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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.1-05 あうとどあ?05

そして食事と、その片つけが一通り終わった頃。

いよいよキャンプのメインイベントが始まるってところで…………これだ。


ザーーーーッ!


『…………』


……どうして急に、雨が降り始めるんだ……。

メンバーの中に、雨女でもいたか?


「む?呼んだかの?」


「いや、呼んでない」


おっと、また考えてることが顔に出てしまったようだ。


まぁそれついては、さておいて、だ。

つい先程まで、その気配すら無かったというのに、ものの十数分でみるみるうちに空を雲が覆い尽くして……そして雨が降ってきた。

確かに、山の天気は変わりやすいけど……突然変わりすぎだと思う。

しかもここ、山の上じゃなくて麓のはずなんだけどな……。


「ちょっと、かなり残念だね……」


「むぅ……。こればかりは仕方ないのう……」


と口にしたのは、雨を避けるために、他の者たちと共に蚊帳(かや)付きテントの中に避難していたルシアとテレサだ。

この後のイベントを楽しみにしてたから、余計に残念なんだろう……。


ちなみに、何をしようとしていたのかと言うと……真っ暗な空と、人里離れた森の中って言えば、何となく分かってもらえるんじゃないだろうか?

……天体観測。

って言っても、望遠鏡は使わずに、地面に寝転がって、ただ夜空を眺めるだけだけどな。

実は今日、流星群が見えるという話だったから、皆、楽しみにしてたんだ。

元々私たちがいた世界とは違って、街の光にあふれたこの世界だと、普通に星を見るのも一苦労だから、人のいない場所に来る今回のキャンプは丁度いい機会だった、ってわけだ。

……だけど、この空模様じゃ、星を見るのは絶望的だろうな。


私たちだけでなく、キラさん所の面々も、真っ黒な空から落ちてくる雨を悲しげに眺めたり、退屈そうにランタンを突いたりしているところを見ると、やっぱり、みんな残念なんだろう。

……未だに、鳥串を持ってプルプルと震えてる3人が何をしてるのかは知らないけどな?


というわけで。

私もその例外に漏れること無く、そんな空の様子を見て、大きな溜息を吐いていると……隣でキャンプ用のリクライニングチェアに座っていたテレサたちの主殿の……その膝の上で、チベットスナギツネみたいな表情を浮かべていたアメが、下敷きになった主殿から嬉しそうに頬ずりされながら、こんなことを口にした。


「……星は見えなくなってしもうたが、ワシは……この虫や動物たちの声と、それと共に聞こえてくるこの雨の音が聞けただけで満足じゃ」


……あのな、アメ?

これを言ったら多分負けだと思うんだが……表情と発言が一致してないぞ?


まぁ、向こうの世界と違って、こっちの世界の街で暮らしていると、降ってくる雨の音は聞こえてくるけど、虫の泣き声は聞こえてこないから、何処か少し寂しい気するんだよな。

今、この場所で、聞こえてくる大自然のBGMに耳を傾けていると、なんとなく故郷を思い出すというか……。

だからこそ私は……こちらの世界にきても、狩人を続けているんだけどな?


「そうだな……肉と酒が飲みたくなるよな」


「酒は分かるが……肉は分からぬ。あれは飲み物ではないぞ……」


私とアメがそんな会話を交わしながら、ここに来て11本目のビール缶を傾けていると……空を恨めしそうに眺めていたルシアと、具合が悪そうに何故か顔を青くしていたテレサが、おもむろにこんな会話を始めた。


「雨雲……いっそのこと、吹き飛ばしちゃおっか?」


「いやいやいや……それはどうかと思うのじゃ。る、ルール違反であることもそうじゃが、そのせいで色々と台無しになる気がするのじゃ。ルシア嬢が大出力で魔法を行使したなら……それを感じ取った動物たちが辺りから逃げていってしまって、今の雰囲気が台無しになってしまうような気がするしのう?」プルプル


