2.2-17 うみ?9
結局、今日は、殆ど泳ぎませんでした。雨が降っているせいで、海から砂浜に上がってもびしょ濡れで、その上、気温も少し低かったから、正直、ちょっと寒かったです……。
でも、普段、来ることのない海を、十分に堪能できたと思います。なんだかんだ言って、みんな嬉しそうにBBQしてたし、誰もいないことを良いことに、砂で作ったダムを魔法で守る怪獣ごっこも、すっごく面白かったです。……怪獣役をしていたテレサちゃんの顔、写真撮ればよかったなぁ……。
そんなこんなで、楽しかった時間も終わり、お家に帰る時間になりました。
そうそう。そのテレサちゃんなんですけど、さっき、こんな言葉を残して、ポテちゃんに引っ張られていきましたよ?
『……わ、妾もう……ダメかも知れぬ……。もしも、妾の身に何かあっt(以下略)』
んー、なんて言ってたかなぁ?もう忘れちゃいました。すぐに忘れる程度の事なので、大したことは言ってなかったと思います。
まぁ、それはさておいて。
ポテちゃんとテレサちゃんは、来たときと同じようにして、海路で帰っていきました。その他の狩人さんやユリアお姉ちゃんたちは、私の転移魔法で、家までひとっ飛びです。
「それじゃぁ、送るよ?」
「あぁ、すまない。ルシアたちも気を付けてな?……主さん。よろしくお願いする」
「…………」こくこく
「じゃぁ、また後でね?」
ブゥン……
そんなやり取りを交わしてから、私はみんなのことを家に転移させました。ここに来るときは、誰かに見られる可能性があったので、テレサちゃんたちが先回りして、安全を確認する必要がありましたが、帰りは家の敷地の中に飛ばせば誰かに見られる心配は無いので、楽だし安心です。
でも……あれ?それなら、テレサちゃんたちも一緒に帰れば良かったんじゃ……。でも、先に帰っちゃったから、まぁ、いっか。
というわけで、私たちも帰ります。でも、私自身は転移魔法で移動できないので、来たときと同じように、主さんの運転で家までドライブです。
ちなみに同乗者も同じで、アメちゃんが一緒に来てくれることになりました。
バタムッ!
「あー、楽しかった!」
「……テレサを虐めておったことか?」
「えっとねぇ……それ以外のことも楽しかったけど……っていうかアメちゃん?私たち、別に、テレサちゃんのこと、虐めてたわけじゃないよ?」
……そう。テレサちゃんのことは虐めてません。怪獣役をやると言い出したのはテレサちゃんで、最初に支配魔法を使って追加の怪獣を召喚しようとしたのも、テレサちゃんです。なら私たちも魔法で対抗するしかないですよね?うん。
「まぁ、ケガをしたわけではないから良いが、端から見ておったら、ヒヤヒヤものじゃったぞ?」
「そっかぁ……。心配掛けちゃったね?でも、あの時、私が使った魔法って、直撃を受けても、ケガをしたりしないやつだったから、心配しなくても大丈夫だよ?アメちゃんが前に教えてくれた”じんつーりき”ってやつと似たような感じで、当たっても痛くないように調整したから。あ、でも今の話、テレサちゃんには教えちゃダメだよ?効果が無いなんて知れたら、抑止力が無くなっちゃうから。その場合、本当に、威力のあるやつを使わなきゃならなくなるし……」
「……いや、使ってはならぬ。まったく……仕方ない童じゃのう……」
そう言って、呆れたような表情を見せるアメちゃん。多分、彼女は、本当に呆れているんだと思います。だって……ワルツお姉ちゃんだって、私とテレサちゃんの遊び方を見て、いつも呆れてましたし……。私個人としては、そんなおかしな遊びをしているつもりはないんだけどなぁ……。
それから。
車に揺られること1時間ほど。再び、日本の東西をつなぐという、大きな高速道路まで戻ってきたときのことでした。
車の外で降り続いていた雨を眺めながら、不意にアメちゃんがこんなことを口にします。
「ふむ……。この雨、ワシの力の調整が上手くいっておらぬのか、それとも主が癇癪を起こしておるのか……」
「うん?あるじ?」
「いや、独り言じゃ。気にするでない」
「そういえば、アメちゃん、しばらく”じんつーりき”を使ってないと、力が暴走して雨が降る、ってさっき言ってたよね?」
「うむ。雨を降らせてしまうのは、なにも神通力だけのせいではないが……まぁ、似たようなものじゃ」
「あのね……実はなんだけど……話、聞いてくれる?」
「ふむ。もちろんじゃ」
「あと、これも、テレサちゃんには内緒だよ?」
「しかたないのう……」
「えっとー……実はね?私も魔法を長い間使ってないと、力の調整が効かなくなることがあるの。多分、それってアメちゃんの状態に近いんじゃないかなぁ、って思うんだー」
「ふむ……」
「それでね?私の場合、そうならないように、ちょっと工夫してることがあるの」
「ほう。それはどんなことじゃ?」
「えっとねぇ……例えば……あ、これが良いかなぁ。この紙くずを丸めて、それを私に向かって投げてみて?別に強く投げても良いよ?」
「…………?」
「遠慮はいらないよ?遠慮されると説明にならないから」
私がそう言うとアメちゃんは——
「ふむ。ではこのくらいじゃろうか?」
——といいながら、かなり遠慮気味に、私に向かって、紙くずを投げてきました。
本当はもう少し強くても良かったんだけど……まぁ、説明は出来るかなぁ?
