第三章:夢で逢えたら 4話
鍵を回し、部屋に入るなり急いでコップに水を汲み、それを一気に飲み干した。
ゆっくりと息を整える。
なんだか笑えてきた。
こんなに息を切らせてまで、誰かに会いたいと思ったのは初めてかもしれない。
なんか変な感じだ。
・・・嬉しい・・・のか?
よくわからない。
ささっと急いでシャワーを浴び、サイに餌をやる。
それからすぐに仕事の続きに取り掛かった。
早く、早く、早く。
心の中でそう何度も呟きながら手を動かす。
それと同時に頭もフル回転していた。
その頭の中で、不安も一緒に激しく動く。
会ってどうしよう。
まずなんて言おう。
その不安を頭の隅に追い払う。
けれどすぐにそれはまた動き出す。
あれこれ考えながらも、ちゃんと手を動かしてはいたのだが、結局終わったのは2時だった。
彼女はもう向こうにいるのだろうか・・・。
ふとそんなことを思う。
電気を消し、布団の中へ潜り込む。
ご飯はもう食べる気にならなかった。空腹感は確かにあるが、時間も時間だし、何よりもう疲れてきってしまっていた。
体が重い。
動きを止めると、全部の疲れが下に落ちていく感覚がする。
布団はなんだかすごく冷たかった。
そのせいかいつもより落ちるのに時間がかかった。
何もない白い世界は、今日はなんだか寂しそうだ。
なんだろう。自然とそう思った。
いつもと変わらないはずなのに。
しばらく歩いていると、いつの間にかベンチは現れる。
彼女はもうそこにいた。
今日は膝を抱えて縮こまってはいなくて、前みたいに目をつぶっている。
初めてその姿を見た時のように、まるで寝ているように見えた。
それを見ると、なんだかほっとした。
ここでは足音がたたない。日の光とかもないから影もない。
だからだろうか、俺が近くに行っても彼女は全然気がつかない。
「こんばんは」
俺の挨拶でようやく彼女は気付いたらしく、ゆっくり目を開けてから落ち着いた口調で挨拶を返した。
「こんばんは」
そう言った彼女は笑顔だった。いつもの笑顔。彼女をあまりよく知らない人はそう思ってしまうかもしれない。
でも本当の彼女の笑顔じゃない。
それくらいもうわかる。




