ある朝の風景
どこからか鳥のさえずりが聞こえる。
あぁ、朝かー。今から起きて準備して、電車に揺られて仕事場まで行って…
あー仕事なんてしたくないーゴロゴロ寝転がって大好きな本を読んでいたいー
なんて考えながらのそり、体を起こす。
…ん?なんか、いつもと違う…あれ、私の部屋ってこんなに木目調だったっけ??
「…あぁ、そうか。」
ここは違う。私の生まれ育った日本じゃない。
私はドラゴニカ。魔族の王。
そして、あの隅で丸まって寝てるのがアガルス。
ドラゴニカの右腕であり、今回の旅に同行してきたハイエルフ。
…結局あの後アガルスは私と同じ部屋で寝ることを了承した。
だが、条件を出された。
その条件とは寝るときは“竜人の姿で寝てほしい”というものだった。
もちろんアガルスの申し出を了承した。だって、これを拒否してまた部屋を出ていかれたら探しに行くのが大変だ。
それに、人型を取るのも別に苦ではないが、この数百年慣れ親しんだ姿の方がやはり楽なのだ。
寝る時くらい、元の姿でもいっかーなんて思った為了承した次第だ。
…ちなみに、なぜアガルスにその条件を出したのか問いかけても、目をキョロキョロさせるだけで答えてはくれなかった。
「…おい。アガルス。朝だぞ。目覚めよ。」
「…うーん…はっ!!
こ、ど、ドラゴニカ様!!!す、すみませ、よもや主人より起きるのが遅いなど、臣下として至らぬばかり!そればかりか、起こしていただくなど…ッ」
目を覚ましたアガルスは矢継ぎ早にそう言った後、額が床につくのではないかというほどの土下座をかました。
いや、そこまでかしこまらなくても良いのだが…
若干引いてしまったのはいうまでもない。
「…良い。顔を上げよ。此度は慣れない旅ゆえ、貴様も疲れておったのだろう。
それと、そのように軽々しく頭を下げるでない。貴様は私の右腕…なのだろう?
忠誠心があることは良いが、私は上下の関係ではなく、対等に語り合う事も大切だと思っている。
…私が何か愚かなことをした時は、貴様が諌めるのだ。良いな?」
前々から言おうと思っていたけど、アガルスだけじゃなく、他の魔族もなんだけど。
みんなドラゴニカに絶対服従…というか…
ヒューゲルやヴィアベルはもちろん領主としての立場もあるから意見は言う。でもなんだろう。最終決定は私なのだ。私が、これだと言ったらもうそれ以上の申し出を出さない。
私が魔王であり、全ての魔族の頂点だからって言うのはわかる。
しかし、私の決定全てが正しいと言うわけではないから、もっとどんどん否定してもらっていい。
私も人間 (今は魔族だが)だ。
それなりに選択を間違えるし、全てが正しいわけではない。
現に人と仲良くしたいって理由でこうやって旅に出てしまっているわけだし。
ともかく、魔族の意識改革も必要だなぁと思う。
うーんうーんと唸る私を心配してから、アガルスはオロオロしていた。
おっといけない。今は彼と話さなければだ。
「…と言うわけで、アガルス。私は貴様に対等に話せる立場になってほしいと思っている。」
「はっ、もったいなきお言葉…
しかし、我らが王よ。貴女様至高のお方。私のようなただのハイエルフが対等な立場を手に入れるなど恐れ多きことでございます。」
片膝を付き、右手を胸に置きながら彼はそう言う。
この姿は相手を上位のものとして扱うもののソレだ。
はぁ、と思わずため息が出る。彼はなんと頑固なのだと。まぁ旅は長い。これから過ごすうちに対等な関係を築くことも目標にしよう。
「…アガルス。私は貴様と対等になることを願っている。
…さて、この話は終わりとしよう。食事を取りに行くぞ。」
「…っはい!」
私とアガルスは身支度を整え、朝食を取りに行ったのであった。




