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話がおかしくなってきた




 盗賊団に降伏することになりました。実際のところ盗賊というより難民みたいで、戦闘能力のなさそうな人も混じっていますが、それでも100という数字は脅威です。


 しかも、なんの策もなく正面からいって囲まれたのだから、どうしょうもありませんよ。


 ところが、ナーラックさんは諦めきれないようで、盗賊相手に値引き交渉をはじめたのです。


 しかし、盗賊団にしてみれば自分のほうが圧倒的に優位なのですから、そんな交渉が成立するわけありません。


「早くいけ」


「1台でいい。、1台は許してくれ」


「早く消えろと言ってるんだ、ブチ殺して奪ってもいいんだぞ」


 盗賊団のリーダーはスゴんで、錆が浮いて、刃こぼれもしている安物の剣を向けてきました。


「ほどほどにしておかないと、全力で潰しにくるぞ。この土地の領主や、街道を利用する近隣の貴族を本気にさせるほど派手にやったらマズいことはわかるよな?」


 ナーラックさん、今度は脅しにかかりました。騎士団を巡回されると経費がかかりますからね。しかし、取り締まらないほうが損だというレベルに盗賊団が暴れれば話は違ってきます。


 でも、盗賊たちは失笑。


「これは別にどっかの貴族の注文品というわけじゃねぇだろうが! ただが商人が荷馬車を何台か失ったところで、こっちがヤバくなる理屈がねぇな」


「1台だけ見逃してくれ。かわりに女を連れていけばいい。悪くないオモチャになるだろうし、飽きたら売ればいい」


 とうとうナーラックさんは頭がおかしくなったようです。なぜなら、彼の人差し指は私に向いていたんですよ。


 しかし、盗賊団のリーダーは一考に値する提案だと思ったようです。私をじろじろと見てきます。嫌らしい視線が上から下まで走るから、不愉快でなりません。


「まあ、上玉ではあるな」


「おいおい、変なことを考えるなよ。俺たちは降伏すると言ってるんだ。それで手を出したら冒険者ギルドが黙っちゃいない。田舎のギルドならともかく、ここは帝都に近いから腕利きを揃えるのも簡単だ」


 不穏な空気が流れ出したのでマレックが口を挟みました。


 それで盗賊団のリーダーは嫌な目を私に向けるのをやめます。


「聞いたことはあるな。戦って死んだ冒険者については、双方がやり合っている中でのことだから文句はないが、降伏しているのに危害をくわえた場合は報復するという噂だ」


「噂じゃないぜ。冒険者ギルドは半端者の寄せ集めなんだから、一度でもナメられたら終わりだ。メンツを潰されたら、必ずケジメをとらないとメシが食えなくなる」


「まあな、殴られたら殴り返さすのが基本だ。殴り返さねぇ根性なしだと下に見られたら食い物にされちまう」


 盗賊団のリーダーを納得しかけました。それなのにナーラックさんがまたしても余計な言葉を並べるんですよ。


「他の女は駄目だ。だが、その女だけは護衛として雇っているわけじゃない。途中で勝手にくっついてきただけだ。冒険者ではあっても、ギルドの仕事を請けている最中じゃないから、おまえたちが連れていっても厄介な問題にはならない」


「うちのメンバーだ」


 慌ててナーラックさんは否定しますが、ナーラックさんは引きませんでした。


「雇ったのは『黒十字血盟団』というパーティーで、契約のときにもらった名簿にはその女の名前はなかった」


「いまはうちのパーティーのメンバーだ!」


「俺は知らん。名簿にはなかったのだから、俺は雇ってない!」


「そのあと加入したから当時の名簿になかっただけだ!」


「契約したときの名簿こそが有効なのだから、その女は雇ってない!」


「いまはメンバーだ!」


「契約は契約だ!」


 いま盗賊に襲われている最中だというのに、2人で喧嘩になってしまいました。


 もう面倒なので依頼人の言うとおりでかまいません。


「わかりました。わたくし、雇われてないということでいいですわ」


 そして、盗賊団のリーダーも痺れを切らしました。


「わかった、わかった。積み荷は全部もらう。この女ももらっていく。文句があるなら、かかってこい!」


「紅蓮の炎!」


「うわっ……」


 ファイアーボールを飛ばすと、盗賊団のリーダーはひっくり返りました。おかげで直撃せず、髪の毛が燃えただけ。


「文句があるなら、かかっていってもよろしいのでしょう?」










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