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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
58/66

2.2-09 うみ?1

サブタイトルのナンバリングが抜けていたので追加しました〜。

『ミーン、ミンミンミン、ミーーーン……』


「ポテちゃん、うるさい」


『すみません……』


暑は夏いですよねー……。

マイクロマシン集合体である僕には、頭と呼べる部分が無いのに、それでも頭がボーッとしてくるような気がします。

オーバーヒートによるエラーですかねー。


これは、分身たちを一箇所に集めて、みんなで涼むしか無さそうです。

でも、僕の船体をここで再構築すると、町内会どころか、町全体が潰されて、壊滅的被害を受けてしまうと思うので……ちょっと難しい選択肢なんですよねー。

それに、巨体を一度に冷やせるほどの大きなクーラーもありませんし……。

やっぱり、暑いまま、季節が過ぎ去るのをひたすら待つしか無いのでしょうか。


……え?ルシアちゃんか、冷花ちゃんに頼んで、気候を冬に逆戻りさせる?

いいですねー。

絶対にやってくれないと思いますけど。


あ、そうだ。

一つだけ涼む方法がありました。

すぐには無理かもしれませんが……試しに直談判だけしてみようと思います。


『あの……主さん?暑いので海行きませんか?』


僕が、そう口にした途端でした。


「う、海じゃと?!」ぐわっ


クラーの前に置かれたソファーの上で、力なくグッタリと寝そべっていたアメさんが、まるで人が変わったかのように目を輝かせながら立ち上がりました。

……ただそれと同時に、殺虫剤をこちらに向けてくるのは、いただけませんけれど。

それとも、セミの姿をして、クーラーに張り付いている僕が悪いんでしょうか?


『アメさんも海に行きたいのですか?っていうか、それ下ろしてください。それをここで使ったら、部屋中に拡散しますよ?』


「う、うむ。どうもクセでの……。で、海の話じゃが、実はワシ、殆ど海というものには行ったことが無くての。もし、連れて行ってくれるというなら、すごく嬉しいかもしれん!」キラキラ


『意外ですね……。っていうか、この町、近くに海があるじゃないですか?行こうと思えば、いつでも行けるんじゃないですか?』


「確かに海はある。じゃがの?あれは港じゃろ。まさか、船にまぎれて海を泳げと申すわけではなかろうな?」


『……すみません。実は僕、この町に来てから、海に行ったことが無かったもので、港だとは知りませんでした』


「さ、さよか……」


と、僕に対して、申し訳無さそうな表情を向けるアメさん。

まぁ、僕としては、何も気にしてませんけどね。


そんな僕たちの会話へと、今度はテレサ様が入ってきます。


「妾は……行きたくないのじゃ」


「「「えっ……」」」


いや、びっくりですよね?

