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毒じゃなければ食べ物なんです!



 安食堂でゴブリン汁なんて食べさせられましたが、そんな変なものを食べなくても屋台があるじゃないですか。


 異世界転生ではテンプレですよね? 屋台で美味しい串焼きとか食べるのって。


 そうですよ、安食堂じゃなくて、屋台、屋台。


 しかもですよ、なんか香ばしい匂いがしてて、もうそれだけで美味しいってわかります!


 なにを炒ったのか、目を近づけてみると――第1の山がバッタ、第2の山がセミ、第3の山がトカゲ、第4の山がムカデ、第5の山がイモムシ。


「疲れたときにはムカデだな」


「ムカデ?」


「味はセミが一番だが」


「セミ?」


「まあ、足のところだけはトカゲが美味い」


 ユノがお勧めを紹介してくれますけど、どちらかといえば聞きたくありませんでした。


 やっぱり、私、たぶん冒険者は無理。侯爵家の食事でさえ、いままで一度も美味しいと思ったことないですから。カロリーを摂取するとか、燃料補給ですよ、あんなの。


 で、冒険者の食事は粗悪なガソリンを給油してるみたい。


「どうした? まだ腹へってるのか?」


 心配して声をかけてくれますが、あまりに不味すぎて冒険者やる自信がないなんて相談したら、毎日これを食べて仕事しているユノは怒りそうだし。


「あの………………わたくし、となりの国からきておりますので、ちょっと味付けが違うところがありまして」


「同じ人間なんだから、そこまで違ってはいないんじゃねーのか?」


 ユノはのんきに答えますが犬人族って人間より嗅覚は鋭いんじゃないの? 嗅覚が鋭くても、がんばったらゴブリン汁をおいしくいいだける日がくる――わけないですよね、あれは無理!


 前世ではマヨネーズで大儲けみたいな転生物の話がありましたけど、こうなってみるとマヨネーズ以前の問題ですよね。まあ、そもそも新鮮なタマゴが安く買えるのは日本くらいですから、どうせ不可能なんだけど。


 ユノがバッタを買いました。紙は高価だし、ビニール袋のない世界ですから、手のひらを出すと、そこに盛ってくれます。


 炒ったバッタをバッと空に撒きました。


 いままでちょっと離れたところでこっちの様子を窺っていた子供たちが一斉に駆け寄ってきてバッタを拾うと競うように口に押し込んでいきます。


 驚いてユノに尋ねました。


「あれは?」


「孤児だろうよ、たぶん。家出かもしれねーけど」


「だけど、土がついてるじゃないですか」


「土くらいつくだろ、そりゃ。毒じゃないし、子供が食べても問題ないぞ」


 やっぱり、可食かどうかの境界は毒があるかどうかなのでしょうか? でも、私は抵抗がありますので屋台の店主に銀貨を1枚払って、子供たちに食べさせるように頼みました。


「お姉ちゃん、ありがとう!」


 なかなか礼儀正しい子供たちでした。


「商品をかっぱらったり、他人の金をこっそり抜いたら、あれだし」


 ユノがとても遠くのものを指したので、うっかり遠視の魔法を使いかけて慌ててやめました。


 街の塀には人間のシルエット。その中には妙に小さいのもありました。少年法とかありませんし、犯罪は縛り首という街です。


 さっきユノは子供を衛兵に突き出すのはかわいそうだと感じる住民が多いようなことを言ってましたけど、世の中、そんな善人ばかりではないはず。


 たぶん遠視の魔法を使っていたら目が腐ってましたよ、そういうものは見たくありません。


 そのとき、突如として、ひらめきました! これはきっと神の啓示。


 美味しい動物やモンスターを専門で狩るハンターのような冒険者になるというのはどうでしょう? 解体スキルと、料理スキルを取って――じゃなくて、解体と料理を勉強する必要はありますけど。モンスターの討伐でポイントがもらえて、それを割り振ればスキルが取れる世界だとよかったのですが、ここでは無理なので地道に覚えるしかないでけど、あのゴブリン汁を食べるくらいなら、解体や調理を覚えるほうがハードルが低いと思われます。


 将来の目標ができました! 美味しく、できるだけ安く、ですね。


 ゴブリン汁があんまりな味なので、これは冒険者をやるのは無理ではないかと落ち込んでいましたが、美味しい動物やモンスターを専門に狩って調理する冒険者ならば、あるいは上手くいくかもしれないと将来の目標のようなものができました。


 それからユノが安くて、そこそこの宿に案内してくれると申し出てくれましたが、やんわりと断ります。


 宿はもう決めていますから。


 街に入るときに、衛兵に領主への伝言を頼み、そのときに宿泊先も伝えたので変更はできません。


「貴方もわたくしの護衛ですから一緒にいきましょう」


 そんなふうに誘うと、ユノは大丈夫なところなのかと確認してきました。


 意味がわかりません。


「大丈夫なところ?」


「どんな宿にするのか知らねーが、あんまり安いところの大部屋は進められねーぞ。俺はいいぞ、どんなとこでも。だが、ルイーズはやめておけ。夜中に変なことしてくるヤツがいるから」


「トラブルは縛り首の元ではないのですか?」


「そうだし、実際に女に騒がれて男が吊るされるのは結構ある話なんだが、だからといって全員が我慢できるわけでもないからな。冒険者やってる女って、たいてい娼婦では稼げないようなツラをした奴ばかりだし、ところがルイーズは若いし美人だ」


「それでは女性の冒険者はどうやって宿を取っているのです?」


「たいていは女の冒険者だけで大部屋を1つ借りて、みんなで寝るんだよ。夕方近くになると冒険者ギルドのまわりの宿にいってみな。女の冒険者がうろうろしているから。そういうのを何人か集めて金を出し合うのさ」


 ゴブリン汁だけでなく冒険者になるのには高いハードルがあるようです。


 私、ちょっと挫けてしまいそうです。










屋台グルメ編と安宿情報でした

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