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 親切な獣人族に冒険者ギルドの登録料をいただいてしまいました。臭くて、汚くて、嫌な雰囲気で第一印象は最悪に近かった冒険者ギルドですが、いっぺんに好きになりました。


 新人にカラんでくるチンピラ先輩はいないし、むしろ親切な先輩がいるし。


 ついでに、この獣人族の冒険者を鑑定しておきましょう。


 ただの好奇心ではありません。そこそこベテランそうな冒険者ですから、どの程度の強さなのか知っておきたいのですよ。もし本当に国外追放で冒険者にならなければならなくなったとき知識が少なくて困ることはあっても、多くて困ることはないはず。


「これ、なんですの?」


 ポンコツの胸当てに視線を向けているように見せて、こっそり獣人族の冒険者を鑑定してみました。








『ユーノリア・バルゲン




HP  198/204


MP    2/3




剣術   101


槍術    98


徒手格闘  71


中隊指揮  42


無属性魔法  1




 犬人族


 メーラント共和国軍少佐


 Cランク冒険者』




 私の鑑定魔法は戦闘向きに設計してあるので、そっち方面の能力がわかるようになっていますが――かなり強いです、この人。


 獣人で、男性ですから魔法の適性は低いですけど、これはヒドい。そのかわり腕っ節のほうは結構なもの。


 ついでに本当は軍人みたい。退役して冒険者をやってる?


 いえ、違いますね。それだったら退役少佐となるはず。


 現役ということは、おそらくマグリティア帝国がストランブール王国に宣戦布告をするという噂を確認しにきたというところでしょうね。


 メーラント共和国は獣人や亜人が中心になっている国で、それぞれの族長たちの合議制で運営されています。あまり豊かな国ではなく、ゆえに帝国から狙われにくいのですが、国境を接している部分がありますので放置はできないのだと思われます。


 まあ、いろいろ訳ありな人物ということですね。そういう私も訳ありですから、あまり他人のことは言えません。


 だから口はつぐんでおきましょう。


「この革鎧か? サラマンダーだぞ、ボロいけど」


「でも、それだと結構しますよね?」


「安くはないな」


 そんなことを話しているうちに最低のFランクの登録証ができてきました。








『ルイーズ


女性


魔法士(見習い)


ランクF


登録 マグリティア帝国ヌーベルト 双月暦758年7月30日


賞罰なし


特記事項なし』








 悪目立ちしたくないので家名なしの、ただのルイーズで登録しておきました。王国民なのに帝国で登録してますが、冒険者ギルドは全世界共通。登録証も国をまたいで作れますので問題ありません。


 ランクが最低のFなのは登録したばかりですからしかたありません。いちおう最高位はAランクですけど、特例としてSクラスとか、SSクラスとか、SSSクラスもあるとのこと。いわゆる名誉職みたいなもので、なにか決められたクエストをクリアーしたらもらえるというものではないみたい。


 魔王とか倒したらSランクになれるのでしょうか? いえ、それだとSSランクやSSSランクになるためには、さらに上という話になってしまいます。


 さすがに魔王より上はなさそうなので、四天王の最弱でSランク、全部やっつけたらSSランク、魔王討伐でSSSランク――まあ、この世界で魔王は500年前の伝説には出てくるだけで現在は確認されていませんし、四天王がいるのかも、そのうち最初にぶつかる相手が「ククク……我は四天王の中でも最弱」などと捨て台詞を残して斃れるのかも私は知りませんが。


 魔法士(見習い)は残念なところ。たぶん、私は一人前の魔法士と呼べる程度の実力はあると思うんですよ。


 ただ世間で一人前と認められるには魔法士を育成する学校を卒業しているか、名の通った魔法士に推薦してもらわないとダメだそうです。


 いま私はストランブール王国学園の生徒でしかありませんので、いくら一人前に魔法が使えると冒険者ギルドの窓口で主張してみても見習いとしか扱われないとのこと。


 ギルドの受付で無駄に騒いでも意味ないので、ここらへんは卒業後に変更してもらいましょう。


 だいたい登録証そのものが現在はFランク。この夏休み中と、そのあとも冒険者稼業をやる時間を作っていけば、学園を卒業することにはEランクやDランクに昇級しているかもしれないですし。


 登録が出来たら、隣の建物で買取してもらいました。ギルド職員の他に商人みたいなおじさんたちもいて、冒険者たちから買い取られた品物が、今度は商人に買い取られ、どんどん馬車に積まれていきます。


 私はカウンターにいたギルド職員に声をかけました。


「ゴブリンみたいなものでも買い取りの対象となるのでしょうか?」


「安いけどな。しかし、買い取りと言いながら現物は持ってないのか? 表の馬車の中か?」


「あ、ここに」


 マジックバックからゴブリンを出しました。


「なんだ? マジックバック持ちか……そっち売ったほうが金になるぞ。ゴブリンなんて1万匹でもマジックバック1つに負ける」


「盗難防止の魔法が付与されているのでわたくし以外は使えません」


「そりゃ売れないな……結構いっぱい狩ってきたな」


 どんどんゴブリンを出していきます。最初のうちは感心していた様子のギルド職員ですが、だんだん不審な顔になっていきました。


 まあ、気持ちはわかります。つまり「おまえ、なんでこんなにゴブリンばっかり狩ったんだよ!」と心の中で突っ込んでるのでしょうね。


 私だって、こんなゴブリンばかり狩りたくなかったですよ。ところが手持ちの魔獣寄せであるオトエサは醜い小鬼ばかり引き寄せるんですから!


 やはり、どう考えてもオトエサにはゴブリンを魅了する特殊能力があるのでしょうね――もし私にそんな能力があったら恥ずかしくて泣いてしまいますが。


 ポイポイポイとゴブリンを出していきます。


「おい、どんだけ持ってきたんだ?」


 ギルド職員の声が震えていました。










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