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会見の準備はOK



 街で一番の高級ホテルの最上階を貸し切りにしたので、どうやらユノに不思議がられているようです。


 よくやりますけどね、貸し切り。


 前世でもアラブの王様とかだとホテルまるごと貸し切りとか、やってましたよね。


「なあなあ、ルイーズっ何者?」


 ユノがストレートに訊いてきました。


「とある貴族家に連なる者になりますが、なかなか覚えるのが大変なほど長い名前なので、いままで通り、わたくしのことはルイーズで結構です」


「げっ、貴族の令嬢? 偉い人のことはよくわからなねーが、とっても偉いんだよな。確か、ここの領主が子爵だから……」


「どうでもいいことを考えている暇がありましたら、仕事のことを考えてくださいまし」


「仕事?」


「明日のお昼に会見です」


 ホテルに届いていた手紙には『明日の昼食をご馳走したい』という1行ですむことを、貴族らしい持って回った言葉遣いで長々としたためてありました。まあ、いってみればビジネスランチみたいなものですね。


「俺が護衛としてついていく?」


「まさか、このわたくしが共も連れずに、たった1人で訪ねるわけにはまいりませんので。体面というものがあります。本当なら侍女が欲しいところですが、信頼できるかわからない、まったく知らない女性を侍女にするわけにもいきません。ここは護衛だけにしておきます」


「しかし、俺は貴族の護衛という柄じゃねーけどなぁ……」


「相手は領主ですから、この街の人間を雇ったといえば少々問題があっても許されます」


「おいおい、それじゃあ、まるで俺に問題があるようじゃねーか!」


「正規の護衛の騎士ならばフルプレートの甲冑程度の装備は身につけていますわ」


 そのポンコツ、確かサラマンダーが素材と自慢していましたが、冒険者としては悪くないとしても、侯爵家の護衛としてはかなり見劣りします。


「うちの領地で革鎧を愛用している方はたいていドラゴンですわ」


「……このあたりの冒険者でドラゴンを素材にした装備をつけている奴なんていねーよ。Bクラスでも手を出すのは大変だし、Aクラスの冒険者なら持っている奴もいるみてーだが」


「そこまでレアではないでしょう? この街ではまだ見たことありませんが、王都では結構ありましたよ。城にもいくつかあるようですし、知り合いのお宅にお邪魔したときにも飾ってありました」


「そりゃ王様だったら持ってるだろうよ! あと貴族の令嬢の知り合いなら、そいつも高位の貴族だろ? 冒険者なんて食い詰め者の集まりでしかなんだぜ。トップクラスまでいけば別だが、たいていはそこらへんの庶民より貧乏なんだよ」


 だいたい飾ってあるんだから日常使いじゃなくて、貴族が客に自慢するような代物だろーが、などとユノがブツブツと文句を言います。


「だから、うちの領地ではみなさん日常使いしておりますよ? でないと、死んでしまいますから」


「ルイーズの領地ってどんなとこなんだ? とんだ人外魔境だぞ」


「確かに田舎ですが、そこまで非道い土地ではありません。例えば……山の麓を散歩する程度ならユノの装備でも問題ないのではないかと」


「このあたりで手に入って、Cランクの冒険者が買える革鎧では、最強に近いんだけどな!」


「でも、ドラゴンもそれなりに流通しているはずなのですが……」


 北の外れの辺境までわざわざ買いつけにくる商人もいるので、年に1頭は討伐しています。その商人が言うには狩れるなら狩れただけ欲しいとのことですので、2頭3頭引き渡すこともありますし、なにしろ大きいですから鎧だったら何十着と作れると思うのですよ。


「いや、そんなに流通しているようなもんじゃねーぞ。少なくともマグリティア帝国ではそのあたりの防具屋で扱っているもんじゃねぇ。メーラント共和国でもそうそう見かけないぞ」


「あら、ユノはメーラント共和国にいたことありますの?」


「ん? ああ……前に、ちょっと」


「あそこは獣人や亜人が多いと聞きますしね」


「まあ……なんだ。俺も生まれはあっちなんだよ」


「そうなんですの」


 いや、鑑定したから知ってるよ。生まれどころか、現在進行形でメーラント共和国の軍人なのですが、私は知らないことにしておきます。挙動不審になって、ちょっとかわいそうだし。


 戦場での偵察任務ならともかく、なんでこんなスパイ紛いの仕事にユノを選んだのでしょうか? メーラント共和国の見る目のなさにあきれますね。


 うっかり余計なことを口走って挙動不審になっているユノを部屋に帰して、私も入浴して、休むことにしました。


 ふかふかのベッドで朝を迎えると、翌日は面談です。


 冒険者ギルドにいくのだったらなんでもいいですけど、領主と会うのならそれなりの服装が要求されますから。特に今回は父親の代理として面談するのですから、私が侯爵家の代表です。


 旅行の荷物はほとんどがトランクに入っていて、そのトランクは馬車に積まれてましたけど、私のかわいい空色のハンドバッグに入っている5つのマジックバッグの中に社交用のものが1つあって助かりました。


 この世界、既製品はほとんどなくて、だいたいオーダーメイドですからね。服を買う場合、お店に直接いっても採寸とデザイン選びだけで、出来上がりは何日も後になってしまいます。


 3着のドレスのうち、濃いブルーのものを選びました。


 宿に頼んで髪結いと、化粧も街で評判の店から呼んであります。


 女子としての戦闘準備が完了したころ、領主の馬車が到着し、ユノとともに出かけました。










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