ブゥン……
「?!」
「ぶつからないでしょ?」
「何じゃ?これは……」
「私の魔法。”オートスペル”って呼んでるんだけど……私、魔法を使わずに放っておくと、身体の中に魔力が勝手に溜まっちゃうから、それをどうにかして消費するために、普段から常に魔法を使ってるの。それが自動魔法——オートスペル。こんな風に私に危害が加えられそうになると、重力制御魔法が勝手に働いて障壁を作ったり……もっとアメちゃんにも身近なところだと、家のお風呂のお湯を常に一定の温度に保ったり、新しいお湯に交換したりしてるんだよ?今まで、おかしいと思わなかった?いつもどうしてお風呂のお湯が沸いてるのか、って」
「……すまぬ。今、言われて初めて気付いた。そう言われれば、確かに、いつも家の風呂が沸いておったのう……。あれは”電気”なる人の力によって、維持されておった訳ではなかったのじゃな……」
「まぁ、地味だから気付かなくても仕方ないよね」
「しかし……どうしてその話をワシに?」
「んとねー?アメちゃん……試しに、私の真似とか、してみないかなぁ、って思って」
「つまり……四六時中、神通力を使って、身体の中に余分な力が溜まらぬように工夫してみよ、ということじゃな?」
「うん。だけど、アメちゃんの力も、私の魔法みたいにプログラマブル——つまり、色々な種類の神通力を、好きなように組み合わせられるような作りになっていないと、真似するのは難しいけどね?」
「ふむ……。組み合わせのう……」
アメちゃんはそう口にすると、自身の手のひらの上に、色の異なるいくつかの小さな炎を作り出しました。それからしばらくの間、彼女がそれをじーっと眺めていたのは……もしかすると、その炎をどうやったら操れるのか、考えていたせいかもしれません。
あ、そうそう。その間、主さんは、車の運転をしながら、しきりに後部座席を振り向こうとしていたみたいです。何かアメちゃんに用事があったみたいだけど……何かあったのかなぁ?まぁ、いっかぁ。
そんなこんなで高速道路を2時間ほど走って……。私たちは、無事にお家に帰る事が出来ました。もちろん、狩人さんや、ユリアお姉ちゃんも無事です。遠足は家に帰るまでが遠足だ、ってイブちゃんたちが言ってましたから、私たちは無事に遠足を終えた、ということになるのでしょう。
だけど……。
ごく一部に、遠足に出かけたまま、帰ってこない人たちがいたようです……。
エタりそうになっていました。すみません……。
というか、僕自身、冷却は出来ても泳げないので、海の話、書けない……えっ?
お前、誰だ?ルシアちゃんじゃないだろ、って?
ふっ……。
僕は僕。
そう、ポテンティアです。
そして作者の名前が、僕の名前に……!
っていっても、便宜上ですけどね?
これからも色々な人たちの視点で書いていく、というスタイルは続けていく予定です。
というわけで……僕は海で遭難したようです。
それもテレサ様と一緒に……。
次回、テレサ轟沈。
おたのしみに?




