ホテルの予約が有効で助かりました
治安がいいはずですが、男の人って性欲のコントロールができない人もいて、どうしょうもなく暴走することがあるので注意しないといけないらしい。
特に新人の冒険者が泊まるような安宿は注意が必要だとユノに教えてもらいました。
私も不快な思いはしたくないですしね。
特にいまの私は目立ちますし。
前世の私は中の下とか、下の上くらいのクラスに属する女の子で、地味という言葉がよく似合いました。不幸顔とか、演歌が聞こえてきそうな顔とか、さんざんですよ。
こっちは演歌が聞こえてきそうな顔ってどんな顔だ? と脳内でクエスチョンマークが踊っている最中に「わかるでしょ?」と同意を求めてくるのは止めろ! それで否定すると空気読めない子と認定されそうだから、どうしたって同意するしかないじゃないか! というような日々。
ところが、いまの私はトップクラスですよ、うぬぼれではなく。
公爵令嬢補正なんですかね?
金髪だけど、なんか輝き方がヤバいんです。プラチナブロンドというヤツですよ、これ。
肌も真っ白、美白どころじゃない、日焼け注意!
それだけでも結構なスペックなのに、本当に一番凄いのは瞳だ。なんと右がグリーン左がイエローのオッドアイ。オッドアイですよ、オッドアイ。
とうとう真実の姿に覚醒したな、と中二くさいこと、つい思ってしまいましたもの。
それが、ここにきて問題になるとは。
ちょっと触られるくらいなら我慢できなくもないですけど(たぶん我慢できなくて燃やす!)さらわれて、R-18な展開とかあって、いかがわしい店に売り飛ばされるレベルのことがリアルにありそう。
食事といい、宿といい、冒険者になるのはハードルが高いですね。
ギルドで見た仕事の内容からすると日雇い雑役みたいな感じですが、日本の日雇い労働者よりずっとずっと過酷そう。
もし国外追放になったら小さくていいので、家を買えるだけのお金をこっそり持ち出さないといけないですね。
あの窓のない馬車に少しお金をかけてキャンピングカーみたいにしてしまうほうがいいかな? でも、ベッドと家具くらいなら置けるとして、さすがにトイレやお風呂は難しいかも。
冒険者ギルドでゴブリンの買い取りをしてもらった結果からすると、上手くモンスターを狩れれば、そこそこ稼げるみたいですけど――オトエサを衛兵に突き出したのは失敗かもしれません。今後はモンスターを引誘剤として優秀な人物を探すことも考えたほうがいいかも。できれはゴブリンではなくて、食べて美味しいモンスターを魅了できるといいのですが。
まあ、今日はちゃんとした宿に泊まる予定ですけど――泊まれますよね?
いちおう予約してあるはず、とユノを連れてアパラセア・ホテル&リゾーツまでやってきました。
受付で尋ねると、ちゃんとストレリツィ侯爵の予約は入っていました。予約の確認とか、出発時の清算なんて私が自分でやったことないので、いろいろ戸惑いましたが、宿の人はちゃんと私の顔を覚えていました。
こっちは顔も名前も覚えてないです、ごめんなさい。
「ルイーズ様」
私を見て、すぐに名前で呼びかけ、当惑したような顔をします。
「馬車が途中で襲われて……」
「それは災難でした! お怪我は? 必要であれば、この街で一番の医者を呼びますが?」
「わたくしは傷1つ負っておりません。ただ……」
「ただ?」
「恥ずかしながら、わたくし、お金のことなど、よくわかりません。その……宿泊費などのことですが……」
「そういうことでしたら、まったく問題はございません。後日、侯爵家のほうに請求書を送らせていただき、ご清算いただければまったく問題ございません」
「いいのですか?」
「はい。それでもし……お困りでしたら、お帰りの費用なども御用立てさせていただきまして、その分を含めてのご請求も可能ですが?」
つまり、どういうことでしょう? 宿泊費は後日払い。なんなら借金もできて、宿泊費と一緒に後日請求でも可、と。
さすがヌーベルトで一番の宿です。
この街で宿泊するVIP御用達で、もちろん冷暖房完備。
それどころか盗聴器まで完備。それなりに魔法が使えれば無効化できますけど、このホテルに限らず、街にあるものは基本的に領主が関係しています。
さっき借金もできるような話でしたが、少しの借りはいいとしても、多すぎるのはよくありません。宿代の後日請求までが許される範囲内でしょうね。ホテルの業務内ですから。
しかし、金融業はホテルの業務外。そこまで頼ると事実上、領主に借りを作るも同然ということになってしまいますから。
「お気遣いありがとうございます。いま予定が立たなくて……ご領主であるレアット子爵様との面談も申し込んでありますが、あるいは後日相談にのっていただくこともあるかもしれません」
「ご遠慮なく、どうぞ。レアット様とのご面談についてはさきほどお手紙をお預かりいたしました」
「この街で冒険者の方を護衛に雇いました。その方も一緒に泊めていただけますか?」
「もちろんでございます」
貴族が1人で旅するほうがおかしいですからね。護衛を雇ったと聞いて、当たり前のように頷いてくれます。
預かっているというレアット子爵からの手紙を受けとり、外で待っていてもらったユノを呼び寄せました。
「わたくしもそうですが、彼にもお風呂をお願いします」
宿の従業員に頼みました。
私も1泊2日のキャンプで汚れてますが、ユノはもっと酷いです……口に出して言わないですけど、だいぶ臭くなってますよ?
冒険者ギルドにいた連中はもっとものすごいのがゴロゴロしてましたけど、ユノだって人間やめちゃったの? と真顔で質問したくなる程度には汚れています。
俺も泊まっていいのか? などとユノが困ったように口にしましたが、まったく問題ありません。部屋はいっぱいありますから。
ストレリツィ家が予約しておいたのは部屋ではなく、最上階のフロアー全部。護衛とか、いなくなってしまったので部屋はかなりあまっています。
もともと護衛の騎士が泊まるはずだった部屋を現在の私の護衛であるユノが使うのは当然のこと。




