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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.2-16 うみ?8

事前にネットで予約していた屋根付きのBBQ場で、僕たちは大雨の中、昼食を摂ることになりました。

チラホラといた海水浴客も、この雨では帰ってしまった様子。

というわけで、砂浜のみならず、BBQ場も完全に貸切状態です。


そんな中。

BBQだと言うのに今日もコック長を努めていた狩人さんへと、ルシアちゃんがおもむろに話しかけます。


「ねぇねぇ、狩人さん」


「ん?どうしたルシア?何か焼いてほしいものでもあったか?肉か?それとも肉か?」


「ううん、大丈夫。焼肉くらいなら自分で焼けるから……。えっとねぇ……ちょっと聞きたいんだけど、あの人って……誰?」


そう言いながら、海パン一丁で、1人気持ちよさそうに雨に打たれていた変態――じゃなくて、ジョンさんについて、ルシアちゃんが問いかけました。


それに対し、狩人さんが簡潔に返答します。


「あぁ、あいつか?あいつは(うち)の家主だ。朝も言ったろ?」


「う、うん……それしか聞いてないけどね?」


と、戸惑い気味の表情を浮かべるルシアちゃん。

どうも彼女は、あっちの世界で、勇者として推薦される騒ぎがあってからというもの、少しだけ人見知りをするようになったようです。


そんな彼女に対し、狩人さんは、優しげな視線を向けながら、こう口にします。


「なーに。ルシアが疑うような変なやつじゃない。ただの酒好きの変態さ?」


「それ、やっぱりダメな人だと思うけどなぁ……」


「冗談、冗談。……な?ルシアたちの家主さん」


「…………」こくこく


「えっ?主さん、あの人のこと、知ってるの?」


「…………」こくこく


「へぇ……主さんの弟さんだったんだ……」


いやー、さすがルシアちゃん。

相変わらず、すごい読心術だと思います。

そもそもからして、主さん、まったく口を開いてないんですから……。

もう、原理とか考えないほうが良いんでしょうね……。


まぁ、それはさておいて……。

ルシアちゃんの言ったことに、偽りはありません。

実はジョンさん、主さんの弟さんなんです。

僕たちが主さんの家に来る前は、同じ家で一緒に住んでいたようですが、僕たちが主さんの家に住むことが決まってからというもの、手狭になることを予想して、丁度空いてた向かい側の家に引っ越していった、という話でした。


……え?誰に聞いたかって?

そりゃ、主さんとは基本的にコミュニケーションが取れないので、ジョンさんに直接聞きましたよ。

あぁ見えて、彼、意外と饒舌なんです。

……ただし、お酒を飲んだときに限りますけれど。


僕らがジョンさんの話をしていることに気づいたのか、彼もこちらの方へと視線を向けてきました。

もしかすると、雨の中、1人でいるのが寂しくなってきたのかもしれません。

気のせいか、小刻みに震えているようにも見えます……。


そんな彼に対し、狩人さんが慣れた様子で話しかけます。


「おい、ジョン!酒あるぞ?」


すると――


「……それを早く言え。迎え酒が無いと、頭痛が痛くて死にそうだったんだ……」


嬉しそうな表情を浮かべながら、アル中患者が近づいてきました。

どうやら彼が震えているように見えたのは、禁断症状が原因だったようです。


「そうだと思って、キンキンに冷やしておいたぞ?ほらよっ?」ひょい


「マジか」ガシュッ「…………」ごくごく「くぅぅぅぅっ!!」ぷはぁ


『相変わらず良い飲みっぷりですね?』


「おうよ!俺の燃料みたいなものだからな!どうだ?ポテ。お前も一緒に一杯?」


『ジョンさんには前にも言いましたが、僕にとってのアルコール飲料は、エタノールが含まれた単なる飲み物にしか過ぎません。僕が飲んだところで苦いジュースと何ら代わりありませんので、遠慮しておきます』


「お前の人生……何なんだろうな……」


『……無駄とでも言いたげですね?ケンカ売ってるんですか?』ゴゴゴゴゴ


「いや……悪気はないんだ。ただ、もったいないと思ってな……」


この際なので、白黒つけてやろうかとも思いましたが……それだと賢き者としてどうかと思うので、ここは我慢です。

まぁ、テンポお母様には、ヤるべき時はヤってもいいと言われているんですけれどね……。


まぁ、それはいいとして……。

下戸の反対って、なんて言えば良いんでしょうか?