「んー……でもいいの?こんな大雨だけど……」


「うむ……。少なくとも妾は問題ないのじゃ。いつも、空は眺めておるし、流星群の1つや2つくらい、見えなくても問題は無いのじゃ。我慢するのじゃ……」カクカク


「ふーん、そっかー。でもさ……一つ聞いていい?」


「む?何じゃ?」びくぅ


「テレサちゃんの尻尾が、1本消えてるみたいだけど……どこで落としてきたのかなぁー?って思って」


「……?!」


え?……あ、本当だ。

いつの間にか、テレサのやつ、どこかに尻尾を落とし……じゃなくて、魔法を使ってたみたいだな。


「こ、こ、これは……」


「……ルール違反」

「……だな」

「…………」こくり


「ふ、不可抗力なのじゃ!まさか、空を見上げてぼやいたら、それが魔法となって発動するとは思わなかったのじゃ!(……思わず魔力を込めてしまったのは、妾に責任があるのじゃがの?)」ぼそっ


「……ちなみになんて言ったの?」


「えっ?……そ、空から雲が無くなって欲しい、と言ったのじゃ?」


「ふーん……。じゃぁ、星を見た後で、ちゃんと元に戻さなきゃダメだよ?」


「う、うむ……」


ルシアの指摘に対して、申し訳無さそうに、そう口にするテレサ。

私は2人と付き合いが長いから、そんなルシアの言葉に、どんな意味が含まれていたのか分かっていたが……そうではないアメには分からなかったみたいだ。

……って言っても、主殿に抱き疲れてたせいで微妙な表情を浮かべてたから、もしかすると分かっててそんな表情を浮かべていた可能性も否定はできないけどな?


と、そんな時だった。

今まで、バケツをひっくり返したように降っていた雨が……急に止んだんだ。

テレサの……『支配魔法』の影響だな。


「……このままにしておいたら、何日くらいで地球は滅びちゃうんだろ……」


「す、すぐには滅びないはずなのじゃ。放っておいても、直ぐに雲は出来上がるはずじゃからのう?い、いや、ちゃんと後で戻しておくがの?」


「うん」


すると……やっぱり、事情が把握できていなかったアメがテレサたちに問いかけた。


「2人とも、一体、何の話をしておる?」


「んー……説明するのが大変なんだけど、テレサちゃんが、世界中の空から雲を消し去ったっていう話」


「……え?」


「いや、わざとではないのじゃぞ?って言っても、妾の魔法が効かぬアメには分からぬかもしれぬのう。なれば……明日の朝まで一夜ほど待ってから、元に戻すとするかのう?それならニュースにもなるじゃろうし、大きな問題は無いじゃろう。のう?ルシア嬢」


「世界の何処かで……雨が降らなくて、困っている人がーーー」


「……そ、そういうわけじゃから、星を見終わったら、すぐに元に戻すのじゃ!」


「全然、何を言っておるのか分からぬ……」


そりゃ分からないよな……。

むしろ分からない方が幸せだと思う……。


「む?どうした?狩人よ」


「いや、何でもない。それじゃぁ、皆で空でも眺めるか」


そして……私の声をきっかけに、星空を見ようと、外に出ようとする一同。

そう言えば……釣りをしていた私の分と、テレサの分の長靴はあるけど、他のみんなの分は無かったな……。

……まぁ、いっか。

さ、サボっていたわけじゃないんだ……。

時間が無かったんだよ……。

……もうだめかもしれないな……。


というわけで……次の筆者にバトンタッチするところまでは、とりあえず書いた。

本当は、アメのことについて、もう少し書きたかったんだが……それは私に任された役割の範疇を越えるから、次の筆者に頼むとしよう。


心残りがあるとすれば……流星群について書けなかったことだな。

山で生きるものとしては、空に輝く星々の話をしたかったんだが、その辺も、アメと少しだけ関係する話になってくるらしいから……残念だけど、お預けだ。

……書かなすぎて、筆者を外されたわけじゃないぞ?


そう言えば……この話を書く上で、今の季節にリンクさせて書く、っていう話があったんだが、それは難しいってことになって、結局別々の季節で書くことになったんだ。

今は、もう秋だって言うのに、話の中の季節は梅雨前だからな……。



さて。

それじゃぁ、私はこの辺で撤収させてもらおう。

ちなみに、次の筆者は……温泉狐だ。

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