「練人くんってうんちくとかよく知ってるの?」

「まあ、何が小説に使えるかわからんからな」


 元の世界にいた時もかなりの本を買って読んでいた。

 返却日を気にして読みたくはないから、

 中古の本ばかり集めていたが、

 役に立ったのだろう。

 他には自己啓発の本や推理小説、

 歴史など様々だ。


「知的~」

「サイレンには負けるわ」

「おい、練人!

 暇潰しで何か雑学を時々でもいいから披露してくれや!」

「せやったら今、披露するわ。

 ビール腹あるやろ?」

「おう」

「せやけど、ビールにカロリーがあるんやのうて、

 ビールに含まれる食欲増進効果で、

 つまみをモリモリ食べてしまうからなんや」

「ああ、確かにビールを飲むと他のつまみを結構食べるな」

「ついでにチャンポン……

 つまり複数の別種類の酒を飲むのは危ないで。

 酒は種類によってはアルコール濃度がちゃうから、

 複数の酒を飲んだら肝臓がいちいちそれに適応させて、

 酵素の濃度を変えんといかん。

 ほんんで、かなりの負担になるんや。

 酒には糖分、

 アミノ酸、

 コハク酸など、

 色んなもんが含んどるから対処せなあかん。

 脳や神経がほろ酔い状態なのにな。

 せやからチャンポンしたら、

 二日酔いや悪酔いになるんや」

「お、おう、そうか……」

「そう聞くと注意した方がいいな」

「せや、適量が一番や。

 単純に金もかかるしのぅ」


 そして、俺は立ち上がる。


「ほな、今日はもう帰るわ」

「おう、またな」

「ああ、またな」

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