まったくお酒が飲めないのも気の毒ですが、その逆っていうのも、実は大変なんですよ?

皆さんがお酒を飲んで喜んでいる姿を見ても、よく分からないですし、痛くも痒くも嬉しくもならないですし……。

まぁ、ウチに住んでる人たちは、みんな下戸なんで、あまり気になることは無いんですけれどね。


……と、そんな時でした。

不意にルシアちゃんが声を上げます。


「あっ!テレサちゃん!それジュースじゃないよ?!それユキちゃんのお酒……」


「えっ?あ、本当だ……」

「んあ?」ごくり


我が家の下戸の代表格とも言えるテレサ様が、お酒を口にしてしまったようです。


「そ、そうかのう?お酒かのう?確かに……世界が回って見えなくもないのにゃ……」


「「「…………にゃ?」」」


「やっぱり、ジュースではのうて、お酒だったみたいなのにゃ……。いつも呂律が回らないというのに、今日はそれに輪を掛けて、口が動かないのにゃ……」


……そう。

テレサ様は、お酒を飲むと、見た目はそのままに、猫娘になるんです。

……喋り方だけですけれど。

ちなみに、飲みすぎると……寝ます。


その様子を見て、我が家で唯一お酒が飲めるアメさんが、ビールの缶を片手に、嬉しそうな表情を浮かべながら、テレサ様へと絡み始めました。


「ほう?これは良いことを知ったのう……。普段からテレサとは、きゃらくたーが被っておると思っておったが……つまり、テレサに酒を飲ませれば、ワシの立場は安泰、というわけじゃな?」にやり


「……ふっ。何を言っておる、お主。生粋の狐たる妾が、酒を一口飲んだ程度で、そう簡単に狐を止めるわけがないにゃろ?」


「うん、テレサちゃん……。もう、どっからどう聞いても、やめてるようにしか聞こえないよ?その喋り方……」


「そ、そんな訳……ないのにゃ……。わ、妾は狐なのにゃ。猫ではないのにゃ?」ぷるぷる


なんと声を掛けていいのでしょうか……。

……そうですね。

危うきに近寄らず、がベストですかね。


まぁ、僕の場合は、ですけれど。


「て、テレサ……」ぷるぷる


「な、何なのにゃ?狩人殿……?」


「私の妹に――――ならないか?」がしっ


「いや、意味が分からぬのにゃ……」げっそり


両肩を掴んで、真剣な眼差しを向けてくる狩人様を前に、酔っていてもいつも通りにゲッソリな表情を見せるテレサ様。


一方、狩人様にとって、テレサ様の反応は、あまり気にならなかったようで……。

お酒を飲んだせいか、顔が真っ赤になっていた彼女は、BBQそっちのけで、テレサ様の頭を撫で回し始めたようです。


その際。

それを見たイブちゃんが、両手で頭を抱えながら、小さくなってガクガクと震えていたようですが……。

彼女には何か嫌な思い出でもあったのでしょうか?

僕には……よく分かりません。



駄文です。

まぁ、駄文と言いながらも、登場人物たちや彼らを取り巻く環境の紹介が進んでいるので、後退していたり、停滞しているわけでは無いですけれどね。


さて……。

あと1話、今の話を書いてから、次の段階に進んでみようと思います。

まだ、カタリナ様と、ベア様のことは書いていませんが、彼女たちのことは、今は置いておくことにしましょう。

だって、彼女たち、近所には住んでいないのですから……。


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