暑いのが苦手で、ソファーの下のフローリングに張り付いて、グッタリとしていたはずのテレサ様が、まさか海で泳いで涼みたくないなんて……。

もしかして、水着を着た時の貧s……いえ、なんでもありません。


それには、こんな理由がありました。


「妾、残念なことに、体重が重すぎて、水に浮かばないのじゃ……いや、太っておるわけではないのじゃがの?太っておるわけじゃ……」


と、太っていない、という言葉を妙に強調して、説明するテレサ様。


すると。

冷凍稲荷寿司パフェ(?)を神通力で作り出して、美味しそうに頬張っていたルシアちゃんが、テレサ様の言葉を聞いて、納得げな表情を見せながらこう言います。


「あー、そっか。テレサちゃん、中身はコルちゃんだもんね」


「正しくは、中身は妾で、外見がコルなのじゃ。……じゃなくて、元を正せば、コルの外見は妾じゃから、今の妾は、中身も外見も妾なn……」


「ごめんね?アメちゃん。テレサちゃんがわけ分かんないこと言ってるけど、要約すると……実はテレサちゃん、人間じゃないの」


「ひ、酷い言われようなのじゃ……」


「人間じゃない、じゃと?どこからどう見ても、獣耳と尻尾以外は、人の娘にしか見えぬが……」


「ほら、テレサちゃん!私が説明する内容じゃないから、自分で説明してあげて?」


「えっ……妾の秘密を明かしたの、ルシア嬢なのに?」


「じゃぁ、私が説明する?別に良いけど……適当にしか説明しないよ?」


「や、やっぱり、酷いのじゃ……。仕方ないのう……」


そう言って、いつも通りのゲッソリとした表情を浮かべるテレサ様。

この家の中での力関係は、明らかにルシアちゃんの方が上のようです。


「そうじゃのう……。手っ取り早く説明すると」スポンッ「こんな感じで首が外れたりするのじゃ?」


「「「『…………』」」」


「……何じゃ?主ら……。その微妙そうな空気……。お主らが説明してほしいと言ったから、説明したと言うのに……」スポンッ


いや、そう言う問題じゃなくて……せめてそこは、首じゃなくて、腕を外すべきだったと思います。

アメさんだけじゃなくて、ルシアちゃんも主さんも驚いてるじゃないですか……。

僕も驚きましたけど……。


「て、テレサ?お主、実は、妖かしの類じゃったのかの……?」ぷるぷる


「いや、違うのじゃ。実はのう……昔、航空機の飛行実験で、テストパイロットをしたことがあったのじゃが、その際、妾が作った魔導ツインスクロールターb」


「なんか、話が長くなりそうだから要約すると、テレサちゃん、事故で死んじゃったんだ……。それも、みんなの忠告を無視したせいで」


「……一言で片付けられる我が人生……。そんなに軽いものでは無かったはずなのじゃがのう……」げっそり


と、今にも2度目の死を迎えそうな表情を浮かべるテレサ様。


それから彼女は、大きなため息を吐いた後で、続きの説明を口にし始めました。


「で、その時に、元の身体からまだ生きておった細胞を切り出して、足りない部分を機械で補ったのが、今のこの妾……というわけなのじゃ?そのせいか、身体から機械油の臭いが抜けぬのじゃがの……」


「そ、そうだったのじゃな……。そうとも知らず、先日は臭いなどと言って申し訳なかった……」


「ううん。そんなことないよ?アメちゃん。テレサちゃんには、双子の姉妹みたいなコルちゃん……コルテックスっていう子がいるんだけど、彼女は全然臭くないから」


「んなっ!?」


「テレサちゃんが臭いのは、多分、作業場で機械油を頭から被ってるせいだと思う」


「あ、油を浴びぬように、最善の注意を払っておるのじゃ?作業用の帽子も被っておるし……」


「……その帽子に油が染み込んでるんじゃないの?」


「…………あっ」


ルシアちゃんの指摘を受けて、今気づいた、と言わんばかりの表情を浮かべるテレサ様。

むしろ何で今まで気づかなかったのか、僕としては不思議でなりません……。


と、そんな時。

僕たちの会話を、今まで静かに聞いていた主さんが、手元の端末で調べていた地図をタップしてから、ホログラムで大きな画面を表示して……。

それを僕たちの方へと見せてきます。


「…………」トントン


そこには、赤色のピンのようなアイコンが中心に表示された日本の地図があって……。

主さんはそこに行く……いえ、行きたい、と表現しているようです。


ですが、ジェスチャーと表情だけでは、主さんが何を言わんとしているのか正確には分からないので、ここはルシアちゃんに翻訳してもらうことにしましょう。


「え?今週末、日帰りで、海に遊びに行く?ちょっと、弾丸ツアーっぽくなるけど、車の運転は任せて?」


「…………」こくこく


『相変わらず、すごい翻訳能力ですね……』


「えっ?見れば分かるじゃん」


「「『…………』」」ふるふる


いや、多分、それ、ルシアちゃんと、ごく一部の限られた人たちだけだと思います。


まぁ、何はともあれ――


「結局、海に行くことになったのじゃな……。居候たる妾には拒否権が無いゆえ、泳がずに、磯めぐりでもしてようかのう……」

「何を言っておる、テレサよ?泳げぬのなら、ワシが泳げるように手伝おうぞ?」

「海かぁ……。お姉ちゃんたちも呼んでいきたいけどなぁ……。スケジュールが合わなくて難しいかなぁ……」

『どうやって分身たちを冷やせば、効率がいいでしょうか……』

「…………」わくわく


――こうして僕たちは、夏の海に繰り出すことになったのです。


……あ。

そういえば、どうやって分身たちを海まで運ぶか、考えてませんでした。

みんなを車に載せるのは難しいですし……。

まぁ、何か方法を考えるとしましょう。



家の中でクーラーの前にいるというのに、暑がっていた狐娘たち3人組。

ですが、体感的には、それほど暑いとは思ってないらしく、実際のところは雰囲気だけで暑がっていたようです。

外でセミが合唱していたら、例え部屋の中が涼しかったとしても、暑いと感じませんか?

なんというか、こう、むさ苦しいというか……。


というわけで。

2.2章は、暫くの間、僕、ポテンティアが書くことになりました。

というのも、裏で色々あったからなんですよ……。

夏の暑さと日差しのせいで、ユキちゃんさんたちが家から出られないとか、狩人さんが毎晩庭でアルコールを飲んで騒いでいたら、警察に連行されそうになったとか……。

その辺は、もしかすると、話の中で出てくるかもしれません。

まだ確定的なことは言えませんけれどね。


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